(東女医大誌 第46巻 第5号頁 358〜378昭和51年5月)
〔特別掲載〕
ヒト原発性肝癌におけるα一fctoprotein
産生細胞についての考察
東京女子医科.大学消化器病センター外科 天 羽 達
フ7 ・でrン タ ツ
(.主任:遠藤光夫教授)
郎
オ
(受付 昭和51年3月gH)
AStudy ofα・Fetopmtein・producing Cell in Human Primary Hepatoma
Tatsuo AMO, MD.
Institute of Gastroentcrology(D量rcctor=Prof, Mitsuo ENDO)
Tokyo Women s Medical College, Tokyo
In order to investigatc on what kind of cells.producc眠.艶toprotein(AFP), histopathological study was made on the tissuc collcerncd in 13 cases with primary hepatoma, determining the quantity of AFP in the tissue by radioimmunoassay and immunoHuorescent tcchnique.
1) It has been rcvealed that AFP producing ce】ls played an important role as a constituent of the hepatoma of Grade III in Edmondson,s classi丘cation and that they were rarcly obscrvcd三n those of Grade II or IV. AFP−positive cells could not be distinguished optico−microscopically仕om AFP negative cells. It was considered, however, that the production of AFP was made at some stage of turnor cells prol漉ration, and that it might be most actively made at the stage in which the cells with relativcly Iarge protoplasm and deep stained eosin were fbund.
2) The production ofAFP was also secn in non.tumor cells, and it might be due to dcgenerating cells.
3) Thcre werc both Iower and higher AFP concentrations in thc tissuc than in the blood, and R)rmer was seen in the tissue witll high producibility of AFP, while the lattcr in low pl・oducibility. This phcno−
menoll was considercd to be due to the魚ct that situation ol AFP accumulation in the blood rclated the AFP・producing ability.
目 次
1.緒言 H.対象 皿.方法
1)組織内α一fetoprotein(AFP)含有量1の測定
2) 蛍光抗体法によるAFP陽性細胞の検査 IV.成績
1)radioimmunoassay(RI)法による各種疾患の.血 清AFP値
2)組織内AFP含有、量とその病埋組織所見ならび 一358一
に且uQrescein isothiocyanate(FITC)標識抗 AFP抗体による蛍光抗体法所見
3) 小括
i)組織内AFP含有量と組織所見の関係につい て
ii)組織内AFP含有量と血清AFP濃度との比 較について
iii)FITC標識抗AFP抗体による蛍光抗体法
所見と組織像について4) AFP陽性細胞についての検討 i)腫瘍組織内の多数陽性例 ii)腫瘍組織内の少数陽性例 iii)肝硬変組織内の多数陽性例
iv)肝硬変部における壊死組織内の多数陽性例 v)AFPとimmunoglobulin G(IgG), immuno.
globulin M(IgM)の併存のみられる症例の
吟味
V.考按 w.結語
文献
L 緒 言
血清中に出現する特異物質の証明で癌の診断が 可能であるとすれぽ,これは癌の診断面における 画期的なできごとであると言わねばならない.こ の画期的なできごとである現在の主役がα一feto−
protein(以下AFPと略す)と呼ばれる胎児性蛋
白である.
1944年Pedersen1)は,超遠心法で牛の胎児血 清中に成熟牛にはみられない蛋白が存在すること を発見し,この蛋白をfetuinと名づけた。これが
AFPに関する最初の研究であるが,その後1956
年Bergstrand2)によりヒト胎児にも同様の蛋白が 存在すること,そして口写電気泳動法でalbuminとαrglobulinとの間に泳動されること,また
1966年Gitlin3)によりそれが胎性13週目に最高値となり,生野時にはほとんど消失してしまうこと が確認された.この消失した蛋白4)が成人の病的
状態すなわち原発性肝細胞性肝癌(以下肝癌と 略す)において再び血清中に出現することを見 出し,AFPと肝癌とを結びつけて考えたのは
Abelev, Tatarinovらであるが,1963年Abelevg)は
実験的研究で移植肝癌のマウス血清中にAFPが
出現することを,1964年頃atarinov6)は臨床例で 肝癌患者の血清中にAFPが検出されることを,さらにKithier7)は肝癌患者の病状悪化にともな いAFPが増量:することをつきとめた.その後多 くの研究者8)9)10)11)によりAFPは肝癌以外の疾 患では胎児性癌12),胃癌の肝転移例18)14)などの一 部にしか検出されないことなどがあい次いで証明
され,肝癌におけるAFPの診断的価値がにわか
に注目されるようになった.肝癌における陽性率 は,Ouchterlony法やsingle radial immunodiH「u−sion(SRID)法などの検査では60%〜85%である が,その陽性率は腫瘍の組織形態と関連があり13)
15)〜19),Edmondson20)分類の9rade皿(Ed皿,以 下同様に略す)すなわち低分化型において最も高
く,中分化型のEd H,未分化型のEdIVがこれ に次ぎ,成熟型のEdIでは陽性が見られないと され,またAFP量は腫瘍の増大,病状悪化で増
量するが,これは各個人毎の比較にかぎるもので,異なる症例間ではAFPの量と腫瘍の大小を
論じることはできないとされた.肝癌とAFPがこのような特異的な関係にある ことから,AFPはその測定法の感度さえ敏感に
すれぽ,よりすぐれた臨床的価値が得られるものと期待され,radioimmunoassay(RI)法21)即24)で
AFPの測定が行なわれるようになった.RI法 はSRID法の約200倍の感度21)があり,これを 用いると肝癌においてより高頻度にAFPが検出 されるようになったが,一方,SRID法で検出
されなかった疾患,例えば肝炎,肝硬変23)24)など
にAFPが検出されてしまい,肝癌とのつながり
は単に量的差異ということになってしまった.しかしながらRI法がその敏感さの故にAFP の特異性の意義を生なわせたとはいえ,AFPの
臨床的あるいは学問的価値がなくなったわけではなく,むしろAFPを手がかりとして肝癌と肝
炎.肝硬変との相互関係を新しい側面で考えることができるようになった。すなわち,肝硬変患者 においてRI法で経時的追求を行なえば肝癌の発
生時期を知り得ること,また病理学的にはAFP
一359一表1 組織内AFP含有量:測定ならびに蛍光抗体法を施行した肝癌例
症 例
1 武 ○ 静 ○ 2 中 ○ 忠 ○ 3 望 ○ 亀 ○ 4 古 ○ 栄 ○ 5 河 ○ 安 ○ 6 所 ○ ○ 7 細 ○ 達 ○ 8 松 ○ 恭 ○ 9 佐○○ 達 ○ 10 帆 ○ 達 ○ 11 植 ○ 由 ○ 12 園 ○ 留○○
13 星 ○ 忠 O
性・年令
6 4!
ε 47 δ 68 8 65 3 35 δ 47 8 53 δ 56 ε 52 δ 49.
