奈良教育大学学術リポジトリNEAR
へき地における中学生の生活意識
著者 上田 敏見, 滝野 千春
雑誌名 奈良教育大学教育研究所紀要
巻 9
ページ 67‑90
発行年 1973‑03‑10
その他のタイトル A study of High School Pupils' View of Life in Remote Mountain Villages
URL http://hdl.handle.net/10105/6280
へき地における中学生の生活意識*
上 田 敏 見 滝 野 千 春**
(心理学教室)
工 問 題
いわゆる「へき地」の児童・青年に関する心理学的研究は今日までかなり多数報告されているが,
特におびただしい数のへき地中・中学校をかかえている北海道では,1953年ごろから北海道教育 大学教育心理学研究室を中心とした精力的な研究成果が相次いで発表されて来た(たとえば,宮本,
1953;大居・松下,1955;藤野・岡路他.1958)。その他の府県における同様な研究も 1950年代後半から次第に増加し,当初多数を占めていた知能・学力に関するへき地性の分析から,
進んでパースナリティの特質を明らかにしようとするものが目立って来たように思われる。(たとえ ば,宮臥1958;南条・木札1967;北海道教育大学教育心理学教亀1967)。
そこでわれわれは,奈良県南部の山間へき地の小・中学生について.その生活意識・学習動機・興 味・学級適応度などに関する心理学的詞査を試みたが,ここに報告するのはその一部,すなわち.中 学生の生活意識に関する調査結果である。1970年代の開幕にあたり,総理府青少年対策本部は現 代青少年の意識の特質を明らかにするため「青少年の連帯感などに関する調査」を全国的規模で実施 したが,ここで用いられた質問項目中の一部(30問)を用いて,へき地の中学生と大都市(大阪市)
の中学生の生活意識を比較検討し.へき地中学生のパースナリティの特質の一端を明ちかにすること が本研究の目的である。
Ⅱ 方 法
表2に示す調査用紙を用い,調査員が1問ずっ読み上げ反応を求めた。調査は1972年10月中 旬.クラス単位で実施された。調査対象は奈良県吉野郡十津川村(上野地中学校1・2・3年も 小 原中学校1・2年生,西川中学校1・2年生)および同郡下北山村(下北山中学校1・3年生)の中 学生を含む「へき地群」と,大阪市立R中学校1・2・3年生(各学年2クラスずつ)から成る「都 市群」で,その学年札 性別構成は表1の通りであった。なお,調査員として調査実施に当ったのは,
大学の心理学教官3名,心理学専攻4回生3名であった。調査項目は「青少年の連帯感などに関する 調査」中の家庭・学校・社会・友人・生活態度などの質問項目から中学生用として選んだ30項目で,
無記名調査の方式を採用した。
* A study of HighSchooI Pupils.View of Lifein RemoteMountain
Villages
*・ToshimiUeda and Chiharu Takino(Department of Psychology.Nara
University of Education.Nara)
−67−
表1 調査対象
へ き 地 群 都 市 群 学 年 男 女 計 男 女 計 中 1 9 6 9 4 1 9 0 4 1 3 5 7 6 中 2 5 8 6 5 1 2 3 3 7 3 6 7 3 中 3 3 9 2 9 6 8 4 3 3 1 7 4 合 計 1 9 3 1 8 8 3 8 1 1 2 1 1 0 2 2 2 3
図1 調査対象校の位置
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0上野地中・中
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一ノ
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小村二
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0西川一小 0西川中
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0/・桑原小
ヽヽ_
′ ヽ 2
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・
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〜 r J l ヽ
︑ し
︑ .し .
′ ..
