平成
25年
度
【
特定の課題についての学修の成果】
古典世界 に親 しみ を持たせ る小学校 における国語の授業開発
一 創作活動 と地域教材 開発 に焦点 を当てて一
兵 庫 教 育 大 学 大 学 院 学 校 教 育 研 究 科 教 育 実 践 高 度 化 専 攻 授 業実践 リー ダー コー ス K 也 2 3 拓 0 2 城 P 山目次 序章:.…… …… … … …… … … …… …… … …… … …… … … … 1 第
1節
研 究 の背景.…… … …… … … …:。… … …… … … 。1 第1項
新設 され た 〔伝統的な言語文化 と国語 の特質 に関す る事項〕.…… … …1 第2項
古典教育 に対す る生徒 の意識一 高等学校教育課程実施状況調査 か ら一..2 第3項
「古典離れ」 と言 われ てきた状況.…… … … …… … … … …… … … …… …3 第4項
古典離れ に対す る手立て.…… …… … … …… … … … …… … … … ……3 第2節
研 究 の 目的.…… … … … …… …… … … …… …… … …… … … …4 第3節
研 究 の計画.…… …… … … …… … … … …… …… … … …… … … 5 第1章
古典世界 に親 しみ を持 たせ る小学校 国語の授 業の構想 。_…… … … … …… … 6 第1節
学習者 とのつ なが り.…… …… … … …… … … ¨6 第1項
古典 の価値 を どの よ うに学ぶ のか … … … …… … … …… … … …6 第2項
学習者 と古典 を結 ぶ2つ
の視点.…… … … …… … … … …… … …… … … … 8 第2節
時間的距離 を縮 め るための手立て 。… … … … …… …… … … …… … … 10 第1項
創 作活動 の意義 。… … … …… … … … …… … … … …… … … … …… 10(1)創
作活動 の意義 .…… … … …… … … …… … … ……… 10(2)古
典 の授 業 での創 作活動 。… … …… … … …… … …… … …… … …… … 12 第2項
創 作 についての先行実践.…… … …・:・… … … …… … … 14 第3項
実践 の方法.…… … … …… … … … …… … … 16 第3節
空 間的距離 を縮 め るための手立て 。…… … … 17 第1項
地域教材 の意義 。… … … …… … … …… … … 17 第2項
地域教材 開発 の留意点.……… … … …… … … …… … … 19 第3項
教材化す る作 品 .…… … … …21第
4節
現行学習指導要領 との関連 。… … … …… … … … ………23 第1項
創 作活動 について 。_…… …… … … ¨… …… … 二・… … … ……23 第2項
地域教材 について.…… … … … …… … … …… … … … 24 第5節
研 究仮説.…… … …… … …… … …… …… … …… … …… … ∴・… …… … … …… …24 第2章
実践授 業I.……… … … … …… … …… … … …… …… … 25 第1節
授 業計画.……… …… … … …… …… … …… … … … 25 第1項
対象 と実施 時期 .…… …二.……… …… … … …… … … … …… … … ……25 第2項
教材 について.…… … …二.…… …… … … … …… …… … …… … … ¨…25(1)芭
蕉 と島 田.…… … … … ¨… … … …… … …… … … ¨…25(2)作
成 した教材.…… … … 二・… … … …26(3)教
材 分析 。… … … …28 第3項
単元構想 .…… …… … … …… … … … …… … …… … ……29(1)単
元 目標.…… …… … … 二。… … … …… …… … …… … … ……29(2)単
元 の構想.…… …… … … …… …… … …… … … …29 第2節
