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へき地における中学生と親の生活意識

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(1)

奈良教育大学学術リポジトリNEAR

へき地における中学生と親の生活意識

著者 滝野 千春, 今井 靖親, 藤田 正

雑誌名 奈良教育大学教育研究所紀要

巻 12

ページ 65‑78

発行年 1976‑03‑25

その他のタイトル A Study of High School Pupils' and Their Parents' View of Life in Remote Mountain Village.

URL http://hdl.handle.net/10105/6356

(2)

へき地における中学生と親の生活意識‡

滝野千春今井靖新藤田 正軸

         (心理学教室〕

 本邦における.いわゆる「へき地」に関する教育心理学的研究を優目すると,まず1950年ごろか ら北海道教育大学教育心理学教室を中心としておこなわれた一連の研究(たとえば.宮本.1953,

犬居・松下,1955;農野.岡路地.1958;北海道教育犬学教育心理学教室.1967)をはじめと して.名古屋大学及ぴ広島大学教育心理学研究室を推進母体とする一連の共同研究(たとえば.永田 過疎研究グループ、1971;久世・過疎研究グループ.1973;小川・深田、1973)など,今日ま

で多数の報告がなされているが.そこでとりあげられた主要な研究テーマや研究内容は,およそ次の ように分類することができる。①へき地児童.生徒と都市の児責 生徒の知能及び学力の比較 ②へ き地の小規模校における学習指導.生活指導の問題点 ③へき地教師の教育活動や.へき地担当教員 の養成計画の問題 ④学校統合の児童・生徒に及ぼす影響 ⑤へき地における児童・生徒のパーソナ

1』ティの特徴⑥へき地児童 生徒の生活意識や離村した若者の実態⑦過疎地域あるいは出稼ぎ部 落の家族関係。最初の研究には.へき地の自然的 物理的環境条件の実態調査など.比較的外的な条 件にもとづいて.へき地性の分析をおこなった研究が多いが.最近では,へき地と都市部の児童 徒の知能・学力の検討をおこなったもの,児童・生徒の人格発達や家族関係の特質を明らかにしよう とするものなど,比較的内面的な条件の分析や考察をねらいとした研究が目立ってきているように思 われる。

 すでに.わ一れわれも奈良県南部にある山間へき地の児童 生徒について、彼らの学習動壌.学級適 応度.職業興味 職業観などをはじめ.中学生の生活意識や幼児教育に関する母親の意見などについ て,教育心理学的な調査 研究をおこなってきたが,今回は,へき地における中学生と親の生活意識

を比較検討することによワ.その特徴を明らかにすることを試みた。

方        法

調査対象  表1に示したように.調査対象は奈良県吉野郡上北山村 上北山中学校の生徒82名 と.その父母153名、合計235名であった。

ホAStudyofHighSchooIP叩i1s andTheirl〕arents ViewofLifein

 Remote Mountain V川age.

榊 Chiharu Takino.Yasuchika Imai−and Tadashi Fujita

 (Department of Psycho1ogy− Nara Unive rsity of Education.Nara.)

一65一

(3)

表1. 調 査対 象

中学生 男子

女子

38 44 82

77 76 153

 調査項目  妻2に調査用紙を示した。項目1から項目10までは「青少年の連帯感などに関する 調査」(総理府青少年対策本部,1971)の家庭,学校,社会.生活態度などの質問項日から採用し たものであり.項目11は構本 金井(1971)より中学校の指導要録における行動および性格の記録

を参考としてIわれわれが作成したものである。

表2・調査用紙(両親用)

お  願  い

 この調査は.家庭.学校.地域社会などについて.中学生.父親.母親それぞれに意見を伺い.今 後の数百に役立てるためのものです。調査の結果は統計的にまとめるだけですので、ありのままの御 意見をお聞かせください。どうぞよろしくお願いします。

      奈良教育犬学心理学教室

お答えいただく方・……・・父(  歳).母(  歳)(どちらかに○をつけて下さい)

