• 検索結果がありません。

論 説 , ,_-_-——_-_—-—————_-_-_-

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2022

シェア "論 説 , ,_-_-——_-_—-—————_-_-_-"

Copied!
106
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

ー̲̲̲̲̲̲̲̲̲̲̲̲̲ —_—————-———-—-———————-—————————

;

i

,_-_-——_-_—-—————_-_-_-̲

論 説 ,

̲̲̲̲̲̲ ---_-——————-

援 助 行 動 と 法 に 関 す る 日 本 人 の 規 範 認 識

木 下 麻 奈 子

目次

1 2

3章

4

第 5章

問 題 の 所 在 モ デ ル の 説 明

1 MLSモ デ ル 2節 仮 説

方 法 1 2 3節 4 5 結 果 1 2 第 3節 結 論

調 査 対 象 調 査 方 法 調 査 期 間 質 問 紙 の 構 成 分 析 方 法

クロス表による分析結果

MLSモデル: LISREL (共分散構造分析)による分析結果 Ordered Probit Modelに よ る 分 析 結 果

ニ ニ

0

17‑3‑652 (香法'97)

(2)

援 助 行 動 と 法 に 関 す る 日 本 人 の 規 範 認 識 ( 木 下 )

1

章 問 題 の 所 在

本 研 究 は , 援 助 行 動 な ど の 利 他 主 義 に 基 づ く 人 々 の 行 為 を , 日 本 人 が ど の よ う に 認 識 し , そ の 行 為 が 法 や 道 徳 と い っ た 規 範 か ら い か な る 影 響 を 受

(1) 

け て い る か を 明 ら か に す る こ と を 目 的 と す る 。 本 稿 で は , 日 本 人 の 援 助 行 動 と 法 に 関 す る 規 範 意 識 の 構 造 を 分 析 す る に あ た っ て , 筆 者 が か つ て 提

(2)  (3) 

示し,後にアメリカでのデータ分析に援用したものと同じモデルを用いる。

ここ で 取 り 上 げ る法 は, 前稿 と同 じく ,援 助が 必要 な状 況に 遭遇 した人 に 法律上の援助を義務付け,その違反に対して法的制裁を加える法律(以下,

援 助 法 と 略 称 ) で あ る 。 使 用 す る デ ー タ は , 筆 者 が 大 阪 市 で 行 っ た 郵 送 調

(4) 

査に基づくものである。

援 助 行 動 と 規 範 の 構 造 は , 改 め て い う ま で も な く , 当 該 社 会 や 文 化 の 特 性 に 大 き な 影 響 を 受 け る 。 し か し な が ら , 何 が そ の 社 会 の 特 性 か を 示 す 絶 対 的 な 基 準 は 存 在 し な い 。 そ の よ う な 場 合 , 異 な る 文 化 と 比 較 す る こ と に

よって,相対的にその特性を捉えることが有効な方法である。本稿では,

日 本 人 の 援 助 行 動 と 規 範 意 識 の 関 係 の 特 徴 を , ア メ リ カ 人 の そ れ と の 比 較 を 通 じ て 明 ら か に す る こ と を 目 的 と し て い る 。 そ れ ゆ え , 本 稿 は 前 稿 と ほ ぼ同じ構成をとっている。アメリカを日本文化との比較群に選んだのは,

(5) 

一 つ に は ア メ リ カ の 犯 罪 率 が 日 本 に 比 べ て 著 し く 高 く , 援 助 の 必 要 な 状 況 に巻き込まれる可能性が高いこと,いま一つには,法で社会状況をコント ロ ー ル し よ う と す る 法 制 化 の 傾 向 が ア メ リ カ で 強 い か ら で あ る 。 そ れ 以 外 の 社 会 的 ・ 文 化 的 条 件 に つ い て は , 両 国 の 間 に 大 き な 差 が 生 じ な い よ う に 配慮 (control)している。たとえば,日本もアメリカも資本主義制の先進国

であり,調査に使用した都市がアメリカにおいてはサンフランシスコ市,

日 本 に お い て は 大 阪 市 と い う よ う に , い ず れ も 両 国 を 代 表 す る 大 都 会 で あ る。

ところで心理学の分野において,援助行動の問題に関心が持たれるよう に な っ た の は , ア メ リ カ で

1964

年に起こったキティ・ジェノヴィーズ事件

17‑3 ‑651 (香法'97) ‑ 2 ‑

(3)

(6) 

に端を発している。援助行動の研究が世界的に盛んになるにつれて,日本

{7) 

においても心理学分野で数多くの研究が行われるようになった。日本にお ける研究の関心は,主に援助場面の状況要因の分析,援助者や被援助者の 個人特性,援助行動の発達,援助者の意思決定過程といった分野に集中し

(8) 

ている。しかし残念なことに,日本の心理学の研究においては,法と援助 行動の関係に直接焦点をあてたものはまったく見受けられない。

一方,日本人の法に対する態度については,法社会学の分野において数 多くの研究が見受けられる。たとえば,川島武宜は「日本人の法意識」の

(9) 

中で,日本人が前近代的な意識を法に対して持っていることを論じている。

また日本文化会議編の調査報告は,実証的なデータから日本人の法意識を 分析した。それによると,日本人は法を知らず,法やおかみの世話を受け ずに暮らすことに意義があると考えているといっ。こういった態度は近年雙 においても顕著であり,日本人は公権力依存の受動的姿勢を持っていると

Qll  いっ。

これらの研究は,日本人の法に対する態度の根底に存在する特徴を巧み に描き出し,示唆に富むものである。しかしながら一方で,日本人に関わ る法意識論の問題点として,日本人の意識の「遅れ」を示すことを強調す

azi 

る消極的なものであったことが石村教授によって指摘されている。そのよ うな消極的な枠組みが使用される原因の一つとして,西欧のモデルを理想 化し,日本に直接あてはめてしまうことが挙げられよう。したがって,新 たに日本人の法意識について,積極的な枠組みに基づいた研究が必然的に

a3J 

肝要となる。

本稿は,これらの心理学における援助行動研究および,日本人の法意識 研究の持つ問題点に対して,独自の枠組みを提示する研究である。すなわ

ち本稿では,援助場面において,道徳や法規範に対して日本人がどのよう な態度を示すのか,そして法や道徳がどのような構造を持って機能してい るのかについて,筆者自身が作成したモデルに基づいて分析することを旨

とする。

‑ 3 ‑ 17‑3‑650 (香法'97)

J ¥  

(4)

援 助 行 動 と 法 に 関 す る 日 本 人 の 規 範 認 識 ( 木 下 )

2

章 モ デ ル の 説 明

第 1節

MLS

モデル

本 稿 で は , ま ず 筆 者 が ア メ リ カ の デ ー タ 分 析 で 使 用 し た モ デ ル ( 潜 在 変 数 名 と し て 使 用 し た