検証計画 。…… … …… …… … … …… …… … …… … … …31 第1項
質 問紙調査.……… … … …… … … …… … …… … … …31 第2項
振 り返 リカー ド.…… … … …33 第3項
作 品 「芭蕉 の 日記」 …… … … …… …… … …… … … …・34 第3節
授業 の実際.…… …… … …… … … …… … … ……35 第1項
原文 の音読.…… … … …… … … …… … …… …… … … …35 第2項
地域教材 (家庭 学習及 び第2時).…
… … … …36 第3項
創 作 「芭蕉 の 日記」 「芭蕉への手紙」 (第5時
、第6時
).…
… … …38(1)古
典の学習 についての児童の意識調査.…… …… … … … …… … … …… …41(2)授
業後の児童の意識.…… … … 二・… … … … …… … … … …42(3)研
究仮説 についての検証.…… … … … …… … … …… … … …… …42 第2項
振 り返 リカー ド.……… … … … …1・………… ….……1・……… … ……… …44(1)振
り返 リカー ド分析の観点.…… … … …… …… … … …… … 44(2)研
究仮説Iの分析.…… … … 45 ①全体の傾 向.…… … … …… … … …… … … …… … …・45 ②児童の記述例.……… … … …… … …… … …… … … …… … …・47 ③ま とめ.…………48(3)研
究仮説 Ⅱの分析.……… … … …… … … …… … … …… … 49 ①第1時
以前の児童の実態 。… … …… … ■・… … … …… … … …… … …49 ②全体の傾 向.…… … …… … … … …… … …… … … …… … …49 ③児童の記述例 。…… … …… … … …… … … ……50 ④ま とめ.…………54 第3項
作品 「芭蕉の 日記」 。…… … …… … … …… … … …… … 55(1)評
価方法.…… …… … … ¨… … …… … … 55(2)全
体の傾 向.…… … … …… … … … …・56(3)児
童 の創作 した作品例.…… … … …… … …… … … …・57(4)ま
とめ_....・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・63 第5節
実践授業Iの
成果 と課題.…… … … …・64 第1項
仮説Iに
ついて 。… … …… … … …… … … … …… … … … …・64(1)分
析結果 のま とめ.……… … … … …… … … … …… … …… … … … 64(2)成
果 と課題.…… … … …64 第2項
仮説 Ⅱについて 。…… … … …… … … …65(1)分
析結果のま とめ.…… … … … …… … … …65(2)成
果 と課題.…… … … …65 第3項
実践授 業 Ⅱに向けての改善点 。… …… … …… …■・… … …… … … …66 第3章
実践授 業 Ⅱ.…… … … …… … …:。… … … …67 第1節
授業計画.…… … … …・ …… … … …… … … …… … … ¨67 第1項
対象 と実施 時期 。…… … ¨… … … …… … … ……67 第2項
教材 につ いて.……… ¨… … … …… … …… … …… … … …・67(1)富
士 山に関す る文学作 品.…… … … …… … …… … … …・67(2)赤
人・ 虫麻 呂の歌 と富士山.…… … …… … … …… … … …67(3)作
成 した教材.…… … … …68(4)教
材分析.…… … … ∴・… … … 71 第3項
単元構想 。… … … …72(1)単
元 目標.……… …… … … …… … … … 72(2)単
元 の構想 。… … … …… …… … … …… … … ……72 第2節
検証計画.…¨… … …… … … …… … … 74 第1項
質 問紙調査.…… … … …… …… … … … ¨… … … … …・74 第2項
