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貨幣数量説と流動性選好説 : レイヨンフ-ヴッド、ヒックス、デヴィッドソンの理論

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Academic year: 2021

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滋 賀 大 学 教 育学 部 紀 要   人文 科 学 ・社 会 科 学 ・教 育 科 学 No.37 p.p.61-68,1987 61

貨 幣数量説 と流動性選好説

一 レ イ ヨ ン フ ー ヴ ッ ド 、 ヒ ッ ク ス 、 デ ヴ ィ ッ ド ソ ン の 理 論 一

加納

正雄

Quantity  Theory  of Money  and:Liquidity  Preference  Theory

    On  the  Theory  of Leijonhufvud,  Hicks  and  Davidson一

Masao  KANO 1  目的   本稿 の 目的 は、 フ リー ドマ ンの短 期 の 貨 幣 数 量 説 に対 す る、レイ ヨ ンフ ー ヴ ッ ド、ヒ ックス 、 デ ヴ ィ ッ ドソ ンの批 判 を、彼 等 の流 動 性 選 好説 の 解 釈 と 関 連 させ て 議 論 す る こ とで あ る(1)。 本稿 で と りあ げ た3人 は 、 フ リー ドマ ンの 数量 説 に対 して 批 判 的 で あ るが 、 この 批 判 は、 ケ イ ンズ の流 動 性 選 好説 に対 す る解 釈 と密 接 に 関連 して い る。 した が って 、彼 等 の数 量 説 批判 と選 好 説 解 釈 を対 応 させ る こ と に よ って 両 者 の理 論 の問 題 点 、 特 に貨 幣 の需 要 と供 給 に関 す る 問題 点 を よ り明 らか に で きる。 さ ら に、 本稿 で は 、 これ らの 議 論 を も とに、 上 掲 の3人 の 理論 を景 気 の 局 面 と関 連 させ る こ と を試 み た 。 なぜ な ら ば、 これ らの理 論 は景 気 の そ れ ぞ れ の 局面 に お いて 意 義 を もつ もの で あ り、 景 気 の 変化 の理 解 に有 用 で あ る と考 え るか らで あ る。 2  フ リ ー ドマ ン   現 金 残 高 方式 の貨 幣 数 量 方 程 式 は次 の よ うに 表 せ る 。    M=ゐ 伽 記 号 の 意 味 は次 の とお りで あ る。M'名 目貨 幣 量 、々 の名 目所 得 に 占め る名 目貨 幣量 の割 合 で あ り名 目利 子 率7の 関数 、ρ'物価 水 準 、ッ'実質 所得 。 この 式 にお い て 、 労働 市場 を均 衡 させ る 雇 用 量 に よ って ッが 決 ま り、そ の 所得 にお い て 、 投 資 と貯 蓄 を均 衡 させ る実 質利 子 率 が 決 ま る な らば 、 こ の 式 は、Mと 期 待 物 価 上 昇 率 が 与 え られ る と き ρ を決 定 す る。 この 場 合 は、 △M/ M=△pipで あ り、 々の利 子 弾 力 性 は無 関係 で あ り、 また 、 そ の他 の 数量 説 に 関す る命 題 もす べ て成 立 す る。   フ リー ドマ ンは、 この よ うな数 量 説 を 、単 純 数 量 説 と呼 び 、長 期 また は 完全 均 衡 に お い て成 立 す る も の で あ る とみ な す(2)。 フ リー ドマ ン に よれ ば、 数 量 説 の 特 徴 は 、 「名 目所 得 と実 質 活 動 水 準 の 双 方 の 短 期 的 変 化 を説 明 す る 点 で .Mの 変 化 はそ れで もな お唯 一 の 要 因 とは い え な いが 主 要 な要 因 で あ る(3)」。 さ ら に、 貨 幣 の 名 目需 要 量 と名 目供 給 量 が乖 離 す る場 合 、 「数 量 説 的 接 近 法 の根 本 的 洞 察 は 、 そ の よ うな乖 離 は、 基 本 的 に は、 支 出 の企 て に反 映 され 、か く て 名 目所得 の変 化 率 に反 映 され るで あ ろ う、 と い う こ と で あ る(4)。」 こ れ は短 期 的 に はMの 変 化 が"を 変 化 させ る こ を意 味 して い る。   この よ うな フ ー ドマ ンの 主張 は短 期 の 数量 説 で あ る貨 幣 的名 目所 得 理 論 に よ って 表 され る。 貨 幣 的 名 目所 得 理 論 に お い て 、 「現 行 の 市 場 利 子 率 ω は、 既 して い っそ う長 い期 間 に わ た っ て 支 配 す る と予 想 され る利 子 率 ゲ ノに よって 決 定 され る(5)。」 す なわ ち 、r'は 予 想 さ れ る実 質 利 子 率 に物 価 の期 待 上 昇 率 を 加 え た もの で あ 1987年9月21日 受 理 。