M o r a l i t y ,Legal P u r p o s e ,  S a n c t i o n

の頭文字をとっ て,以下このモデルを

MLS

モデルと略称する)で,日本のデータがどれほ

ど説明できるかを検討する。前稿において結論づけたように,筆者は

MLS

モ デ ル に よ っ て , ア メ リ カ 人 の 援 助 行 動 と 法 に 関 す る 意 識 が 非 常 に よ く 説 明されたと考えている。

MLS

モデルは,アメリカにおける多くの援助行動 を は じ め と す る 一 連 の 社 会 心 理 学 の 研 究 成 果 に 基 づ い て 構 築 し た も の で あ る。その意味で

MLS

モデルは「アメリカにおけるアメリカ人の援助行動に

;Jj) 

関 す る 規 範 意 識 の 自 己 理 解 モ デ ル 」 と い え よ う 。 そ の モ デ ル に よ っ て , 日 本 の デ ー タ を ど れ ほ ど 説 明 で き , ど の 点 に 違 い が 見 ら れ る の か , あ る い は ど う い っ た 点 が 説 明 で き な い か を 分 析 す る こ と は , 日 本 人 の 援 助 行 動 と 法 に関する規範意識を,「アメリカ人の視点」から相対的に捉える試みという

こともできる。

前 稿 で も 述 べ た よ う に

l ¥ 1 L S

モ デ ル の 要 点 は , あ る 状 況 で 援 助 行 動 を す るか否かの意思決定は,「モラリティーに対する評価」,「法の目的に対する 評価」,「サンクションに対する評価」の組み合わせから導かれるというこ と で あ る 。 ま ず モ ラ リ テ ィ ー に 対 す る 評 価 と は , 援 助 行 動 を 「 私 的 ・ 内 面 的 動 機 」 に 基 づ い て 行 う こ と に 対 す る 評 価 ( 志 向 ) を 意 味 す る 。 次 い で 法 の 目 的 に 対 す る 評 価 で あ る が , こ の 場 合 , 法 を ど の よ う に 定 義 す る か は 議 論 の 分 か れ る と こ ろ で あ る 。 本 稿 で は , 人 の 内 面 的 な 規 範 と 区 別 す る た め に , 法 を 「 人 に 援 助 を 義 務 づ け る 実 体 法 」 と し て 扱 う 。 そ れ ゆ え , 法 の 目 的 に 対 す る 評 価 と は , こ こ で は 「 援 助 義 務 」 を 法 で 義 務 づ け る こ と に 対 す る 評 価 ( 志 向 ) を 意 味 す る こ と に な る 。 最 後 の サ ン ク シ ョ ン に 対 す る 評 価 とは,「制裁」を用いて援助させることに対する評価(志向)を意味する。

前 稿 の 繰 り 返 し に な る が , こ れ ら の 3変 数 は 潜 在 的 な も の と し て 仮 説 的 に

17~3~649 (香法'97) ~4~

(5)

(15) 

構成したものであり,行動レベルに現れるものではない。

MLS

モデルでは,

3

つの潜在的変数の組み合わせによって,援助行動を 5つの行動類型に分類する。それらは「内面的同調」による援助行動,「外 面的同調」による援助行動,「心理的反発」による援助行動,「逸脱行動」,

お よ び 「 個 人 行 動 」 で あ る 。 な お 各 行 動 類 型 に つ い て の 詳 し い 説 明 は 前 稿 を参照されたい。

2

節 仮 説

本 稿 で は , 日 本 に お け る 援 助 行 動 と 法 の 関 係 を 検 討 し て い く が , 具 体 的 には次の 3つ仮説をもとにして検証を進める。

仮 説

1: 

日本においても

MLS

モ デ ル が あ て は ま り , 援 助 行 動 の

5

類 型 がみられる。

日 本 に お い て も , 援 助 行 動 は , モ ラ リ テ ィ ー に 対 す る 評 価 , 法 の 目 的 に 対する評価,サンクションに対する評価という, 3つ の 潜 在 的 変 数 の 組 合 わせによって,異なる 5つの類型に分類することができると考えられる。

そ の 結 果 , ア メ リ カ に お い て と 同 様 に , 内 面 的 同 調 , 外 面 的 同 調 , 心 理 的 反 発 , 逸 脱 行 動 , 個 人 行 動 の 5類型が観察できるであろう。

仮 説

2 : 

日 本 に お い て も , 法 の 有 無 に よ り , 人 の 援 助 に 関 す る 認 知 行 動 が変化する。

援 助 法 が 立 法 さ れ , 法 律 に よ っ て 援 助 す る こ と が 強 制 さ れ る と , 援 助 に 対 す る 規 範 認 知 の 構 造 が 変 化 す る と 思 わ れ る 。 お そ ら く 法 が あ る 場 合 に お

いて,法に関する潜在変数への反応が強くなるであろう。

仮 説 3 : 日 本 に お い て は , 法 に よ り 援 助 行 動 を 強 制 す る と , 援 助 行 動 は 個人のモラリティーに関わる行動だとかえって認知されなくなる。

つ ま り 日 本 で は , 法 は 生 活 の 「 ソ ト 」 に 存 在 す る 規 範 と し て 機 能 し て い る た め , 援 助 行 動 が い っ た ん 法 に 関 わ る 問 題 で あ る と 捉 え ら れ る と , 個 人 のモラリティーに関わる「ウチ」の問題と認識されなくなると思われる。

し た が っ て 法 が あ る と , 援 助 行 動 を 個 人 と は 別 世 界 の 制 度 の 問 題 と 捉 え て

‑ 5 ‑ 17‑3‑648 (香法'97)

’~

(6)

援 助 行 動 と 法 に 関 す る 日 本 人 の 規 範 認 識 ( 木 下 )

し ま い , 心 理 的 に お 上 に 依 存 し て し ま う の で は な い か 。 こ の 点 が , 援 助 行 動 を 原 則 的 に モ ラ リ テ ィ ー の 問 題 と 捉 え た ア メ リ カ 人 と 大 き く 異 な る と 思 われる。その結果,援助行動の 5類型の中で典型的にみられるパターンも,

日米間では異なってくると予測される。

3

章 方 法

第 1節 調 査 対 象

日 本 に お け る 調 査 地 域 は 大 阪 市 で あ る 。 大 阪 市 を 選 択 し た 理 由 は , ① 先 に調査を行ったアメリカ合衆国カリフォルニア小卜

I

サ ン フ ラ ン シ ス コ 市 と 似 た 性 格 を 持 つ 大 都 会 で あ る こ と , 事 実 , 大 阪 市 と サ ン フ ラ ン シ ス コ 市 は 姉 妹 都 市 の 関 係 に あ る こ と , ② 大 阪 市 の 特 徴 と し て , 援 助 場 面 に 遭 遇 す る 機 会 が , 郊 外 や 地 方 都 市 よ り も 多 い と 考 え ら れ る こ と の

2

点 に よ る 。 被 調 杏 者は,大阪市在住の

20

歳 以 上 の 男 女 市 民

1,000

人である。抽出方法は選挙 名 簿 か ら 無 作 為 抽 出 法 に よ っ た 。 な お 有 効 回 収 数 は

348

人 ( 回 収 率 は

34.8%)