(注) 本号の他の論文(へぎ 地研究)に関連する小・
中学校の位置も併記した。
なお:比較のため奈良市 も示した。
「 享
表 2 調査用紙
中 学 生 に 関 す る 調 査
この調査は,皆さんがどのような意見をもち,どのような問顧をかかえているかということに ついて,たいせつな資料となるものです。ご協力ください。答えていただいたことは.すべてパ
ーセソトに集計され,個人の名前がでたり,その他ごめいわくをかけることは絶対にありません。
ですから,ほんとうに思っているとおり,正直に答えてください。
(答え方……自分にあてはまるものに○をつける。)
<回答者> 中学校 年 組() 男・女 1.あなたはあなたの家庭について悩みや心配ごとがありますか。
ィ,大いにある ロ,あ る ハ,あまりない こ,ぜんぜんない 2.(上の答えがィ,またはPの場合.次に答えてください。 )
それはどんなことですか。あてはまると思うものをいくつでもあげてください。
ィ,収入が少ない P,家の職業がいやだ ハ.家庭内で争いごとがある こ,親の愛情が足りない ホ,親が自分を理解しない へ,病人がいる
ト,きょうだいと気が合わない チ,家のまわりの環境がわるい り,家がせますぎる ヌ.ただなんとなく ル,その他 3.あなたはお父さんとよく話しをするほうですか。
ィ,ひじェうによく話すほうだ p,話すほうだ ハ,あまり話さないほうだ こ,ぜんぜん話さないほうだ ホ,父はいない
4.(上の答えがハ,またはニ,の場合)それはどういう理由で話さないのですか,次の中から いくつでもあげてください。
ィ,はずかしい P.わかってもらえない ハ,たよりにならない こ,すぐおこる ホ,うるさがる へ,話すことがない ト.話す機会がない
5.あなたはお母さんとよく話しをするほうですか。
ィ,ひじょうによく話すほうだ ロ,話すほうだ ハ,あまり話さないほうだ こ,ぜんぜん話さないほうだ ホ.母はいない
6.(上の答がハ,またはこ,の場合)それはどういう理由で話さないのですか,次の中からい くつでもあげてください。
ィ,はずかしい ロ,わかってもらえない ハ,たよ′りにならない
二,すぐおこる ホ,うるさがる へ,話すことがない ト.話す機会がない 7.あなたは父親としてはどういう人が望ましいと思いますか,ひとつだけあげてください。
ィ,仕事や社会のことに専念する父
ロ,どちらかといえば仕事よりも家庭生活を大切にする父 ハ,どちらかといえば家庭生活よりも仕事を大切にする父.
ニ,家庭生活を何よりも大切にする父
8.それでは,母親として望ましいのは次の中のどれですか。
ィ,どちらかといえば家庭のことに専念する母
ロ,どちらかといえば職業や社会のことにも目を向ける母
9.さて,あなたは今,親にしてあげたいと思うこととして.どんなことがありますか。次の中 からいくつでもあげてください。
ィ.経済的に助ける ロ,立派な人になって親を喜ばせる ハ,親の気拝を理解する こ,親に心配をかけない ホ,別にしてあげたいことはない
10.老後の親をやしなうことについて.あなたの考えにいちばん近いものをひとつだけあげてく ださい。
ィ,どんなことをしても扶養する ロ.自分の生活力に応じて扶養する ハ,親は自分自身の力や公的保障で生活するべきだ
わからない
−69−
11.あなたが,これまでにならった先生や今ならっている先生の中で,個人的なことまで打ちあ けて話せる先生がいますか。
ィ.い る ロ,いない
12.あなたは学校で次のうちどういうものを得ればよいと思いますか。次の中からいくつでもあ げてください。
ィ.職業に役立つ技術や知識 p,教養やものの考え方
ハ,仕事や結婚のための学歴 こ.心を打ちあげて話せる友人や先生 ホ,この中にはない へ,得たいものはない
B.あなたは心を打ちあけて話せる友人がいますか。
ィ.い る ロ.いない
14.(上の答えがイの場合)その友人とあなたとは,親やきェうだい以上に心がかよいあってい ますか。
ィ,かよいあっている ロ.それほどでもない ハ.同じくらい 15.あなたは,あなたの今住んでいる村(町)が好きですか。
ィ.好きである ロ,まあ好きである ハ.あまり好きでない こ,きらいである ホ,何とも思わない
16.(上の答えがィ,またはロ.の場合)それではどういう点が好きなのですか。次の中からい くつでもあげてください。
ィ,生活が便利である ロ,人の気拝があたたかい ハ.自由がある こ.のんびりしている ホ,活気がある へ,よい学校や就職口がある
ト.空気がよいなど生活環境がよい チ,この中にはない
打.(15の答えがハ.またはこ,の場合)それではどういう点がいやなのですか。次の中からい くつでもあげてください。
