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ドイツにおける銀行の株主規制

銀行経営悪化時における株主責任を

検討するための基礎的作業として一一

ヽ,̲

ー は じ め に

二 銀 行 株 主 に 対 す る 規 制

1.  資本参加の取得に関する規制 2.  資本参加の変更に関する規制

3.  銀行株主に対する報告徴求・立入検査 銀行経営悪化時における銀行株主の責任

1.  支援表明の法的性質 (1)  「強い (harte)」支援表明 (2)  「弱い (weiche)」支援表明

2 .  

支援表明に基づく銀行株主の責任 (1)  支援表明の運用

(2)  預金保護基金規則

(3)  支援表明に基づく責任範囲

3.  支援表明の実効性に対する批判的検討 (1)  心理的な伝播リスク

(2)  自己資本の重複利用 むすびに代えて

七〇

‑ 1 ‑ 24-3•4-410 (香法2005)

(2)

六九

ー は じ め に

銀行は,広く国民一般から預金その他のかたちで資金を受け入れ,効率 的な資源配分を実現すべく,そこで集めた資金を企業や個人等の資金需要 者の望むかたちで貸し付けるという金融仲介機能としての役割を果たして

(1) 

いる。このような金融仲介機能は各経済主体間の資金移動を円滑にし,国 民経済の発展に欠かせないものである。このことは,規制緩和の進展,情 報通信技術

( I T )

の発達等に伴い新たな形態の銀行業が出現している今日

においても変わりはない。そこで,銀行法

1

1

項は,「銀行の業務の公 共性にかんがみ,信用を維持し,預金者等の保護を確保するとともに金融 の円滑を図るため,銀行の業務の健全かつ適切な運営を期し,もって国民 経済の健全な発展に資することを目的とする」として,信用秩序の維持,

預金者の保護および金融の円滑を具体的な指導原理とする銀行の公共性を

(2)  (3)  (4) 

掲げ,この点から,営業免許制度や銀行業務の範囲に関する規定,自己資

(5) 

本比率規制等その他銀行に対する各種規制が設けられている。 . 

法人または個人を問わず銀行の議決権の一定割合を保有する銀行主要株

(6)  (7) 

主や銀行持株会社といった銀行の株主も例外ではなく,その前提としての

(8) 

認可が要求されるほか,銀行法

5 2

条の

1 4

1

項(銀行持株会社について は,

5 2

条の

3 3

1

項として個別に規定)において,「内閣総理大臣は,

総株主の議決権数の

1 0 0

分の

5 0

を超える銀行主要株主の業務又は財産の 状況に照らして,当該銀行の業務の健全かつ適切な運営を確保するために 特に必要があると認めるときは,その必要の限度において,当該銀行主要 株主に対し,措置を講ずべき事項及び期限を示して,当該銀行の経営の健 全性を確保するための改善計画の提出を求め,若しくは提出された改善計 画の変更を命じ,又はその必要の限度において監督上必要な措置を命ずる

(9) 

ことができる」とされているように(下線:よ筆者による),銀行経営の悪 化時には,銀行主要株主のうち銀行経営に支配的影響力を行使しうるよう

な支配株主または銀行持株会社に対して当該銀行の支援を要請できる旨の

(3)

規定が置かれている。このような規定は,銀行経営の健全性確保を促進し,

預金者保護の観点からも望ましいものであるということができる。ただ し,「その必要の限度において」とあるように,実際の運用においては銀

(10) 

行株主の過度の負担にならないよう配慮することが求められようし,銀行 経営悪化時に銀行株主に何らかの支援を求めることが適当であるとして

も,商法

200

1

項の定める「株主有限責任の原則」との関係はもとより,

銀行業の発展や利用者利便の向上に資するような銀行業への参入に対する 障壁とならないよう,何らかの手当てを行うことが必要であるものと思わ れる。

ところで,わが国と同様に,既存銀行の支配株式の取得または新規の銀 行設立を通じて広く銀行を所有することが認められる欧州諸国のうちイギ

リスでは,「第一に,金融サービス機構

( F i n a n c i a lS e r v i c e  A u t h o r i t y ,  

以下,

FSA

」という)」が株式保有に関連して支配者

( c o n t r o l l e r )

を評価する のを助けること,第二に, (1)支配者が預金受入業務の特別な性質を認識す るのを確保すること,および(2)必要な場合には,支配者は有限責任を超え

(11) 

て銀行を支援する道義上の責任の引受けを確認するのを確保すること」を 目的として,

FSA

が,連合王国内で設立された銀行の議決権の

15%

以上 を支配する会社,外国銀行, トラスト,ミューチュアル・ファンドあるい は個人に対してコンフォート・レター

( l e t t e r s o f   c o m f o r t )

の提出を求め

(12)  (13) 

ることで,あらかじめ支援の意思を確認する措置が講じられている。コン フォート・レターの内容や形式等について特に指定されているわけではな

(14) 

い。しかしながら,コンフォート・レターは,「必要な場合には,株主有 限責任を超えて銀行を支援することを約束するという連合王国内で設立さ

(15) 

れた銀行の支配者によって

FSA

に備えられた手紙」であることから,そ

(16) 

の内容に割合的な条件

( p r or a t a   t e r m s )

を付すことは認められていない。

もっとも,

FSA

はその法的性質について,「コンフォート・レターは法的 拘束力のある手紙ではなく,意思の陳述であり,保証と同じようにはみな

(17) 

されない」として,銀行経営の悪化時におけるコンフォート・レターに基 六八

‑ 3 ‑ 24-3•4-408 (香法2005)

(4)

づく支配者の責任がもっぱら道義上の責任にとどまらざるをえないことを

(18) 

明らかにしている。

(19) 

ユニバーサル・バンクの法体系を採るドイツにおいても,株主である親 会社が銀行を含む国内外の子会社の契約上の債務を保証する旨の「支援表

(20) 

( P a t r o n a t s e r k l a r u n g )

」 を 行 う こ と で , あ ら か じ め 支 援 の 意 思 を 確 認 す る措置が講じられている。しかしながら,イギリスにおけるコンフォート・

レターとは異なり, ドイツにおける支援表明については法的拘束力を伴う ものと何ら法的拘束力を伴わないものとがあり,その内容や形式等も特に 指定されず,親会社の子銀行に対する支援の程度を制限した文言を含んだ