振 り返 リカー ド.…… … … …77 第3項
作 品 「歌人 の 日記」.…… … … …… …… …… … … …… … … 78 第4項
作 品 「歌人 との対談」.……… … …… … … …… … …… … …… … …79 第5項
単元 を通 しての感想 。… … … 80 第3節
授業 の実際.…… …… … …… … …… … … … …… … …… … … …… … … …81 第1項
長歌 と反歌 の音読.……… … … …… … … …… … … ¨81 第2項
地域教材 としての富士 山 (環境設定 と第1時
)。 … … … ……82第
1項
質問紙調査.…… … … … …… …… … … …… … … …… … …88(1)古
典の学習についての児童の意識調査.…… ∴.…… … … …… … …88(2)授
業後の児童の意識.…… … …… … … …… … … 89(3)研
究仮説 についての検証.……… … … …… … …:・…… … … …・90 第2項
振 り返 リカー ド.…… … … …… …… … …… … … …… … …92(1)振
り返 リカー ド分析の観点.…… … … …… … … …… …92(2)研
究仮説 Iの分析.…… … … 93 ①全体の傾 向.…… … … ¨… … … … …… … … … …93 ②児童の記述例.…… … … ¨… … … …… … … …… … … ……95 ③ま とめ.…………96(3)研
究仮説 Ⅱの分析.…… … … …:.…… … … …97 ①全体の傾 向.……… … … …・97 ②児童の記述例.…… … … … …… … … …… … …… … … …… … …・98 ③ま とめ.………… 100 第3項
作品 「歌人の 日記」.…… …… … … … …… … … …… … … … 101(1)評
価方法 。…… … … …… … 101(2)全
体の傾 向.……… … …… … …… … … …… …・101(3)児
童の創作 した作品例.…… … …… … … …… … … … 102(4)ま
とめ_....・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・107 第4項
作品 「歌人 との対談J…
… …… … … …… …… … …… … … 108(1)全
体の傾 向.……… … … …… … … …… … … …… … 。108 ①全体の分析.………… … … …… … … ∴¨… …… … 。108 ②典型的な作品構造.…… … … …… … …… … … … …… … … …… …109(2)児
童の創作 した作品例.……… … … …… … … …… … … …… …111(3)ま
とめ.…… … … …・・・・・… …・・・・・・・・… … … …・・・・… … … 113第
5項
単元 を通 しての児童 の感想.…… … … …… … … … 114(1)創
作 について.…… … … …… …… … … …二・… … … …114(2)富
士 山について 。_∴… … … ¨… … … … …… … … …… …… 115(3)授
業全体 について 。… … … …1・… … … …… 117(4)ま
とめ……...・… …・・ `・・・・ ...―・・・・… …・・・・・・・・・・・・… … …・・・・― 。・・・・・・・…・・・・・・117 第5節
実践授 業 Ⅱの成果 と課題.…… … … …118 第1項
仮説Iに
つ いて 。¨… …… … … …… … … …… … … …・118(1)分
析結果 のま とめ.…… … … …… … …… … …118(2)成
果 と課題.…… … … …・119 第2項
仮説 Ⅱについて .…… … … …… … … …… … …… … … …… …・119(1)分
析結果 のま とめ.…… … … …・:・… … … …… … … …… …・119(2)成
果 と課題.…… … … 。120 終章.……… … …… ∴。…… …… …… …… … … …… … … 121 第1節