で あ っ た 。 回 収 率 は あ ま り 高 く な か っ た が , そ の 理 由 は , 一 つ に は 経 費 の 関 係 で 郵 送 調 査 法 に よ っ た こ と , ま た 一 つ に は , 被 害 者 に 対 し て 援 助 を 必 要 と す る 状 況 が 日 本 で は そ れ ほ ど 多 く な く , 回 答 者 に も 問 題 意 識 が明確にならなかったからかも知れない。

2

節 調 査 方 法

調 査 方 法 は 郵 送 法 で 行 っ た 。 な お 実 査 部 分 は , 社 団 法 人 中 央 調 査 社 に 依 託した。

第 3節 調 査 期 間

1995

7

5

日に調査票を投函し,

1

週間後に督促はがきを投函した。

調 杏 票 返 送 の 締 め 切 り は

7

1 9

日とした。

17~3~647 (香法'97) 6 ‑

(7)

第 4節 質 問 紙 の 構 成

日 本 に お い て 使 用 し た 質 問 紙 は , 基 本 的 に ア メ リ カ に お け る 調 査 と 同 じ 内 容 で あ る 。 質 問 文 の 詳 細 に つ い て は 付 録

1

として本稿末に掲載した。た

06) 

だし,アメリカで使用した質問文の中から 3問 を 削 除 し た 。 そ れ ら は , 厳 罰 を 科 す 法 に 対 す る 評 価 を 尋 ね た 質 問 ( ア メ リ カ で の 調 査 で 使 用 し た 質 問 紙 の 質 問

1 6A), 

ア イ バ ン ク 等 へ の 登 録 の 有 無 を 尋 ね た 質 問 ( 同 じ く 質 問

1 9 ) ,  

および人種を尋ねた質問(同じく

F8)

で あ る 。 厳 罰 に つ い て の 質 問 を削除した理由は,その前の質問(同じく質問

1 5 )

で 類 似 の 質 問 を 行 っ た

07) 

た め で あ る 。 ア イ バ ン ク 等 の 臓 器 移 植 プ ロ グ ラ ム ヘ の 登 録 を 削 除 し た 理 由 も , 次 の 質 問 が 献 血 の 有 無 を 尋 ね た も の で あ っ た た め 重 複 す る と 考 え た か らである。またアイバンク等への登録は,日本においては敷居が高く,イ ナーシャ・ダミー

( i n e r t i adummy)

として使うには不適切であると考えら れ た 。 人 種 に 関 す る 質 問 を 削 除 し た の は , 日 本 の 調 査 対 象 地 域 に お い て は 意味をもたないからである。

5

節 分 析 方 法

日 本 の デ ー タ 分 析 は , 基 本 的 に は ア メ リ カ の デ ー タ 分 析 と 同 じ 手 法 に 基 づ い て い る 。 具 体 的 な 分 析 方 法 と し て は , ま ず 援 助 す る 意 図 の 有 無 と デ モ グ ラ フ ィ ッ ク 要 因 と の 関 係 を ク ロ ス 集 計 に よ り 分 析 す る 。 次 に , 共 分 散 構 造 分 析

(LISREL)

を使用して,援助行動を決定する

3

つ の 潜 在 的 な 要 因 を 検討する。その結果から得られた潜在変数の値を基にして,オーダード・

プロビット・モデル

(OrderedP r o b i t  Model)

を 使 用 し た 分 析 を 行 い , 日 本 における典型的な援助行動の類型を検討する。

4

章 結 果

1

節 ク ロ ス 表 に よ る 分 析 結 果 (1)  過 去 の 援 助 ・ 被 援 助 経 験

日本においては,

80.1%

の 人 が 「 他 人 が 暴 力 を 加 え ら れ て い る 場 面 に 出

‑ 7 ‑ 17‑3 ‑646 (香法'97)

(8)

援助行動と法に関する日本人の規範認識(木下)

会ったことがない」 と答え,

19.9%

の人のみが「出会ったことがある」 答えた(問 1)。 ア メ リ カ に お い て は 「 出 会 っ た こ と が あ る 」 と 答 え た も の が半数強を占めたのに対し,

た 人 が 8割強を占めたのは,

日本において「出会ったことがない」

(18) 

両国の犯罪率の違いを反映している。

と答え

「出会ったことがある」と答えた有効回答者のうち,

26.1%

の人が「警察,

駅員, 警備員などを呼んだ」

ちと協力して助けた」 とし,

とし,

11.6%

の 人 が 「 そ の 場 に い た 他 の 人 た

10.1%

の人が「自分だけで被害者を助けた」

とし, さらに

8.7%

の人が「その場にいた他の人に助けるように依頼した」

とした。このように目撃した人の

56.5%

が 何 ら か の 援 助 行 動 を し た の に 対 し,

43.5%

が「特に何もしなかった」と答えた(問

1

の 付 問

1)

。 助 け な か っ た理由としては,

42.9%

の人が「状況がそれほど深刻そうでなかったから」

としている。

(25.0%)~

その他の理由としては,

かったから」助けなかったという人は,

「巻き込まれたくなかったから」

「こわかったから」

(32.1%)

が挙げられる。 なお「とても忙し まったくいなかった。

次に, 他 者 か ら 暴 力 を 加 え ら れ た 経 験 の 有 無 に つ い て 尋 ね た と こ ろ ,

87.5%

の人が「ない」と回答し,

12.5%

の人が「ある」と回答した(問

2)

。 暴力を加えられた経験があると答えた人に, 「誰かに助けられたか」と尋ね

たところ, 「友人」

( 1 4 .6%), 

「見知らぬ人」

(12.2%),

「警官等」

(9.8%)

が助けてくれたと答えた。 一方,

48.8%

の 人 が 「 誰 か ら も 助 け ら れ な か っ た」 と回答した。 ただし

12.2%

の人が「特に助けは必要なかった」 とし,

2.4%

の人が「その他」

れ た 経 験 が

38.3%

あ る の に 対 し て , 日 本 に お い て は そ の 割 合 が 非 常 に 小 さ い の が 印 象 的 で あ る 。

と答えた (問

2

付問)。 ア メ リ カ で は 暴 力 を 加 え ら

ま た 暴 行 場 面 に お い て , 援 助 し な か っ た も の が

~ 43.5%, 

援 助 さ れ な か っ た も の が

48.8%

という数字はほぼ見合っており,

日本における援助行動の率は,半数をやや下回る程度と考えてよいだろう。

うち,

こ の 点 を 考 慮 に 入 れ る と , 日 本 に お い て , 援 助 が 必 要 な 状 況 に 陥 っ た 人 の

「誰も助けてくれなかった」と答えた人が約半数を占めたことは,

:9) 

きい値であるといえよう。

17~3 6 4 5  

(香法

' 9 7 )

(9)