ものまで見られる。

平成

1 2

1 2

7

日の金融審議会第一部会「異業種参入に伴う銀行法等 の整備•他業禁止の緩和等に関するワーキング・グループ報告」および同

1 2

2 1

日の同部会「銀行業における主要株主に関するルール整備及び 新 た な ビ ジ ネ ス ・ モ デ ル と 規 制 緩 和 に つ い て 一 金 融 審 議 会 第 一 部 会 報 告ー」ではそれぞれ,イギリスにおけるコンフォート・レターの制度への

(21) 

言及がなされているものの,本稿では,銀行経営悪化時における銀行株主 の責任として,コンフォート・レターと同様にあらかじめ支援の意思の確 認を求める支援表明の制度とそこから生じる問題点の整理を中心に, ドイ

(22) 

ツにおける銀行の株主への法的対応の現状を明らかにしたい。

(1)  「銀行業」とは,「(1)預金または定期積金の受入れと資金の貸付または手形の割引 とを併せ行うこと, (2)為替取引を行うことのいずれかを営業とするもの」と定義さ れる(銀行法22

(2) 小山嘉昭『詳解銀行法』 57頁(社団法人金融財政事情研究会, 2004年),氏兼裕 之=仲浩史『銀行法の解説』 32頁(社団法人金融財政事情研究会, 1994

(3)  銀行法2 1 41

.L...  (4)  銀行法10 11 12

(5)  銀行法14条の2'「銀行法 14条の2に定める自己資本比率の基準を定める件」(平 53月31日大蔵省告示第55

(6)  「銀行主要株主」とは,「銀行の総株主の議決権'J)100分の20(主要株主基準値)

以上の数の議決権を保有し,内閣総理大臣の認可を受けた法人ないし個人」をいう

(銀行法29 10 52条の9 1

た だ に 人 的 な 関 係 や 融 資 等 の 取 引 関

(5)

係等を通じて重要な影響を与えることができる場合には,銀行経営に対する実質的 な影響力に着目して,「財務諸表等の用語,様式及び作成方法に関する規則(昭和38 年大蔵省令第59 862号イからホまでに掲げる要件に該当する者が当該会 社の議決権の保有者である場合にあっては, 100分の 15」を保有する者もまた,「銀 行主要株主」と定義される(銀行法29項,銀行法施行規則 l条の2)

(7)  「銀行持株会社」とは,「銀行を子会社とする持株会社であって,内閣総理大臣か ら設立の認可を受けたもの」をいう(銀行法213 52条の 171項)。ここで いう「持株会社」は,子会社の株式の取得価額の合計額の当該会社の総資産に対す る割合が100分の50を超える会社である(銀行法212項,独占禁止法95

1

(8)  銀行主要株主または銀行持株会社に対する各種規制については,小山・前掲注(2) 438 頁以下のほか,今井克典「子銀行の経営悪化に対する銀行持株会社の責任(—)」名 古屋大学法政論集1986頁以下 (2003年),西村総合法律事務所編『ファイナンス 法大全(上)』 650頁以下(株式会社商事法務, 2003年)を参照。

(9)  銀行法52条の 331項において,「銀行持株会社の業務又は銀行持株会社及びそ の子会社等の財産の状況に照らして,……当該銀行持株会社の子会社である銀行の 業務の健全かつ適切な運営を確保するために必要があると認めるときは,……又は 当該銀行持株会社に対しその必要の限度において……」とされているのに対し,銀 行法52条の 141項では,「総株主の議決権数の 100分の 50を超える銀行主要株 主の業務又は財産の状況に照らして,……当該銀行の業務の健全かつ適切な運営を 確保するために特に必要があると認めるときは,……又はその必要の限度において

……」として(下線は筆者による),「必要があると認めるときは」の前に「特に」

という文言が挿入されているが,今井・前掲注(8)12頁によれば,これは,子銀行の 経営管理や子銀行を含む子会社の経営管理を主たる業務とする銀行持株会社(銀行 51条の211項)と,銀行の経営管理のみならず他業を行う可能性から必ずし も銀行の経営管理を主たる業務とはしていない銀行主要株主との違いによるもので あるという。

(10)  森下国彦=渡邊雅之「銀行株主に対する新たな規制の導入ー改正銀行法(平成 14 4月施行)の概要と意義一」金融法務事情164831 (2002

(11)  Interim  Prudential  Source book : Banks, CL, s 2 . 1 General , 3 (a) (b) . なお, Interim Prudential  Sourcebook : Banks (http://www.fsa.gov.uk/handbook/lipru̲bank.pdf)か

ら閲覧可能である。

(12)  Interim Prudential Sourcebook:  Banks, CL, s 2. 2 Who might be asked,  7 (a). 

例外として,関連する株式保有が,通常そのような利害関係に結び付けられる権 限を越えて,ガバナンスの権限を付与するものと思われる場合や,利害関係が大き くなくても,重大な影響力が行使されている場合には, FSAは,銀行の議決権の 15%

を支配しない支配者 (controller)からもコンフォート・レターの提出を求めることが できる (InterimPrudential  Sourcebook: Banks, CL, s 2. 1 General,  2 (b).)。また,大規 模な金融グループの一部である会社または持株会社の子会社というかたちで,支配 者が実際に第三者によって所有されるかまたは支配される場合にも, FSAはコンフォ ート・レターを代わりに当該第三者から求めることができるか否かについて検討す るとしている (InterimPrudential  Sourcebook: Banks, CL, s 2. 2 Who might be asked,  9.)。なお,支配者が個人である場合,支配者自らコンフォート・レターに署名し,

それ以外の場合には,取締役会への報告の後,上級取締役(seniordirector)がコンフォ

六六

‑ 5 ‑ 24-3•4-406 (香法2005)

(6)

ート・レターに署名しなければならない (Interim Prudential  Sourcebook : Banks, CL,  s 2. 2 Who might be asked,  7 (bX c)̲ ! 

(13)  コンフォート・レターの制度は.19749月 に , イ ン グ ラ ン ド 銀 行 (Bank of  England)が連合王国内で設立された銀行の株式を支配する外国銀行に対してその提

出を求めたことにその起源を有するこその後,このような慣行は連合王国内および 諸外国の非銀行株主にまで拡張され, 1984年 の ジ ョ ン ソ ン ・ マ セ イ 銀 行 の 破 綻 の 後,現行法上の規定が設けられているこ AlanC. Page,  The State and Corporate Groups  in  the  United  Kingdom, in  David  Sugarman & Gunther Teubner, Regulating  Corporate  Groups in Europe,  at 263‑264  (1990) ; Bank of England, Supervision of banks and other  deposit taking institutions,  Bank of England Quarterly Bulletin Vol. 1,  No. 3 Sept,  at 383,  384‑385  (1978). 