1.あなたは.どのような父親が望ましいと思いますか。1つだけ選び○をつけてください。

 イ.仕事や社会のことに専念する父

 口.どちらかといえば.家庭生活よりも仕事を大切にする父 ハ.どちらかといえば.仕事よりも家庭生活を大切にする父  二.家庭生活を何よワも大切にする父

2.あなたは.どのような母親が望ましいと思いますか。1つだけ選びOをつけてください。

 イ.仕事や社会のことに専念する母

 口.どちらかといえば.家庭生活よりも仕事を大切にする母  ハ.どちらかといえば.仕事よりも家庭生活を大切にする母  二.家庭生活を何よワも大切にする母

3 あなたのお子さんに.将来どんなことをしてほしいと思いますか。次の中から2つ選び、○をつ  けてください。

 イ.経済的に助ける      口.立派な人になって親を喜ば世る  ハ.親の気持ちを理解する       二.親に心配をかけないようにする

4 あなたのお子さんに、学校で何を得させたいと思いますか。次の中で特に大事なものを1つだけ  選ぴOをつけてください。

 イ.戦業に役立つ技術や知識       口.教養やものの考え方

(4)

ハ.仕事や結婚のための学歴

◎ その他にあれば書いて<たさい。

二.心を打ちあけて話せる友人や先生

5.

6.

71

8.

9.

 あなたは.今住んでいるところが好きですか。あてはまるものに○をつけてください。

イ.好き    口.少し好き    ハ.あまり好きでない    二.きらい

 今.住んでいるところで、あなたの気持ちに合うものにはO.合わないものにはxをつけてくだ さい。(全部に○かXをつけてください)

イ.生活が便利である      口.空気がきれい ハ.人の気持ちがあたたかい        二、物価が安い

ホ.自然に恵まれている         へ.人とのつきあいに気をつかう  これからも.今のところに住んでいたいと思いますか。

イ.住んでいたい    口.よそに移りたい    ハ.どちらでもよい

 今の日本の社会について、次の中で特にあてはまるものを2つ選びOをつけてください。

イ.社会のしくみがきまワきっている     口.若者の意見が反映されない ハ.正しいと思うことが通らない      二.国民の意見がまとまっていない ホ.貧富の差がありすぎる         へ.まじめなものがむくわれない

ト.風俗が乱れている

 人のくらし方について.いろいろな考え方がありますが.次の中で一番よいと思うものに1つだ け○をつけてください。

イ.いっしょうけんめい働き、倹約して金持ちになる。

口.まじめに勉強して名をあげる

  金や名誉を考えずに.自分の趣味にあった暮し方をする    その日その日をのんきにくよくよしないで暮す

 ホ.世の中の正しくないことを押しのけて.どこまでも清く正しく暮す  へ.自分自身のことを考えずに.国家社会のためにすべてをささげて暮す

10.あなたは.どんなときに生きがいを感じますか。次の中からあてはまると思うものを2つ選び○

 をつけてください。

 イ.社会のために役立つことをしているとき

 口.仕事にうちこんでいるとき        ハ.家族といるとき

 二.スポーツや趣味にうちこんでいるとき   ホ.友人や仲間といるとき  へ.他人にわずらわされず.一人ているとき

11.あなたのお子さんは.どんな人になってほしいと思いますか。次の中から3つ選び.○をつけて  ください。

 イ.健康や安全に気をつけ、規則正しい生活をする人  口.自分の意見をはっきり述べ、自分で考えて行動する人  ハ.仕事に誠意を示し.言ったことやしたことには責任をもつ人

一67一

(5)

二.やろうとしたことは困難にくじけず最後までやり通す人 ホ.進んで新しい考えや方法を生みたそうとする人

へ.一 椏Iな衝動を抑え.見通しをもって行動する人 ト.相手の立場を理解し.自分とちがう意見も尊重できる人 チ.みんなのためにすすんで意見をまとめたワ、計画したワする人

1j.みんなを信頼し.互いに助け合うことができる人

ヌ.自分の好き嫌いや利書にとらわれず.公正にふるまえる人 ル.公共物をたいせつにし一人に迷惑をかけない人

ご協力ありがとうございました。

 手続き 調査は1975年10月16日から18日までの間に実施した。中学生に対しては.調査 員(大学心理学担当教官)が直接学校へおもむき.教室で調査用紙を配布して記入を求めた。父母に 対しては.中学生に依頼して調査用紙を家庭へ持ち帰らせ,父母に記入してもらったものを学校で回 収した。