ともあれ, このように事件を目撃しながら「何もしなかった」 と答えた 人が,アメリカにおいては

34.4%

で あ っ た の に 比 べ て 日 本 で は

43.5%

もい る こ と は , 両 国 に お け る 援 助 に 対 す る 態 度 の 重 要 な 違 い の 一 端 を 示 し て い る。 これらの違いは, 日本においては犯罪率が低いにもかかわらず, 見 知 ら ぬ 人 に 対 し て 援 助 す る 意 識 は 必 ず し も 高 く な い こ と を 意 味 し て い る の で はないか。同様の結果が,大東京火災海上保険会社が行った調査結果にも

)I

みられる。その調査によると,「因縁をつけられたり,けんかに巻き込まれ た場合, まわりにいる人は助けてくれると思うか」 という質問に対して,

大 半 の 人

( 8 4 .9%)

は「助けてくれるとは思わない」

に「自分が路上や電車内などで,具合が悪くなったりケガをした場合,

と答えている。 さら

わりにいる人は助けてくれると思うか」 という質問に対しても,

4

割 未 満 の人が「助けてくれるとは思わない」 と答えたという。

このように, 日本においては, ア メ リ カ に 比 べ て 援 助 す る 意 図 が 低 い だ けではなく, そ の 裏 返 し で あ る 援 助 さ れ る こ と に 対 す る 期 待 も 低 い の で あ る。 このことは日本人が援助するか否かを決める意思決定要因の一つに,

アメリカ人とは異なる判断基準を持つことを意味している。

前 出 の 保 険 会 社 の 調 査 も , 援 助 の 対 象 が 見 知 ここで注意す べきことは,筆者の調査も,

らぬ人であるという点である。

規範が常に及んでいる 「ウチ」

つまり援助の対象が「援助すべき」

の人間であるか,

という そ れ と も そ の よ う な 規 範 下にはない「ソト」 の人間かが,

ではないか。本研究においては,

日本人の援助意図の背後に隠れているの 日本人が援助行動をする際に, 「ウチ」と

「ソト」 の 区 別 か ら ど の よ う な 影 響 を 受 け て い る か を 分 析 す る こ と が 一 つ の重要な関心となる。

(2)  援 助 法 が な い 場 合 の 一 般 的 な 援 助 意 図

次に仮定の状況として,「公共の場所で誰かが暴力を加えられている場面 を見たとき, 自分に危害が及ばないようである場合,被害者を助けるか」

について質問したところ,

8

割以上のものが援助意図を持つとした(問

3)

17‑3‑644 (香法'97)

(10)

援助行動と法に関する日本人の規範認識(木下)

その内訳は,「必ず助けると思う」と答えたものは

14.3%,

「たぶん助ける と思う」と答えたものが

6 8 .7%, 

「たぶん助けないと思う」と答えたものが

16.1%, 

「絶対助けないと思う」と答えたのが

0.9%

で あ っ た 。 し か し , 問

1

の 結 果 が 示 す よ う に , 現 実 に は 誰 か ら も 助 け ら れ な か っ た と 答 え た 人 が 半 数 近 く い た わ け で あ る か ら , こ の 回 答 に は タ テ マ 工 的 な 主 観 的 バ イ ア ス が 混 入 し て い る と 思 わ れ る 。 ま た ア メ リ カ に 比 べ て 「 絶 対 助 け る だ ろ う 」

と答える人が少ない点にも,日本のデータの特徴が現れている。

助 け る 理 由 は 「 困 っ て い る 人 が い た ら , 見 過 ご す こ と の で き な い 性 分 だ から」という人が

61.1%

であり,「助けるのは義務だと思うから」が

30.2%,

そ の 他 が

8.8%

の順であった(問

3

付 問

1)

。助ける手段としては,「警察,

駅員,警備員などを呼ぶ」が

58.8%

ともっとも多く,「その場にいた他の人 た ち と 協 力 し て 助 け る 」 が

31.2%,

「自分一人で助ける」は

8.2%

で あ っ た

(問

3

付 問

2)

。この値は,「自分一人で助ける」と答えたものが

19.6%

い た ア メ リ カ の デ ー タ に 比 べ て 非 常 に 少 な い 。 日 本 で は , 暴 行 事 態 に 関 与 す るのは,個人ではなく,公の専門家であると考えられていることがわかる。

一方,助けない理由は,「自分がけがをするのがこわいから」が

57.1%

と 多く,次いで「他人のことに関わりたくないから」が

26.8%,

「このような 問 題 を 処 理 す る の は , 自 分 の よ う な 市 民 で は な く 警 察 の 仕 事 だ か ら 」 と す る 人 が

1 0 .7%, 

「 関 わ り あ う と , 後 で 警 察 に 呼 ば れ た り い ろ い ろ 面 倒 だ か ら」とする人が

5.4%

で あ っ た ( 問

3

付 問

3)

。 ア メ リ カ に お い て は 「 知 ら ない人に生じたことにはあまり関心がない」と答えたものは,

3.1%

しかい な か っ た こ と か ら す る と , 日 本 に お い て は ア メ リ カ に 比 べ て , 見 知 ら ぬ 他 人 と の 関 わ り 方 に 距 離 が あ る と い え よ う 。 こ の 結 果 は(1)で 検 討 し た 結 果 と 一貫したものであり,日本においては,援助するにあたって「ウチ」「ソト」

という対象者との距離が,一つの璽要な判断基準になると考えられる。

(3)  法 が な い 場 合 の 援 助 意 図 と 個 人 的 要 因 と の 関 係

援 助 法 が な い 場 合 の 援 助 意 図 ( 問 3) と , 社 会 的 態 度 お よ び デ モ グ ラ 17‑3 ‑643 (香法'97) ‑ 10  ‑

(11)

1 政 治 的 態 度 別 に み た 援 助 行 動 ( 法 が な い 場 合 )

援助の意図 助 け な い た ぶ ん 助 け る

絶 対 助 け る

計(%)

リベラル

6 .  7  6 6 .  7  2 6 .  7 

100.0  30 

中 道

15.3  72.3  12.4 

100.0  202 

総 数=327

保守

24.2  60.0  15.8 

100.0  95 

<  0 .  05 

フィック要因との関係をクロス集計表で調べた。なお,「絶対助けないだろ う 」 と 回 答 し た 人 の 数 が 極 め て 少 な か っ た の で , 分 析 上 「 絶 対 助 け な い だ ろう」と「たぶん助けないだろう」を合わせて「助けないだろう」という 項目を使用した。

ま ず 政 治 的 態 度 に つ い て は , 保 守 的 な 人 が 「 助 け な い だ ろ う 」 と 答 え る 比率が高く,革新的な人の方が「絶対助けるだろう」と答える比率が高かっ た

(P<0.05) 