(14)  吉井敦子「銀行規制における主要株主の責任」法学雑誌第4841118 (2002

(15)  Interim Prudential Sourcebook : Banks, CL, s 2.  1 General, 1.  (16)  Interim Prudential Sourcebook : Banks, CL, s 2.  1 General, 2 (a)(i).  (17)  Interim Prudential Sourcebook : Banks, CL, s 2.  1 General, 1. 

(18)  コンフォート・レターの制度を含めて,イギリスにおける銀行の株主規制につい ては,吉井・前掲注(14)1111頁に詳しい。

(19)  ユニバーサル・バンク制度の下では,銀行本体でほぼ全ての銀行業務と証券業務

(生命保険業務,投資信託委託業務および建築貯蓄業務については子会社を通じて)

を 営 む こ と が 可 能 で あ り , 銀 行 業 務 に つ い て は 信 用 制 度 法 (Gesetziiber das  Kreditwesen:  KWG) 11項が,非銀行業務については届出を条件として KWGl

la項がそれぞれ以下のように定める:

(1)  銀行業務 (KWGl

1

①利息の支払いの有無にかかわらず,返済義務が無記名債券または裏書により譲 渡可能な証券によって証明される場合を除いて,預金としての他人からの資金 の受入れまたは公衆からの資金の受入れ(預金業務);

②貸付および(手形の)引受条件付き信用(貸付業務);

③為替手形および小切手の買取り(割引業務);

④他人のために自己名義で行う有価証券の売買(証券取引業務);

⑤他人のための有価証券の保管および管理(保管業務);

⑥投資会社法l条に定められた業務(投資業務,;

⑦満期前に貸付債権を取得するための債務の引受け;

⑧他人のための保証およびその他の担保の引受け(保証業務);

⑨振替勘定取引および決済業務(振替決済業務;

⑩自己負担による有価証券の買取りまたは対侶での保証の引受け(引受業務);ぉ よび

⑪電子マネーの発行および管理(電子マネー業務

...L.  (2)  非銀行業務 (KWGl 1a 2419

①有価証券の売買およびその仲介業務の仲介 投資仲介業務);

②第三者の名義および勘定で行う有価証券の先買(ブローカー業務);

③有価証券に投資された個人の資産ポートフてリオの管理(資産管理業務);

④ディーラーとしての有価証券の売買(デノーリング業務);

⑤欧州経済地域以外の企業との預金業務の仲介 第三国預金仲介業務);

(7)

⑥現金振替業務;

⑦外国為替業務;および

⑧クレジットカードおよびトラベラーズチェックの発行と管理(クレジットカー ド業務)

(20)  「支援表明」という訳語については,椿久美子「取引における保証・物上保証の機 能一日本・ドイツにおける保証の多様化と経営指導念書を中心に一」椿寿夫『現代 取引法の基礎的課題』 477頁(有斐閣, 1999年)に従った。なお,「支援宣言」(森 本滋「ヨーロッパにおける金融持株会社の実態」旬刊商事法務14243(1996 や,「保護表明」(小松卓也「結合企業における統一的運営とそれに対する融資銀行

との関係について」神戸学院法学第34巻第1号247 (2004年))も同様の意味と 解される。

(21)  金融審議会第一部会「異業種参入に伴う銀行法等の整備•他業禁止の緩和等に関 するワーキング・グループ報告」の「

I .

主要株主に関するルール整備について 6.  銀行経営悪化時の主要株主の責任」において,「50%超を保有する主要株主に対して

は,コンフォート・レターや銀行持株会社に対する改善計画の提出の求め等のよう に,銀行経営の健全性確保のための措置を求めるなどの何らかの手当てを行うこと が考えられる」とし,金融審議会第一部会「銀行業における主要株主に関するルー ル整備及び新たなビジネス・モデルと規制緩和について一金融審議会第一部会報告 ー」の「3. 銀行の主要株主に関するルール整備 (6)銀行経営悪化時の対応」にお いても,「諸外国の例を見ると,例えば,英国ではコンフォート・レターという手法 で一定の株主に対してあらかじめ支援の意思の確認を求めている」とされている(下 線は筆者による)。

(22)  「地域原則 (Regionalprinzip)」の下で業務が出資主体の地域に制限される州立銀行 (Landesbanken)および貯蓄銀行 (Sparkassen)等の公的金融機関については,その出 資主体である州および地方公共団体が法律上, (1)銀行の存続を維持し,その業務の 継続を確保し,流動性資金の分配その他適切な方法で債務の履行を可能ならしめる

(維持責任 (Anstaltslast)), および(2)銀行が債務不履行に陥った場合には,全ての債 務を弁済する(保証者責任 (Gewrtragerhaftung)) ということで,銀行の債権者に 対し無限責任を負うことが義務づけられている。しかし,公的金融機関に対する維 持・保証者責任制度については,預金の払戻しが最終的に州の財源によって保証さ

れるという点では預金者保護に資する反面,維持・保証者責任制度が公的金融機関 に不公正な競争上のメリットを与えかねないとして,同制度の是非をめぐって議論 がなされていたところ (MarkE.  Nance & Bernd Singhof, Banking Influence over Non ‑ Bank  Companies  after  Grass‑Steagall:  A German  Universal  Comparison, 14  Emory  International  Law Review, at  1307,  1353‑1354  (2000) ; Michael  Gruson  & Uwe H.  Schneider, The German Landesbanken, Columbia Business Law Review, Vol. 1995, No. 2,  at  337, 417‑419  (1995) .)  , 199912月に欧州銀行協会が「ドイツ公的金融機関に付 与された維持責任および保証者責任は正当な政府援助に該当しない」とする訴えを 提起したことを受けて, 2001717日,欧州委員会とドイツ連邦政府は,一定の 条件の下で,維持・ 保証者責任制度の廃止について基本合意に達している(羽森直 子「ドイツの金融システムの特徴」調査季報64号40 (2003

もっとも,本稿では,株主である親会社が子銀行のために行う支援表明を対象と していることから,公的金融機関に対する維持・保証者責任制度については特に取 り上げない。その他,維持・保証者責任制度とそれをめぐる議論を取り扱ったもの

六四

‑ 7 ‑ 24-3•4-404 (香法2005)

(8)

としては,天野佳子「岐路に立つドイツ公営生命保険」ニッセイ基礎研REPORT2001 11月号24 (2001年),加藤史)::ードイツにおける公的金融機関に対する公的保 証の廃止・改正について(上)」金蔽6,‑‑! 11頁以下 (2003年),同「ドイツにおけ る公的金融機関に対する公的保証の廃止・改正について(下)」金融67521頁 以 (2003年),河村小百合「ドイツつ公的銀行改革の動向ーEUにおける競争政策運 営とわが国への示唆」 Japan research  reiew.Vol. 13, No. 9,  18頁以下 (2003年),広 瀬脩二朗「ドイツ公的金融機関民営化問題序説」神戸学院経済学論集第33巻第 1. 