桔  桑  と 考  業

 検定はEdwards(1950,p.77)の公式に基づいておこなわれた。検定の結果を示したのが表3〜

表13である。問題番号および質問項目ごとに.統計的に有意差が認められた場合は.その方向と有 意水準が示されている。表3に基づいて.各項目ごとに結果と考察を述べる。ただし.表中には5%

の有意水準には達しなかったが,差の傾向の見られたもの(p<.10)についても表示してあるが,

本文中では有意水準5%以下のものについてのみ考察を加えた。

 1 理想の父報償

       妻3 理想の父親像

  あなたは,どのような父親が望ましいと思いますか。1つだけ選びOをつけて<たさい。

  イ.仕事や社会のことに専念する父

  口.どちらかといえば.家庭生活よりも仕事を大切にする父   ハ.どちらかといえば.仕事よりも家庭生活を大切にする父   二.家庭生活を何よワも大切にする父

無答

中学生

@親

15,9 Q8.1

26,8 R0.7

42,7 P0.5

14,6 P1.8

O,O

P9,O

倹 定

V榊

〈‡林

中学生 男子

落q

21.0

P114

21,0 R1.8

37,0 S7.7

21.0

X.1

O.0 O.0

検定

(6)

  父 親 母

検定

28,6      32.5

2716     29.0

1117    14,3    12.9 9.2     9,2     25.0

        ^P<.1O  ‡P<.05  榊 P<.O1  榊P<.001(両側検定)

 まず 父親として.どういう生き方をしている人が望ましいか.という問いに対して.中学生では.

「どちらかといえば仕事よりも家庭生活を大切にする父」が望ましいと答えた者が42.7%という高 率を示していることが注目される。これに、項目eの「家庭生活を何より大切にする父」が望ましい

とする者を加えれば.この地域の中学生の6割近くの者が.仕事や社会のことに専念する父親よワも.

家庭生活を大切にする父親を求めていることがうかがえる。こうした傾向とは対照的に.親のほうで は.父.母ともに「どちらかといえば家庭生活よりも仕事や社会のことを大切にし.それに専念する 父」を望ましい父親と考えておワ,両群の間にはIかなり顕著なずれが見られる。

 2.理想の母畳検

      妻4 理想の母親像

 あなたは.どのような母親が望ましいと思いますか。1つだけ選び○をつけてください。

 イ.仕事や社会のことに専念する母

 口.どちらかといえば.家庭生活よワも仕事を大切にする母  ハ.どちらかといえば,仕事よワも家庭生活を大切にする母  二.家庭生活を何よワも大切にする母

ノ、 無答

中学生

@親

1.2 S,6

1,2 Q.6

28,1 Q5.5

69,5 S7.7

O.O

P9.6

検 定 〉林 〈林*

中学生 男子

落q

0.0 Q.3

O.0 Q.3

28,9 Q7.2

71,1 U8.2

0.O n.O

検定

父母

7.8

P.3

1.3 R.9

20,8 R0.3

45,5 T0,O

24,6 P4,5 検定

 中学生も親も共通して.断然多数を占めていたのは項目θの「家庭生活を何より大切にする蜀」で あった。親と中学生を比較した場合,この項目θの選択率は、中学生のほうが親よワ有意に高かった。

従来の青少年を対象とした諸研究(たとえば.総埋府.1971;上田 滝野,1973;上田 藤田1 1974;滝野.1974)においても,「家庭生活を何よワ大切にする母」は最も高い選択率を示してい るが.親自身をも対象にした本調査により.「家庭のことに専念する埋」は.地域.年締.性などの 差異に関係なく.現代の理想の揮現像とされていることが明らかにされたと言えよう。

一69一

(7)