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62 加 納 正雄 る。 〆 が 期 待 に よ っ て 外 生 的 に 与 え られ る と き、 〆 に 関 す る 期 待 が 一 定 で あ る か ぎ り ゐは 一 定 で あ る か ら、 貨 幣 量Mの 増 加 は す べ て 名 目貨 幣所 得 の増 加 とな る 。   フ リー ドマ ンは 、 こ の よ う に 利 子 を期 待 に よ って与 え る こ と は、 ケ イ ンズ か ら受 け つ ぐ着 想 で あ り、 利 子 率 は、 「確 固 た る予 想 をい だ い た投 機 家 た ち に よ って 、 そ の 水 準 に等 しく維 持 さ れ る(6)」 と仮 定 す る。 しか しな が ら、 ケ イ ンズ の 場 合 、 〆 に お い て 利 子 率 が 固定 さ れ る の は、 〆 に お い て 絶 対 的 流 動 性 選 好 が 生 ず る 場 合 で あ り、 こ の場 合 △㎜=△ 巌 とな り、 増 加 した貨 幣 はすべ て保 蔵 さ れ る。 こ れ は、 利 子 率が 下 が る と き、利 子 率 が 将 来 上 が る と期 待 す る弱 気 の 投 資 家 が債 券 を売 って貨 幣 を保 有 す るか らで あ る。 これ が ケ イ ンズ の投 機 で あ る。   こ れ に対 して、 リー ドマ ンの 場 合 は、 △M/ .M=△ ω 勿 、 △走茄=0で あ り、増 加 した貨 幣 はす べ て支 出 され る。 フ リ ー ドマ ン は この具 体 的 プ ロセ ス を明 らか に して い ない が 、次 の よ うに考 え られ る 。買 オペ レー シ ョ ンに よ って貨 幣量 が 増 加 した とす る。 こ の場 合 、 一 時 的 に名 目所 得 は一 定 で あ り、利 子 が 低 下 す る。 この と き実物 資 産 の 需 要価 格 が 上 昇 して 、 そ れへ の 支 出 が増 加 す る。 フ リー ドマ ンが特 に強 調 す るの は、耐 久 消 費 財 へ の 支 出 で あ り、資 産 保 有 が 実 物 資 産 をふ くむ こ と、耐 久 消 費財 へ の支 出が 増 加 す るこ と、 こ れが ケ イ ンズ 派 との伝 達 メ カ ニ ズ ムの 相違 で あ る と主 張 す る。以 上 の こ とか ら、 フ リ ー ドマ ンの い う 「投 機 」 と は、期 待 す る実 質 利 子 率 まで実 物 資 産 へ の 支 出 を増 や す とい う 意 味 に理 解 しな け れ ば な ら ない 。 投 機 と 々ω の 安 定 性 の 関 係 は 、後 述 の レイ ヨ ン フ ー ヴ ッ ドの 主要 なテ ーマ で あ る。   期 待 実 質 利 子 率 が所 与 の と き、 貯 蓄 ・投 資 部 門 よ り実 質 所 得 が 決 まる 。 こ れ は貨 幣 量 か ら独 立 で あ り、 短 期 的 に一 定 とな っ て し ま う。 この こ とは 、前 述 の フ リー ドマ ンの主 張 に とっ て は 不 都 合 で あ る。 した が って 、 フ リー ドマ ンは、 実 質 利 子 率 ρ と実 質所 得yの 関 数 で あ る消 費 関 数 π ρ,"は 不 満足 な もの で あ り、 名 目所 得 の 実 質 所 得 と価 格 へ の 分 割 は 未 完 成 の 問 題 とす る。 した が って 、本 稿 にお いて も、 そ の 問 題 は 扱 わ ず、 々ω に 関す る問 題 の み を扱 う。 す な わ ち、 フ リー ドマ ンの貨 幣 的名 目所 得 理 論 は ゐω の安 定 性 を主 張 して い るの で あ るが 、 そ れ は 、 利 子 率 の安 定 性 と 々ω の 関数 関 係 の 安 定 性 か ら 成 っ て い る。 た だ し洒 々ω の安 定 性 は 貨 幣 需 要 の安 定性 と貨 幣 供 給 の 安定 性 に分 け る こ とが で きる 。 これ は貨 幣 の定 義 に 関連 す る問 題 で もあ る。 す な わ ち 、,M1を ハ イパ ワ ー ド ・マ ネ ー、 施 を信 用 貨 幣 を含 む貨 幣 量 とす る 。 こ の と き、 砺=m(r)Mlと い う関係 が あ る とす る と、     偽=π 伽     M1=[π ω乃ηω]・" と な る。 し た が っ て、 貨 幣 がM1の と きは 、 ゐω=π ω/〃3ωで あ り、 碗 の と きはk(r)=u(r) で あ る。 この よ うに貨 幣 供給 が 内 生 的(M2の 場 合)で あ って も数 量 説 は 成 立 す る が 、 ηω の 関 数 関係 の安 定 性 が 必 要 で あ る。 た だ し、 M1が 未 知 数 でrが 所 与 で あ る よ う な純 粋 信 用 モ デ ル で は数 量 説 は成 立 しな い 。 こ の よ う に 昂 ジの 安 定 性 は、 需 要 側 の 安 定 性 と供 給 側 の安 定 性 に分 け る こ とが便 利 で あ る 。 3  レ イ ヨ ン フ ー ヴ ッ ド   レイ ヨ ン フー ヴ ッ ドは ケ イ ンズ の 流動 性 選 好 説 を次 の よ うに解 釈 す る(7)。 す なわ ち、 『一 般 理 論 』 にお い て 、 貨 幣 とは短 期 資 産 の こ とで あ り、非 貨 幣 資 産 と は実 物資 産 を含 む長 期 資 産 で あ る。両 者 の 違 い は、価 格 の 利子 弾 力 性 で あ る 。 非貨 幣資 産 にお け る実 物 と非 実 物 の 相 違 は、 流 動性 プ レ ミア ムの 相 違 で あ るが 、 こ れ は慣 行 と 制 度 に よ って決 定 され 、 短期 に お い て は所 与 で あ る。 そ して代 表 的 利 子 率 は非 貨 幣 資 産 の価 格 水 準 を表 す もの で あ る。   レイ ヨ ン フー ヴ ッ ドに よれ ば ケ イ ンズ の 流動 性 選 好 関 数 にお い て 、貨 幣 需 要 が利 子率 の 関 数 で あ るの は、投 機 的貨 幣 需 要 が 存 在 す るか らで あ る。 そ して 、 レイ ヨ ンフ ー ヴ ッ ドの マ ネ タ リ ズ ム批 判 は こ の 投 機 的 貨 幣 需 要 に 基 づ い て い る(8)。   レイ ヨ ンフ ー ヴ ッ ドが考 え るの は次 の よ うな 場 合 で あ る。 完 全 雇 用状 態 に お い て資 本 の 限界 効 率表(投 資 の収 益 率 表)が 低 下 した とす る。 この と き完 全 雇 用 を維 持 す る た め に は利 子 率が 低 下 し、投 資 が変 化 しない こ とが必 要 で あ る。 しか しなが ら、 家計(資 産 保 有者) .が資本の限