241頁以下 (2001

銀行株主に対する規制

1 9 6 1

年 に わ が 国 の 銀 行 法 に 相 当 す る 信 用 制 度 法

( G e s e t z U b e r   d a s  

(23) 

K r e d i t w e s e n  v .   1 0 .  7 .   1 9 6 1 ,   BGBL  I  8 8 1 ,  

以下,「KWG」という)が制定さ れて以降, ドイツでは長きにわたり銀行の株主に対して何ら特別な規制は

(24) 

実施されてこなかった。しかし,欧州銀行市場の単一化の実現に向けて

EU 

(欧州連合)加盟国との国内規定の相互承認を成し遂げるべく

1 9 9 3

年 に行われた

4

度目の

KWG

改正(G

e s e t z  z u r  Anderung d e s  G e s e t z e s  U b e r  d a s   K e d i t w e s e n   und  a n d e r e r   V o r s c h r i f t e n   U b e r   K r e d i t i n s t i t u t e   v .  2 1 .  1 2 .  1 9 9 2 ,  

(25) 

BGBL  I  2 2 1 1 )

を機に,金融機関の株式保有等について定める「信用機関 の業務へのアクセス及び遂行に関する法律,規制及び行政規定の調整並び に指令

77/780EWG

の修正のための

1 9 8 9

1 2

1 5日の第 2

次理事会指 令

( S e c o n dC o u n c i l  D i r e c t i v e  o f  1 5  D e c .  1 9 8 9  on t h e   C o o r d i n a t i o n  o f  Laws  R e g u l a t i o n s   and  A d m i n i s t r a t i v e   P r o v i s i o n s   R e l a t i n g   t o   t h e   T a k i n g ‑ u p   and  P u r s u i t  o f  t h e  B u s i n e s s  o f  C r e d i t  I n s t i t u t i o n s  and Amending D i r e c t i v e ,   89/646/ 

EEC, 1 9 8 9  0 .  J .   ( L  3 8 6 )   1 . )

」(以下,「第

2

次銀行調整指令」という)の国内 法化が進められ,イギリスやフランスその他の

EU

加盟国と同様に(表

1

六 参照), ドイツにおいても銀行株主に関する法制度の整備が図られている。

= 

そこで,以下では,金融機関の株式保{T:こ関する規定を中心に,銀行株 主を取り巻くドイツ法上の各種規制について概観することとする。

(9)

1 EU 

(欧州連合)加盟国における銀行株主に対する規制 資本参加の取得および変更に関する規制 審査基準等

銀行の所有者または支配者の事業 株主については,財務状態および 範囲に制限なし(金融機関以外の株 金融サービス分野の経験の有無等を 主については,金融機関• 投資者委 考慮して,許可を審査。

員会が,資本参加の取得者の財務能 銀行は,株主の財務情報のほか,

フランス 力および銀行業務の経験に基づいて 議決権の 10%以 上 を 保 有 す る 全 て その妥当性を評価)。 の株主を確認する報告書を銀行委員

議決権の一定割合(10, 20,  33%)  会に提出。

以上の取得,増加あるいは減少につ いて,金融機関• 投資者委員会の事 前の許可が必要。

銀行または銀行持株会社の所有ま 銀行の健全かつ適切な運営を妨げ たは支配は,金融サービス業務に従 るおそれがあるか否かに基づいて審 事する会社に限定。ただし,一般事 査。なお,株主が法人のときは,取 業 会 社 に つ い て も 議 決 権 株 式 の 締役または法定の代表者が審査の対 イタリア 15%まで取得が可能。

議決権の一定割合 (10, 15,  20,  33,  50%)以上の取得または増加に

は,イタリア銀行の事前の許可(5% 

以上の取得の場合にも,イタリア銀 行の特別の許可)が必要。

銀行株式の所有者または支配者の 取得が, (1)銀行の支払能力にマイ 事業範囲に制限なし。しかし,オラ ナスの影響を及ぼす, (2)健全な銀行

ンダ銀行は,保険会社や一般事業会 政策に反する, (3)金 融 シ ス テ ム に オランダ 社による銀行支配には消極的な監督 とって好ましくない展開を構成する

政策を採用。 か否かに基づいて審査。

5%以上の持分利益の取得または 増加には、オランダ銀行による「異 議なしの通知」が必要。

銀行の所有者または支配者の事業 届出者の信頼性に基づいて評価。

範囲に制限なし。ただし,保険会社 なお, (1)自身の債務を弁済するのに は持株会社を通じてのみ銀行を所有 十分な資産を有しない, (2)銀行に重 することが可能。 大 な リ ス ク を も た ら す お そ れ が あ スペイン 設立から 5年以内の銀行の場合, る,あるいは(3)規制当局に対して高 金融機関を除く会社は, 20%の制限 度な透明性を維持できない場合等に を超えて当該銀行株式を保有するこ は,信頼性は不十分であると評価さ とができない。 5%以上の取得また れる。

は増加には,スペイン銀行の審査と 許可が必要。

‑ 9 ‑ 24-3•4-402 (香法2005)

(10)

資本参加の取得および変更:こ閃する規制 審査基準等

銀行所有に対する制限なしこ連合 (1)届出者が主要株主として適格で 王国内で設立された銀行の議決権の ある, (2)銀行の預金者および潜在的 一定割合 (10, 20,  33,  50.  ,5°o)  預金者の利益が脅かされる, (3)届出 以 上 の 取 得 , 増 加 あ る い は 減 少 に 者が主要株主になることで,堅実な イギリス FSAへ の 事 前 の 届 出 が 必 要 銀行業務の遂行,最低自己資本水準 (5 %以上の取得には, 7日以内の の維持が満たされるか否か等に基づ 届出が必要)。なお, FSAが不適当 いて審査。

と認めるときは,届出から 3ヶ月以 内に取得または増加を禁止すること ができる。

出所 Michael Gruson & Ralph Reisner,  Regulation of Foreign Banks (3 d ed 2000)より 作成。