δ 53 δ 63 δ 68
血清AFP
ng/mi 22,000 48,000 46,000 450,000 18,000 10,800 90,000 348 288 6 18 9
!1
肝 癌 の
肉眼所見
塊 塊 塊 塊
多発結節
塊 塊 塊 塊 塊 び ま ん
塊
孤立結節
肝硬変 の有無
十
十 十 十 十 十
十 十 十
十
組織の 取得一
手 術 剖 検 手 術 手 術 剖 挙 手 術 剖 検 手 術 剖 検 剖 検 剖 帆 手 術 手 術
組 織 内
AFP含有量
測 定 数 20 15 5 5 8 10 9 9 5 5 20 15 13
蛍光抗体 法施行数
5 5 5
.4
11 9 9 2 3 6 7
の産生細胞を調べることにより癌の発生に関する 新しい知見を得る手がか.りができたことである.
AFP産生細胞に関する研究は,わが国でもす
ぐれた研究25)〜30)が行なわれているが,まだヒト 肝癌において直接的にその形態学的特徴をつかん
だ業績は少なく,未解決な点が少なくない.そこ
で著者はAFPを産生する細胞はどのような細胞
であるかを知る目的で,肝癌例について血清中のAFP濃度と肝癌組織の組織AFPを測定すると ともに,肝組織に対してAFPの蛍光抗体直接法 を施行し,肝各部位におけるAFP陽性細胞の観
察ならびにその光顕所見について比較検討を行なった.
II・対 象
対象とした症例は,肝癌例13例で,表1に示したよう に手術例7例,剖検例6例である.
1H・方 法
肝癌例において切除肝ならびに剖検肝から種々の異な る部位で数個から10数個の組織片を採取し,これをさら に3分割し図1に示すように利用した.すなわち図1の
A,B, Cの順に, Aはアセトンドライアイス凍結材料 とし,.Bはホルマリン固定を行ない光顕用の材料とし,
Cは組織中のAFPの測定に用いた.
1) 組織内AFP含有量の測定
AFP測定用の組織は,まず生理食塩水で洗い,血液 成分の除去を行なってから,その重量を正確に測定し
A
↓
アセトンドライアイス凍結
B
ホルマリン固定
K
CAFP測定
、
図1
Bノ B
採取組織片の利用
C
た.ついでそれに生食水を1.Oml〜10.Oml加えてhomo genizeし,3,000 rpm〜12,000 rpmで5分間遠沈した.
それをもう一度遠沈し,上清液のAFPをRI法で測定 した.このときに用いた組織片の重量と加えた生食水の 量,および上述のようにして得られた組織抽出液のAF
P濃度とから,次のような計算式で組織中のAFP推測 絶対値を求めることができた,
AFP推測絶対値(ng/g)
_抽出液のAFP濃度(ng/m1)生食水の量(ml)
組織片の重量(9)
この推測絶対値を組織内AFP含有量とした.
なおRI法にはダイナボット社製の2抗体法によるA Fp測定用キット125を用いた
2) 螢光抗体法によるAFP陽性細胞の検査 一360一
蛍光抗体法にはHuoresce三n is・thiocyanate(FITC)を
標識した抗AFP抗体を用い直接法を行なった.抗AF P抗体は東京大学士科学研究所より提供を受けた抗ヒト AFP馬血清31),および興和株式会社より提供を受けた 抗ヒトAFP兎血清32)33》に,栄研化学株式会社の川島豊 作博士がFITCを標識されたものである.いずれの抗 体もヒトの正常肝組織または血清で吸着処理されたもの である.
蛍光抗体法は図1に示したアセトンドライアイス凍結 組織片およびホルマリン固定の組織片の相接する面A , B について実施した.また蛍光抗体法所見と光顕所見 の比較はB の面から得られた切片に型の如く脱水脱脂 組織処理し,パラフィン包埋後薄切した切片にH−E染 色を行ない対比して検鏡したが,またさらに詳しく知る ために,一度蛍光抗体法で観察し写真撮影が終了した標 本についても,その抗体を洗い落して再びH−E染色を 行なうGitlin34)の方法を行なった.
なお一部の凍結材料は連続切片としFITC標識抗ヒ トImmuno910bulin GおよびM(以下IgG, IgMと略 す)を用いた蛍光抗体直接法を行ない,AFP, IgG, IgM の併存の有無を調べた.
「v・成 績
1)R夏法による各種疾患の血清AFP値 RI法で測定した各種疾患の血清AFP値は図
2のとおりである.良性疾患では肝炎,肝硬変な
どに最高400ng/mlの血清AFPがみられたが,
多くは20ng/ml以下であった.正常人では最高20 u9/m1のものがみられた.肝癌26例では10,000 ng/ml以上のきわめて高いものが最も多く11例に
㎎伽 10・
・●●・・●
潤怐怐怐E
106・ o 曽 . 一 〇 ■ ・ 願 一 一 卿 ■ ・ 曹 冒 冒 冒 一 一 , o . 一 . , ■ . 一
1.0
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o ● ● ● ●●●
肝縞 胴管癌 肝転
サ癌性
胆胆
ケり つ癌・
胃癌 悪そ
y憩他
肝硬変 麗胆
フう炎石
騨炎 鎗尿病
o食モ漢の患他
構・.・
ウ常
図2 RI法による各種疾患の血清AFP値
みられ,ついで20ng/m1以下のきわめて低いもの が8例にみられ,そのほかは3,200ng/mlのもの が1例, 970ng/mlのものが1例, 300ng/ml前
後のものが2例,120n9/mlのものが1例,50
ng/m1近くのものが2例にみられた.すなわち,肝癌では」血清AFP値が極端に高いものと低いも の,それに中間のものがあるわけで,これら極端 に高いものをAFP high producing type,正常人 にもみられる程度のきわめて低いものすなわち 20皿9/m1以下のものをAFP slight(or non)pro−
ducing type,両者の中間であり肝炎,肝硬変など にみられる程度のものをAFP Iow producin type と名づけた.AFP high producin typeとAFP Iow producing typeとの区別は, SRID13)82)83)法 で陽性となるものと陰性となるもので区別した.
そこでSRID法で陽性を示す場合の最小AFP
値を知る必要が生じたが,119,000ng/mlを示す 血清をサンプルにとり漸次希釈したものを,それぞれRI法とSRID法とで測定し,両者の結果
を比較した.その結果は119,000ng/ml,7,450n9/
ml,3,720ng/m1,1,860ng/mlのものがSRID 法陽性で,931ng/ml,465ng/mlのものが陽性か 陰性か判定困難で,244ng/ml,187ng/m1,157ng/
m1,154ng/ml,55ng/ml,2gng/ml,11ng/m1のも
のが完全に陰性であった.したがってSRID法 で陽性となる最:小血清AFP値は,大まかであ
るが1,000ng/ml前後にあると想定し,1,000 ng/ml以上のものをAFP high producing type,1,000ng/ml未満21ng/ml以上のものをAFP low producing type,20 ng/ml以下のものをAFP slight produciロg typeとした.以下この分類にしたがっ
て述べる.
2) 組織内AFP含有量とその病理組織所見な
らびに蛍光抗体法所見それぞれの症例において,AFP含有:量とその 部位の病理組織所見ならびに蛍光抗体法の所見と を対比させた.腫瘍細胞腫の病理組織学的所見は Edmondson20)の分類にしたがい分類した.