 3.将来■にしてあげたいこと,して1きしいこと

      表5 将来親にしてあげたいこと.してほしいこと

 あなたのお子さんに.将来どんなことをしてほしいと思いますか。(将来どんなことを親にしてあ げたいですか)次の中から2つ選び、○をつけてください。

 イ.経済的に助ける      口.立派な人になって親を喜ばせる  ハ.親の気持ちを理解する        二.親に心 をかけないようにする

無答 M.τ

中学生 43.9 24.4 42,7 89,O αO 200.O

9.2

1414 65.4 82.4 28.6 200.O

倹 定 V納‡

〉ム

〈榊 〈林*

男子 50.0 34.2 36.9 78.9

O.O

200,O 女子 38.6 15.9 47.7 97.8

0.0

200.O

検定

〉山

〈林

父 6.5

19.5 59.7 79.2 35.1 200.O 11,8

9.2

71.1 85.5 22.4 200.O

検定 〉ム V^

 中学生では.将来親にしてあげたいこととして.「親に心配をかけないようにする」をあげている 者が最も多く.次に、将来親を「経済的に助けてあげよう」と考えている者が43.9%にも達してい る。これに対し.親が最も強くわが子に期待することはI「親に心配をかけないこと」で.この点は 共通しているが、「経済的援助」に関しては.中学生の「してあげたいこと」と親の「してほしいこ

と」の聞に、きわだった差異が見られた。中学生は将来経済的に親のめんどうをみてやろうと考えて いるのに,親は子どもから経済的な援助を受けることには,ほとんど期待をかけていないのである。

なお.中学生において.女子のほうが男子よワも「親に心配をかけないようにする」ことを考えてお ワ.両群間に有意な牲姜が認められた。

4.学校で得たいもの,場させたいもの

      表6 学校で得たいもの.得させたいもの

 あなたのお子さんに.学校で何を得させたいと思いますか。(あなたは学校で何を得たいと思いま すか)の中で特に大事なものを1つだけ選びOをつけてください。

 イ.戦業に役立つ技術や知識       口.教養やものの考え方

 ハ.仕事や結婚のための学歴       二.心を打ちあけて話せる友人や先生  ◎ その他にあれば書いてください。

(8)

ノ、 無答

中学生 26.8 28.0 317 40.2

1.2

30.7 3816 ZO 17.6 11.1

検 定 〉料* 〈淋

男子 36,8 36,8

5.3

18.4

2.7

女子 18,2 20.4

2.3

59.1

O.O

検定 V^ 〉ム 〈‡榊

29.9 33.8

2.6

22.1 11.6

31.6 43,4

1.3

13.2 10.5

検定

 中学生では.学校で得たいものとして.第一一に項目θの「心を打ちあけて話せる友人や先生」をあ げており.ついで「教養」や「職業に役立っ知識・技術」をあげている。親は学校では第一に「教養 やものの考え方」を身につけてくれることを望んでいるが、同時に.「機業に役立つ知識や技術」を 学ぶことへの期待も大きい。項目θに関しては.滝野の結果と同様に.男子よりも女子の選択率が高 く.本調査の対象となった上北山中学では女子生徒の59,1%の者がこの項目θを選択しており.男 子の18.4%との間に著しい差異が見い出された。

5.地域への産着度

       表7 地域への愛着度

あなたは.今住んでいるところが好きですか。あてはまるものに○をつけてください。

イ.好き  口.少し好き  ハ.あまワ好きでない  二.きらい

ノ、 無答

中学生

@親

65,8 S9.7

20,7 Q5.5

9,8

P3.7

3.7 Q,O

O−0 X.1

検 定  *

r

〈梓

中学生 男子

落q

71,0 U1.4

I3,2 Q7,3

13.2

U,8

2.6 S.5

O.O n.0

検定

父母 41,6

T7.9

20−8 R0.3

18.2

X.2

3.9 O.O

15.5

Q.6

検定 〉榊

 地域への愛着度は全体的にかなりの高率を示しているが、中学生と親を比較すると.前者のほうが 愛着度は有意に高い。しかし.どの項目の選択にも性差は認められなかった。

一n一

(9)

 6.地域に対する産着と不演の理由

      表8 地域に対する愛着と不満の理由

 今.住んでいるところで.あなたの気持ちに合うものには○.合わないものにはXをつけてくださ い。(全部に○か×をつけてください)