ィ.生活がふべんである P,人の気樽がっめたい
ハ,まわりの人々の口がうるさい こ.さわがしくておちつかない ホ,活気がない へ,よい学校や就職口がない ト.空気が惑いなど生活環境が悪い
チ.この中にはない
18.あなたは将来もずっと今のところに住んでいたいと思いますか。
ィ,住んでいたい ロ.移りたい ハ,どちらでもよい
β.最近の社会のできごとについてあなたの考え方に,いちばん強い影響を与えたと思われるの は次の中のどれですか。ひとつだけあげてください。
ィ,テレビ,ラジオの内容 ロ,新聞雑誌の内容 ハ.単行本の内容 こ,学校の先生の意見 ホ.先ばいの意見 へ,友人の意見
ト.親・きようだい・親るいの者の意見 チ.組織や団体の意見 リ.文化大 学者の意見 ヌ,この中にはない
狐あなたは今の日本の社会についてあきたらないと感じていることがありますか。
ィ,大いにある P,少しある ハ.あまりない ニ.ぜんぜんない
2L(上の答えがィ,またはロ,の場合)それでは.それは次の中のどれですか。いくつでもあ げてください。
ィ,社会のしくみがきまりきっている ロ.若者の意見が反映されない ハ,正しいと思うことが通らない こ,国民の意見がまとまっていない ホ.貧富の差がありすぎる へ.まじめなものがむくわれない
卜一 風俗が乱れている チ.この中にはない 怒.あなたは日の丸の旗をみてどう思いますか。ひとつだけあげてください。
ィ,親しみを感じる P,日本の国旗として愛着を感じる
ハ,誇らしいと感じる こ.反発を感じる ホ.なんとも感じない
3.人のくらし方について,いろいろな考え方がありますが.次のものの中で.あなたはどれを えらびますか。いちばんよいと思うものをひとつあげてください。
ィ,いっしょうけんめい働き倹約して金持ちになる ロ,まじめに勉強して名をあげる ハ.金や名誉を考えずに.自分の趣味にあったくらし方をする
−70−
__, ご
こ.その日その日をのんきに.くよくよしないでくらす
ホ,世の中の正しくないことを押しのけて,どこまでも清く正しくくらす へ,自分一身のことを考えずに,国家社会のためにすべてをささげてくらす 別.あなたは今の自分の生活に満足ですか。不満足ですか。
ィ,満足である P.まあ満足である ハ.やや不満である こ,不満である 巧.あなたは悩みや心配ごとがありますか。次の中からいくつでもあげてください。
ィ,勉強や進学のこと ロ,就職のこと ′、.仕事のこと こ,家族のこと ホ.友人や仲間のこと へ.異性のこと ト,お金のこと チ,政治や社会のこと り,性格のこと ヌ,健康のこと ル.容姿のこと オ,この中にはない り,悩みや心配ごとはない
あ.あなたは悩みや心配ごとがあったときにはだれに相談しますか。あてはまるものをいくつで もあげてください。
ィ,父 ロ,母 ハ,きょうだい こ.祖父母または親るいの老 ホ,先生 へ,近所や学校の友だち ト,学校の先ばい
チ,団体.グループなどの仲間 リ,この中にはない
野.あなたはどんなときに生きがいを感じますか。次の中からあてはまると思うものをいくつで もあげてください。
ィ.社会のために役立つことをしているとき P.仕事にうちこんでいるとき ハ,勉弓如こ打ちこんでいるとき こ,スポーツや趣味に打ちこんでいるとき ホ.家族といるとき へ.友人や仲間といるとき ト,親しい異性といるとき チ.他人にわずらわされず,ひとりでいるとき り.この中にはない
凛.あなたはまちの中や′ミス(電車)の中のように大ぜいの人のいるところで,暴力をふるった り,よっばらって他人にめいわくをかけたりしている人がいるときどうしますか。ひとつだけ あげてください。
ィ,車掌や警察官に連絡する P,やめさせるようにまわりの人によびかける ハ,注意してやめさせるようにする こ,力づくでやめさせる
ホ,なり行きをみている へ,危険にまきこまれないように退避する カ.あなたは.今適っている学校の生活で何か希望することがありますか。
ィ.大いにある ロ.少しある ハ,な い
部.(上の答えが.ィ,またはP,の場合)それでは希望していることは次のうちどれですか。
いくつでもあげてください。
ィ,施設のこと ロ.友人のこと ハ,先生のこと
こ.授業のし方や授業科目などのこと ホ.クラブやサークル活動のこと へ,この中にはない
Ⅲ 結 果
問1から問30にいたる各問に対する反応を地域別・学年別・男女別に示し,へき地群全体と都市 群全体について有意差の有無を示したのが附表,両群間に有意差(両側検定による5彩水準以下)が 認められた項目のみを問題番号順に表示したものが表3である。
表3によれば,「家庭についての悩みや心配ごと」のある老(へき地群の26.5乳 都市群の29.