蛍光抗体法の所見では,AFP陽性細胞が多数
密集して存在する場合ときわめて少数の陽性細胞 一361一野》
写真1(蛍光染色)
ホルマリン固定パラフィン包埋標本におけるFI TC標識抗AFP抗体使用の蛍光抗体陽性例.写真 中,白く見える細胞がAFP陽性細胞
が散在性に認められる場合があり,前者を多数陽 性,後者を少数陽性と名づけた.また陽性である
ことを否定できないもの,あるいは極めて弱い陽
性の場合を疑陽性と名づけた.これらの表記法
は,多数陽性を(什),少数陽性を(十),疑陽性 を(±),陰性を(一)とした.なお肝癌例にお いては前述のように凍結切片の他に,ホルマリン 固定後パラフィン包埋した薄切標本についても蛍 光抗体法を施行し,両者の結果について比較検討 してみたところ,写真1,2にみられるように,両者の結果が一致した個所は,33個所管23ケ所
69.70%にみられた.また異なる結果が得られた 場合については,凍結材料の結果を優先にして考 えた(写真1,2).♂41才 手術例
4
③②
⑲左葉肝内転移腫鶏
⑳左葉肝内転移腫瘍の周囲組織
組織片は図に示した番号の順に 20ヵ所より採取した。
口癌は斜線の部分
図3 症例1の切除肝の肉眼所見並びに組織採取部位
議璽1 難諭『 T
懸鎌醸
難忌
墜1
写真2(蛍光染色)
写真1と同一肝における凍結切片の蛍光抗体陽性 細胞
以下各症例について述べる.
症例1 武○静0 41歳 手術例
本当の手術前の血清AFP値は22,000ng/mlで,肝硬 変を伴なうAFP high producing typeの肝癌である.手 術時の肉眼所見では塊状の腫瘍が右葉のほとんどを占 め,左葉に栂指頭大の肝内転移1個が認められた.標本 は図3に示したように腫瘍部,非腫瘍部ならびにその境
症例1 武○静○ ♂41才手術例 血清AFP 22.000ng〜m2
組織 番号
〜7 〔1魯 「1,
L8 ・1を (41 臼ゆ
⑬
LII
L9 ∬
1
⑱ ⑲ ⑥ ② ③ ⑳ ①
図4
組霞内 Edmondson AFP 組織所見 分 類 ng 9
18・ooo
18・0。0■■■■閉田+H
。懸 m
15・。00■■■■■ 皿 15・00。■■圃 H 14・。oo■薩㎜ H 輩2・o。o一軒+H
12・000−H+田
12・。00■匪㎜皿 1LOOO■■■■■田岨
11.0。0醗 田
10、ooo一 田
10,000■■■■■■田+H 6.アoo■■團■■u覗
6.1・。一 田
4,6。・圃 n 3,9。o一 0 2,8。・囲 2,50。囲 2,4・。團
2,400囲
■囎細胞 錫壊贈胞 麟肝細部の欄胞 騒肝倣のない胎の肝細胞 繊細組織
組織内AFP含有量とその病理組織所見
界部など20ヵ所から採取した.組織片のうちAFP測定 に用いた材料のそれぞれの重量は0.44g〜0.工5gであっ た.それぞれに生食水2,0mlを加えてhomogenizeし
AFPを測定した.ついで先に示した計算式で組織内A FP含有量を求め,その値の高い順にならべて夫々の組 織所見をシェーマにして対応させると図4の如くであ る.なおこの組織所見のシェーマでは腫蕩細胞,肝細 胞,結合組織,壊死細胞などの占める割合をその面積で 図示してあるが,これは光顕下でその割合を求めたもの である.この症例では蛍光抗体法を施行していない.
これでみると腫瘍細胞を含む16の組織は18,000ng/g〜
3,900ng/gを示し,非腫瘍部の組織4個にみられた 2,800ng/g〜2,300ng/gより組織内AFP含有量が多い ことがわかる.しかし腫瘍部では腫瘍細胞の占める割合 が高いものにAFP含有量が多いとは言いがたく,また Edmondson分類のgrade皿(Ed皿と略す,以下同様)
の組織ばかりが高い値を示すとは限らないが,Ed皿の 混在するEd皿(Ed皿+皿と略す,以下同様)あるいは Ed皿とEd皿の移行型(Ed皿〜皿と略す)よりはEd皿
の部分が高値を示す傾向がみられる.その他,壊死細胞 を含む部分に大量のAFPがみられた.
症例2 中○忠0 47歳 剖検例
AFP high producing type(血清AFP=48,000ng/m1),
腫蕩は塊状,肝硬変なし,AFPを測定した組織は0.11 症例2
岨織内
AFP
n醒/9
47,000 8ρ00 6.000 7.300 5,400 4,500 4.000 4,000 3.●oo
3.600 3.●00
8,500 2,900 2,200 1,400
中0忠O ♂47才 剖検例
血清AFP 48,000ng加8 Edrnor剛go【組織所見
一 一 一 一 睡 一 幅 口
■コ ー 一
一コ ー 一 一
分 顯
皿 皿 皿 皿
皿 皿 皿
皿 皿
四剛田 皿
田
皿十n 皿殉皿
蛍光銃体法所見
(柵)
(柵)
(十)
(十)
(一〉
営光抗体法漸見の慶記法
(帯):9敷口惟,(十):少敷閣性. (士):■昌惟, (一):臨憧
図5 組織内AFP含有量とその病理組織所見
g〜0.03gの15個, homogenizeするのに加えた生食水 は1.Om1.
症例1と同様に図示すると,図5のとおりで,組織内 AFP含有量は47,000ng/g〜1,400ng/gに分布する.本 例も組織内AFP含有量は腫瘍細胞の占める割合には比 例しない.腫瘍の大部分がEd皿で,1部にEd皿〜IV,
Ed皿+LEd皿〜Hがみられるが,それらはAFP含有 量の比較的少ない部分である.すなわちEd皿にAFP が多く,Ed IVやEd皿には少ない傾向がみられる.蛍 光抗体法は5個所に行なったが,AFP多数陽性は2個 所に見られ,いずれもEd皿の腫瘍細胞群であり,少数 陽性はEd皿の部分およびEd IV〜皿の部分の各1個所 に,陰性はEd皿+皿の部分であった.
症例3 望○亀0 68歳 手術例
AFP h量gh producing type(血清AFP:46,000nglm1)
塊状型腫瘍,肝硬変なし,AFP測定の組織2,73g〜
0.70gの5個,生食水量10,0m1,蛍光抗体法施行個所は
5.
図6上段にみるとおり,AFP含有:量は腫瘍細胞数に 必ずしも比例しない.しかし腫瘍の性状から判断する
と,Ed皿の部分はAFP含有量の多い所であり,また 蛍光抗体法の所見で多数陽性がみられることろである.
症例4 古○栄0 65歳 手術例
AFP high producing type(血清AFP:450,000ngl ml)塊状型腫瘍,肝硬変あり, AFP測定の組織1.52
症例3 望O亀O ♂68才手術例
血清AFP 46,000n巳酒昭
組織内
AFP
ng∠9 15,500 12.70⑦ 4,290 3.240 3,006
Edmondson 螢光抗体注所見
組織所見 分 類
一コ 睡 魎 圃
■唾懸翻1
豪壊死綱聰の額分 皿
I I
(措)
(一)●
(一)
(±)
(一)
症例4古O栄O ♂65才手術例
血清AFP 450,000ng/昭
223・000■■■■囲 147・㎝■■■囲
138・ooo■團 74脚 ■醗コ
覗.2。o睡睡羅翻口 u H一皿
潮 切
(十)
(十)
(一)
(±)
(十)
図6 組織内AFP含有量とその病理組織所見 一363一
g〜1.04gの5個,生食水量4.Om1.蛍光抗体法施行個 所は5.