 イ.生活が便利である      口.空気がきれい  ハ..人の気持ちがあたたかい       二.物価が安い

 ホ.自然に恵まれている         へ.人とのつきあいに気をつかう

中学生  親

倹  定

男子 女子 検定 検定

中学生  新

検  定

男子 女子 検定 検定

   イ O   ×

         口

無答  O   × 無答   O  ×   無答

30,5   68,3

24,8 60,8

1.2   9716 14,4   91,5

1.2  1.2 0.0  8.5

82,9   17.1     O.0

64,1   21,6    14.3

〈榊 〈*   〉榊  く#*

36,8   63,2

25,0  72.7

0.O    100.0    0.0 213     95.4    2.3

0,0     92.1    7.9

2,3   75,0  25.O

O.0 0.0

V*  〈*

24,7   58,4

25,0  63.2

16,9     88,3    0.0 1118     94.7    0.0

11,7   64,9  18.2

5,3    63,2   25.0

16,9 11.8

○×無答○x無答O

X   無答

3,7

29.4

96.3  0,0 55,6  15.O

96.3  2,5 88,2  2,O

1,2     40,2   57.3 9,8     45,8   39.9

2,5

14,3

〈‡榊 V‡榊 〈淋*  〉‡ 〈‡ 〉*  〈村

2,6  97,4 4,5  95.5

O.0    94.7    5.3 0,0    97.7    0.O

O,0   36,8  63.2    0.0

2,3     43,2   52.3      4.5

28,6   55,8 30,3   55.2

15,6    85.7    2 6

14,6   90.8   1.3

1117

7.9

49,3   36,4     14,3 42.1   4314     14.5

 地域に対して愛着を持っている理由として.中学生.親ともに、第1位に「空気がきれい」を.第 2位に「自然に恵まれている」を.第3位に「人の気持ちがあたたかい」をあげている。ただし.順 位は同じであっても.項目㊧と項目θは親よワも中学生のほうが有意に高い数値を示している。要す

るに.この地域に対する住民の愛着度の高さは.その自然環境のよさと人情のあたたかさによってい ると考えられる。

 いっぽう、住民として.地域に対する不満があることも事実で.中学生も親も「生活の不便さ」.

(10)

「物価の高いこと」.「人とのつき合いに気をつかうこと」などを上位にあげているが,「高い物価」

への不満が、中学生でこれだけ高い選択率を示していることは、おもしろい現象と言えよう。特に目 立ったのは、「人の気持ちがあたたかい」と思わない者の割合が.男子中学生でわずかに一7.9%であ

るのに対し.女子中学生では25,O%に達している点である。4において.女子は学校で「心を打ち あけて話せる友人や教師」を強く求めていることが明らかにされたが.この地域の人情のあたたかさ に対する女子中学生の否定的な受けとリ方となんらかの関連があるのかもしれない。

7.永住者聾の有無

       表9 永住希望の有無

これからも、今のところに住んでいたいと思いますか。

イ.住んでいたい    口.よそに移ワたい    ハ.どちらでもよい

無答

中学生 32.9 14.6 52.5 O.0

49,7 14.4 28.1

7.8

検 定

・〈‡

〉榊ホ 〈榊

男子 34.2 23,7 42.1

O.O

女子 31.8

6.8

61.4

O.0

検定 〉ホ

49.3 11.7 27.3 11.7

50,O 17.1 28.9

4.O

検定

 rよそに移ワたい」との希望を明確に表明している者は.中学生では14.6%.親では14.4%で.

両群の間には全く差異が認められないが.中学生では半数以上の老が「永住」「移住」の「どちらで もよい」の項目を選んでいる。これはまだ彼らが.永住とも移住とも決めかねている態度の表われと 受けとれよう。これに対して、親は全体の約半数がこの地に永住の気持ちを持っていて.両群にはっ きりとした差異が認められる。また.男女別にみると.中学生では女子の6.8%だけが「よそに移り たい」と考えているのに対して.男子では2317%の者が移住の希望を持っておワ.ここにも潜在的 な過疎傾向が明瞭にあらわれているように思われる。

8.現代の日本の祉会に対する不満内容

      表10 現代の日本の社会に対する不満内容

今の日本の社会について、次の中で特にあてはまるものを2つ選び○をつけてください。

イ、社会のしくみがきまワきっている    口.若者の意見が反映されない ハ.正しいと思うことが通らない     二.国民の意見がまとまっていない ホ.貧富の差がありすぎる        へ.まじめなものがむくわれない

ト.風俗が乱れている

一73一

(11)