(第

1

表)。アメリカにおいても同様の傾向がみられたが,

日本においての方がより明確な傾向がみられた。

世代別では, 20代 お よ び 70代以上の人に「助けないだろう」と答える割 合が高かったが,統計的に有意な差はみられなかった(第 2表)。この結果 は,多くの 20歳代の人が,「絶対助けるだろう」と答えたアメリカと対照 的な結果であった。日本において 20歳代は,社会的な責任を知覚していな いのかも知れない。

性 別 で は , 女 性 の 方 が 「 助 け な い だ ろ う 」 と 答 え る 比 率 が 高 い 傾 向 が み られた

( 0 .05 < P <  0  . 1 0 )  

(第

3

表)。この結果はアメリカと逆であり,両 国 で の 女 性 に 期 待 さ れ て い る 社 会 的 責 任 の 違 い を 示 す デ ー タ と し て 興 味 深

‑ 11  ‑ 17‑3‑642 (香法'97)

(12)

?Oll 

2 世代別にみた援助行動(法がない場合)

17 │ 641 

(:

ff

i:

$'

97

) 

援助の意図

20

30

40

50

代 60代

70

代以上

助けない たぶん助ける

絶対助ける

計(%)

2 5 . 0   5 9 .  6  1 5 . 4  

2 1 .  0  7 4 .  2  4 .   8 

1 0 . 3   7 2 .  4  1 7 .  2 

6 7 7   3 9 6   1 6 1  

1 0 .  6  7 1 .  2  1 8 .  2 

2 6 .  3  6 0 .  5  1 3 .  2 

1 0 0 .  0  5 2  

1 0 0 . 0   6 2  

1 0 0 .  0  5 8  

1 0 0 . 0   6 6  

1 0 0 .  0  6 6  

1 0 0 . 0   3 8  

│ 

1 2

総数二342 N.  S.  3 性別にみた援助行動(法がない場合)

滞迎ヰ逹芹許‑ぃ酒斗がエ斧

A '

s 海茸翠捧︵↓

F )

援助の意図 男性 女性

助けない たぶん助ける

絶対助ける

1 2 .   7  6 9 .  3  1 8 . 0  

2 0 .  3  6 8 .  2  1 1 .   5 

計(%)

1 0 0 . 0   1 5 0  

1 0 0 .  0  1 9 2  

総数=342

0 .   0 5   < 

<  0 .   1 0  

(13)

4 学歴別にみた援助行動(法がない場合)

援助の意図 小学校卒 中学校卒 高等学校卒

2

年制大学卒

4

年制大学卒 大学院卒 助けない

たぶん助ける 絶対助ける

2 6 2  

 

2 5 2   2 5 2  

15. 

3  6 2 .  7 

22. 2 

1 9 . 6  

73. 9 

6 .   5 

1 6 .  9  7 2 .  9 

10. 2 

1 3 . 8  

60.0 

2 6 .  2 

6 6 .  7  3 3 .  3 

計(%)

100.0 

, 

100.0 

5 9  

100.0 

1 3 8  

100.0 

5 9  

100.0  65 

100. 0 

│ 13 

総数=333 p 

0. 05 

5表 職叢別にみた援助行動(法がない場合)

援 助 の 意 図 農 林 漁 業 商 工 業 自由業 管理職 事務職 サービス職販売・ 技 能 ・労務職 主婦 学生 その他の無職

17 

3

640(w$'97) 

助けない たぶん助ける

絶対助ける

計(%)

100.0 

100.0 

16. 

73.0  10. 8 

100. 0  37 

6.  7 

8 6 .  7 

6 .   7 

100.0  15 

1 7 2  

 

2 6 1   1 6 2  

100. 0  33 

7 3  

 

6 3   1 8  

100. 0 

4 8  

2 9 9  

6

•••

4 8  

1 6 1  

100.0  37 

22. 2 

6 4 . 4  

13.3 

100.0 

4 5  

4 5 1  

 

2 0 7   2 6 1  

100.0 

7 6  

60.0  40.0 

100. 0 

10.0  63. 3 

2 6 .  7 

100. 0  30 

>Oll 

総数=327

0. 05 

(14)

c t O l   l 

6

収入別にみた援助行動(法がない場合)

17 

3

639

(:

:f

fi

:$

'9

7)

 

援助の意図 収入なし 100万円未満 130000万円以上 万円未満

300万円以上 500万円未満

500万円以上 800万円未満

800万円以上 1000万円未満

1000万円以上

2000万円未満 2000万円以上

助けない たぶん助ける

絶対助ける

計(%)

6 6 7  

.

7 7 4   1 6 1  

1 0 0 . 0   6 8  

23.3 

55.8  20.9 

1 0 0 .  0 

43 

9 6 6  

•••

4 7 7   1 6 1  

1 0 0 . 0  

74 

17. 2 

7 3 .  4  9 .   4 

1 0 0 . 0   6 4  

1 2 .  8  7 9 .  5  7 .   7 

1 0 0 .  0 

39 

1 6 . 0   6 8 . 0   1 6 . 0  

100.0  2 5  

77. 8 

2 2 .  2 

0 9  

6 6 .  7  3 3 .  3 

1 0 0 .  0  3 

14  総数二325 NS.

7 育った場所別にみた援助行動(法がない場合)

滞迎 立幽

h K U

m

A 3

> 迩 誤挺 蔀︵

↓↓ ') 援助の意図 大都市 大都市郊外 中小都市 町村

助けない たぶん助ける

絶対助ける

3 0 7  

 

7 7 5   1 6 1  

8 5 7  

 

1 3 4   1 7 1  

1 9 . 4  

77. 8 

2.  8 

3 7 0  

 

7 6 6   1 6 1  

計(%)

100.0  1 9 1  

1 0 0 . 0  

34 

1 0 0 . 0  

36 

1 0 0 . 0   7 5  

総数=336 N.  S. 

(15)

い。

学 歴 別 で は , 学 歴 の 低 い 人 の 方 が 「 助 け な い だ ろ う 」 と 答 え る 人 の 比 率 が 若 干 高 い 傾 向 が 見 ら れ た

(P<0.05) 

(第 4表)。これはアメリカと同じ 傾向である。

職業別では,技能・労務職の人,および主婦が,「助けないだろう」と答 え る 比 率 が 高 く , 管理職の人が「絶対助けるだ ろう 」 と答え る 傾向が 見 ら れた (P

<0.05) 

(第

5

表)。職業と学歴とには有意な関係が認められたの で (P

<0.01), 

これらの結果は一貫したものといえよう。

収入別では,統計的に有意な差はみられなかった。ただし,年収が

1 0 0

万 円未満の人は,「助けないだろう」と答える比率が高く,同時に「絶対助け るだろう」と答える比率も高い傾向がみられた(第 6表)。つまり年収が

1 0 0

万 円 未 満 の 人 ( た だ し , 収 入 な し を 除 く ) の 間 で , 援 助 に 対 す る 態 度 の 分 散 が 最 も 大 き い 。 そ れ 以 上 の 年 収 で は 「 た ぶ ん 助 け る だ ろ う 」 と 答 え る 人 の 割 合 が 増 加 し た 。 日 米 間 で は 物 価 水 準 が 異 な る の で 比 較 す る の は 難 し い が , ア メ リ カ に お い て は 年 収 に か か わ ら ず 「 絶 対 助 け る だ ろ う 」 と 答 え る 人の割合が日本に比べて多い。