研 究の成果.…… … … …… … …… … … … …… … 121 第2節
今後 の課題 .…… …… …… … … …… …… … … …… … 123 謝 辞 引用・ 参 考 文 献 巻末資料序 章
序 章
第
1節
研 究 の 背 景
第
1項
新設 された 〔
伝統的な言語文化 と国語の特質に関する事項〕
平成
20年
3月 、小学校及び中学校の学習指導要領が告示 され、国語科の中に
〔
伝統的な言語文化 と国語 の特質に関す る事項〕力`
新設 された。 これ によ り、
小学校
1年
生か ら、系統立てた古典の学習が行われ ることになった。
これまでは中学校か ら学習す ることが前提だつた古典を、伝統的な言語文化
として、小学校
1年
生か ら学習す るのである。 これは、古典の学習において大
きな転換点である。平成
20年
告示の学習指導要領で、〔
伝統的な言語文化 と国
語の特質に関す る事項〕が新設 された背景には、伝統や文化に関す る教育施策
の大きな動きがある。
平成15年 3月
に、中央 教 育審議 会答 申「新 しい時代 にふ さわ しい教 育基本 法 と教 育振 興 基本 計 画 の在 り方 につ い て」が示 され た。 この 中で 、「日本 の伝 統・ 文化 の尊重 、郷 土や 国 を愛 す る心 と国際社 会 の一員 と して の意識 の涵養 」 の必 要性 が述 べ られ て い る。 そ して 、平成18年
12月 に教 育基本 法 が公布 され 、約60年
ぶ りに改 正 され た。 第一条 にあ る 「教 育 の 目的」 を実 現す るた めに重 要 だ と考 え られ る事 柄 を、第 二条 で は 「教 育 の 目標 」 と して5つ
に整 理 してい る。そ のひ とつ に、「伝 統 と文 化 を尊重 し、それ らをは ぐ くん で きた我 が 国 と郷 土 を愛 す る と ともに、他 国 を 尊重 し、 国際社 会 の平和 と発 展 に寄与す る態度 を養 うこ と」 と示 され た。 教 育基本 法 改 正 に伴 つて 、平成20年
1月 に、中央 教 育審議 会 「幼稚 園、小 学 校 、 中学校 、高等 学 校 及 び特別 支援 学校 の学 習指 導要領 等 の改 善 につ い て」 が 答 申 され た。 そ こで は、教 育 内容 に関す る主 な改善事 項 の一 つ と して 、伝 統や 文化 に関す る教 育 の充 実 を挙 げて い る1。 具体 的 には、国際社 会 の 中で 、 自国の 伝 統や 文化 を理解 し、尊重 す る態 度 を身 に付 けて こそ 、他 国 の文化 や歴 史 に敬 意 を払 うこ とが で き る と指 摘 してい る。 そ のた めには 、各 教科 等 で指 導 を充実す る必要性 がある とし、古典の学習においても、大きな役割 を果たす ことが期
待 されている。
以上のよ うな流れの中で、〔
伝統的な言語文化 と国語の特質に関す る事項〕が
新設 された。 これ は、従来、中学校で行われてきた古典の学習を、そのまま小
学校に前倒 しす ることではない。 中学校においては、これまで 「読む こと」領
域の中で取 り組んできた古典の学習ではなくな り、〔
伝統的な言語文化 と国語の
1中央教育審議会 「幼稚 園、小学校 、 中学校 、高等学校及 び特別 支援学校 の学習指導要領等 の 改善について (答申)」 平成20年 1月 17日p.57
序 章 特質 に関す る事 項 〕 と して取 り組 ん でい くこ とにな る。「話 す こ と 。聞 くこ と」 「書 くこ と」「読 む こ と」の領域 に広 げてい く必要 もあ るだ ろ う。一方 、小学校 にお い て は、児 童 と古典 の 出会 い の時期 とな る。 どの よ うに 出会 わせ てい くの か を、重 要 な課題 と して考 えてい く必 要 が あ る。 第
2項
