• 検索結果がありません。

へき地における中学生の職業興味と職業観

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "へき地における中学生の職業興味と職業観"

Copied!
7
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

奈良教育大学学術リポジトリNEAR

へき地における中学生の職業興味と職業観

著者 礒野 義一, 玉瀬 耕治

雑誌名 奈良教育大学教育研究所紀要

巻 9

ページ 99‑104

発行年 1973‑03‑10

その他のタイトル Vocational Interests and Occupational Views of Junior High School Students in Remote Mountain Villages

URL http://hdl.handle.net/10105/6282

(2)

へき地における甲学生の職業興味と職業観**

磯 野 義 一    玉 瀬 耕 治*

(心 理 学 教 室)

本研究は.進路の決定に大きな影響を与えると考えられる職業興味と職業観について,奈良県へき 地の中学生と大阪市内の中学生を比較したものである。

著者は,10年以上前に.奈良県の山間へき地や農村と,都市における児童・生徒の職業興味と職 業観について比較した(磯野,1953,1959,いずれも未発表)。そこでは,へき地や農村の 生徒と都市の生徒の間に,かなり顕著な差異が指摘された。すなわち,議野(1953)は,吉野郡 川上村(へき地)の中学生と,奈良市内(.都市)の中学生を対象にして,職業興味に関する調査を行 ない,3年生については表3のような結果を得た。この表から,へき地の男子では.事務的職業がも っとも好まれ,工業的職業や交通的職業がこれに次いでいることがわかる。一九 都市の男子では.

自由専門的職業がもっとも好まれ,工業的職業や事務的職業.商業的職業がこれに次いでいる。また,

へき地の女子では洋和裁が圧倒的に多く,自由専門的職業や事務的職業がこれに次いでいる。それに 対して都市の女子では,事務的職業がもっとも好まれ,自由専門的職業や洋和裁がこれに次いでいる。

磯野(1959)は,奈良県平坦部の農村地帯の児童・生徒612名と大阪市内の児童・生徒352 名について職業観の発達的研究を行なった。質問項目は,良いと思う職業,好きな職業,やってみた

い職業,嫌いな職業,職業をどう思うか.などを含む9項目であった。表4は,「職挙というものを どういうものと考えているか」という質問に対する回答を,中学1年生と3年生のみについて示した ものである。この表から.幾村の生徒は都市の生徒に比べて,職業の社会的価値(国のため.義務.

社会や人を知るためなど)を重視し.都市の生徒は,経済的価値(金を得るたの,生活の向上など)L を重視していることがわかる。

上述の2つの研究では,みかけ上 かなりの地域差が認められた。しかし,これらの差は,交通事 情の変化やテレビの普及などによって,現在ではかなり変動しているかもしれない。また,現在では,

職業興味や職業観を測定する客観的なテストも完成されている。そこで.本研究では.これらの標準 化されたテストを用いて地域差を再倹討することにした。

方      法

被験者 へき地の生徒として,奈良県吉野郡十津川村西川中学校,および同郡川上村川上第三中学

* VocationalInterests and Occupational Views ofJunior HLighSchooI

Studentsin Remote Mountain Villages

** GiichiIsono and Koji Tamase(Department of Psychology,Nara

University of Education,Nara)

(3)

校の1年生および3年生合計180名が用いられた。都市の生徒として,大阪市南区上町中学校.お よび同市東住吉区東住吉中学校の1年生および3年生合計168名が用いられた(人数の内訳は表1 参照)。

材料(1)職業興味を測定するために,田研式職業興味検査(田中教育研究所職業適性研究乳19 54)が用いられた。この検査は.3つ1姐の活動の中から,もっとも好きなものと,もっとも嫌い なものを選ぶようになった100姐の問題からなっている。この検査では,次の10分野の興味につ いて測定できる。A戸外(農夫,きこり.船員.探検家.漁夫など).B級械(技術者,航空士,機 械操作員など).C計算(帳簿係,会計凰 銀行員など),D科学(科学者.医軋 研究所助手.化 学,電気技師など).E説得(政治家.セールスマソ,広告業者,アナウンサーなど).F美術(画 家.彫刻家.美容軋 デザイナーなど).G文芸(著述象 ジャーナリスト.俳優など), H音楽

(演奏家.作曲乳 舞踏家,合唱団員など),I奉仕(社会福祉家.民生委嵐 教師,看護婦など)

(2)職業観を測定するために.職業観診断テスト(増田・広乳1960)が用いられた。このテス トは,120項目の質問について.賛.否,?のいずれかで答えさせ.次の5つの尺度に対する価値 づけの程度を測定するものである。第I尺度:経済性(収入.生活の安定などを重視する).第:尺 度:社会的評価(集団への所属.社会的地位.名声などを重視する).第Ⅱ尺度:自己実現(個性の 発鼠 自主性の実現などを重視する),第Ⅳ尺度:義務感(義務としての職業,社会への貢献などを 重視する).第Ⅴ尺度:帰属性(事業体への依存.奉仕などを重視する)。