6%)のあげた内容の中,「収入が少ない」はへき地群に多く,「病人がいる」も同様な差がみ られた。父親と話さない理由としては.「たよりにならない」が都市群に多く,「話すことがない」
は逆にへき地に多い。望ましい父親像として「家庭生活を何よりも大切にする父」を選択する率はヘ
ー71−
表3 へき地群と都市群の間の有意差検定の結果
問題番号
2 ①A>B 4 O A<B 7 ㊤A>8
㊦A>B
㊦A> B
9 ㊦A>B ㊥A>B O A>B 10 ㊥A<8
12 ①A> 8 15 ㊦A> B 16 ⑰A< B
㊥A<B 17 ①Al>B
①A<B 18 ㊥A<8 20 ①A<B
O A<B ㊤A<B ㊧A<B
㊥A> B O A> B ㊤A> B
①A>B ㊨A<B
㊤A<8 ⑳A>B ㊦A>B
㊦A>B O A>B O A>B 21 ㊤A>8
23 ㊤A<B ⑳A>B 24 ①A>8
25 ㊥A>8 ㊦A<B ⑨A>B 26 ⑤A> B ㊦A<B ①A> B 27 ㊨A>B
28 ⑰A>B ㊥A>B ⑳A<B ㊦A<B 29 O A> 8
30 ⑰A<B ㊦A>B
(注) Aはへき地群,Bは都市群,
不等号は差の方向を示す。
有意水準は5%以下。
−
き地に高く,親にしてあげたいこととしてへぎ地群が有意に高率を示したのは「経済的に助ける」
「立派な人になって親を喜ばせる」「親の気持を理解する」であった。また,老後の親の扶養につい ては,都市群が「自分の生活力に応じて扶養する」をより多く選択し,附表にみられるように「どん なことをしてでも扶養する」はへぎ地群に多いようである。学校で得たいものとしてへき地群は「職 業に役立つ技術や知識」を都市群よりもはるかに重視すること,現居住地への愛着はへき地群に断然 高く,「あまり好きでない」「きらいである」「何とも思わない」は都市群に高率であることが明ら かである。地域への愛着の理由としてへき地群が都市群より高率で選択しているのは,「人の気拝が あたたかい」「自由がある」「のんびりしている」「空気がよいなど生活環境がよい」であり,逆に 都市群がより多く選択したのは「生活が便利である」「活気がある」などであった。地域に対する愛 着が生じない理由として都市群が有意に高く選択したのは,「さわがしくておちつかない」「空気が 憩いなど生活環境が悪い」で,へき地群では「生活がふべん」「活気がない」「よい学校や就職口が ない」などをより多くあげている。将来移住したいと考えるものは都市群に多く,「どちらでもよい」
と思うものはへき地群に多くみられた。
次に,現代日本の社会について大いに不満を感じているものは都市群に多く,不満が「あまりない」
はへき地に高率であった。その不満の内容としてあげられた8項目中.有意の群差がみられたのは
「国民の意見がまとまっていない」で,へき地群においてより高率が示された。生活態度における群 差として目をひくのは,「その日その日をのんきに.くよくよしないでくらす」が都市群に著しく.