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貨 幣 数量 説 と流 動 性選 好 説  一 レ イ ヨ ンフ ー ヴ ッ ド、 ヒ ックス 、 デ ヴ ィ ッ ドソ ンの理 論一 63 界 効 率 の 低下 は一 時 的 で あ る 、 ま た は低 下 して い ない とみ なす 場 合 に は、利 子 率 が 上昇 す る(債 券 価 格 が 下 落す る)と 予 想 し、債 券 を売 って 貨 幣 を保 有 す る。 この よ うな弱 気 の投 資 家 が 存在 す る と利 子率 が投 資 を同 じだ け維 持 す る ほ ど十 分 下 らな い。 す な わち 市場 利 子 率 が 自然 利 子率 (完全 雇 用 を維 持 す る利 子率)を う わ まわ る。 これ が レ イ ヨ ンフ ー ヴ ッ ドの い う 「利 子 率 の 誤 調 整 」 の 問題 であ り、 マ ネ タ リズ ム は、 これ を 軽 視 して い る とい うの が レイ ヨ ンフ ー ヴ ッ ドの 批 判 で あ る。   上 述 の レイ ヨン フー ヴ ッ ドの例 で は、 利 子 率 の 誤 調整 の原 因 は、 資 本 の 限界 効 率 に 関す る家 計 と企 業 の期 待 の 不 一 致 に よっ て生 ず る。 しか し、 家 計 が実 物 資 産 また は株 式 を保 有 し、 企 業 ・ の投 資 が 株式 に よ って 決 定 され る場 合 に は、 家 計 の 期待 と企 業 の 期 待 は同 じで あ り、両 者 の 期 待 の 不 一 致 は生 じない 。 い う まで もな く、 この 場 合 に も資産 保 有 著 聞 で の期 待 の相 違 に よ り投 機 は生 ず る。 期 待 が 一 致 しな い こ とが 投 機 の 原 因で あ る。た だ し、この 場 合 に は 、貨 幣 、債 券 、 株 式(実 物)の3資 産 が 存 在 す るた め 、投 機 は 債 券 と貨 幣 の あ い だ の み で 生 ず る わ け で は な い。 投 機 的 に貨 幣 を保 有 す るの は、債 券 と株 式 の1期 間 の期 待収 益 率 が 共 に負 の 場 合 で あ る。 レイ ヨ ン フー ヴ ッ ドの 例 で は、 利 子 率 の上 昇 期 待 が 資 本 の 収益 率 の上 昇 期 待 に基 づ い て い る。 この 場 合 に は、債 券 の期 待 収 益 率 は負 に な っ て も、 株 式 の期 待収 益 率 が 負 にな らな い な らば 、 投 機 は貨 幣 で はな く株 式 の 保 有 にな るだ ろ う。 これ は フ リー ドマ ンが 考 えて い る伝 達 メ カ ニ ズ ムで あ る。 以 上要 す る に、 実 物 資 産 ・株式 を含 む投 機 の 場 合 には 、投 機 の もと とな る期待 を形 成 す る原 因が 関係 す る。 したが って 、 撹 乱 の種 類 を問 題 に しなけ れ ば な らない 。   レ イ ヨ ンフ ー ヴ ッ ドに お い て は、 々ω の 変化 は投 機 的 貨 幣 需 要 に よっ て説 明 され る。投 機 は 期 待 に依 存 す るか ら、 々ω は安 定 的 で は な い。 しか しな が ら、 レイ ヨ ンフ ー ヴ ッ ドに よれ ば 、 正 常 なケ ース で は 、市 場 利 子 率 は 自然 利 子 率 を 追 うの で あ り、 こ の場 合 は 々ω の利 子 弾 力 性 は 小 さ く、 また 安定 的 で あ る。 したが って 、 マ ネ タ リス トの 世 界 が生 ず る。 この よ う な レ イ ヨ ン フー ヴ ッ ドの 理 論 は 、貨 幣 の流 通 速 度 の 可 変性 を 含 む と い う 意 味 で 、 「可 変 速 度 数 量 説 」 と い え る で あ ろ う(9)。 レ イ ヨ ン フ ー ヴ ッ ド に よ れ ・ば 数 量 説 の 定 義 は 次 の よ う に な る 。   考 え られ うる最 も広 い意 味 で の 「数 量 説 」 を次 の よ う に定 義 して よ い 。資 産 のあ る所 与 の集 ま りを 「砥 と定 義 す る こ とか ら始 め て 、 こ の財 「麺 の 需 要 と供 給 の決 定 要 因 に 関 して 貨 幣所 得 の変化 の分 析 に進 む貨 幣理 論 の ア プ ロ ーチ の すべ てで あ る と(10)。   レ イ ヨ ン フ ー ヴ ッ ドが 指 摘 す る よ う に 、 『一 般 理 論 』 を 可 変 数 量 説 的 に 解 釈 す る こ と が 可 能 で あ る が 、 こ の 点 に 関 して 、 ケ イ ン ズ 自 身 を批 判 す る の が 、 カ ル ドア 、 ロ ビ ン ソ ン な どで あ る 。 カ ル ドア は 、 「ケ イ ン ズ は 彼 の 「流 動 性 選 好 」 方 程 式M=Lα:,0に よ っ て 無 意 識 の う ち に ブ リ ー ドマ ン に よ る マ ネ タ リズ ム の 復 活 に 貢 献 し た(11)」 と 批 判 す る 。 カ ル ドア は 、 こ の よ う な 批 判 に 基 づ い て 、 利 子 率 は 与 件 で あ り貨 幣 量 が' 未 知 数 で あ る こ と を 、 す な わ ち 、 マ ネ ー ・サ プ ラ イ は受 動 的 で あ る こ と を主 張 す る 。 こ の 場 合 は 、 純 粋 信 用 モ デ ル で あ る か ら数 量 説 は 成 立 し な い 。 同 様 に 、 ロ ビ ン ソ ン は 「ケ イ ンズ の 譲 歩 が ケ イ ン ズ の 考 え 方 を 数 量 説 の 変 形 に 戻 して し ま っ た 」 の で あ り 、 む し ろ 、 「利 子 率 一 定 と 完 全 に 弾 力 的 な 貨 幣 供 給 と い う仮 定 か ら 出 発 した 方 が は る か に 簡 単 で あ っ た ろ う(12)」 と考 え る 。 ま た こ れ に 関 し て 、 ヒ ッ ク ス[6]は 、 中 央 銀 行 と メ ン バ ー ・バ ン ク の 関 係 は こ れ に 近 い もの で あ る と 考 え て い る(13)。 こ れ ら は 貨 幣 の 供 給 側 の 問 題 で あ る が 、 フ リ ー ドマ ン と レ イ ヨ ン フ ー ヴ ッ ド に お い て は と りあ げ ら れ て い な い 問 題 で あ る 。 4  ピ ッ ク ス   ヒ ックス に よれ ば 、 ケ イ ンズ の 流 動性 選 好 に は2つ の 意 味 が あ る。1つ は貨 幣 に対 す る需 要 で あ る。 これ は、 『一 般 理 論』 で と り扱 わ れ て い る貨 幣 需 要 で あ り、利 子 率 の 不 確 実性 に よっ て生 じる。 他 の1つ は 、流 動 性 の 異 な る資 産 の 問 で の 選 択 に か か わ る もの で あ り、 「貨 幣 論』 で 主 に扱 わ れ て い る概 念 で あ る(14)。この 場 合