図6下段に示したように,AFP含有量は非腫瘍部よ り腫瘍部に多く,また腫瘍細胞の数に比例するのがみら れた.蛍光抗体法でAFP少数陽性が主として腫瘍細胞 群にみられたが,肝硬変の部分でもAFP少数陽性が認 められた.なお腫瘍の性状はEd皿(一部にEd皿〜皿)
であった.
症例5 河○安0 53歳 剖検例
AFP high producing type(血清AFP118,000ng/ml)
多発結節型腫瘍,肝硬変あり,IAFP測定の組織0.18 g〜0.06gの8個,生食水量4.Oml,蛍光抗体法施行個 所は4(図7).
症例5 河O安O ♂35才 剖検例
血清AFP 18,000㎎ん2
組繊内 AFP
ng棺 3,200 3.100 1,700 L600 1,300 1β00 1.300 1」00 図7
組織所見
一 盛 粛 翻 粛 唖 團 團
Edmond50h 蛍光抗体法所見 分 類
H〜野
田
皿
(Ed O〜1?)
皿〜w 皿十H
(惜)
(帯)
(柵)
(柵)
組織内AFP含有量とその病理組織所見 本例でAFP含有量が1,600ng/gを示す部分では,
肝硬変組織の一部に腫瘍化を思わせる所見が認められ,
これを仮にEdO〜1?で表すと腫瘍細胞を含む部分
(EdO〜1?を含めて)はAFP含有量が多い傾向が みられた.腫瘍細胞の占める割合とAFP含有量との間 には明瞭な比例関係がみられないが,Ed皿〜皿の部分 にAFP含有量が多く,また蛍光抗体法の所見ではEd H〜皿,Ed皿の部分が多数陽性を示した.ただ,ここで 注目すべき所見として非腫瘍部である肝硬変の偽小葉内 の壊死細胞に多数陽性が認められたことが挙げられる.
症例6 所○0 63歳 手術例
AFP high producing type(血清AFP:10,800ng/ml)
塊状型腫瘍,肝硬変あり,AFP測定の組織0.45g〜
0.21gの10個,生食水量10.Oml.蛍光抗体法施行個所は 11(図8).
AFP含有量は非腫瘍部より腫瘍部に多い傾向がみら れたが,必ずしも腫瘍細胞の数に比例はしなかった.腫
症例6 所OO ♂47才手術例
血清AFP lO.800ng加4
組織内
AFP
ng/9 16,000 11,700 11,300 3,420 1.920
L500
1.330 1,330 τ」90 125
組繊所見
一 一 齪 一 旺 一 門 璽 囲 齪
Edmondson 蛍光抗体法所見
分 類
H H n一田 H〜m
H
(±)
(±)
(±)
(±)
(十)
(±)
(±)
(±)
(±)
画嚢雪 :=:
図8 組織内AFP含有量とその病理組織所見
症例7 細○達O ♂53才 剖検例 血清AFP 90.000ng加2
組繊内 組織所見
AFP
ng〆9
25,6・・■懸
18・600画
9脚 膨盤翻コ 7細 睡鵬醐コ
7細囲
7脚 ■躍置=コ 7,520彫甲羅亜コ 7伽 匪油虫網コ 4,6go■■■睡[]
Edmondson 分 類
皿
皿〜w 皿一w
蛍光抗体法所見 腫瘍細胞群 非買置細胞群 (柵)
(±)
(柵〉
(±)
(一)
(柵) (柵)
(柵)
(一) (榊)
(一) (柵)
図9 組織内AFP含有量とその病理組織所見 瘍はEd HおよびEd皿〜皿であるが,蛍光抗体法では 多数陽性はなく,少数陽性か疑陽性であった.
症例7 細○達0 53料 剖検例
AFP high producing type(血清AFP:90,000ng/m1)
塊状型腫瘍,肝硬変あり,AFP測定の組織1.17g〜
0。43gの9個,生食水量10LOmL蛍光抗体法施行個所は 9(図9),
この症例の特徴的なことは,1つの例外を除き非腫瘍 部にAFP含右量が多いことで,またAFP陽性細胞も 多数陽性が腫瘍周辺部にある肝硬変の肝細胞にみられ た.腫瘍細胞群ではAFP含有量の最も多いEd皿を含 む部分で多数陽性がみられたが,AFP含有量の比較的 一364一
少ない部分であるEd皿〜IVではAFP陰性であった.
症例8 松○恭0 56歳 剖検例
AFP low producing type(血清AFP:348ng/ml)
塊状型腫瘍,肝硬変なし,AFP測定の組織0.40g〜
0.13&の9個,生食水量4,0ml,蛍光抗体法施行個所は 9(図10).
症例8 松O恭○ ♂56才 手術例
血清AFP 348ng/朔2
組織内
AFP
ng〆9 19,000 171000 7.000
5.400 4,700 2β00 2,000
L400 830
組織所晃
旺 睡 唖 画 旺 圃 睡□
團 翻
Edmondson 蛍光抗体法所見 分 類
田
田 皿
皿
※壊死細胞の部分
(帯)
(一)
(一)齢
(冊)
(一)
(一)
(一)
(一)
(一)
図10組織内AFP含有量とその病理組織所見 本草では血清AFP値に比べて組織内AFP含有量の 値が高く,それらは腫瘍細胞と壊死細胞とを含む部分に 高い.またAFP多数陽性がAFP含有量の比較的多い 部分にみられ,いずれもEd皿の細胞群にみられた.
症例9 佐○○達0 52歳 剖検例 症例9 佐OO遣O ♂52才 剖検例
血清AFP 288㎎々8
絶織内
AFP
n8/9 53 33
Edm◎nd50n 園田所見 分 類 蛍光抗体法所見
圃 睡
。 一 皿一田
・ ■===コ 皿
o 國團=コ 1
(±)
症例10 帆O遣O ♂49才 剖検例 血清AFP 6 ng細
17 14 11
7 5
匪
一ロ ーコ
融 融
田
皿 11〜皿
皿
(±)
(柵)
(一)
(柵)
図11組織内AFP含有量とその病理組織所見
AFP Iow producing type(血清AFP=288ng/m1)塊 状型腫瘍,肝硬変あり,AFP測定の組織0.24g〜0.08
gの5個,生食水量2.Om1.蛍光抗体法施行個所は2.
図11の上段に示したように,壊死組織で少量のAFP が検出され,腫瘍部では検出されなかった.しかし両部 位で蛍光抗体法の所見が疑陽性であった.その疑陽性の 見られた腫瘍細胞群はEd皿であり,腫瘍細胞の占める 割合が少ない部位である.
症例10 帆○達0 49歳 剖検例
AFP slight producing type(.血清AFP:6ng/m1)
塊状型腫瘍,肝硬変あり,AFP測定の組織1.58g〜
0.92gの5個,生食水量10.Oml.蛍光抗体法施行個所は
3.
組織内AFP含有量は図11の下段にみるとおり,17 ng/g以下できわめて少ないが,腫瘍細胞群においては
AFP陽性細胞が多数陽性を示した.しかしこれらの腫 瘍細胞は組織片全体からみると,その占める割合は小さ い部分であった.