1.  資本参加の取得に関する規制

「企業に,直接又は間接に,少なくても資本若しくは議決権の

10%

又は 資本参加されている企業の経営に著しい影響を行使するその他の可能性を

(26) 

保持している事実」として「実効的資本参加」を定義する第

2

次銀行調整 指 令

1

1 0

号に合わせるかたちで, ドイツ法においても,「

1

つもしくは

(2

いくつかの子会社または同様の関係を通じて,またはその他の自然人もし くは法人と共同で,少なくとも会社の資本もしくは議決権の

10%

以上を 有するかまたは資本参加されている会社の業務執行に重大な影響力を行使 することが可能な直接または間接の資本参加」として,「重要な資本参加

(28) 

( b e d e u t e n d e r  B e t e i l i g u n g e n )

」が定義される

(KWGl

9

項 第

1

文)。 そのため,

KWG2b

1

項では,「重要な資本参加」を取得しようとす

(29) 

る者は,連邦銀行監督当局およびドイツ連邦銀行

( D e u t s c h eB u n d e s b a n k )  

に対して以下の内容を記載した書面を遅滞なく届け出ることが義務づけら 六 れている:

(1)  意図した資本参加の程度

(KWG2b

1

項第

1

文)

; 

( 2 )  

取得者の信頼性の評価のために必要不可欠な事実として,「信用制 度法に基づく届出及び資料の提出に関する命令

( V e r o r d n u n g t i b e r   d i e  

(11)

A n z e i g e n  und d i e   V o r l a g e   v o n   U n t e r l a g e n   n a c h   dem G e s e t z   t i b e r   d a s   K r e d i t w e s e n :  A n z e i g e n v e r o r d n u n g  v .  2 9 . 1 2 . 1 9 9 7 ,  BGBI  I S .   1 8 5 7 ,  

以下

AnzV

」という)」

1

1

項第

3

文に掲げられた以下の事項

(KWG2b

1

項第

2

文,

2 4

4

項)一氏名,洗礼名

(Vomamen),

旧姓,生年 月日,出生地,親の旧姓,自宅住所および国籍。別の所管庁が信用調 査 を 行 っ て い る と き は , 届 出 義 務 者

( A n z e i g e p f l i c h t i g e )

が 信 頼 に 乏 しいかまたは

KWG33

1

3

号,

3

1

号もしくは

3

号 に 定 め ら れ

(30) 

た資本参加の取得を禁止する事実の有無を評価するためにこれが必要 とされる限りで,当該信用調査およびその結果に関する証明書

(AnzV 1

1

項 第

3

文);

(3)  持 分 が 取 得 さ れ る と こ ろ の 個 人 ま た は 会 社

(KWG2b

1

項 第

2

文);

(4)  取 得 者 が 法 人 ま た は 個 人 企 業

( P e r s o n e n h a n d e l s g e s e l l s c h a f t )

である とき,法律上の代表者または無限責任社員の信頼性の評価のために必 要不可欠な事実として,

AnzV1

1

項 第

3

文 に 掲 げ ら れ た 事 項 の ほ か,法律上の代表者または無限責任社員の全てのリスト,

KWG33

1

3

号,

3

1

号または

3

号で定められた資本参加の取得を禁止す る事実の有無を評価するためにこれが必要とされる限りで,連邦銀行 監 督 当 局 の 求 め に 応 じ て , 事 業 分 配

( G e s c h

t s v e r t e i l u n g ), 

組 合 契 約 お よ び 会 社 の 資 本 参 加 関 係 に 関 す る 報 告

(KWG2b

1

項 第

5

文,

AnzV 1

1

項第

4

文,第

5

文および第

6

文);

(5)  年度末決算書の作成が義務づけられている取得者については,独立 の決算検査役による検査報告書を添付した過去 3営業年度の年度末決 算書。取得者がコンツェルンに属するときは,コンツェルンの構造に 関する報告,独立の決算検査役による検査報告書を添付した過去3営 業 年 度 の 連 結 ベ ー ス に 基 づ く コ ン ツ ェ ル ン 決 算 書

(KWG2b

1

項 第

3

文,

32

1

6

( d ) ( e ) )

な お , 届 出 義 務 者 は , 連 邦 銀 行 監 督 当 局 に 正 本 お よ び 副 本 で

( i n

六〇

‑ 11  ‑

24‑3・4‑400 

(香法

2 0 0 5 )

(12)

z w e i f a c h e r   A u s f e r t i g u n g )  , 

管 轄 権 を 有 す る 朴1中 央 銀 行 に は 副 本 で

( i n d r e i f a c h e r  A u s f e r t i g u n g )

届け出なければならない

(AnzV1

1

項第

1

文)。

KWGl

9

項第

1

文において,金融機関に対して間接的に「重要な資 本参加」を有する者も,「重要な資本参加」の保有者と定義されるが,あ

る会社が金融機関に対して「重要な資本参加」を取得しようとする場合,

当該会社に資本参加を有する者,すなわち間接的に「重要な資本参加」を 取得する者も

KWG2b

1

項 に よ る 届 出 義 務 を 負 う か 否 か が 問 題 と な る。これに関して, (1)間接的な「重要な資本参加」の取得者自身は金融機 関に対して「重要な資本参加」を取得しないこと,

( 2 )

間接的な「重要な資 本参加」の取得者は,自身が資本参加を有する者の取得の意図について必 ずしも知りえないこと,

(3)KWG2b

1

項第

3

文により,連邦銀行監督 当局は,

KWG32

1

6

号(

e )

に掲げられた資料としてコンツェルンの構 造に関する報告を徴求することができ,それにより,間接的に「重要な資 本参加」を取得する者や「重要な資本参加」の取得者に支配的影響力を行 使するであろう者を知ることができることから,連邦銀行監督当局に深刻 な情報不足は生じないとして,金融機関に対して間接的に「重要な資本参

(31) 

加」を取得する者は届出義務を負わないと解されている。

五九

2 .  