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64 加納  正雄 の流 動 性 とは 、 「短 時 間 の通 告 に よ り損 失 な し に よ り確 実 に 回収 不 能 で あ る(15)」と い う意 味 で あ る。 ヒ ッ クス に よ れ ば 、 こ の よ うな 、 『貨 幣論 』 で 扱 われ て い る流 動 性 こ そ本 来 の流 動 性 で あ り、 こ の よ う な流動 性 に対 す る需 要 は貨 幣 の予 備 的需 要 に よ って表 され る。 ヒ ックス は特 に 、金 融 組 織 の 流 動 性維 持 行 動 を重 視 す る。 こ れ に対 して 、貨 幣 需 要 にお け る投 機 は一 般 的 で な い と考 え る(16)。   以上 は貨 幣 の需 要 側 の 問題 で あ るが 、貨 幣 の 供給 側 の問 題 と して 、 ヒ ック ス は 、古 典 派 にお け る2つ の学 派 を指 摘 す る(17)。   1つ は、 金 属 学 派 で あ る。 この学 派 は、 信 用 貨 幣 に金 属 貨 幣 と同 じ行 動 を と らせ る こ とが で きれ ば貨 幣 の管 理 が う ま くゆ く と考 え る。2節 のM1を 金 属 貨 幣 、 碗 を信 用 貨 幣 を含 む 貨 幣 量 と す れ ば 、 こ の 場 合 、 加ω を固 定 す る か、 また は関 数 関 係 を安 定 化 で きれ ば1鴎 の管 理 に よ って1匠2の 管 理 が で きる と い う こ とで あ る。 ヒ ックス に よれ ば、 これ は、 貨 幣 管理 に お け る ル ー ル を重 視 す る考 えで あ り、 リカ ー ドに代 表 され 、現 代 の フ リー ドマ ンに 繋 が る。  他 の1つ は、 信 用 学 派 で あ る。 こ の学 派 は信 用 制 度 は 不 安 定 で あ る と考 え る。 す な わ ち m(r)は 不 安 定 で あ り、 裁 量 的 政 策 に よ って1吻 を管理 す る こ とが 必 要 と なる 。 ヒ ック ス に よれ ば、 これ は ソ ー ン トン、 ミル か らケ イ ンズ に繋 が る考 え で あ る。 ピ ックス は信 用 学 派 を支 持 す る。 す な わ ち 、信 用 制 度 は確 信 と信 頼 に基 礎 を お い て お り、不 安 定 で あ る。信 頼 が 失 われ れ ば 、 ま った く無 効 に な る可 能 性 を も って お り、 ま た 強 い確 信 と楽観 が支 配 す れ ば投 機 とな って爆 発 す る 。 さ らに ピ ック ス は、 ソー ン トン を引 用 し て 、 実 物面 の原 因が 貨 幣 面 に影響 す る こ とを主 張 す る。 す な わ ち 、資 本 の 限 界 効 率 の 上昇 は信 用 の 拡 張 を起 こ し、 逆 に、 パ ニ ックが生 ず る場 合 に は信 用 は 自動 的 に縮 小 す る。   この よ うな貨 幣 の供 給 面 を最 も重 視 す る のが カ ル ドアで あ る(18)。m(r)が不 安 定 な場 合 に は M2の 管 理 が 必 要 に な る が 、 貨 幣 の 定 義 と して は 輪,砥 な ど よ り高 度 の 信 用 に 基 づ く貨 幣 が 存 在 す るの で あ り、管 理 す べ き は どの 貨 幣 か と い う問 題 が 生 ず る。 した が って 、 加ω が 不 安 定 な場 合 には 、全 体 の流 動 性 が 問 題 に な り、管 理 す べ き は、 貨 幣 で は な く利 子 率 で あ る 、 とい うこ とに な る。 この よ うな主 張 は、 い う まで も な く、 ラ ドタ リ フ報告 の そ れで あ り、 カ ル ドア は ラ ドタ リ フ報告 を高 く評 価 す るの で あ る。   ヒ ッ ク ス が 信 用 学 派 を支 持 す る こ と に対 し て 、 レ イ ヨ ン フ ー ヴ ッ ドは 次 の よ う に 批 判 す る(19)。す な わ ち 、 ヒ ック ス が 、 信 用 制 度 は 不 安 定 で あ るか らル ー ル よ り裁 量 政 策 が 必 要 で あ る 、 と主 張 す るの に対 して 、 レイ ヨ ン フ ー ヴ ッ ドは 、制 度 、 撹 乱 の種 類 、貨 幣 政 策 の 目 的 な ど を特 定 しな けれ ば 、 こ の命 題 は無 意 味 で あ る と 批 判 す る。 また 、 フ リー ドマ ン に対 す る ヒ ック ス の評 価 を否 定 す る。 さ らに 、数 量 説 を前 述 の 可 変 速 度 数 量 説 に定義 す る こ とに よ って 、 流 動 性 学 派 と比 較 す る。 レイ ヨ ンフ ー ヴ ッ ドに よれ ば 、 こ の分 類 にお い て は 、 ケ イ ンズ は前 者 に属 す るの で あ る。 そ して 、 流 動 性 学 派 は、 「数 量 説 ほ ど性 格 な定 式 化 や 代 数 的 な操 作 に は従 わ な い こ とが 判 明 した(20)」と批 判 す る。   信 用 の不 安 定 性 な どは 、制 度 を特 定 化 して 論 ず べ きで あ る、 とい う レイ ヨン フ ー ヴ ッ ドの 批 判 は正 当で あ ろ う。 逆 に 、流 動 性 が 正 確 な定 式 化 に従 わ な い こ と も、 そ れ が具 体 的 な制 度 、 景 気 の局 面 にお い て の み 意味 を もつ とい え るの で は な い だ ろ うか 。 本稿 で は6節 で こ れ ら の問 題 に 関 して若 干 の 分 析 を試 み る。 5  デ ヴ ィ ッ ドソ ン   デ ヴ ィ ッ ドソ ンに お い て は、 貨 幣 需 要 に関 し て次 の こ とが 強 調 され る 。総 貨 幣 需 要 は 、交 換 手 段 と して の 貨 幣 需要 と価 値 貯 蔵 手 段 と して の 貨 幣 需 要 か ら な る(21)。交換 手 段 と して の 貨 幣 需要 に お い て は、 そ れ が計 画支 出の 関 数 で あ る こ とが 強 調 さ れ る(22)。これ は 、不 均 衡 状 態 の 分析 に適 用 す る ため で あ る 。 こ の点 か ら 『一 般 理 論』 の定 式 化 に は批 判 的 で あ る。 価 値 貯 蔵 手 段 と して の貨 幣 需 要 にお い て は 、 リス ク と異 な る不 確 実性 に よ る流 動 性 需 要 が 強調 され る ㈱ 。 デ ヴ ィ ッ ドソ ン に よれ ば 、 こ の よ うな貨 幣 の特 質 は 『一般 理 論 』 の17章 に述べ られ て い る の で あ り、 レイ ヨン フ ー ヴ ッ ドは こ の章 を無 視 して い る と批 判 す る。 この 点 は ヒ ック ス と共 通 す る が 、予 備 的 需 要 と投 機 的 需要 は分 離 で きな い こ と、 流動 性 選 好 は本 来 は っ き りと した 関 数 関係