症例11 植0由0 53歳 剖検例
AFP slight producing type(血清AFP118ng/ml)
びまん型腫瘍,肝硬変あり,AFP測定の組織0.35g〜
0.10gの15個,生食水量1.OmL蛍光抗体法施行個所は
一365一・
症例11植O由○ ♂53才剖検例
血清AFP 18ng鯉
ねぼ
螺
20 13 口 11
11
Edmondson
組織所見 分顕 蛍光抗体法所見
■■獺=] 皿 (措)
㎜=コ 田
彫[==コ 皿
■髭%=コ 皿
睡翻羅[コー隔靴傾向 〔±)
1・ ■彫[コ 皿
1・ 盟コ
6 ■膨πコ 7 ■%=コ
6 唖コ
5 畷遜[コ 5 ■躍=コ 5 ■彪璽遠写・ 彫璽置コ 3 ■羅翻コ
0 0 0 0 0
團 圃 圏 唖 翻
皿
皿
(一)
(柵)
(±)
図12組織内AFP含有量とその病理組織所見
5(図12),
本例で特徴的なことは,いずれの組織でも腫瘍細胞の 占める割合が小さく,結合組織の占める割合が大きいこ とで,したがってAFP含有量は20nglg以下と少ない が,蛍光抗体法所見では腫瘍細胞群に多数陽性がみられ ることである.その腫瘍細胞群はEd皿であった.
症例12 園○留・つ0 63歳 手術例
AFP slignt producing type(1血1清AFP:9ng/m且)
塊状脳腫瘍,肝硬変なし,AFP測定の組織0.21g〜
0.13gの15個,生食水:量2.OmL蛍光抗体法施行個所は 7(図13).
本圃で特徴的なことは,AFPが非腫瘍部で検出さ
症例12園0留OO ♂63才手術例
引回AFP g㎎1岡 繊内AFP
曜雇 loo
●6
52 62 55 30 20
0 0 0 0 0 0 0 0
鵤所見
一 一 圃 ㎜ 翻
一■ 幽 一 躍 一
一■ 一 一 圃 蘭
一
分顕その弛
(野編膳の馨纏)
貨光抗体法扇見
1警硫鱈適,EdO−1?)
(肝醜働の簡)
(野饅題の馨働 1肝亀馳の婁纏}
口
n
ロ
ロ
ロ〜I I〜口
!
(禰 一,
仕)
(一)
一,
(一}
(十)
図13組織内AFP含有量とその病理組織所見
れ,腫瘍部では1つの例外を除き検出されないことであ る.非腫瘍部では最高100ng/gのAFP含有.吊:がみら れ,またこの部位ではA脳1的にAFp陽性細胞が多数陽 の
樵として認められ,光顕所見では同部位に肝細胞の変性 萎縮と出1血しがみられた.写真3はその蛍光抗体法施行の
㎎86 50 40 30 20 10
書
↓
症例12 ♂63才 AFP・51ight producing type.
偽
9
2 9 02
撃μ、』・
写真3(蛍光染色)
蛍光染色されたAFP陽性細胞が多数認められる,
・q・・瑞㌔ぜ・・愉・・一/・91一・・9/副
月日
図14肝癌術後の血清AFP値の推移
もの,写真4はその部位の光顕所見である.腫瘍細胞は EdH,EdI〜皿であった.
なおこの症例は昭和48年3月17日に根治的右葉切除が 行なわれ,その後上3年を経過し現在生存中であるが,
術後の血清AFP値の推移は図14に示したとおりであ る.すなわち術後1ヵ月間は3ng!ml以下で,その後約
1年4ヵ月日に一過性に最高46ng/mlのAFPがみられ たが,以後ふたたび20ng!m1以下となっている.
症例13 星○忠0 68歳 手術例
AFP siight produclng type(血清AFP:11ng!m1)
直径約2c旧の孤立結節型腫湯,肝硬変あり, AFP測定 の組織0.56g〜0.01 gの14個,生食水量2.Om1.蛍光抗 体法施行せず(図15).
本例の組織内AFP含有量は腫瘍部より非腫瘍部に多 く最:高3,400nglgがみられ,また血清AFP値11nglm1
写真4(H・E染色)
写真3と同一部位の光顕写真,変性萎縮細胞が認
められた.
一366一
症例i3星○忠O
轡
な:,。藷
1・2・・ 睡懸二二
1:1麗
;:1羅
な ゆ ウ
1鴛灘
:1:寸寸躍 騒
♂68才 手術例 血清AFP Iln9〆叩2
穿㌢㎝
【
1
図15組織内AFP含有量とその病理組織所見 に比べてもはるかに高い値がみられた,この例では腫 瘍細胞がEdIを示したが,グリソン鞘内のリンパ球浸 潤が著明にみられ,新しい偽小葉がなお形成されつつあ る肝硬変に肝癌が発生したものである.非腫瘍部の肝硬 変は組織全体として肝細胞の再生よりもむしろ変性,萎 縮,壊死が目立つものであった.
3)小 括
i)組織内AFP含有量と組織所見の関係につ
いて
以上の症例について組織内AFP含有量と組織 所見との関係を要約するとつぎのようであった
(表2).
AFP high producing typeの症例ではAFP含 有量:は腫瘍部に多く非腫瘍部に少ない傾向がみら
れた,しかしAFP含有量と腫瘍細胞の数との間
には必ずしも比例関係がみられるわけでなく,むしろ見られない場合の方が多かった,すなわち症 例4の如く腫瘍細胞群がいずれもEdHであるよ.
うな症例では,両者の量的比較が可能で比例関係 が成立つといえるが,Edmondson分類における種 々のgradeで腫瘍細胞群が混在する症例1,2,
3,7では比例関係は成り立たない.後者のよう な比例関係のみられない症例では,腫瘍細胞群の 質的比較,すなわち各々の細胞の蛍光染色性から
判定する方が容易で,Ed皿をもつ部分にAFP
含有量の多い傾向がみられた.AFPユow producingおよびAFP slight producing typeの症例では一定の傾向をつかむことは困難
で,腫瘍部に必ずしもAFPが検出されるとは限 らなかった.また血清AFP値が低くても組織内 にはかなりのAFP含有量がみられる場合もあっ
た.
ii)組織内AFP含有量と血清AFP濃度との
表2 各症例における組織内AFP含有量:と病理組織所見との要約
腫瘍細胞とAFP含有量との関係 症 例 腫瘍部と非腫瘍部との
̀FP含有量の比較 腫瘍細胞の数とAFP
ワ有量との関係 腫瘍細胞群の性状と
̀F.P含有量との関係
AFP high producing type
AFP low producing type
AFP s正ight producing type
]」 Tafp>NTafp Ed皿afp>Ed五afp.