資本参加の変更に関する規制

2

次銀行調整指令

1 1

1

項および

3

項において,「全ての自然人又は 法 人 は , そ れ ら の も の に よ っ て 保 有 さ れ る 議 決 権 又 は 持 分 の 割 合 が

20%,  33%,  50%

に達するか若しくは超える,又は信用機関が子企業にな

るというようにその実効的資本参加を増やそうとする場合には同じく所管

(32) 

庁に通知する」とし,「全ての自然人又は法人は,同じく,所管庁に,保 有する議決権又は持分の割合が

20%, 3 3 ° 0

もしくは

50%

の値を切るか又 は機関がその子企業であることを止めるよう当該実効的資本参加を減らす

(33) 

意図を通知しなければならない」として,資本参加の増加および減少に関 する規定が置かれていたところ, ドイツ法;こおいても同様の規定が

KWG

(13)

2b

1 項第 7

文および同条

4

項として設けられている。すなわち,「資 本または議決権の 20%, 33%,  50%に達するかもしくは超える,または 金融機関が支配に服するように「重要な資本参加」を引き上げようとする ときは,「重要な資本参加」の保有者は,連邦銀行監督当局およびドイツ 連邦銀行に対して遅滞なくその旨を届け出なければならない」とし,「金 融機関に対して「重要な資本参加」を放棄するかもしくはその程度を資本 または議決権の 20%, 33%,  50%以下に引き下げる,または金融機関が もはや従属会社でなくなるように資本参加を変更しようとする者は,連邦 銀行監督当局およびドイツ連邦銀行に対して遅滞なくその旨を届け出なけ ればならない」としている。

「重要な資本参加」の保有者によって備えられだ情報の真実性を担保す べく,金融機関についてもまた,連邦銀行監督当局およびドイツ連邦銀行 に対して資本参加の増加または減少を遅滞なく届け出ることが義務づけら れているほか

(KWG24

l

1 1

号),その他の自然人または会社との間

(34) 

の「密接な関係

( e n g e nV e r b i n d u n g )

」の存続,変更あるいは終了について

(35) 

遅滞なく届け出ることを要する

(KWG24

1

1 3

号)。

ただし,以下のような推定を正当化する事実が存在する場合,連邦銀行 監督当局は届出を受けてから 3ヶ月以内に届出者による「重要な資本参 加」の取得または増加を禁止することができる

(KWG2b

la

項):

(1)  届出者(法人の場合は法律上の代表者,個人企業の場合には無限責 任社員)が信頼に乏しいかまたは別の理由から金融機関の健全かつ適 切な運営のためになされた要求を満たさない,

( 2 )  

「重要な資本参加」の取得または増加により,金融機関が企業結合 において「重要な資本参加」の保有者と結びつくことで,当該金融機 関に対する有効な監督の妨げとなる,あるいは

(3)  「重要な資本参加」の取得または増加により,金融機関が,本店所 在国またはその所管庁において有効な監督がなされないかまたは連邦 銀行監督当局が管轄権を有する監督官庁から十分な協力を得られない

五八

‑ 13  ‑ 24-3•4-398 (香法2005)

(14)

外国金融機関の子会社になる, という推定を正当化する事実。

2

次銀行調整指令

1 1

5

項:こおいて,「第

1

項にいう者によって行使 された影響が,機関の節度ある且つ健全な経営を犠牲にして行われうる場 合には,所管庁は,当該状況を終わらせるために適切な措置を採ると定め るものとする。当該措置は,特に差止命令,業務執行者に対する制裁又は 当該株主又は社員によって保有された株式又は持分に結びつく議決権行使

36 

の一時停止を含むことができる」とされていたところ, ドイツ法において も,「連邦銀行監督当局は,

(l)KWG2  b

la

項による禁止処分の要件が 存在する,

( 2 )

「重要な資本参加」の保有者が届出義務に違反し,連邦銀行 監督当局によって指定された期限内にも届け出なかった,あるいは

(3)KWG

2b

la

項によって禁止されるおそれがあるにもかかわらず,資本参加 が取得または増加されているときは,「重要な資本参加」の取得を禁止す る代わりに,金融機関に対する議決権の行使を禁止し,議決権の行使を受 託者

( T r e u h a n d e r )

に移転するよう命じるかまたは受託者の同意で持分の 処分を行うことができる」とされている

(KWG2b

2

項)。

なお,「重要な資本参加」の取得,増加あるいは減少について届け出な かった場合には,

KWG56

2

4

号により秩序違反行為

( O r d n u n g s w i d r i g ‑ k e i t )

となる。

五七

3 .  

銀行株主に対する報告徴求・立入検査

KWG2b

条に基づいて「重要な資本参加」を取得しようとする個人ま たは会社,金融機関および金融機関の従属会社に対する「重要な資本参加」

の保有者または保有者と推定される者は,連邦銀行監督当局の求めに応じ て,連邦銀行監督当局およびドイツ連邦銀行:こ営業活動に関する全ての情 報を提供し,資料を提出することを要する

KWG44  b

1

項,

44

1

項 第

1

文)。さらに,

KWG44

1

項第

2

文および第3文において,「特に理 由なく,連邦銀行監督当局は金融機関について検査を実施することができ

(15)

る。連邦銀行監督当局の職員,連邦銀行監督当局が検査を実施するにあた り使用する者もまた,通常の営業時間内に金融機関の営業所に立ち入り,

検査することができる」として,金融機関への立入検査が認められていた ところ,

KWG2b

1a

項に掲げられた推定を正当化する事実が存在する 場合に限り,連邦銀行監督当局およびドイツ連邦銀行は,

KWG44b

1

項に掲げられた者に対しても同様の拮置を講じることができる

(KWG44

b

2

項,

44

1

項第

2

文および第

3

文)。

⑫ 3)  ドイツの銀行監督制度の基礎をなす1961KWG 1931年の金融恐慌とそれに よる一連の銀行破綻に鑑みてドイツ帝国大統領により発令された「株式,銀行監督 及び租税恩赦に関する命令 (Verordnungtiber Aktienrecht,  Bankenaufsicht und tiber eine  Steueramnestie  v. 19. 9.  1931,  RGBl.  I S. 493)」がきっかけとなり, 1934125

に成立したラィヒ信用制度法 (Reichsgesetzes tiber  das  Kreditwesen : RKWG v.  5. 12.  1934,  RGBl.  I S. 1203)にその起源を有する。その後, 1939年の「ラィヒ信用制度法 改正のための命令 (Verordnungzur Anderung des Reichsgesetzes tiber das Kreditwesen v.  15. 9.  1939,  RGBl.  I S. 1953)」 お よ び 1944年 の 「 信 用 制 度 改 正 の た め の 命 令

(Verordnung  zur  Anderung  des  Kreditwesen  v. 18. 9.  1944,  RGBl.  IS. 211)」を経 1961710 RKWG 65条から成る営業法上の規定を法制化した 1961 KWGと し て 全 面 改 正 が な さ れ た 。 Christian Huber, Bankrecht : Bankensystem‑ Bankenaufsicht  Recht  der  Bankgeschafte : in  Handbuch  ftir  die  Praxis, 2001,  S. 33 f;  Edgar J.  Habscheid,  Staatshaftung ftir fehlsame Bankenaufsicht? 1988,  S. 7 f. 