「世の中の正しくないことを押しのけて,どこまでも清く正しくくらす」がへき地群に多いという事 実である。しかも,現在の生活への満足度をみると,「満足である」はへき地群に多いのである。さ らに生きがいを感じるのは「家族といるとき」であると答えるものがへき地群において断然多いこと が明らかとなった。
悩みや心配ごとに関してへき地群に多くみられたのは,「就職のこと」「性格のこと」,逆に都市 群に多いのは「異性のこと」であり,その相談相手として.へき地群では「父」と「学校の先ばい」
が,都市群においては「近所や学板の友だち」がより多く選ばれていることが明らかとなった。
社会的態度のひとつとして暴力に対する態度をみてみると.都市群に比較してへき地群に有意に多 いのは「車掌や警察官に連絡する」「やめさせるようにまわりの人によびかける」であり,反対に都 市群がより高率を示したのは「なり行きをみている」「危険にまきこまれないように退避する」であ った。
最後に,学校生活に対する希望における両群差をみると,希望することが「ない」はへき地群によ り多く,その内容として都市群がより高率を示したのは「施設のこと」,へぎ地群がより高率を示し たのは「クラブやサークル活動のこと」であった。
上述以外の項目においては,へき地・都市両群間に有意の差異をみとめることができなかった。附 表について有意水準には達しなかったが相当顕著な群差傾向のみとめられたものを指摘すれば,家庭 の悩みの内容の「親が自分を理解しない」は都市群に高い傾向(37.9%−24.8珍).母と対話し ない理由としての「話すことがない」はへき地群に高い傾向(63.0珍−51.2珍),老後の親を
「どんなことをしてでも扶養する」はへき地群に高い傾向(37.0節−28.39乙).心を打ちあけて
・一丁3 一一
話せる友人が「いない」はへき地群に高い傾向(54.6珍−46.29ら),その友人と親やぎょうだい 以上に心が「かよいあっている」は都市群に高い傾向(23.3健一15.29も).「勉強や進学」の悩 みは都市群に著しい傾向(67.3形−58.8箆),悩みを「母」に相談する率はへき地帯に高い傾向
(52.0診−42.69も)などである。
Ⅳ 考 察
表3および附表に示した結果にもとづき,へき地群と都市群の差異を中心に若干の考察を試みてお こう。先ず家族・家庭生活の領域では.へき地群は都市群に比して「収入が少ない」「病人がいる」
との家族の悩みを多く示している。これは大都市にみられるような高収入の職種がなく,また医療機 関や医療費の不十分なへき地事情を反映するものであろうか,と考えられる。父となんらかの程度の 対話をするものはへき地群に多く(58悌),総理府による全国調査(青少年の連帯感などに関する 調査,1970年以下,全国調査という)の469乙より高率で,都市群の509右よりも高いが有意差 に到達しなかった。母との対話率は父とのそれより高率(へき地群一一82.2%:都市群79.3%)
で全国調査の結果とほぼ一致しているから,一般的にいってへき地中学生の親子関係は密度の濃いも のといえそうである。「家庭生活を何よりも大切にする父」を望ましいと考える傾向,親の気拝を理 解し経済的援助や立派な人になることを通じて親につくす気拝が著しいこと,老後の親をどんなこと をしてでも扶養しようとする傾向,これらは一貫してへき地の親和にみちた緊密な親子関係を示すも のといえよう。しかし,それは同時に,青年期の自我の開発を遅滞させる危険性をはらみ.森ら(1 967)の指摘した全般的なパースナリティの未成熟をもたらす−凶ともなりかねないと考えられる。
学校生活・友人関係についてみると,学校で得たいものとしてはきわめて現実的な「職業に役立つ 技術や知識」をあげるものが都市群より多く,「教養やものの考え方」.「心を打ちあけて話せる友 人や先生」を求める率が都市群より低いことが注目される。また,都市群では心のかよいあっている 友人をもっ傾向が比較的強いのに対し,へき地群では親密な友人を欠く傾向が著しい事実,悩みがあ る場合前者は友人に相談するのに後者は父・学校の先ばいあるいは母により多く相談すること,これ らはいずれも社会的情緒的側面の未成熟を反映するものと解釈でき,宮脇(1958)がへき地児に 見出した結果と一致するものである。なお.現在の生活に「満足である」との反応が多く.「家族と いるとき」に生きがいを感じ.現代社会への不満も「あまりない」というへき地中学生の反応傾向も.