育った場所別でも,統計的に有意な差はみられなかった(第

7

表)。日本 に お い て は 育 っ た 場 所 に 関 わ ら ず

1

割から

2

割の人が「助けないだろう」

と考えている。

近 所 と の 交 流 度 別 で は , 統 計 的 に 有 意 な 差 が み ら れ , 近 所 と の つ き あ い が少ないほど,「助けないだろう」と答える人の割合が高かった(P

<0.05) 

(第 8表)。近隣との一体感,ないしはコミュニティー意識が,援助行動に 関わりを持つことを示している。

宗教別では,無宗教の人が,「助けないだろう」と答える人の割合が高い の に 対 し , 仏 教 , 神 道 , キ リ ス ト 教 等 を 信 仰 し て い る 人 は , 宗 派 に か か わ らず「おそらく助けるだろう」と答える割合が高かった。「絶対助けるだろ う 」 と す る 人 は , 宗 教 の 有 無 や 種 類 に か か わ ら ず 少 な く , 仏 教 徒 と 無 宗 教 の 人 に そ れ ぞ れ

15%

程度いただけであった。この結果は,統計的にも有意

0

‑ 15 ‑ 17‑3‑638 (香法'97)

(16)

t : f i O  l 

8 近所との交流度別にみた援助行動(法がない場合)

17 

3

637

(:

ff

i:

$'

97

) 

援助の意図 頻繁に 時々 滅多に 全然しない

助けない たぶん助ける

絶対助ける

9 .   4 

71.8  18. 8 

3 8 9  

 

7 0 1   1 7 1  

9 7 4  

 

3 9 6   2 5 1  

28. 6  71. 4 

計(%)

1 0 0 .  0  8 5  

1 0 0 . 0  

168 

100.0 

67 

1 0 0 . 0  

14 

│ 16  9

総数=334

宗教別にみた援助行動(法がない場合)

<  0 .  0 5  

滋迎 ゴぃ 湮行 許‑ ぃ涅

i

r n

A3

茫悪翠器︵↓

T )

援助の意図 仏教 神道 キリスト教

その他

無宗教

助けない たぷん助ける たぶん助ける

9.  6  76. 

14. 1 

2 8  

 

8 1   1 8

  1 0 0 . 0  

2 8  

 

8 1   1 8  

23. 6 

6 0 . 0  

16. 4 

計(%)

1 0 0 . 0  

135 

100.0 

11 

1 0 0 . 0   2 

100.0  1 1  

1 0 0 .  0 

165 

総数=324 p 

0.  01 

(17)

な差がみられた (P

<0.01) 

(第

9

表)。

以 上 の 結 果 か ら , 日 本 に お い て は , 革 新 的 , 中 年 , 男 性 , 高 学 歴 , 管 理 職 , 近 所 と の 交 流 が 多 い 人 が 高 い 援 助 意 図 を 持 つ 傾 向 に あ る 。 つ ま り 社 会 に 関 心 が あ り , そ れ と 関 与 す る 程 度 の 高 い 人 , あ る い は 社 会 的 に 高 い 責 任 を 負 っ て い る 人 ほ ど 援 助 意 図 が 強 い と い え よ う 。 た だ , 大 多 数 の 人 が 援 助 意 図 を 持 っ て い て も と も と 分 布 に 偏 り が あ る た め , デ モ グ ラ フ ィ ッ ク 要 因

との間には著しく強い関係が認められなかった。

(4)  援 助 法 が あ る 場 合 の 援 助 意 図

問 5で は , こ れ も 仮 定 の 場 面 と し て , 援 助 法 が あ る 場 合 の 援 助 意 図 を 尋 ね た 。 こ れ は 問

3

と対応するものである。その結果,

10.4%

の 人 が 「 絶 対 助けるだろう」とし,

67.9%

の人が「おそらく助けるだろう」,

19.9%

の人 が「おそらく助けないだろう」, 1.8%の 人 が 「 絶 対 助 け な い だ ろ う 」 と 答 えた。全体として, 8割 弱 の 人 が 援 助 意 図 を 有 し て い る 。 法 の な い 場 合 に 比べると,「絶対助けるだろう」と答えたものが少し減り,「たぶん助けな い だ ろ う 」 と す る も の が 少 し 増 え た 。 ま た 日 本 に お い て は 「 絶 対 助 け る だ

10 政 治 的 態 度 別 に み た 援 助 行 動 ( 法 が あ る 場 合 )

援 助 の 意 図 助けない た ぷ ん 助 け る

絶 対 助 け る

リ ベ ラ ル 中 道 保守

13.3  70.0  1 6 .  7 

2 1 .  2 

6 7 .  7 

11. 1 

2 6 .  9  6 7 .  7 

5.4 

計(%)

100.0 

30 

100.0  198 

100. 0  93 

0

総 数=321 N. S. 

‑ 17  ‑ 17‑3 ‑636 (香法'97)

(18)

援 助 行 動 と 法 に 関 す る 日 本 人 の 規 範 認 識 ( 木 下 )

ろう」

(5) 

と答えるものがアメリカの

3

分 の

1

程度しかいなかった。

法 が あ る 場 合 の 援 助 意 図 と 個 人 的 要 因 と の 関 係 政 治 的 態 度 別 で は , 統 計 的 に 有 意 な 差 は み ら れ な か っ た だし保守的な人で,

(第

1 0

表)。

「絶対助けるだろう」という人は非常に少なかった。

メ リ カ に お い て は 統 計 的 に 有 意 な 差 は み ら れ な か っ た も の の , 保 守 的 な 人 と, リベラルな人の両者の援助意図が強かったのと対照的である。 日本と ア メ リ カ で は , 政 治 的 な 意 味 で の 保 守 と 革 新 が 異 な る 価 値 意 識 を 持 っ て い

ることを裏付けていよう。

世代別でも有意な差はみられなかった。ただし

2 0

代の人,

5 0

代の人,

7 0

代以上の人が「助けないだろう」 という比率が若干高い傾向にあった (第

1 1

表)。 つ ま り 日 本 に お い て は , 援 助 意 図 は 逆

U

字 型 の カ ー ブ を 示 し て い た。一方アメリカにおいても統計的に有意な差はみられなかったものの,

年 齢 層 の 若 い 人

( 2 0

歳代と以下)の援助意図が高かった。 これらの分布の 違 い は , 両 国 に お い て 期 待 さ れ る 責 任 の 重 さ が 年 齢 に よ っ て 異 な っ て い る

ためではないかと思われる。

性別では,女性の方が「助けないであろう」 と答える割合が男性の場合 より少し多い傾向にあった

(0.05<P <0.10) 