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貨 幣 数量 説 と流 動性 選 好 説 一 レイ ヨ ンフ ー ヴ ッ ド、 ヒ ック ス 、 デ ヴ ィ ッ ドソ ンの 理 論一 65 に よ って表 せ られ な い こ とを強 調 す る 点 に お い て 異 な る。   デ ヴ ィ ッ ドソ ンが フ リー ドマ ン を批 判 す る最 も大 きな点 は、資 産 保 有 者 の 価 値 保蔵 手 段 に は 実 物 資 産 を含 ま な い 、 とい う こ とで あ る(24)。 なぜ な らば、 実物 資 産 に は、 発 達 した市 場 が な く、取 引 コス トが 大 きいか らで あ る。 デ ヴ ィ ッ ドソ ンにお い て は 、家 計 は金 融 資 産 を保 有 し、 企 業 は実 物 資 産 を保 有 す る。 家 計 の ポ ー トフ ォ リオ均 衡 に よって 利 子 率 が 決 ま り、 そ れが 企 業 投 資 の 割 引率 に影 響 す る。 フ リー ドマ ンの 場 合 に は家 計 は実 物 資 産 を保 有 す る 。た だ し、フ リ ー ドマ ンの 強調 す る耐 久 消 費財 の場 合 に は、 価 値 保 蔵 で は な く消 費 が 目的 と考 え るべ きで あ ろ う。 した が っ て、 最 も問 題 に な る の は株 式 の 扱 いで あ る 。株 式 が 企 業 の 収益 を正 確 に反 映 し、 企 業 行動 が株 式 に よ って 説 明 さ れ る な らば 、 企 業 の投 資 行 動 は家 計 の 資 産選 択 行 動 に よ って説 明 され る。 した が って 、 デ ヴ ィ ッ ドソ ンは株 式 と企 業 収 益 の 関係 を否 定 す る の で あ る(25)。株 式 を含 む金 融 資 産 の価 値 と企 業 の 実 物 資産 の市 場 価 値 と は乖 離 す る の で あ る。 この よ う な デ ヴ ィ ッ ドソ ンの 理 論 の 問題 点 は企 業 に よる 実物 資産 の需 要 価 格 が どの よう に決 ま るか 、 とい う こ とで あ る。 これ は 、利 子 率 の 影 響 を受 け る が 家計 の 資 産 選 択行 動 に よ って 直 接 決 定 され る も ので は ない 。   貨 幣 の 供 給 に か ん して は、 デ ヴ ィ ッ ドソ ンは 次 の2つ の場 合 を 考 え る(26)。1つ は 、所 得 創 出過 程 で あ る 。 こ れ は、 企 業 が 支 出 を増 加 させ よう とす る と き貨 幣 需 要 が 増 加 し、 そ れ に応 じ て銀 行 に よ って 貨 幣 供 給 が 増 加 す る 場 合 で あ る。他 の1つ は 、 ポ ー トフ ォ リ オ変 更過 程 で あ る。 この場 合 は 、 中央 銀 行 に よ る公 開市 場 操 作 また は 銀行 に よる ポ ー トフ ォ リオ 変更 に よって 利 子率 が変 わ る。   デ ヴ ィ ッ ドソ ン は特 に、『貨 幣 論』を引 用 して 、 貨 幣 が 「繰 延 支 払 の 契 約 で あ る債 務 お よび売 買 契 約 の 付 け値 で あ る価 格 表 と と もに 表 れ る(27)」 こ とを 強調 す る。 これ は、所 得 創 出過 程 にお い て貨 幣需 要 の増 加 と と も に信 用 が拡 大 し、 貨 幣 供給 が 増 加 す る こ と を意 味 す る。 フ リー ドマ ン は こ の よ う なデ ヴ ィ ッ ドソ ンの主 張 を、 信 用 と 貨 幣 の 混 同 で あ る と批 判 す る(28)。こ の点 に関 して は次 の よ うに考 え る こ とが で き る。 上掲 の 『貨 幣論 』 か らの引 用 の 主 語 は 、貨 幣 で は な く 「計 算 貨 幣 は」 で あ る(29)。 ケ イ ンズ に よ れ ば、 貨 幣 は それ(計 算 貨 幣)に 対 応 す る 物 で あ る 。 した が って 、計 算 貨 幣 が 貨 幣 で あ る た め に は 、 債 務 の履 行 の 保証 、 また は強 制 が必 要 で あ る 。 この よ うに、信 用 貨 幣 にお い て は債 務 不履 行 の 問 題 が生 ず るが 、これ は程 度 の問 題 で あ る か ら、 な にが 貨 幣 か とい う問 題 は、信 用 状 況 と関連 し て くる。 した が って 、 そ れ は また景 気 の 局面 と 関連 させ る こ とが 必 要 で あ る 。 6  景 気 の局 面 との 関 連   フ リー ドマ ンの貨 幣 的 名 目所 得 理 論 で は貨 幣 量 の変 化 が 名 目国民 所 得 に与 え る効 果 が 問題 と な る。 しか しなが ら、 これ まで述 べ て きた よ う に 、 この 効 果 を景 気 の 局 面 と切 り離 して 論 じて も意 味 はな い。 特 に フ リー ドマ ンの 場合 、実 物 部 門 の変 化(投 資 の 収 益 率 表 の 変化)に 対 して 金 融 部 門が対 応 で きるか 、 とい う問 題 意 識が な い。 本 稿 で は、 この 問 題 を景気 の局 面 と関連 さ せ て考 えて み た い。 景 気 の 下 降 は 、次 の よ うな 段 階 を経 て生 ず る と考 え る。     (1)企 業家 の期 待 す る投 資 の収 益 率 表 の低       下    (2)利 子 率 の低 下 、 弱 気 の投 機 家 に よ る貨       幣 需要 の増 加    (3)投 資 の減 少 に よ る所 得 の減 少    (4)不 確 実 性 の 増 加 に よる流 動 性 需 要 の 増       加 と信 用 の 縮 小    (5)所 得 の よ り大 幅 な 減少    ⑥ 企 業 家 の 期 待 す る投 資 の収 益 率 表 の 下       方 へ の再 度 の 低 下   (1)から(3)はレイ ヨ ン フー ヴ ッ ドの い う利 子 率 の 誤 調 整 の段 階 で あ るが 、 これ を局 面1と 呼 ぶ こ と にす る 。この誤 調 整 の程 度 が 小 さい な らば 、 弱 気 の期 待 が修 正 され て 、 レイ ヨ ンフ ー ヴ ッ ド の い う正常 な ケ ース が 生 じる で あ ろ う。た だ し、 家 計 の 資産 選 択 と企 業 の投 資 決 定 は デ ヴ ィ ッ ド ソ ンの 主張 の よ う に考 え るべ きで あ ろ う。 した が って 、投 資 家 の 弱 気 の投 機 が企 業 の投 資 に ど の よ うな影 響 を与 え るか は、企 業 の投 資 決 定 の 方 法 、資 金 調 達 の方 法 な どに依 存 す るで あ ろ う。 (4)から⑥ は流 動 性 学 派 、信 用学 派 の 主張 す る状