この解釈を裏付けるものといえるであろう。したがって,パースナリティのこの側面に対する教育指 導が今後のへき地教育の1焦点とされねばならない。
次に地域社会への愛着度はへき地群に高く.「人の気拝のあたたかさ」や「自由」.「のどかさ」
や清浄な空気が理由として多く呈出されている。都市群では地域社会の喧騒や大気汚染の故に愛着が 稀薄であり.将来どこかへ移りたいと考えるものが多い。移住について,へき地群では「どちらでも
よい」と中性的な態度を表明するものが都市群より多い(48%−31%)し,しかも将来も「住ん でいたい」(19悌)と合わせると約3分の2のものが移住の積極的意志をもたないことになる。こ の結果は地域への愛着の深さをうかがわせるとともに.新しい環境への適応に漠然とした不安(それ は一種の分離不安と考えてよい)を覚える傾向をも示唆しているといえないだろうか。
−7411
暴力に対する態度や生活態度におけるへき地群一都市群の対比はきわめて鮮烈であるといえる。回 答の中,「なり行きをみている」「退避する」の合計が都市群では679もに達した(へき地群44珍)
という事実は.暴力行為に対するかれらの日和見主義・傍観的消極性・ずるさを示し,大都市生活に 普如こみられる他人との連帯性の明白な欠如を反映するものといえるであろう。これに対して,へき 地群においては.然るべき的係者と協力して制止する態度が都市に比べて著しくみとめられる(41 悌−19悌)。これは,おそらく,地域社会におけるあたたかい対人接触の経験から生じた人間性へ の純粋な信頼感・他人への連帯の強さを如実に示すものと解される。両群の生活態度もまことに対照 的で,へき地群には「清く正しくくらす」が都市群より多く.「その日その日をのんきに,くよくよ しないでくらす」は逆に都市群により多くみとめられたのである。全体的には「自分の趣味にあった くらし方」をするものが一ばん高率(43節−459も)を占めているが,前述の全国調査における5 49もより低いこと,「倹約して金持ちになる」(へき地11.5%一都市10.3箆)は全国調査におけ る6.6珍よりやや高い傾向を示したことなどが興味深い。上記のへぎ地群・都市群の差異は,へき地 人の潔癖と純朴さと都市人の現実享楽主義を反映するものであって 都市的無連帯性と必ずしも無縁 のものとは考えられないのである。
なお,紙数に限度があるので今回はふれなかったが,へき地群・都市群のそれぞれにおける性差を 検討すれば興味ある結果が得られ,両群間の差異をより明確に把握できるのではないかと考えられる が.それは今後の課題としておくことにしたい。
Ⅴ 要 約
30項目から成る質問紙を用い.へき地中学生および都市中学生の生活意識を比較しへき地中学生 のパースナリティの特質を明らかにする試みがなされた。破験者は吉野郡十津川札 同下北山村の中 学生381名および大阪市内の中学生223名.調査時軌は1972年10月中旬である。
得られた主な結果を要約すれば次の通りである。
①都市中学生に比べて,へき地中学生は「収入が少ない」,「病人がいる」との家族の悩みをより多 くもちながらも,密度の濃い親子関係を享受し,家庭的な父を望ましいと考え,老後の親の扶養を含め て親につくそうとする態度がより顕著であった。
②都市中学生に比べて,へき地中学生は「職業に役立つ技術や知識」をより多く学校で得たいと考え ており.友人関係においても.かなり著しい差異がみとめられた。
③都市中学生に比べて,へき地中学生の地域社会への愛着度は有意に高いことが明らかになった。
④都市中学生に比べて.へき地中学生の生活態度は著しく潔癖であり,他人との連帯感がいっそう強 い傾向がみとめられた。
⑤都市中学生に比べて,へき地中学生は現状の生活への満足度がより大きく,「家族といるとき」に 生きがいを感じることが多いけれども,就職や性格に関する悩みは都市中学生より著しい。
参 考 文 献
藤野武・岡路市郎・他 1958 僻地児童の人格形成(第3報)僻研紀要第10号
1175−
北海道教育大学教育心理学教室 1967 僻地社会の変動と児童生徒の人格発達−教育的環境 条件の改善変化を中心として−
官本実 1953 僻地単級児童の知能に関する一考察 僻研紀要第1号
宮脇二郎 1958 僻地児童のパーソナリティの研究−P.F.T.の結果を中心として−
教心研,6,13−20.