(第

1 2

表)。

る女性の援助意図の高さと対比的である。

アメリカにおけ

学歴別では,学歴が高い人ほど「絶対助けるだろう」 と答える比率が増 し, ヵrつ 「助けないだろう」 と答える比率が減少している。

数の少なかった大学院生はこの傾向にあてはまらなかった。

た だ し , 絶 対 この傾向は統 計 的 に も 有 意 で あ っ た

(P<0.05) 

(第

1 3

表)。 アメリカでは, 高卒と

2

0

制 大 学 卒 の 人 の 援 助 意 図 が 高 く , 逆

U

字型のカーブを描いていた。

職業別では,商工業の人,および主婦のものに,「助けないだろう」と答 える傾向が見られたが,統計的には有意な差はみられなかった(第

1 4

表)。

職業と教育程度は関係が高く

(P<0.01), 

商工業の人, お よ び 主 婦 は 高 卒 の人の占める割合が多いので,

17‑3‑635 (香法'97)

これらの結果は一貫したものである。

~18

(19)

11表 世代別にみた援助行動(法がある場合)

援助の意図

20

30

40

50

60

70

代以上 助けない

たぶん助ける 絶対助ける

計(%)

6 7 8  

. 

1 6 1   2 6 1  

7 1 1   7

6 6   1 6 1  

1 9 1  

. 

2 5 2   1 7 1  

3 0 .  2  6 0 .  3  9 .   5 

1 8 .  5  7 3 .  8  7 .   7 

3 5 .  1  6 2 .  2  2 .   7 

1 0 0 . 0   5 1  

1 0 0 .  0  6 2  

100.0  5 8  

1 0 0 . 0   6 3  

1 0 0 . 0   6 5  

1 0 0 . 0   3 7  

19 12

総数=336 性別にみた援助行動(法がある場合)

N. S. 

援助の意図

男性 女性

17 

3

634

(:ffi:~'97)

助けない たぶん助ける

絶対助ける

4 1 4  

 

7 9 3   1 6 1  

2 5 .  1  6 6 .  8 

8 . 0  

計(%)

1 0 0 . 0   1 4 9  

1 0 0 . 0   1 8 7  

総数=336

0 .   0 5   < 

<  0 .   1 0  

l l O l l  

(20)

l O l l  

13 学歴別にみた援助行動(法がある場合)

17 

3

633

(w

̀ 

97 ) 

援助の意図 小学校卒 中学校卒 高等学校卒

2

年制大学卒

4

年制大学卒 大学院卒 助けない

たぶん助ける 絶対助ける

44.4  55.6 

30. 

5  6 2 .  7  6 .   8 

2 0 .  7 

73. 3 

5 .   9 

13. 8 

7 5 .  9 

10.3 

1 8 .  5 

60.0  21. 5 

33. 3  33. 3  33. 3 

計(%)

100. 0 

, 

100.0 

5 9  

100.0  135 

100.0 

5 8  

100.0 

6 5  

100.0 

20ー—

総数=329 p 

0 .   0 5  

14 職巣別にみた援助行動(法がある場合)

深菩 ゴ幽

h

‑ r i

m

サ A '

s 迦惹稔捧︵ナ

T ・ )

援 助 の 意 図 農 林 漁 業 商 工 業 自由業 管理職 事務職 サービス職販売・ 主婦 学生 その他の無職

助けない たぶん助ける

絶対助ける

計(%) 100.0 

100.0  32. 

4  6 2 .  2 

5 .   4 

100.0  37 

7 .   7  8 4 .  6 

7 .   7 

100.0  13 

1 7 2  

 

2 2 5   1 7 1  

100. 0 

3 3  

16. 

7  6 6 .  7 

16. 

100. 0 

4 8  

4 4 1  

 

9 9 1   1 6 1  

100.0  36 

2 0 .  5  6 8 .  2  1 1 .  4 

100.0 

4 4  

25. 

3  6 9 .  3  5 .   3 

100.0 

7 5  

60. 0  40. 0 

100. 0 

2 3 .  3 

73. 3 

3 .   3 

100.0  30  総数=322 N.  S. 

(21)

15 収入別にみた援助行動(法がある場合)

援助の意図 収入なし 100万円未満 100万円以上 300万円以上 500万円以上 300万円未満 500万円未満 800万円未満

800万円以上 1000万円未満

1000万円以上

2000万円未満 2000万円以上

助けない たぶん助ける

絶対助ける

2 1 .  7  7 2 .  5  5 .   8 

2 1 .   4  7 1 . 4  

7 .   1 

2 5 .  7  6 6 .  2  8 .   1 

1 7 .  5  6 9 .   8  1 2 .  7 

4 1 4  

.  

9 1 9   1 6 1  

2 4 . 0   6 8 . 0   8 . 0  

9 1  

. 

8 1   8 1  

7 3  

.  

6 3   6 3  

計(%)

1 0 0 .  0  6 9  

1 0 0 .  0  4 2  

1 0 0 . 0   7 4  

1 0 0 .  0  6 3  

1 0 0 . 0   3 6  

1 0 0 . 0   2 5  

1 0 0 . 0  

,  1 0

0 . 0  

21

総数=321 N.  S.  16表 育った場所別にみた援助行動(法がある場合)

援助の意図 大都市 大都市郊外 中小都市 町村

17 

3

632

(:

ff

i:

$'

97

) 

助けない たぶん助ける

絶対助ける

1 8 . 4   7 1 .   6  1 0 . 0  

1 7 .   6  6 7 . 6   1 4 .  7 

2 7 1  

.  

2 6 1   2 6 1  

3 0 .  6  6 2 . 5  

6 .   9 

計(%)

1 0 0 . 0   1 9 0  

1 0 0 . 0   3 4  

1 0 0 . 0   3 6  

1 0 0 . 0   7 2  

総数=332 N.  S. 

OOll 

(22)

~~l 17 近所との交流度別にみた援助行動(法がある場合)

1 7

3

631(w$'97) 

援助の意図 頻繁に 時々 滅多に 全然しない

助けない たぶん助ける

絶対助ける

3 5 1  

 

2 6 1   1 7 1  

2 2 .  3  7 0 .  5  7 .   2 

2 7 .  9  6 3 .  2  8 .   8 

6 7 7

 

 

8 5 5   2 3 3  

計(%)

100.0  8 1  

1 0 0 . 0   1 6 6  

1 0 0 . 0   6 8  

1 0 0 . 0   1 4  

│ 

22 

18

仏教

総数=329

宗教別にみた援助行動(法がある場合)

0 .   0 5  

窃湮ヰ湮行芹合涅斗がH

AS

迎悪堤器︵丼

F )

援助の意図 神道 キリスト教 その他 無宗教

助けない たぶん助ける

絶対助ける

7 2  

︐ 

 

9 1   1 7  

2 8  

 

8 1   1 8

  1 0 0 . 0   7

2  

 

. 2 8   7 1  

︐  2 4 .  4 

6 5 .  9  9 .   8 

計(%)

100.0  1 3 2  

100.0  1 1  

1 0 0 . 0   2 

1 0 0 .  0  1 1  

1 0 0 . 0  

1 6 4  

総数=320 N.  S. 