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66 加納 正雄 況 で あ り、 これ を局 面Hと 呼 ぶ こ とにす る。(4) は、所 得 が 減 少 し、期 待 が 実 現 しない こ とに よ っ て 不 確 実性 が 増 加 し、 そ れ ぞ れ の主 体 が よ り流 動 的 な立 場 を保 持 しよ う とす る こ と に よる。 こ の よ うな状 況 で は利 子 率 は低 下 す る よ りもむ し ろ上 昇 す る場 合 も考 え られ る。(1)の変化 が大 き い 場 合 に は(1)から(4)が直 接 生 じる こ とが 考 え ら れ るが 、 一般 的 に は(4)の状 況 は 所 得 の 減少 の 後 に生 じる で あ ろ う。 金 融 政 策 の 効 果 は局面1に お い て は 有効 で あ り、 局 面Hに お い て は、特 に (6)が生 じた後 で は、 あ ま り有 効 で な い だ ろ う。 なぜ な らば 、局 面Hに おい て は、 信 頼 と確 信 の 回 復 が必 要 に な る か らで あ る。 した が って 、財 政 政 策 が 必 要 に な る だ ろ う。 レ イ ヨ ン フー ヴ ッ ドも利 子 率 の誤 調 整 を 「回 廊 の 内 側 」 の 状 況 と 考 え て い る(30)。た だ し、 レ イ ヨ ン フ ー ヴ ッ ド の場 合 、 「回廊 の 外 側」 の状 況 は 明 らかで ない 。 フ リー ドマ ンの場 合 は貨 幣 量 の 変化 の 効 果 を問 題 にす るの で あ るが 、 上 述 した よ う に どの局 面 で貨 幣 量 を増 加 させ た か に よ っ て効 果 が 異 な る で あ ろ う。 局 面Hの 場 合 の ほ うが 局 面1の 場 合 よ り も名 目所 得 の増 加 が多 いで あ ろ う。 貨 幣 需 要 が 正 常 な状 況 に戻 れ ば、 増 加 した 貨 幣 はイ ン フ レー シ ョンの 原 因 とな る で あ ろ う。   上 述 の よ うな 景気 循 環 の局 面 の問 題 は、 ケ イ ンズ の 『一 般 理論 』 の22章 の テ ーマ で あ る。 ケ イ ンズの 分 析 は体 系 的 で は な く、断 片 的 で あ る が 、上 述 の段 階 と関連 させ る こ と は可 能 で あ ろ う。特 に、 この 章 で の ケ イ ンズ の強 調 は、 期 待 の不 安 定 性 にあ る。 したが っ て 、期 待 が 景 気 を 安 定 させ る よ うに形 成 さ れ るか ど うか が 問 題 と な る。 この 点 マ ネ タ リス トの理 論 は 、明 らか に 体 系 が 安 定 す る よ うに期 待 が 形 成 さ れ る と言 え る で あ ろ う。   以上 の こ とは実 際 の 不況 の原 因 に関 して 具 体 的 な意 見 の 相 違 を検討 して み る こ とが 有 用 で あ ろ う。 この 点 に関 して 、大 不 況 の原 因 に関 す る ケ イ ンズ と フ リー ドマ ンの見 解 の相 違 を検 討 し て み る必 要 が あ る。 本稿 で は こ の点 に 関 して 十 分 に と り扱 うこ とは で きな い が 、 い くつ かの 点 を指 摘 した い 。 大 不 況 の 原 因 に 関す る ケ イ ンズ の 診 断 は 『貨 幣 論』 の30章 、7節 「合 衆 国 、 1925-30年 」、37章 の4節 「1930年の 景気 沈滞 」 にあ る。 こ こで の ケ イ ンズ の 見解 は次 の よ うで あ る。1929年 の 株 価 の暴 落 以 前 に 自然 利 子 率 は 以前 よ り低 下 して い た 。 しか しなが ら 、株 式価 格 は熱狂 的投 機 に よ り騰 貴 して い た。 そ こで 、 連邦 準 備 制 度 は、 投 機 的 な群 集 の 熱 狂 を規 制 す るた め 、 高利 子 率 政 策 を と った。 一 部 の企 業 は 高株 価 を利 用 して 投 資 資 金 を調 達 で き たが 、 そ うで な い企 業 の投 資 に対 して は大 き な影 響 を与 えた 。 これ が 、急 速 な崩 壊 を もた らす うえで 基 本 的 な役 割 を 演 じた とい う こ とで あ る(31)。こ の よ うな 見解 は明 らか に 自然利 子 率 と市 場 利 子 率 が 乖離 した こ と に よ るが 、 そ の原 因 は投 資 家 の 投 機 で は な く政 策 の 間 違 い で あ る。 投 資 家 の 投機 は貨 幣保 有 で はな く株 式 の保 有 に 向 か って い る。 貨 幣 の保 有 に向 か うの は景 気 の 崩 壊 後 で あ る。 レ イ ヨ ンフ ー ヴ ッ ドに よれ ば大 恐 慌 の は じま りを経 済 活 動 の実 際 の 下 降 に先 だ っ た金 融 逼 迫 期 に あ る とす る点 にお い て ケ イ ンズ と ブ リー ドマ ンの 見 解 は 一 致 す る と い う こ とで あ る(32)。   株 式 市 場 の 崩壊 は 、企 業 者 の心 に 、 悲 観 的心 理 を もた ら し、 自然利 子 率 を低下 させ 、事 業 活 動 を沈 滞 させ る。 この よう な状 況へ の対 策 は公 開市 場 操 作 の徹 底 的 な追 及 に よる 市場 利 子率 の 引 き下 げ で あ る(33)。『貨 幣論 』 に お け る ケ イ ン ズ は 明 らか に金 融 政策 を重 視 して い るの で あ る が 、 これ がL般 理論 」 で どの よ うに 変 わ った か が 問 題 に な る 。 『一 般 理論 』 で は、 金 融 政 策 に対 して懐 疑 的 に な るが 、 この場 合 に は 上 述 の 局 面H、 特 に、企 業家 の確 信 の 低 下 に よ って資 本 の 限界 効 率 が 大 き く低 下 す る とい う⑥ の 状 況 が 生 じて い る場 合 と考 え られ る(34}。こ の場 合 に は 、企 業 家 は投 資 の収 益 に対 して確 信 が 持 て な い ため 、 よ り流 動 的 な立 場 を保持 して い る 。 したが って 、 投 資 の 回復 の ため には 、 企 業 家 の 確 信 の回 復 が 必 要 とな る。 この よ う な場 合 に は 財 政 支 出 に よ る 「呼 び水 」 効 果 に よ って 確 信 を 回復 させ る こ とが 必要 とな るで あ ろ う。 ヒ ック ス は、 投 資 に対 して企 業 の 流 動 性 が 影 響 す る こ と を重 視 して い る(35)。これ は、 企 業 が 実 物 投 資 を行 な うと き、 非 流動 資 産 の獲 得 、 負 債 の 増 加 ま た は流 動 資 産 の減 少 に よ って 企 業 の 流 動 性 が減 少 す る。 流 動 性 に対 して危 惧 の 念 が 広 ま っ て い る状 態 で は、 企業 の こ の よ うな 流 動 性 の 減 少 が投 資 を 阻害 す るた め 、単 な る利 子 率 の引 き