2つの検査は.それぞれの学校で同時に実施された。実施期日は昭和47年9月5日から10月10 日までの間であった。

結      果

畿業興味検査 表1の左半分は職業興味検査の平均得点(粗点)を示したものである。この表では,

同地域の2校は,それぞれこみにされている。表2の左半分は職業興味検査の平均得点について.2

(地域)×2(学年)×2(性)の分散分析を行ない,ダ値のみをまとめて表示したものである。こ の表でゴチック体で示されている値は.5節水準または1%水準で統計的に有意なものである。表2 からわかるように,3つの主効果のうちで,もっとも顕著なものは性差であった。10個の興味分野 のうち.9分野まで性差が有意になっている。これらについて表1を見ると.男子の方が女子よりも 得点が高いものは.戸外,機軋 および科学の3分野で.逆に女子の方が得点が高いものは.説得,

美術,文芸,青嵐奉仕.および書記の6分野である。学年間では.どの分野でも有意差は見られな かった。

本研究の主な関心である地域差については.2つの分野で有意な差が見られた。すなわち,説得で

はへぎ地の方が得点が高く.文芸では都市の方が得点が高かった。地域差と朗係する有意な交互作用

は.奉仕の分野でのみ見られた。それは.地域×学年の交互作用である。これに対応する平均値を示

すと.へき地の1年が19.8,3年が21.7.都市の1年が20.5,3年が18.6である。これらの

値のうち.3年のへき地と都市の差のみが有意であった(£=2.95)。それゆえ,1年では地域差

がなく,3年でへき地の方が都市よりも得点が高いといえる。地域差とは無関係に.機械と音楽の分

(4)

野で,学年と性の交互作用が有意であった。撥械については.1年の男子の平均値が37.7.女子が 14.7.3年の男子が35.7,女子が15.9である。音楽については,1年の男子が7.9,女子が1 7.9,3年の男子が10.0,女子が16.7である。これら2つの交互作用は,1年における男女差が,

3年におけるそれよりも大きいことを示している。

表1職業興味検査および職業観診断テストの平均得点(粗点)

職  業  興  味  検  査      職業観診断テスト 人数 戸外 機械 計算 科学 説得 美術 文芸 音楽 奉仕 書記     I u  Ⅲ  Ⅳ  Ⅴ

1年

へき地 男 へき地 女 都 市 男 都 市 女

50 22,9 38.6 13.9 2汀.5 19.2 22.7 11,4  7.3 15.5 23.6 44 19.8 14.115.112.1 28.5 乃.0 14.7 17.7 24.8:犯.3 45 21.8 第.7 16.1 環i.2 19.2 21.0 13.0  8.5 17.3 野.3 40 2).2 15.3 13.2 14.3 24.9 28.116.2 18.1 24.2 か.7

15.116.119.3 17.113.2 13.4 16.1 か.0 17.8 13.3 16.2 16.6 21.2 16.9 12.9 13.8 17.1 ズ).8 18,4 13.9

3年

へき地 男 へき地 女 都 市 男 都 市 女

47 23.6 35.113.6 24.9 21.6 21.9 11.2 10.0 18.1 22.7 39 18.8 14.9 13.8 13,3 :数0 24.8 15.117.1:あ.0 31.3 45 :数4 :覿4 14.7 1万.6 18.5 2と.9 14.110.0 14.6+2鼠5 38 19.3 17.0 14.6 15.4 24.2 本.2 18.6 16.3 2B.3 割.8

15.4 16.9 宣).6 14.3 11.4 13.8 13.8 21.113.8 10.3 14.0 15.0 21.4 13.6  9.3 12.3 14.5 2玖2 16.0 11.1

へき地 合計 180 21.4 2方.6 14.1 オ),0 24.2 24.2 12.9 12.7 a).7 2石.7     14.5 15.8 劫.2 15.8 12.1 都 市 合計 168 21.3;玖114.7 21.1 21.5 24.4 15.3 13.0 19,6 2汀.6    14.2 15.8 21.4 16.2 11.8 1 年 合計 179 21.3 2垢.9 14.6 Ⅹ).5 22.8 24.8 13.7 12.6 加.2 野.5     14.7 16.4 却.3 17.5 13.3 3 年 合計 169 21.5 本.7 14.2 耳).6 21.1 23.8 14.5 13.1 か.2:石.7     14,0 15.2 21.3 14.4 10.5 男 子 合計 187 23.0:姫.714.5 器.319.6 2.112,4 8.916,4 24.2    15.216.2 犯615.511.7 女 子 合計 16119.5 15.3 14.2 13.7 本.7 茄.8 16.117.3 24.6 弧5     13.3 15.4 21.016.6 12.2 職業観診断テストの1は経済性.Ⅲは社会的評価.Ⅲは自己実乳 Ⅳは義務感.Ⅴは帰属性