古 典教 育 に対 す る生徒 の意 識一 高等学校教 育課程 実施 状 況調査 か ら一 教 育施 策 の大 きな流 れ の 中で、古典 教 育 が転換 点 を迎 えてい る こ とは、今 、 述 べ た とお りで あ る。 それ で は、生徒 が 、 これ まで古典 の学 習 につ い て どの よ うな意識 を持 つて い た のか を探 つて い く。 少 し古 いデ ー タで あ るが 、 国立教 育 政策研 究所 の教 育課 程研 究 セ ンター が 、高等 学校3年
の生徒 を対象 に、平成 17 年 に実施 した教 育課 程 実施 状 況調 査 が あ る。 この 中で 、「国語 総 合 」 に関 して、 ペーパーテ ス トと質 問紙調 査 を行 つてい る。 その質 問紙調査 で は、古典 に関 し ての意識 も尋 ね て い る。 以 下 、調 査結 果 を引用す る2。 「古文 は好 きだ」「漢文 は好 きだ」 の設 間で、約70%の
生徒 が否 定 的 な回答 を してい る。 この数 値 は、「国語 の勉 強 が好 きだ」の設 間 で 、否 定 的 な回答 を し てい る生徒 が約47%で
あ る こ と と比較 して非 常 に高 い。 これ は、国語 の学習 自 体 が好 きで は ない とい う生徒 は もちろん の こ と、 国語 の学 習 は好 きだが 、古文 や漢 文 は好 きで は な い とい う生徒 が い る こ とも示 して い る。 国語 の学 習 の 中で も、特 に古文や 漢 文 は好 きで はない と感 じてい る実態 が多 い こ とが わか る。 この よ うな調 査結 果 は、平成14年
度 で も同様 の結 果 を示 してお り3、 否 定的 な回答 をす る生徒 は 、古文 が 74.8%、 漢 文 が70.5%で
あ つた。古 文や 漢文 が好 きで はない生 徒 が多 い とい う実態 が 、ず つ と続 い て きた こ とが わか る。 2平n月
表序-1
平成17年度教 育課程 実施状況調査 の質問紙調査結果 そう思う とちらめせしえ はそう思う とちらめせしえ │ゴそう層才メルヽ そうき 'き ヽ 効 られ ヽ そアイ也 解 (1)国詠劾囲動 渕陪 だ 17.1%306%
23 99る 23.7%4.4%
0.0% 0.2%(2)動
劇よ翅刀だ 46.39る 40.19も 6.0%47%
2.6%
0.0% 0.2% 03)古翅盤 だ8.5%
14.6% 21.5% 51.2%40%
0.0% 0.3% αO漢
如雄 だ8.9%
159%
20.9% 50‐3%
37%
0.0% 0.3%序 章 この調 査 は 、高等 学校
3年
生 を対象 と した調 査 で あ り、他 学年 や 中学校 の生 徒 が どの よ うな意識 で あ るの か は 、 ここか らはわか らない。 た だ し、 この よ う な意識 は、高等 学校3年
の生徒 だ けが急 に感 じたわ けで はな く、それ までの積 み重 ね の 中で感 じて きた もの だ ろ う。 中学校 や 高等 学校 で行 われ て きた これ ま での古典 の学 習 が 、「古典 に親 しませ る」とい う点 で は、必 ず しも効果 的 で は な か った こ とが うか が われ る。 第3項
「古典 離れ 」 と言われ て きた状況 前項 で述 べ た全 国的 な調 査 だ けで な く、以前 か ら色 々 な場 面 で 、「古典離 れ 」 「古典嫌 い」 とい う言葉 が用 い られ て きた。 これ まで多 くの指導者 が 、古典 の 学習 の問題 点 を指 摘 してい る。 渡 辺春 美(2008)は
、古典 の学 習 の 問題 点 につ い て、「今 日、古典 へ の興 味・ 関心 は低 く、古典教 育 は根 本 の ところで 困難 を抱 えてい る」 と指 摘 を し、 問題 点 と して4点
挙 げてい る4。 一 一 一 〓 一 四 学ぶ意 味へ の疑 間 に応 えぬ学 習指 導 素朴 な学 力観 に基 づ く機 械 的学習指 導 典型 と して の古典観 に基 づ く学 習指 導 創 意 工夫 に乏 しい学 習 指 導 渡辺 の指摘 して い る問題 点 に共通 す る こ とは 、 四つ の学 習 指 導 とも、学習者 が不在 にな つてい る とい うこ とで あ る。つ ま り、(一)な