2
・1
・・皿・,〉蹴諏
Ed皿afp>Ed I afp 4
5 6 7 8 9 10 11 12 13
Ta P>NTafp. 比例する
Tafp>NTafp Tafp>NTafp
Tafp〈NTafp Ed皿afp>EdWafp
Tafp>NTafp
Tafp>NTafp 「
Tafp<NTafp Tafp<NTafp
㊧Tafp:腫瘍部のAFP 含有量
NTafp:非腫瘍部のA FP含有量
曾Edafp〜EdIVafpはそれ ぞれEd l〜Edl▽を示 す細胞群におけるAF P含有量
一367一
表3 肝癌例における血清AFP濃度と組織内AFP含有量との比(L/S)
症 例
血清AFP
濃度 (ng/ml)
AFP
high producing typeAFP low producing type
AFP
slight produc三ng type1 22,000
2 48,000
3 46,000
4 5
450,000 18,000 6
71
90,00010,8008 9 10 11 12 13
348 288 6 18 9 11
組織内AFP含有量:(ng/g)
腫 瘍 部 非 腫 瘍 部 18,000〜3,900 2,800〜 2,400 47,000〜 1,400
15,…〜3,・・引 12,700〜 4,290
L/S
0.82〜0.!1 0,98〜0.03 0.34〜0.07 223,000〜74,800
3,200〜 1,300
!6,000〜 ↓,500 25,600〜 4,690 19,000〜 2,300
0
(壊死部のみ53〜33)
17〜0 20〜0 30〜0
44,200 0.50〜0.10
1,300〜 1,100 0.18〜0.06 1,92G〜 125
18,600〜7,520 2,000〜 830
0 14
10〜0
!00〜0 3,400〜0 1!0〜0
1.48〜0.01 0.28〜0.05 54.6〜2,39 0.18〜0 2,83〜0.83 1.11〜0 11.1!〜0 309」09〜0
L;組織内AFP含有量 S:血清AFP濃度
上ヒ較セこっし、て
組織内AFP含有量の値は1血清AFP濃度の値
よりも高い場合と低い場合がみられた.これを比 較する手段として,両者の比,すなわち組織内A
FP含有量の値をL,血清AFP濃度の値をSと
したL/sを指標として,おのおのの症例につい て比較したものが表3である.AFP high Pr・ducing tyPeセこおいては組織中の
AFPはきわめて多いが,それよりも血清AFP の方が一段と多く珂sは1より小さい場合が殆
どである.AFP slight producing typeにおいてはこの逆がみられ,L/sが1より大で,中にぱ
309.09という極端なものもみられた.すなわち血清AFPが極めて低くても組織中にはある程度
のAFPがみられることがあった. AFP low pro−
ducing typeにおいてはし/sが1より大の場合と 小の場合がみられた.
iii)FITC標識抗AFP抗体使用の蛍光抗体
直接法の所見と組織像の関係について
症例11例について腫瘍部28ヵ所,延べ36,非腫 瘍部14ヵ所,延べ25,壊死部3ヵ所,延べ5,そ の他一部に腫瘍化の疑いがもたれた非腫瘍部2カ 所について蛍光抗体法で検索した.
蛍光抗体法
@ 所見組織所見 多数陽性 少数陽性 疑陽性 陰 性 計
1 ● ● 2
1〜u o 1
iI ● ● ● ● ④ 0 @ o 8
腫 瘍 部
1卜田 ■ o ⑦ ● 4
田 o ㊥ o o
?⑦ @ o o ⑫ 10
田一N ◎ o 2
揮 ㊤ 1
正常肝部 o ⑱ 2
肝硬変部 o o ● o ⑤ ● ● ⑳ ⑳ ● ⑩ 11
壊 死 部 ● ⑱ 2
萎縮細胞群 ④ 1
腫瘍化傾向の
?骰ラ胞群 ⑦ ⑱ 2
図16蛍光抗体法の所見と光顕所見との対比 多数陽性:多数のAFP陽性細胞が密集するもの 少数陽性:少数のAFP陽性細胞が散在するかグ ループを作るもの
疑陽性:AFPが陽性であることを否定できな いもの,およびきわめて弱い陽性を示 すもの
腫瘍組織はEdmondson分類による.なおこの図で
は1〜1等の表示はEdlとEdHの混在(E41
十皿)およびEd lとEd豆の移行型(Ed l〜H)
の両方を表わすのとする。
腫瘍部でAFP多数:陽性がみられたのはEd皿 の部分に最も多く,Ed皿の10ヵ所中の7ヵ所に
多数陽性がみられた.またEd皿ではそのほかの 所見として少数陽性,疑陽性および陰性がそれぞ れ1個所ずつみられた.一368一
Ed皿は多数陽性がなく,少数陽性2,疑陽性 4,陰性2であった.またEd HとEd皿が混在
する部分や,両者の移行型の所見を呈する組織で は多数陽性,少数陽性,疑陽性,陰性がそれぞれ1であった.
Ed IVは1ヵ所のみであるが,この部分では多
数陽性であった.EdIには陽性がなく疑陽性か
陰性であった.
以上をまとめると,腫瘍組織ではEd皿の個所
に多数陽性が多くみられ,Ed∬の個所に疑陽性 か少数陽性が多くみられる傾向があった.非腫瘍部の正常肝細胞はすべて陰性であった.
肝硬変部では多数陽性が主として腫瘍の週辺にみ られ,また偽小葉を形成している部分の壊死細胞 群にもみられた.その他肝硬変部では少数陽性が
2,疑陽性が3,陰性が4であった.
壊死部では3ヵ所のうち1ヵ所が疑陽性を示
し,他は陰性であった.その他,非腫瘍部で一部に腫瘍化を疑わせた部
分で多数陽性,疑陽性が各々1ヵ所ずつみられ
た.
4) AFP陽性細胞についての検討
FITC標識抗AFP抗体使用の蛍光抗体直接 法で確められたAFPを含有する細胞について仔
細に検討した.
i)腫瘍組織内の多数陽性例
AFP high producing type,症例7の剖検例であ るが,写真5に見るとおり多数の陽性細胞が密集 し,強弱の陽性細胞が入り混じってモザイク状を 呈するのが認められる.この同じ部位を光顕所見
で検討すると,写真6にみられるように,AFP
陽性細胞は光顕的に他の同種の細胞と明らかに区 別することはできないが,強陽性を示す細胞の一 部には,原形質の比較的大きい強い好酸性を示す ものがみられた.なおこの部位はEd皿の細胞群 であった.ii)腫瘍組織内の少数陽性例
AFP high producing typeの症例4,手術例の
ものであるが,AFP陽性細胞が腫瘍細胞内に散 在しているのがみられた.AFP陽性細胞は写真
7,8にみるとおり,周囲の陰性細胞と形態学的 な差異が明らかでない.腫瘍組織はEd∬と1旺の 移行型であった。iii)肝硬変組織内の多数陽性例
AFP high producing type,症例7の剖検例であ るが,写真9,10にみるとおり,腫瘍辺縁部に陽 性細胞が集団をなして帯状にみとめられた.この 部位は腫瘍と非腫瘍との移行部に相当し,肝細胞 索の離断がみられ,変性細胞も認められた.この
写真で特徴的なことは,腫瘍の中心部がAFP陰 性であることで,その部位はEd皿とIVの移行型
であった.この例では先に述べたように,組織内写真5(蛍光染色)腫瘍組織内のAF p多数陽性例 蛍光染色された強弱陽性細胞が入り混じってモザ イク状を呈する.
一369一
写真6(H−E染色)写真5と同一部位 AFP強陽性に該当する細胞の一部には原形質の 大きくEosinに濃染するものがみられる.