表2 分散分析のダ値

職  業  興  味  検  査       職業観診断テスト 変 動 因  戸外 機械 計算 科学 説得 美術 文芸 書楽 章仕 書記    1 Ⅲ  Ⅲ  Ⅳ  Ⅴ

1 地 域 2 学 年

2.0 15β −一 152 −  2.4

− −  1.3 1.6 − −

ー −  7.1 − −

2.0 も3  5β 乳6 瑚 3  位  19.4 6《)β − 町 筋.5 瑚:賀31%.91j訂月 光β   145 1.4 −  3.5 1.0

1×2  − 1.5 − 1.0  2.0 1.6 1.4 −  も8 −     4.7 1.4 − − 1.1 1×3  − 1.4  2.8 1.8 3.2+一一 − − − 1.8    − 1.6 −  2.7 4.9 2×3  1.8 5β −  2.4 −  3.1 −  8β −  2.5    −  2.7 − − −

1×2×3   − −  1.9 − − − − −  1.4 −     − − − −  1.3

いずれもd′は1と340.ダ(1と200)=3.9で5%水準.ダ(1と200)=6.8で1節水率

(5)

職業観診断テスト 表1の右半分は.職業観診断テストの平均得点(粗点)を示したものである。

表2の右半分はこれらの値について分散分析のダ値を示したものである。表2から明らかなように,

地域差は.第Ⅲ尺度の自己実現でのみ有意であった。これは,都市の方が,へき地よりも得点が高く 職業の自己実現的価値を重視していることを示している。学年差は.5つの尺度のうち4つの尺度で 有意であった。表1で明らかなように,第Ⅱ尺度の社会的評帆 第Ⅳ尺度の義務感,および第Ⅴ尺度 の帰属性については,1年の方が3年よりも得点が高い。逆に第Ⅲ尺度の自己実現では.1年の方が 3年よりも得点が低い。性差に関しては,第I尺度の経済性で男子の方が女子よりも得点が高くなっ ている。

地域差と関係のある交互作用は,第I尺度の地域×学年で有意であった。これに対応する平均値は.

へき地の1年が14.3,3年が14.7,都市の1年が15.0,3年が13.3である。これらの値は,

1年では地域差がなく,3年でへき地の方が郁市よりも得点が高いこと(£=2.04),および.へ き地では学年差がなく,都市では3年で得点が減少していること(£=2.54)を示している。地域 差とは関係なく.第Ⅴ尺度の帰属性では学年×性の交互作用が有意であった。これに対応する平均値 は,へき地の男子が12.3,女子が11.8,都市の男子が11.1.女子が12.5である。これらの値は,

男子ではへき地の方が都市よりも得点が高く(£=2.60),女子では地域差がないこと,および,へき地 では男女差が甘く .都市では男子よりも女子の方が得点が高いこと(£=2.84)を示している。

表3 へき地と都市の中学3年生の好きな職業(磯野,1953)

男    子     女    子 職   業 へき地  都 市   へき地  都

(31人)(166人) (29人)(153人)

自由専門的職業 事務的職業 商業的職業 家事奉仕的職業

サ ー ビ ス 業

農林業的職業 工業的職業 土木建築・設業

洋  和  裁 交通的職業 その他の職業 漠然としたもの 無     答

9.7節 32.5%  13.89も 20.39ら

22.6   13.3 9.7   12.7

0      0 3.2    0.6

0     3.0

19.4  13.9 6.5    3.6 0      0 16.1   9.0

3.2    5.4

13.8   33.3 0     7.2 0      0.7

10.3    4.6 0     0.7 3.4    2.6 0.     0

48.3   19.0

6.9   1.3

0     0

3.2    0      0     2.0

6.5    6.0     3.4    8.5

(6)

表4 農村と都市の中学生の職業観の比較(議野,1959)

1    年

職業観 農 村  都 市

(95人)(93人)

3    年 農 村  都 市

(87人)(88人)

社会的価値 個人的価値 経済的価値

14.7箆  8.0%

14.7   11.5 65.2   71.3

その他無答    5.3   9.2

17.29も 13.6珍 19.4   22.7 47.3   60,2 16.1   3.4

考      察

本研究の主な結果は次のとおりである。(1)職業興味検査では,へき地の生徒は都市の生徒よりも説 得の得点が高く,文芸の得点が低い。(2)奉仕では,中学1年で地域差がなく,3年でへき地の方が都 市よりも得点が高い。(3)職業観診断テストでは.第Ⅲ尺度でへき地の生徒は都市の生徒よりも得点が 低い。(4)第I尺度では,1年で地域差がなく,3年でへき地の方が都市よりも得点が高い。

本研究の対象となったへき地地区は,奈良県南部の山間地帯に位置している。この地区の被験者の 家の職業は.林業70乳 商業9乳 公務員79も,建築業6乳 会社員4珍.その他49乙であった。

一九 都市の地区は,大阪市内の商業および住宅地帯であった。被験者の家の職業は,商業479ら.