(24)  Theodor Baunms & Michael  Gruson, The  German  Banking  System ‑System  of  the  Future? 19 Brooklyn Journal of International Law, at 101,  112  (1993). 

(25)  Huber,  a.  a.  0. Fn. 23,  S. 39 f. 

⑫ 6)  条文の邦訳は,ブランシュ・スズィー・ルビ(泉田栄一訳)『ヨーロッパ銀行法」

502頁以下(信山社, 1999年)に従った。

⑰  ここでいう「子会社」とは,「法律形態および所在地に関係なく, ドイツ商法典 (Handelsgesetzbuch : HGB) 290条の意味の子会社とみなされるかまたは支配的影響 力が行使される可能性のある会社」をいう (KWGl7

「重要な資本参加 (bedeutenderBeteiligungen)」という訳語は,正井章作=菊田秀雄

「ドイツにおける金融サービスに対する監督の統合ードイツ連邦金融監督庁の発足と 権限の拡大ー」国際商事法務Vol.31,  No. 8,  1092 (2003年)に従った。

(29)  ドイツでは従来,連邦銀行監督当局 (Bundesaufsichtamter ftir  das  Kreditwesen:  BAKred)が銀行監督を行っていた。しかし,多様な顧客ニーズに応えることで,銀 行業務,保険業務および金融サービス業務の境界が曖昧となり,銀行,保険および 証券の監督権限の分離がもはや金融市場の安定確保のための有効な監督にそぐわな いことから, 20024月22日 の 「 統 合 さ れ た 金 融 サ ー ビ ス の 監 督 に 関 す る 法 律 (Gesetz tiber die integrierte Finanzdienstleistungsaufsicht : Finanzdienstleistungsaufsichtge‑

五六

‑ 15  ‑ 24-3•4-396 (香法2005)

(16)

五五

setz : FinDAG  v. 22. 4. 2002, BGBI. 

S. 2778)」の成立に基づき,同年51日に設 立 さ れ た 連 邦 金 融 サ ー ビ ス 監 督 庁 Bundesanstalt  fiir  Finanzdienstleistungsaufsicht :  BaFin)の下に, BAKred,連邦保険監抒局(Bundesaufsichtamterfiir das Versicherungswe‑ sen:  BAV)および連邦証券取引監抒局 (Bundesaufsichtamterfiir das Wertpapierhandel:  BAWe)が統合された。

BaFinは,連邦財務省 (Bundesministeriums der  Finanzen)直属の公法上の法人であ り,ボンおよびフランクフルトを本部として, 1,000人体制で銀行,保険会社および 金融サービス会社の監督を行う。 BaFinは総裁と管理委員会 (Verwaltungsrat)の二つ の機関を有し (FinDAG51項),¥:;:裁によって指揮される (FinDAG6 1項)。総 裁の下には 3名 の 局 長 が 置 か れ , 銀 行 監 督 , 保 険 監 督 お よ び 証 券 監 督 を 担 当 す る (FinDAG63項)。管理委員会は,連邦財務省から派遣された委員長およびその代 理人,連邦財務省のその他の代表者2名,連邦経済科学技術省(Bundesministeriumsftir  Wirtschaft und Technologie)の代表者1名,連邦法務省 (Bundesministeriumsder Jusitz)  の代表者1 ドイツ連邦議会議員 5名,金融機関の代表者5名,保険会社の代表 4名,資本投資会社 (Kapitalanlagegesellschaften)の代表者 1名で構成され, BaFin の 任 務 を 監 視 し , 必 要 な 場 合 は 助 言 を 行 う (FinDAG7条)。さらに,諮問委員会

(Fachbeirat) BaFinの任務の遂行に助言を与える機関としてBaFinに設置され,

銀行・保険業界, ドイツ連邦銀行および消費者保護団体等から 24名が委員として連 邦財務省によって任命される (FinDAG8 BaFinの年間予算については,総裁が 予算案を作成し,管理委員会の承認を得ることが求められる (FinDAG122 監督上必要な費用について, BaFinに適用される法律が特に手数料に関する規定を含

んでいないかまたはFinDAG15条において個別に費用の償還が定められていない場 合は,任務の範囲内の職務について500,000ユーロまで監督対象金融機関から徴収 することができる (FinDAG141

ドイツにおける金融制度改革の概要について BaFinか ら公 表さ れた 「BaFin,Wir  iiber uns」は, (http: //www.bafin.de/bafin/bafin̲ wirueberuns.html)から閲覧可能である。

なお,正井=菊田・前掲注M1086頁以下 (2003年),重田正美「ドイツの新しい金 融監督機関について」レファレンス 64189頁以下 (2004年),「海外情報 ドイツ の新しい金融行政組織と連邦銀行の組織改革」旬刊商事法務163082頁以下 (2002 年)も併せて参照。

(30)  (1)「重要な資本参加」の保有者,資本参加を行った会社の業務執行代表者または 法律上の代表者が信頼に乏しいかまたは別の理由から金融機関の健全かつ適切な運 営のためになされた要求を満たさない (KWG3313 (2)金融機関が企業結 合においてその個人または会社と結び付くことで,当該金融機関に対する有効な監 督の妨げとなる (KWG333 1号),あるいは3)金融機関が,本店所在国または その所管庁において有効な監督がなされないかまたは管轄権を有する監督官庁から 十分な協力を得られない外国金融機関の子会社;こなる (KWG3333号),とい

う推定を正当化する事実。

(31)  Jorg Schieber,  Die Aufsicht iiber Finanzkonglomerate, 1998. S.  178 f.  (32)  条文の邦訳は,ブランシュ・前掲注M507頁に従った。

(33)  条文の邦訳は,ブランシュ・前掲注⑫6) 508頁;こ従った。

(34)  ここでいう「密接な関係 (engenVerbindungーとは, (1)金融機関とその他の自然人 または会社が直接間接を問わず資本または議決権の20%の保有を通じて結び付く関

(17)