森美智子・武川圭弘・山松質文 1967 僻地児と施設児の比較−②性格(ロールシャッハテ ストによる) 日本心理学会第31回大会発表論文集 p.216
南条正明・木村耕一1967 僻地生徒の人格像と背景−その内部的関連性と綜合的理解 日本心理学会第31回大会発表論文集 p.217
大居平一郎・松下覚 1955 僻地の子どもの生活調査 僻研紀要第4号
総理府青少年対策本部1971青少年の連帯感などに関する調査−調査報告書(速報)
(付記:本研究の遂行に当り格別の御協力を頂いた吉野郡十津川村教育委員会,同村立上野地中学 乾 小原中学校.西川中学校,下北山村教育委員会,同村立下北山中学校および大阪市立R中学校に 対し深い感謝を捧げます。なお,結果の整理に捺し本学心理学専攻生の協力を得た。厚く感謝します。)
附表 地域別,学年別,男女別の回答選択率く%)
〔 問 1 〕 N イ ロ バ ニ 無 答
( 中 1 1 9 0 1 .6 1 9 .5 6 5 .3 1 3 .7 − へ 中 2 1 2 3 9 .8 1 8 .7 4 6 .3 2 4 .4 0 .8 き 中 3 6 8 4 .4 3 3 .8 5 5 .9 5 .9 − 地 男 1 9 3 3 .6 2 0 .2 5 7 .5 1 8 .1 0 .5 群 女 1 8 8 5 .9 2 3 .4 5 7 、4 1 3 .3 −
) 全 体 3 8 1 4 .7 2 1 .8 5 7 .5 1 5 .7 0 .3 中 1 7 6 2 .6 1 3 .2 6 3 .2 2 1 .1 −
(
都 中 2 7 3
中 3 7 4 市
男 1 2 1 群
女 1 0 2 ヽ_/
4 .1 3 2 .9 4 2 .5 2 0 .5 − 9 .5 2 7 .0 5 2 .7 1 0 .8 − 4 .1 2 4 .0 5 1 .2 2 0 .7 − 6 .9 2 4 .5 5 4 .9 1 3 .7 − 全 体 2 2 3 5 .4 2 4 .2 5 2 .9 1 7 .5 − 検 定
2〕 Nイ ロ バ ホ へ ト チ リ ヌ ル 即しT. 中1 4020.0 7.5 30.0 5.0 10.0 20.0 7.5 2.5 10.0 22.5 22.5 157.5 中2 3531.4 14.3 34.3 25.7 22.9 25.7 20.0 11.4 31.4 11.4 22.9 251.4 中3 2619.2 3.8 7.7 3.8 42.3 7.7 7.7 7.7 19.2 7.4 26.9 153.7 男 4617.4 10.9 21.7 8.7 21.7 19.6 13.0 8.7 15.2 13.0 32.6 182.5 女 5529.1 7.3 29.114.5 23.6 18.2 10.9 5.5 23.6 16.4 16.4 194.6 全体 10123.8 8.9 25.7 11.9 24.8 18.811.9 6.9 19.8 14.9 23.8 191.2 中1 128.3 8.3 41.7 0 25.0 0 16.7 8.3 25.0 16.7 8.3 158.3 中2 273.7 3.7 18.5 7.4 44.4 0 14.8 18.5 22.2 11.1 22.2 166.5 中3 273.7 7.4 25.9 3.7 37.0 7.4 14.8 14.8 29.6 11.1 14.8 170.2 男 345.9 0 26.5 5.9 29.4 0 11.8 5.9 20.6 20.6 14.7 141.3 女 323.112.5 25.0 3.1 46.9 6.3 18.8 25.0 31.3 3.118.8 193.9 全体 664.5 6.1 25.8 4.5 37.9 3.0 15.2 15.2 25.8 12.1 16.7 166.8 検定*** ** 〔問3〕N イ ロ バ ホ 無答 ( 中1190 9.5 58.4 27.9 1.1 3.2 へ 中2123 9.8 35.0 46.3 5.7 2.4 0.8 き 中368 10.3 45.6 32.4 1.5 8.8 1.5 地 男193 9.3 55.4 29.5 1.0 3.6 1.0 群 女188 10.1 41.5 39.9 4.3 4.3 ) 全体381 9.7 48.6 34.6 2.6 3.9 0.5 中176 10.5 51.3 32.9 0 5.3
絹 73 4.1 43. 8 41. 1 5.5 4.1 1. 4
74 10.8 29.7 48.6 6.8 4.1 121 6.6 ▼48.8 34.7 5.8 4.1 102 10.8 33.3 48.0 2.0 4.9 1.0 全体223 8.5 41.7 40.8 4.0 4.5 0.4 検定
・l・・ニ ー
︵ へ き 地 群︶ ︵都 市 群 ︶
〔問 4 〕 N イ ロ バ ホ へ ト M .T .