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貨 幣数 量 説 と流 動 性 選 好 説  一 レイ ヨ ン フ ー ヴ ッ ド、 ピ ック ス 、デ ヴ ィ ッ ドソ ンの 理 論一 67 下 げ だ けで は 、投 資 に大 きな刺 激 を与 え る こ と に は な らな い 、 とい う こ とで あ る。 要 す る に、 不 況 を生 じさせ な いた め に 金融 政策 は重 要 で あ るが 、 深 刻 な不 況 に陥 った 後 は 金融 政 策 の効 果 は弱 い とい う こ とで あ る。   フ リー ドマ ンは 、景 気 後 退 を大恐 慌 に い た ら しめ た原 因 を 「1929年か ら33年 にか け て貨 幣 量 が3分 の1だ け削 減 され て い た(36)」こ と に求 め て い る。 す な わ ち 、連 邦 準 備 制 度 が銀 行 組 織 に対 して流 動 性 を供 給 しなか った た め に 、銀 行 の破 産 が 生 じた の で あ り、誤 った 金 融 政 策 こそ が大 恐 慌 の原 因 で あ る と見 な して い る。 しか し な が ら、 こ の場 合 の 貨 幣 の減 少 の原 因 は、預 金 一 通貨 比 率 と銀 行 の 預 金一 準 備 比 率 の急 落 に よ る もの で あ る ㈹ 。 した が って 、 こ れ は明 らか にM1と 偽 の 関係 が 変 化 し た こ と を 意 味 す る。 この場 合 、4節 の 信 用 学派 の とこ ろで 述 べ た よ う に 鰯 を管 理 で きた と して もそ れ 以 外 の 輪,砥 な どの 変 化 は影 響 しな い の か と い う問 題 が の こる 。 いず れ に して も、 景気 の低 下 が 始 ま る段 階 で の貨 幣政 策 の 重 要性 に 関 して は ケ イ ンズ が 否 定 しな いの は明 らか で あ る 。 注 (1)  レ イ ヨ ン フ ー ヴ ッ ド、 ピ ッ ク ス 、 デ ヴ ィ ッ ド   ソ ン の 流 動 性 選 好 説 に 対 す る 解 釈 に 関 し て は 、   拙 稿 「ケ イ ン ズ の 流 動 性 選 好 説 とIS-LM分 析   一 ヒ ッ ク ス 、 レ イ ヨ ン フ ー ヴ ッ ド、 デ ヴ ィ ッ     ドソ ン の 理 論 一J、 滋 賀 大 学 教 育 学 部 紀 要 第38   号,1985,参 照 。 (2)Gordon,[3],フ リ ー ドマ ン の 論 文 「貨 幣 分   析 の 理 論 的 枠 組 」. (3)Gordon,[3],邦 訳,  p.37. (4)  Gordon,[3],邦 訳,  p.72. (5)  Gordon,[3】,邦 訳,  p.52. (6)  Gordon,[3],邦 訳,  p.61. (7)  Leijonhufvud,  [11],  3章. (8)  Leijonhufvud,  [12],  7章. (9)Leijonhufvud,[11],邦 訳,  p394.「 そ の ケ   イ ン ズ に と っ て は 「過 去 の 期 待 状 態 の 残 滓J的   な 要 素 が 何 ら 流 動 性 選 好 関 数 に 付 随 して い な い   と 仮 定 して よ い な ら 、 「古 典 派 」 の 理 論 一 そ れ   は と り も な お さ ず 貨 幣 数 量 説 で あ る が 一 を復   活 さ せ れ ば そ れ で 十 分 と考 え ら れ て い た 。」 (10)  Leijonhufvud,[11],  p231. (11)Kaldor,[8],邦 訳,  p25, (12)Robinson,[13],邦 訳,  p143,  p142. (13)  Hicks,[6],邦 訳, p76. (14)Hicks,[5],2章,邦 訳,  p42. (15)  Hicks,[5],邦 訳,  p49. (16)  Hicks,  [5],  3章 (17)Hicks,[5],9章 (18)  Kaldor,[8]. (19)  Leijonhufvud,  [12],  8章. (20)Leijonhufvud,[ユ2],邦 訳,  p231. (21)  Davidson,  [1],  Gordon,  [3]. (22)  Davidson,[1],7章. (23)  Davidson,[1],8章. (24)Davidson,[1],8章,邦 訳,  p216,  Gor-  don,[3],邦 訳, p153. (25)  Daviason,[1),10章. (26)Davidson,.[1],9章.邦 訳,  p251. (27)  Davidson,[1],邦 訳, p251. (28)  Gordon,[3],邦 訳,  p225. (29)Keynes,[10],邦 訳,貨 幣 論1,p3. (30)Leijonhufvud,[12],邦 訳,  p202. (31)  「一 般 理 論 』に も 同 様 の 見 解 が 述 べ ら れ て い る 。   Keynes,[9],邦 訳,  p323. (32)Leijonhufvud,[11],邦 訳,  p310. (33)  Keynes,[10],邦 訳,貨 幣 論1,  p406. (34)例 え ば 、『一 般 理 論 』の12章 、「私 自 身 と し て は 、   現 在 、 利 子 率 に 影 響 を 及 ぼ そ う と す る 単 な る 貨     幣 政 策 が 成 功 す る か ど う か に つ い て い さ さ か 疑     い を も っ て い る 。 … … な ぜ な ら 、 上 述 の 原 理 に     基 づ い て 計 算 さ れ る 各 種 資 本 の 限 界 効 率 に 関 す     る 市 場 評 価 の 変 動 が あ ま り に も 大 き く な る の で 、     利 子 率 の 実 現 可 能 な 変 化 に よ っ て は も は や 相 殺     で き な い よ う に な る か も し れ な い か らで あ る 。」,     (Keynes,  [9],邦 訳, p162.) (35)Hicks,[6],邦 訳,  p72, (36)  Friedman,[2],邦 訳,  p205,大 恐 慌 の 原 因     に 関 す る フ リ ー ドマ ン の 見 解 に 関 し て は 、 早 坂,     [4],収 録 の 加 藤 の 論 文 参 照 。 (37)  早 坂,[4],加 藤 の 論 文 参 照 参考文献