ノ、

無答 M.T 中学生

@親

18,3 P5.O

23.2

Q,6

26,8 Q6.1

54,9 S1.2

50,0 Q4.8

13,4 R9.9

13,4 Q8,1

O,0 Q2.3

200.0 Q00.O

検 定 V榊* 〉* 〉*榊 〈‡料

〈*

〈**ま

中学生 男子

落q

15,8 Q0.1

28,8 P8.2

21.J R1.9

50,0 T9.2

47,4 T2.4

21.1

U.8

1518 P1.4

O.O

n.O

200.0 Q00.O

検定 〉^

父母 16,9

P3,2

1.3 R,9

28,6 Q3.7

39,0 S3.4

19.5

R013

40,3 R9,5

2816

Q7,6

25.8 P814

200.0 Q00.0 検定

 中学生で最も選択の多かったのは、項目◎の「正しいと思うことが通らない」で.ついで項目㊥の

「貧富の差がありすぎる」となっている。親で最も選択の多かったのは.項目θの「国民の意見が分 裂していること」であり.ついで項目θの「まじめな者がむくわれない」が多く選ばれている。項目 別に親と中学生との間に差のあるものを調べてみると.項目◎θ㊥については.親よりも中学生が 有意に多く、項目θ㊦については、逆に中学生よワ親のほうが有意に多かった。第8問に関しては.

どの項目にも選択数における性差は認められなかった。

 9.生活態度

       妻11 生  活  態  度

 人のくらし方について.いろいろな考え方がありますが.次の中で一番よいと思うものに1つだけ

○をつけてください。

 イ.いっしょうけんめい働き,倹約して金持ちになる  口.まじめに勉強して名をあげる

 ハ.金や名誉を考えずに.自分の趣味にあった暮し方をする  二.その目その日をのんきにくよくよしないで暮す

 ホ.世の中の正しくないことを押しのけて.どこまでも清く正しく暮す  へ.自分自身のことを考えずに.国家社会のためにすべてをささげて暮す

無答

中学生 13.4 O.O 51.2

7.3

28.1

0.O O.O

712

2.0

37,9 1813 20.3

3.3

11.O

検 定 〉‡

〈キ

〈榊

男子 18.4

O.O

44.7

O.O

36.7 αO

0.O

女子

9.1 0.0

56.8 13.6 20.5

O,O O.O

検定

〈‡

9.1 O.O

3510 20.8 19.5

1.3

14.3

5.3

3.9 40.8 15.8 21.1

5.2

7.9

検定

(12)

 中学生.親ともに「金や名誉を考えずに自分の趣味にあった暮し方をする」ことを一番よい暮し方 として選択している。第二位も、ともに「世の中の正しくないことを押しのけてどこまでも正しく清 く暮す」となっている。項目θの「その目.その日をのんきにくよくよしないで暮す」という暮し方 をよしとする者は.中学生ではわずかに7.3%であったが,親では18.3%に達し.両群間には統計 的な有意差が認められた。また.中学生において項1ヨθを選んだ男子生徒は皆無であったが.女子で は全体の13.6%を占めており.両群間に統計的な有意差が認められた。他の項目にあらわれた選択 率をも合わせて考察すると.男子中学生は女子中学生よりも勤労の精神に富んでいるが.女子中学生 は男子中学生よワも現実享楽主義的な傾向が強いと言えるであろう。

10.生きがい

       表12 生  き  が  い

 あなたは.どんなときに生きがいを感じますか。次の中からあてはまると思うものを2つ選び○を つけてください。

 イ.社会のために役立つことをしているとき  口.仕事(勉強)にうちこんでいるとき  ハ.家族といるとき      二.スポーツや趣味にうちこんでいるとき

 ホ.友人や仲間といるとき      へ.他人にわずらわされず.一人ているとき

無答 M.T

中学生

@親

11.O P9.6

214 U0.8

32,9 T5.6

64.6 H5.O

72.1

Q.6

8,5

P4.4

8,5

R2.O

200.0 Q00.O

検  定 〈ム 〈*林 〈*料 V‡榊 〉榊 へ榊

中学生 男子

落q

ユ3.2 X.1

0.0 S.5

34,2 R1.8

71,1 T9,1

57,9 W4.2

13.2

S5

1O.5

U.8

20α0

Q00.O

検定 〈淋

父母 19,5

P9.7

63,6 T7.9

45,5 U5.8

19,5 P0,5

319

P.3

11,7 P7.1

36,3 Q7.7

200.0 Q00,0

検定

〈*

 中学生が最も強く生きがいを感じるのは「友人や仲間といる時」であり.次に「スポーツや趣味に うちこんでいる時」となっているのに対して,親が最も生きがいを覚えるのは「仕事にうちこんでい る時」であワ.次に「家族といる時」.となっていて.両者の間には顕著な差異が見い出されている。