( 中 1 5 5 5 .5 1 2 .7 0 7 .3 7 .3 6 7 .3 3 2 .7 1 3 2 .8 へ 中 2 6 4 1 0 .9 1 0 .9 1 .6 9 .4 6 .3 7 6 .6 1 7 .2 1 3 2 .9 き 中 3 2 3 1 7 .4 4 .3 0 4 .3 8 .7 7 8 .3 2 6 、1 1 3 9 .1 地 男 5 9 8 .5 6 .8 0 6 .8 1 0 .2 7 2 .9 1 6 .9 1 2 2 .1 群 女 8 3 1 0 .8 1 3 .3 1 .2 8 .4 4 .8 7 3 .5 3 0 .1 1 4 2 .1
) 全 体 1 4 2 9 .9 1 0 .6 0 .7 7 .7 7 .0 7 3 .2 2 4 .6 1 3 3 .7 中 1 2 5 1 2 .0 4 .0 4 .0 4 .0 0 6 4 .0 1 6 .0 1 0 4 .0 (
中 2 3 4 都
中 3 4 1 市
男 4 9 群
女 5 1 ヽ.′′
8 .8 1 7 .6 8 .8 1 1 .8 1 1 .8 4 1 .2 3 8 .2 1 3 8 .2 7 .3 1 9 .5 4 .9 1 7 .1 2 .4 5 3 .7 1 4 .6 1 1 9 .5 1 0 .2 1 0 .2 4 .1 8 .2 4 .1 5 3 .1 3 0 .6 1 2 0 .5 7 .8 1 9 .6 7 .8 1 5 .7 5 .9 5 1 .0 1 5 .7 1 2 3 .5 全 体 1 0 0 9 .0 1 5 .0 6 .0 1 2 .0 5 .0 5 2 .0 2 3 .0 1 2 2 .0
検 定 * * * *
〔間5〕 N
( 中1190
イ ロ ハ
37.9 49.5 6.3 0
へ 中 2 1 2 3 I 2 5 .2 5 1 .2 1 5 .4 4 .1 2.4 1.6 き 中 3 6 8 2 5.0 5 2 .9 1 3 .2 1.5 4.4 2.9 地 男 1 9 3 2 3.3 5 7 .0 1 0 .9 0 .5 3 .6 4.7 群 女 1 8 8 3 9 .9 4 4 .1 1 0 .1 2 .7 2 .1 1.1
) 全体 3 8 1 3 1.5 5 0 .7 1 0 .5 1.6 2.9 2.9 中 1 7 6 4 0 .8 4 7 .4 9 .2 1.3 0 1.3 (
中 2 7 3 都
中 3 7 4 市
男 1 2 1 群
女 1 0 2 ヽ_/
2 4 .7 5 6 .2 1 6 .4 1.4 1 .4
3 2.4 3 6 .5 2 1.6 5 .4 1.5 2.7 2 3.1 5 0 .4 1 8 .2 5 .0 0 .8 2 .5 4 4 .1 4 2 .2 1 2 .7 0 1 .0
全体 2 2 3 3 2.7 4 6 .6 1 5 .7 2 .7 0 .9 1.3 検定