(23)

収 入 別 で は , 統 計 的 な 差 は み ら れ ず , ど の 年 収 の 人 で も 2割 程 度 の 人 が

「助けない」と答えている。絶対数の少ない年収

1,000

万 円 以 上

2,000

万 円 未 満 お よ び

2,000

万円以上の人のなかには,「助けないだろう」と答えた 人はいなかった。(第

1 5

表)

育 っ た 場 所 別 で は , 法 が な い 場 合 と 同 様 , 回 答 に 傾 向 は み ら れ な か っ た

(第

1 6

表)。アメリカとは対照的に,日本においては地域差がみられない ことは興味深い。

近所との交流度別では,交流がないほど,「助けないだろう」と答える傾 向にあった。これらの傾向に関しては,統計的に有意な差がみられた(P

0 . 0 5 )  

(第

1 7

表)。また「全然交流がない」と答えた人のうちで,「絶対助 けるだろう」と答えた比率と「助けないだろう」と答えた比率が共に高く,

援 助 行 動 に 対 す る 態 度 が 分 散 し た 。 ア メ リ カ で は 交 流 度 に よ る 差 は 見 ら れ な か っ た が , 今 回 の 結 果 は , コ ミ ュ ニ テ ィ ー の あ り 方 と 援 助 行 動 の 関 係 を 考 え る と き , 両 国 の 社 会 的 背 景 の 違 い を 考 慮 す る 必 要 が あ る こ と 示 し て い

る。

宗 教 別 で は , 統 計 的 に 有 意 な 差 が み ら れ な か っ た が , 無 宗 教 の 人 の 中 で

「助けないだろう」と答える人の割合が,宗教を信仰している人たちに比 べて高かった(第

1 8

表)。アメリカにおいても,無宗教の人は「助けない」

と答える人の比率が高かった。このことは,社会や文化の違いを超えて,

宗教を信じない人の特性が存在することを意味していよう。

以上の結果から,法がある場合においても社会に関与する程度の高い人,

あ る い は 社 会 的 に 高 い 責 任 を 負 っ て い る 人 ほ ど 援 助 意 図 が 強 い と い え よ う。

(6)  援 助 法 の あ る 場 合 と な い 場 合 の 比 較

援 助 法 の 存 在 が ど の よ う に 影 響 す る か を み る た め に , 法 の あ る 場 合 と な い場合の援助意図の傾向を比較する。

ま ず 一 般 的 な 援 助 意 図 に つ い て は , 法 の 有 無 に よ っ て 援 助 意 図 の 傾 向 に 九八

‑ 23 ‑ 17‑3‑630 (香法'97)

(24)

援助行動と法に関する日本人の規範認識(木下)

0 0  

7 9 6  

50← 

L~ll;9,''',L'~.~L9』←

o n ] 0   4 3 2  

パーセント

lC 

口 援 助 法 な し 霞 援 助 法 あ り

絶対助ける たぷん助げる たぷん助けない 絶対助けない

援助意区

第 1 援 助 す る 意 図 : 一 般 的 な 場 合

大 き な 変 化 は み ら れ な い 。 法 の な い 場 合 で は 8割強の人が, 法 の あ る 場 合 で は 8割弱の人が何らかの援助意図を持っていた。 た だ し 援 助 法 が あ る 場 合の方が, 「絶対助けるだろう」という回答が減っている(第

1

図を参照)。

法の有無による援助意図の変化は, グ ラ フ で は 小 さ な 変 化 と し か み え な い が,

は,

p a i r e d  t ‑ t e s t

の 結 果 で は 統 計 的 な 差 が み ら れ た

(P<0.01)

。 人の行動が「法があるからより援助する」

この結果 と い っ た 単 純 な 構 造 に な い ことを意味しよう。 この点については後にもう一度論じる。

ところが不思議なことに,援助場面を特定化すると,上記の結果は異なっ た様相を示す。援助場面を具体的にいうと,①犯人が複数の場合(第 2図),

一九 七

② 犯 人 が 凶 器 を 持 っ て い る と き ( 第 3図),③目撃者が自分一人のとき(第 4図),④目撃者が複数いるとき(第 5図),⑤急いでいるとき(第 6図),

⑥ 被 害 者 が レ イ プ さ れ そ う に な っ て い る と き ( 第 7図), という 6条 件 で あ る(問 4(a),...___,(f)~

る場合の方が,

問 6(a)~(f)) 。 これらのどの状況においても,

「絶対助けるだろう」

援 助 法 が あ と答える人の比率が増加している。

また援助意図を平均値で比較すると, 法 の あ る 場 合 の 方 が 高 く な っ て お 17‑3 ‑629 (香法'97) 24~

(25)

70 

60 

50 

0 0   4 3  

パーセント

20 

10 

口 援 助 法 な し 111援 助 法 あ り

絶対助ける たぶん助ける たぶん助けない 絶対助けない

援助意図l

2 援 助 す る 意 図 : 犯 人 が 複 数 の と き

70 

60 

50 

0 0   4 3  

パーセント

20 

10 

国 援 助 法 な し •援助法あり

絶対助ける たぶん助ける たぷん助けない 絶対助けない

援助意図

3 援 助 す る 意 図 : 犯 人 が 凶 器 を も っ て い る と き

九六

‑ 25 ‑ 17‑3‑628 (香法'97)

(26)

援 助 行 動 と 法 に 関 す る 日 本 人 の 規 範 認 識 ( 木 下 )

70 

60 

{ u   ~•

9

0 0   4 3  

パーセント

20← 

10 

70  , 

60← 

50 

L,

0 0   4 3  

パーセント

20 

10 

n 3 

絶対助ける

4 援 助 す る 意 図 : あ な た が 唯 一 の 目 撃 者 の と き

絶 対 助 け る

九五

17‑3 ‑627 (香法'97)

口 援 助 法 な し 1'l11援 助 法 あ り

たぶん助ける たぷん助げない 絶対助けない

援 助 意 固

口 援 助 法 な し 曰 援 助 法 あ り

たぷん助ける たぷん助げない 絶対助けない

援助意図

5 援 助 す る 意 図 : 目 撃 者 が あ な た 以 外 に も い た と き

‑ 26 ‑

(27)

70 

60 

~~~.-~~―~ー·~~”-.

0 0 0 0   5 4 3 2 パーセント  

10 

70 

60 

50 

4 3  

パーセント

20 

10 

口 援 助 法 な し 霧援助法あり

絶対助ける たぷん助ける たぷん助けない 絶対助けない

援 助 意 図

6 援助する意図:急いでいるとき

口 援 助 法 な し 匿援助法あり

絶対助ける たぶん助ける たぶん助けない 絶対助けない

援 助 意 函

7 援助する意図:レイブ事件のとき

九四

‑ 27 ‑ 17‑3‑626 (香法'97)

参照

関連したドキュメント