係,または(2)親会社と子会社または姉妹会社の関係をいう (KWGl 10項)。

(35) 「 密 接 な 関 係 」 に 関 す る 届 出 は , 連 邦 銀 行 監 督 当 局 に 正 本 で

( i n e i n f a c h e r   A u s f e r t i g u n g )  , 

管轄権を有する)小I中央銀行には副本で行わなければならない

( A n z V 1 3

1

(36)  条文の邦訳は,ブランシュ・前掲注⑫6) 508頁に従った。

銀行経営悪化時における銀行株主の責任

初めに述べたように, ドイツでは,子会社の契約上の債務を保証する旨 の「支援表明」を通じて,銀行経営悪化時には株主である親会社が支援者

( P a t r o n )

として当該銀行を支援することが予定されているが,そもそも このような支援表明は,ヘルシュタット銀行

( P r i v a t b a n k h a u s I .   D. H e r s t a t t  

( 3

KGaA)

をはじめとする一連の銀行破綻が生じた

1 9 7 0

年代初頭に,子銀 行の流動性不足に対する懸念を払拭すべく,親会社である銀行がルクセン

ブルクにある子銀行のために支援表明を行わなければならなかったこと や,ヘッセン州立銀行

( H e s s i s c h e Landesbank)

がスイスのジュネーブに ある

Banquede C r e d i t  I n t e r n a t i o n a l e   ( B C I )

のために行った支援表明にまで

(38) 

遡ることができる。しかしながら,支援表明という概念そのものは,コン ツェルンの子会社に対する信用供与の保証手段として,コンツェルンにお けるリスク分配を理由に全ての責任負担義務

( E i n s t a n d s p f l i c h t )

を免れよ うとするコンツェルンの親会社と,少なくとも最低限の担保を獲得しよう

(39) 

とする銀行との間で創造され,

1 9 6 0

年代後半から,人的担保としての保 証・損害担保,物的担保としての不動産担保(とりわけ土地債務)または

~O)

譲渡担保等の古典的な信用担保と並んで生じたものである。そのため,支 援表明は通常,銀行の債務者である会社の信用能力をよくする目的で,当

該会社を経済的に支援し,または影響力を行使するという支援者の表明で 五

(41)

あると理解されている。

もっとも,その使途に関係なく,支援表明それ自体には保証や損害担保 のように法的拘束力を伴う「強い

( h a r t e )

」支援表明と,何ら法的拘束力

‑ 17  ‑ 24‑3・4‑394 (香法2005)

(18)

を伴わない「弱い

( w e i c h e )

」支援表明とがあり,それによって法的性質 したがって,ここではまず,支援表明の一般的な法的性質につ

(42) 

いて取り上げ,その後で,銀行経営悪化時における銀行株主の責任とし て,支援表明の実際上の運用およびその実効性に対して批判となりうる議 論を検討することとする。

も異なる。

支援表明の法的性質

「強い

( h a r t e )

」支援表明

「親会社は,子会社が自杜の債務を履行することができるように資金提 供する」

「親会社は,子会社の一定の資本装備

( K a p i t a l a u s s t a t t u n g )

1. 

(1) 

を維持する」

(43) 

上記のような内容の「強い」支援表明により,親会社は支援者として子 会社に対する資金提供義務を負い,子会社が債権者に対する債務を完全に

(44) 

履行するまで資金を提供することが義務づけられる。保証や損害担保とは 対照的に,子会社の債権者は親会社に対して直接に支払義務を負わせるこ とはできず, もっぱら子会社への支援を求める履行請求権を主張すること

(45) 

ができるにすぎない。その際,いかなる方法で支援を行うかについては親 会社自身の判断に委ねられ,明確な取決めがなされている場合を除き,子

(46) 

会社の債権者がその選択を行うことはできない。子会社それ自体も,親会

社に対していかなる請求権も有しないc

一五 三

子会社が親会社から提供を受けた資金を債務の弁済に供しない場合,親 会社は子会社が債権者に対する債務を完全;こ履行するまで子会社に資金を

( W e i t e r l e i t u n g r i s i k o )  

提供し続けなければならず,新たな経営リスク

(48) 

担することになる。そのため, ドイツ民法典

( B t i r g e r l i c h e s G e s e t z b u c h ,  

(49) 

以下,「

BGB

」という)

267

1

項により,親会社は子会社の債権者に対 する直接給付を通じて子会社の債務を履行することが認められ,こうした

(50) 

リスクを回避することができる。仮に主たる債務が存在しなければ,親会 を負

(19)

社の給付義務は原則として考慮されない。

前述のように,子会社の債権者は通常,親会社に対して子会社への支援 を求める履行請求権を有するにすぎない。しかしながら,子会社が破産し た場合,このような履行請求権は子会社の債権者の親会社に対する直接の 支払請求権に変わる。そして,子会社が債権者に対する債務を完全に履行 することなく破産した場合には,親会社による資金提供義務違反を理由

(51) 

に,子会社の債権者は

BGB280

1

項に基づいて親会社に対して損害賠

(52) 

償請求権を有する。なお,親会社が子会社と共に破産したときは, ドイツ

(53) 

倒産法

( I n s o l v e n z o r d n u n g :I n s O   v .  5 .   1 0 .  1 9 9 4 ,  BGBI. I S .  2 8 6 6 )   43

条によ り,子会社の債権者は,子会社ならびに親会社に対して,破産手続におい

(54) 

て全ての債務の弁済を受けるまで全額を請求することができる。その際,

支援者である親会社は,債務者である子会社と同時に責任を負うのであっ

(55) 

て,子会社に後れて責任を負うのではない。

( 2 )  

「弱い

( w e i c h e )

」支援表明

「親会社は,子会社との会社関係を維持する」

「親会社は,子会社との企業契約を変更しないかもしくは解除しない,

または解除を通知しない」

「親会社は,子会社が自社の債務を履行するように影響力を行使する」

「弱い」支援表明については,概ね上記のような内容のものが挙げられ

(56) 

る。「弱い」支援表明は,その内容について何ら法的拘束力を伴わない「好 意的な

( g o o d‑ w i l l )

」表明である。そのため,「弱い」支援表明の場合に は,支援者である親会社は,子会社に対する資金提供義務を負わず,子会

社が債権者に対する債務を履行しなかったところで,親会社に責任負担義 五

(51) 

務は生じない。さらに,債権者の信頼は保護に値しないことから,信頼責

(58) 

任も問題にならないとされている。

ドイツ商法典

( H a n d e l s g e s e t z b u c h ,

以下,「HGB」という)

2 5 1

条 第

1

‑ 19  ‑ 24-3•4-392 (香法

2 0 0 5 )

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