会社員33乳 公務員79も.建築業5珍,経営管理4乳 その他49右であった。

職業興味に関しては,従来,発達的研究や知能,学業,適性などとの関係を調べた研究はあるが

(浅井,1971).地域差を調べたものはあまり擁告されていない。本研究の結果から,概して.

かなりのへき地においても,一般的傾向が見られ,都市と大差がないといってもよいであろう。しか し,へぎ地の生徒が都市の生徒よりも説得や奉仕の分野での興味が高いことは,彼らが.これらの分野 で必要な.対人接触や対外的活動を好む傾向があることを示唆している。地域差とは無関係に,本研 究では,かなりの性差が見ら11たが,それぞれの分野における性差は従来の研究とよく一致している

(浅井,1971)。

職業観に的しても.あまり地域差は見られなかった。しかし,第Ⅲ尺度の自己実現において差がみ られたことから,へき地の生徒の職業観に関する発達的な遅れが示唆される。なぜなら,この尺度は.

年令が進むにつれて得点が高くなることが知られている(広井,1971)からである。第1尺度の 経済性で.3年に関して地域差が見られたが,平均値を見ると.都市の得点が3年で低くなっている。

これは一般的な傾向と矛盾する。しかし,都市の被験者の約半数が商業家庭の生徒であることから,

彼らの経済性に対する欲求が充足されているためであると解釈されるかもしれない。学年差と性差に ついては.一般的な傾向とはぼ一致している(広汎1971,道脇・小倉,1970)。

われわれの先の研究では.測定法や結果の処理などに不十分な点があったが,本研究によって.へ

き地の実態がより明確にとらえられたものと思われる。全体として都市との間にあまり顕著な差がみ

られなかったことは,最近のへき地における都市化の傾向をあらわしているものとみなされよう。

(7)

要      約

奈良県のへき地と大阪市内の中学1年生および3年生,合計348名に,田研式職業興味検査と職 業観診断テストが実施された。その結果,職業興味検査では,へき地の生徒は都市の生徒よりも説得

の得点が高く,文芸の得点が低かった。職業観診断テストでは,自己実現的価値を重視する尺度でへ き地の生徒は都市の生徒よりも得点が低かった。

<付記> 本研究に心よくご協力くださった吉野郡川上第三中学校.西川中学校,および大阪市上 町中学校,東住吉中学校の諸先生,ならびに専政学生山口正修君ほかの方々に厚く感謝します。

引 用 文 献

浅井正昭 1971職業興味 広井甫他編 実践進路指導講座2,233−253.

東京:実業之日本社.

広井 甫 1971職業観の測定 広井甫他編 実践進路指導講座2,254−273.

東京:実業之日本社.

磯野義一 1953 職業興味に関する一研究(未発表).

磯野義一、t・1959 職業観の発達に関する研究(未発表).

増田幸一・広井甫 1960 職業観診断テスト解説 東京:竹井機器工業株式会社.

道脇正夫・小倉修一郎1970 職業観の発達に関する研究−職業観診断テストの分析 職業研究所紀要,1,1〜18.

田中教育研究所職業適性研究部 1954 田研式職業興味検査の手引 東京:日本文化科学杜.

参照

関連したドキュメント

検査結果の 察 ⑴興味領域尺度の 察 R尺度の結果を見ると、文系学部と理系学部あるい

ついてみると,職指用知能検査の平均点は40

松崎4 によれば、 興味は特定の対象に向って積極的に選択し 求めようとする感情的な心がまえ 、 (誘意性) で、 学習の動機づけ の重要

1』ティの特徴⑥へき地児童

「こどもたちの学習研究意欲を高めるためには,調査対象が、、やりがいあること、、で,しかもこど

「立派な人になって親を喜ばせる」「親の気持を理解する」であった。また,老後の親の扶養につい

④活用場面 ・ 高校や大学のキャリア教育の授業で実施 ・ ハローワーク等、職業相談機関のセミナーで実施 ・ 学校や職業相談機関の個別相談で実施

「食」に対する意識の高まりからかあるいは高齢者人口の増加によるものか,味覚に対する異常を主訴で味