写真7(蛍光染色)腫瘍組織内のAFP少数陽性例 中央に5個の陽性細胞が相接して存在する.
騒
騒撚
鋤蕊氏購
写真8(H−E染色)写真7と同一部位 AFP陽性細胞に該当する細胞は周囲の腫瘍細胞 と形態学的な差異がはっきりしない.
写真9(蛍光染色)肝硬変組織内のAFP多数陽 性例
写真の右側に陽性細胞が帯状に認められる.左上 方の腫瘍の中心と思われる部分は陰性である.
写真10 (H−E染色)写真9と同一部位
AFP陽性細胞に該当する細胞は腫瘍に接した辺 縁部のもので,肝細胞索は離断し,一部には変性 を起した細胞がみとめられる.
写真11 (蛍光染色)肝硬変組織内のAFP少数陽 性例
中央に3個の強陽性と1個の弱陽性の細胞が相接 して存在する.
写真12 (H−E染色)写真11と同一部位 AFP陽性細胞に該当する細胞は陰性のものと比 べると,細胞内の穎粒が大きく目立っもの,ある いは穎粒が不鮮明となり細胞質が均質に見えるも の,さらに細胞質内に空胞が出現しているものな どである.
一370一
写真13 (蛍光染色)偽小葉内の壊死組織にみられ るAFP多数陽性例
写真中央からその周辺にかけて陽性細胞が集団を
なしている.
写真14 (H−E染色)写真13と同一部位 壊死細胞とその周辺に若干異型性を示す細胞が混 在するのがみられる.AFP強陽性細胞は肝細胞 構造の崩壊の初期の細胞に,弱陽性細胞はすでに 壊死に陥った細胞に該当する,
写真15 (蛍光染色)症例3の手術時の新鮮な材料 に抗AFP抗体使用の蛍光抗体法を施行 したもの.
写真右側にAFP疑陽性細胞が散在するのがみら
れる.
AFP含有量が非腫瘍部に多い傾向がみられた
が,蛍光抗体法による所見でもこの事実を裏づけている.
iv)肝硬変組織内の少数陽性例
AFP high producing type,症例4の手術例であ
るが,写真11,12に見るとおり,AFP陽性細胞
3個と弱陽性細胞1個が中心静脈近くに認められ る.これら陽性細胞は,陰性細胞のものと比べる と,細胞内の頼粒が大きく目立つもの,あるいは 頼粒が不鮮明となり細胞質が均質に見えるもの,さらに細胞質内に空胞が出現しているものなどで
写真16 (蛍光染色)症例3の死後の材料に抗AF P抗体使用の蛍光抗体法を施行したもの.
多数のAFP陽性細胞が写真右側にみられる.
ある.
v)肝硬変部における壊死組織内の多数陽性例 AFP high producing type,症例5の潮検例である
が,偽小葉を形成している部分にAFP陽性細胞
の集団が写真13のように見られた.これをH・E 染色でみると,写真14にみられるように壊死細胞 と,その周辺に若干異型性を示す細胞が混在する のが認められた.とくに細胞質構造の均一化がみ られ,Eosinに濃染し壊死化を思わせる細胞が強 陽性を示しており,すでに壊死に陥り細胞構造の 壊死が進んだ細胞は弱陽性であった.すなわち,肝細胞構造の崩壊が始まると思われる時期のもの 一371一
盤
面写真17 (蛍光染色)写真16の連続切片に抗IgM 抗体使用の蛍光抗体を施行したもの.
多数のIgM陽性細胞が写真16のAFP陽性細胞
と同様にみられる.
に強陽性がみられた.
v)AFPとIgG, IgMの併存のみられる症
例の吟味蛍光抗体法でAFP陽性細胞を観察する場合,
血清AFPが高い症例では,そのAFPが二次的
に細胞内に取り込35)まれる可能性を考えなければならない.すなわち,真のAFP陽性とback
diffusionによるfalse positiveとの鑑別が必要で,
その方法としてimm1皿oglobulinとAFPとの併
存の有無で鑑別するのも一つの方法であると考えられる。
たとえぽ,症例3は右葉切除された後,4ヵ月 i=【に再発で死亡した症例であるが,この症例の手 術時および剖検時の標本について,凍結連続切片 でAFP, IgG, IgMの併存の有無を,それぞれの
FITC標識抗体を使用して蛍光抗体直接法で調
べてみると,手術時に採取した新鮮な感温では写真15にみるとおり,AFPの弱陽性を示す細胞が
みられ,IgG, IgMは陰性であった.しかし,死後9時間20分後に剖検された古い材料では,AF
P陽性細胞は写真16にみるとおり手術時のものよ り明瞭で多数陽性を示したが,同時にIgG, IgMの多数陽性もみられた.写真17は写真16のAFP 陽性例の連続切片にFITC標識IgM抗体の蛍 光抗体直接法を行なったものであるが,IgM陽
性を示している.したがって,本研究に際しては肝切片のAFP 検索の際は連続切片を使用し,FITCラベルA
FP抗体とFITCラベルIgGおよびFITC
ラベルIgM抗体を反応させることにより,back
di仔usion例について吟味し除外した.V・考 按
1)肝癌におけるAFP産生細胞について AFPが肝癌細胞で産生されているであろうこ
とは,肝癌患者の血清中にAFPが高率7)覗)13)
に出現すること,腫瘍の増大等病状悪化でそれが 増量6)すること,手術的に腫瘍が取り除かれると それが急激に減少37)することなどから充分考えら
れ,またAFP産生がEd皿のような比較的未熟
な細胞で行なわれているであろうことは,肝癌の 病理組織学的所見と血清AFPとを比べた結果18)15)〜19)から考えられてきたことである.しかしな
がら,これらの説明では1血清AFPが肝のどの様
な細胞から由来したものであるかを証明したわけ でなく,上述の現象についての一義的判断は尚早 と言わなけれぽならず,より仔細に検討すべき問 題がなお多く残されていると言えよう.そしてこ の問題解決のためのアプローチとしては,実験的 研究で蛍光抗体法29)あるいはペルオキシダーゼ抗体法を用いて直接的にAFP産生細胞を証明した
志方28)らの業績がみられるが,臨床例35)86)では未 だ少なく,わが国では幸田30),西岡38),高橋89),
実藤40)らが蛍光抗体法で肝癌組織内にAFP陽性 細胞を見ているが,その形態学的特徴については 不明な点が多い.そこで著者は,肝癌の臨床例に
ついてAFP産生細胞がどのような細胞であるか
を直接的に追求するため,肝癌肝の色々な部位から組織片を採取し,その部位のAFP含有量,組 織所見ならびに蛍光抗体法によるAFP陽性細胞
の検討を行なった.まず組織内AFP含有量で検討する場合には,
血清AFPの混入によるcontaminationの問題を
考慮に入れておかなけれぽならない.肝組織へ
の1血液成分のcontaminationの問題に関しては Castagna41)のラットの実験報告がある.彼によれ ぽ,気組織内への血液成分の混入は,脱血等の充 一372一分な事前処理を行なわないでも20%以下であると 述べており,また著者の検索方法のごとく,同一 の症例の肝組織について比較するものであるなら ば問題は少ないと思われる.