父親が「仕事にうちこんでいる時」に最も生きがいを感じているのに対し.母親は「家族といる時」

に最も大きな生きがいを感じていること。男子中学生は「スポーツや趣味にうちこんでいる時」に最 も大きな生きがいを感じているのに対し、女子中学生は「友人や仲間といる時」に最大の生きがいを 感じていることなどから.男女によって.生きがいに明白な差異が示されていて興味深い。

一75一

(13)

11.期待する人聞り

       表13 期待する人間像

 あなたのお子さんは.どんな人になってほしいと思いますか。(あなたは.

いと思っていますか)次の中から3つ選び.○をつけてください。

 イ.健康や安全に気をつけ.規貝0正しい生活をする人  口.自分の意見をはっきワ述べ,自分で考えて行動する人  ハ.仕事に誠意を示し.言ったことやしたことには責任をもつ人  二.やろうとしたことは困難にくじけず最後までやり通す人  ホ.進んで新しい考えや万法を生みたそうとする人

 へ.一時的な衝動を抑え.見通しをもって行動する人  ト.相手の立場を理解し.自分とちがう意見も尊重できる人  チ.みんなのためにすすんで意見をまとめたワ.計画したりする人  リ.みんなを信頼し、互いに助け合うことができる人

 ヌ.自分の好き嫌いや利書にとらわれず、公正にふるまえる人  ル.公共物をたいせつにし.人に迷惑をかけない人

とのような人になりた

lj ノレ 無答

中学生

@親

30,5 S9.0

25,6 S9.O

40,2

S7.7

40,2 S1.2

6.1

U.5

9,8 46,3 P3,7 19.6

6.1 T.9

5419 P6.3

22.0

P18

18,3 P5.O

O.0

Q4.3

検 定 〈林 〈榊 V*淋 〉榊*

〉‡

〈料*

中学生 男子

落q

39,5

Q2.7

34,2 P8.2

42,1 R8.6

50−0 R1.8

7.9 S.5

7,9 34,2 P1,4 56.8

10.5 Q.3

50,0 T9.2

1O.5 R1.8

13,2

Q2.7

O.0 O.O

検定 Vム Vム V△

〈‡ 〈‡

父母

48,1

T0.O 45,5 T2.6

45,5

T0.O

40,2.7,8 S2.1 5.3

13,0 16,9 P4,5 22.4

6,5 T.3

14,3

P8.4

11,7 P1.8

1O.3 P9.7

40.2

V.9

検定 〉榊*

 中学生が理想として選んだのは「協調性のある人」.「他者を理解し.尊重できる人」,「根気強 く努力する人」.「責任感の強い人」などであるが,親が子どもに期待するのは.「健康や安全を大 切にする人」.「自主性のある人」.「責任感の強い人」などである。親についての結果を.杉村 今井一広瀬.桶本(1974)がおこなった調査の結果と比較してみると.子どもが将来「健康や安全

を大切にする人」や「責任感の強い人」、「自主性のある人」に成長してくれることを願っている点 では.幼児を持った親も.中学生を持った親も変ワはない。しかし.本調査によワ.親がこういう人 になってほしいと期待している人問像と、中学生自身がこういう人になワたいと思っている人問像と では.かなりのくいちがいが生じていることが明らかになったわけである。

(14)

暮      約

 本研究は家庭生活,学校生活、社会生活に関する11項目から成る質問紙を用い.いわゆる「へき 地」における中学生と親の生活意識を比較・検討しIその特徴を明らかにすることを日的としておこ なわれた。調査対象は奈良県吉野郡上北山村 上北山中学校生徒82名とその両親153名である。

 得られた主な結果を要約すれば次のとおりである。

 ①理想の父親像として.中学生は家庭的な父親をあげているのに対し.親は仕事に専念する父親   をあげていてI両者の間には著しい差異が認められれ

 ②理想の母親像としては.中学生も親も「家庭生活を何よワ大切にする倒」をあげている。

 ③子どもが将来親にしてあげたいと思っていることと.親が子どもにしてほしいと思っているこ   ととを比較すると.「親に心配かけないようにする」ということでは一致しているが、経済的扶   養については.両者の間に顕著な相違が見られた。