[1]Davidson,  p., Money  and  the Real  World,  Mac・

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68 加納 正雄

    「貨 幣 的 経 済 理 論 』,日 本 経 済 評 論 社,1980. [2]  Friedman,  M.,  The  Counter-1∼evolution  in   Monetary  Theory.  The  I!istitute of  Economic   Affairs,  London,1970.(Occasional  Paper  No.   33)保 坂 直 達 訳 「イ ン フ レ ー シ ョ ン と 失 業 」,マ   グ ロ ゥ ヒ ル 好 学 社,1978.

[3]  Gordon,  R,  ed,, Milton  Friedman's  Monetary   Framework:ADebate  with His Critics. Chicago:   University  of Chicago  Press,1974.加 藤 寛 孝 訳     「フ リ ー ドマ ン の 貨 幣 理 論 」,マ グ ロ ウ ヒ ル 好 学   窄土, 1978.

[4]早 坂 忠 編 著 「ケ イ ン ズ 主 義 の 再 検 討 』,多 賀 出   版,1986.

[5]  Hicks,  J. R,  Critical  Essays  on  Monetary   Theory, Oxford,1967.江 沢 太 一 ・鬼 木 甫 訳 『貨   幣 理 論 」,東 洋 経 済 新 報 社,1972.

[6]      , 物  (】冗5f5 ゴπ 伽85如 π  E60鬼oη匠6亀   Yrjo  Jahnsson  Lectures,  Blackwell,1974,早 坂   忠 訳 「ケ イ ン ズ 経 済 学 の 危 機 」,ダ イ ヤ モ ン ド社,   1977.

[7]    ,Economic  Perspective, Oxford,1977.貝   塚 啓 明 訳 『経 済 学 の 思 考 法 』,岩 波 書 店,1985.

[8]Kaldor,  N., The Scourge  of Monetarism,  Oxford   University  Press,1982.原 正 彦 ・高 川 清 明 共 訳

    「マ ネ タ リ ズ ム そ の 罪 過 」,日 本 経 済 評 論 社. [9]Keynes,  J. M.,  The General  Theory  of Employ一   加印 ちInterest and Money,  Macmillan,1936.塩 野   谷 祐 一 訳 『雇 用 ・利 子 お よ び 貨 幣 の 一 般 理 論 』,   東 洋 経 済,1983.

[10]        ATreatise  on  Money  l  The  Pure   Theory  of Money,  Macmillan,1930.小 泉 明 ・長   澤 惟 恭 訳 『貨 幣 論1  貨 幣 の 純 粋 理 論 」,東 洋 経   済 新 報 社,1979.

    ,ATreatise  on Money,2The  Applied  Theory  of   Money,  Macmillan,1930.長 澤 惟 恭 訳 「貨 幣 論 皿   貨 幣 の 応 用 理 論 」,東 洋 経 済 新 報 社,1980. [11]Leijonhufvud,  A., On Keynesian  Economics  and   the Economics  of Keynes:AStudy  in Monetary   Theory, Oxford,1968.根 岸 隆 監 訳 「ケ イ ン ジ ア   ン の 経 済 学 と ケ イ ン ズ の 経 済 学 』,東 洋 経 済 新 報   社,1978.

[12]      ,Information  and Coordination:Essays  in   Macroeconomic  Theory,  Oxford,1981.片 平 ・ 藤   本 ・関 谷 ・北 村 訳 『ケ イ ン ズ 経 済 学 を 超 え て 』,   東 洋 経 済 新 報 社,1984.

[13]Robinson,  J., Economic  Heresies, Basic  Books,   1971.宇 沢 弘 文 訳 「異 端 の 経 済 学 』,日 本 経 済 新   聞 社,1973、

参照