AFP high Producing tyPeでは組織内AFP含
有量が非腫瘍部よりも腫瘍部に多く,またEd皿 の部分に多い傾向がみられることから,AFP産
生細胞は腫瘍細胞で,とくにEdI皿の細胞群で盛 んであると考えられる.しかしながらAFP high producing typeの肝癌でも,すべての腫瘍細胞が一様にAFP産生にたずさわるかどうかは疑わし い面がある.それはAFP含有量と腫瘍細胞の数
との聞に数量的比例関係が成立しにくいことから考えられることで,個々のAFP産生細胞が同じ
ような産生能力を持ち同じような頻度で腫瘍細胞群に存在するならぽ,AFP含有量と腫瘍細胞の
数との間に比例関係が成立するはずであるが,そ れがみられないということは,AFP含有:量が腫 瘍細胞の数に比例するのではなく,そこに混在するAFP産生細胞の数と能力とに比例するものと 考えなければならない.すなわち,AFP産生細
胞はAFP high producing typeでもすべての腫瘍 細胞が行なうのではなく,ある種の限られた細胞が行ない,その細胞はEd皿に最も多く混在する が,Ed皿やEdIVあるいはEd Iには少なくな
る細胞であると考えられる.
このある種の限られた細胞を直接的に観察する
には,蛍光抗体法でAFP陽性細胞を捕え,同一 切片をH−E染色し,AFP陽性細胞に該当する
細胞の光顕所見を比較するGitlinの方法が確実で ある.Gitlin84)はこれをラット胎児で行なったが,臨床例では未だ行なわれていないようであ
る.今回の著者の臨床例についての研究では,AFP陽性細胞がEd皿の部分に最も多く,また Ed皿でもEd HやEd IVが混在するもの,ある いはそれらとの移行型のものではAFP陽性細胞 が少なくなり,Ed皿では一つ一つの陽性細胞も
きわめて弱いものとなる傾向がみられた.すなわち,AFP含有量と組織所見の比較から導びかれ たある種の限られた細胞のAFP産生細胞とは,
Ed皿の構成分子の主役を演ずる細胞の中に多く,
Ed皿やIVの構成分子としては数が少ない細胞で
あると言える.EdIVやEd Iについては,例数
が少ないので結論的なことはさしひかえなければならないが,諸家の指摘するように,血清AFP
値がEd l匠をピークに高く,Ed IVではかえって 低くなる事実は,この結果を肯定するものである.本研究で著者はこれらAFP陽性細胞の形態
学的な特徴をつかみ,陰性細胞のそれと区別すべく努力したが,今回の光顕的検索では,それらを 明瞭に区別することはできなかった.しかしなが ら,光顕的に見てEd皿に該当する形態を示す肝
癌細胞が,最も高頻度にAFP陽性を示すという
ことは,この程度の分化を示す肝癌細胞のある種 のもの一光些細に同種の他の細胞と明らかに区別することはできなかったが一が,高いAFP産生
能をもつているということは言える.すなわちEdI,Ed丑まで分化した肝癌細胞になるとAF
P産生能は減り,またEd IVほど未熟なものではかえってAFP産生能が少なくなるということで ある.またEd皿の肝癌細胞のすべてにAFPが
強く産生されるとは限らないということも,これらが蛍光染色された状態では,AFP陰性細胞お
よび強弱陽性細胞が濃淡入り混じってモザイク状 に認められることから言えることである.そして 強陽性を示す細胞の一部で,Eosinに濃染する原 形質の大きなものが見られたということから,また志方28)らが指摘した,ラット3/Me DAB
肝癌のAFP産生細胞は,細胞質が大きく細胞
小器官が疎で核の不整形な細胞であるということ から,著者が本研究において観察した前述のAF P産生細胞は,肝癌細胞の新生あるいは増殖過程 の或るstageにおけるものであるとも想像され,Eosinに濃染したこの種の細胞がAFP産生の最
も盛んな時期のものであろうと思われる.今回の 検索ではEd皿に最もよく見られる巨細胞20)につ いて充分な観察ができなかったが,以上のことから,巨細胞とAFP産生細胞との関係をつかむこ
とが,今後の一つの問題点となり得ると思おれる.
一373一
2)非腫瘍部におけるAFP産生細胞につい
て.
つぎに,非腫瘍部におけるAFP産生について 述べるが,そのまえに肝癌における血清AFPと 良性疾患における血清AFPとの間には,数値の
上で非常な差があることに注目したい.肝癌例の 大多数を占めるAFP high producing typeの血清AFP値は絶対値が104以上のレベルであるのに
比べ,良性疾患のそれはせいぜい102のレベルでしかない.102以上の差があることは数値の上で 桁違いと考えてよく,したがって両者を同一一の次 元で論じるのは少し無理な点があるのではないか
と思う.すなわち,AFPがAFP high produc−
ing typeの肝癌細胞で産生されるのと,良性疾患 の肝細胞で産生されるのとでは,何か次元の違う ものがあるのではなかろうかということである.
そこで,AFP含有量の面からAFP産生細胞 を考えるには,腫瘍部のAFP含有量がある程度 低く,良性疾患の血清AFP値と同じようなレベ
ルにある症例で検討するのが順当のように思われる.なぜなら,桁違いの産生能力をもつAFP
high producing typeの腫瘍が併存する例では,組 織抽出豊中のblood contaminationが20%以下41)としても,その中に含まれる腫瘍由来の血清AFP
量がきわめて多いことになり,非腫瘍部での微々たるAFP産生量は,それにより隠蔽されてしま
い,実態がわからなくなるからである.したがってこの点について検討を加えるにあたり,AFP
含有量が腫瘍部より非腫瘍に多く,非腫瘍部でAFP産生があると思われる症例12,13について,
まず検討してみることにする.
症例12は,肝硬変がない肝癌であるが,癌組織 周辺の肝細胞の一部には著しい変性萎縮がみられ た.症例13はグリソン面内のリンパ球浸潤が著明 に認められ,新しい偽小葉がなお形成されつつあ る肝硬変に肝癌が発生したものであり,組織像全
体としては肝細胞の再生よりもむしろ変性,萎
縮,壊死が目立つ症例である.従来の報告によると,肝癌以外の肝疾患に際してAFPの産生を行
なう細胞は,肝炎,肝硬変などにおける再生細胞42M6)であるとする者と,変性細胞47)48)である
と主張する者との2つの議論が述べられている
が,今回の検索では,再生細胞であるとする積極 的な所見は見当らなかった.症例12は,肝細胞の再生が最も盛んであると思 われる肝癌切除後数週間49)の時期に1血清AFP値 の.上昇がみられなかった例である.この場合の術
後の血清AFPの変動について考えてみると,腫 瘍部で組織内AFPが検出されていない本症例で は,血清AFPは肝細胞によるAFP産生を反映 していると思われるが,術後数週間の血清AFP
の検査では上昇が認められていない.したがって 残存肝組織で仮に再生が行なわれたとしても,血清AFPを上昇させる程のAFP産生能の高い再
生肝細胞が多数発生したとは考えられない.そこでAFPはどのような細胞で作られるかというこ とであるが,本朝では,変性萎縮細胞がみられ た部位に組織内AFP含有量が100ng/g検出さ れ,また蛍光抗体法でAFP陽性細胞がみられた
ことから,変性細胞によるものと考えたい.つぎに,AFP high producing typeの非腫瘍細