 ④子どもが学校で得たいと思っているのは.主として「心をうちあけて話せる友人や教師」であ   るのに対し,親はわが子が学校で「教養」を身につけることを期待している。

 ⑤中学生も親も地域への愛着度はかなワ高い。その理由は自然環境のよさと人情のあつさにある   ように思われる。しかし、生活の不便さや高物価,つき合いのわずらわしさなどは.共通して地   城への不満となっている。

 ⑥この地に永住を希望する者の割合は.中学生より親に多かった。また女子中学生より男子中学   生のほうに移住希望者が有意に多かった。

 ⑦ 現代のE1本社会への不満は、中学生では「正義のとおらぬこと」や「貧富の差があること」に   あるが.親では「国民の意見の分裂」や「まじめな老が報われないこと」に向けられている。

 ⑧中学生も親も,生活態度として.「金や名誉を考えずに自分の趣味にあった暮し方」をするこ   とや、「世の中の不正と戦い.清く正しく生きること」をあげているが.「その日.その日をの   んきに暮す」という者は中学生よりも親に多く.男子中学生よワ女子中学生に多い。

 ⑨中学生は親しい友人や仲間といる時やIスポーツや趣味にうちこんでいる時に生きがいを感じ   ると答えたのに対し.親は「仕事に打ちこんでいる時」.「家族といる時」をあげている。また   子ども自身が将来自分がなワたいと願っているものと.親が子どもに期待する人間像とでは.両   者に大きなくいちがいが見られた。

用   文   献

Edwards.A.L. 1950 Experimenta1design in psycho−ogi ca−research.

      New York:Rinehart.

藤野武 岡路市部他 1958 僻地児童の人格形式(第3報) 僻地紀要第10号.

橋本重治 金井達蔵 1971 新指導要録の解説 東京 図書文化杜.

北海道教育大学教育心理学教室 1967 僻地社会の変動と児童生徒の人格発達 一教育的環境条件      の改善変化を中心として一

一7τ一

(15)

久世故雌 過疎研究グループ 1973 いわゆる過疎地域の問題(1O) 一離村者の追跡調査を通し      て(その1)一 日本教育心理学会第15回総会発表論文集 244−245.

宮本実 1953僻地単級児童の知能に関する・一考察 僻地紀要第1号.

永田忠夫.過疎研究グループ 1971 いわゆる過疎地域の問題  一中学生に対する質問紙調査      (その1)一  日本教育心理学会第13回総会発表論文集 384−385.

小川一夫 深田博己 1973 過疎地域の社会心理学的研究(3)  一 離村の状況と生活意識一      日本教育心理学会第15回総会発表論文集 240−241.

大居平一郎 松下覚 1955 僻地の子どもの生活調査 僻地紀要第4号.

総理府青少年対策本部 1971 青少年の連帯感などに関する調査  一調査報告書(速報).

杉村健 今井靖親 広瀬康雄 橋本真也 1974 幼児教育に関する母親の意見 奈良教育大学教育      研究所紀要.第10号.89−96.

滝野千春 1974 へき地における中学生の生活意識(3) 一性差に関する考察一  奈良教育大      学教育研究所紀要 第10号,97−103.

上田敏見 滝野千春 1973 へき地における中学生の生活意識 奈良教育大学教育研究所紀要、第      9号,67−90.

上田敏見.藤田正 1974 へき地における中学生の生活意識(2) 一大都市中学生との比較一      奈良教育大学教育研究所紀要.第10号.73−87.

 <付記〉 本研究をおこなうにあたり.吉野郡上北山村 新谷教育長.富山上北山中学校長.岩本 上北山小学校長,奥野西原小学校長.諸先生方.ならびに福西連合PTA会長のお世話になりました。

また、結果の処理に際しては.本学心理学専攻生の協力を得ました。厚く感謝します。なお.本研究 の資料蒐集と並行して,教育相談(20件).教師との懇談会(3回)、および教育講漬(2回)を おこなったことを付記いたします。

参照

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