ぜ 古典 を学 ぶ のか とい う学習者 の疑 間 を置 き去 りに し、(二)口
語 訳 中心 の指 導 に偏 り、(三)古
典 の 価値 を学 習者 に押 し付 け よ うと し、(四)創
意 工夫 の ない指 導 をす る学 習指 導 が 行 われ てい る とい うこ とで あ る。 も しこの よ うな学 習 が繰 り返 され るな らば、 学習者 は古典 の学 習 に魅 力 を感 じる こ とはない だ ろ う。 第4項
古典 離 れ に対 す る手 立 て 古典 の文 章 が 、物 語 文 や説 明文 な どの他 の文 章 と異 な る点 は、現代 の 日本 語 で はそ の ま ま読 め ない とい う点 で あ る。 つ ま り、学習者 と古典 の 間 に言語 的抵 抗 が あ り、内容 を直接 読 む こ とが で きない とい うこ とで あ る。このた め、従 来 、 古文 を現代 文 に訳 す とい う活 動 が 主 に行 われ て きた。 しか し、現 代 語 に訳す こ とに こだわ りす ぎた こ とが 、渡辺 が指摘 してい る問題 点 で あ る。この学 習 で は、 古文 を現代 語 に訳 す こ とが主要 な 目的 とな りや す く、現代 語 訳 が で きれ ばそれ4渡
辺春美「古典指導 の問題 点 ―学ぶ意 味へ の疑 間に応 えぬ学習指導」『 教育科 学国語 教育』696 号 明治図書 出版2008年
pp.24‐27序 章 で終 わ りとな りや す い。 この よ うな現 代 語 訳 中心 の学習 指 導 で はな く、言語 的抵 抗 を無理 な く縮 め よ うとい う実践 が 、 中学 校 や 高等 学校 で多 く試 み られ て きた。 例 えば 、語釈 や 現 代語訳 の積 極 的活 用 な どが あ る。 また、 内容 の読 み と りや す い教材 を使 用す る こ とも同 じで あ る。 これ らの手 立 て は、学習者 と古典 世 界 を結 ぶ 第 一歩 で あ る と考 え る。 しか し、言 語 的抵 抗 を取 り除 くこ とだ けで は、古典 の言 葉 に慣 れ る こ とはで きて も、古典 に親 しむ た め には十 分 で はない。 坂 東 智 子
(2010)は
、学習者 が古典を嫌 う理 由を、①言語的な抵抗があ り、内容 を理解す るのが難 しい。②何
のために学習す るのかよくわか らない。③現代の生活 とかけ離れていて実感が
わかない、の
3点
に整理 し、次のように述べている
5。「何のために古典を学ぶのか」という根源的な問いを包摂する②や、③の「現代の生活
とかけ離れていて実感がわかない」とい う理由にこそ、現在の中学校における古典学習指 導の本質的な課題があると考える。言語的な抵抗感は、②や③をどう考えるかによつて、 対応の仕方が変わつてくる問題ではないか。 坂 東 の指 摘 に よ る と、言 語 的抵 抗 は表 面 的 な 問題 で あ り、 学 習 者 が 古 典 を学 ぶ 意 義 を感 じに くか つ た り、 古 典 世 界 を身 近 に感 じに くか つ た りす る こ とが 間 題 の本 質 とい うこ とで あ る。 学 習 者 が 、 この よ うに感 じて しま うの は 、学 習者と古典世界の間には、絶対的な距離があるか らである。 この距離を どう縮めて
い くかが、古典に親 しませ るための視点である。
〔
伝統的な言語文化 と国語 の特質に関す る事項〕が新設 され、子 どもたちは、
小学校か ら古典 と出会 うことになつた。出会いの時期だか らこそ、古典 との距
離感 を感 じさせ ない指導が求め られ る。
第
2節
研 究 の 目的
以上の背景 よ り、まず、学習者 と古典世界の距離を縮 める手立てを明 らかに
す る。そ して、その手立てを組み込んだ授業を構想 し、授業実践を通 して手立
ての有効性 を明 らかにす ることを、研究の 目的 とす る。
序 章 第
3節
研 究 の 計 画 上記 の 目的 を達成 す るた め、次 の よ うな計 画 で研 究 を進 め る。i
学習者 と古典 世 界 の距離 を縮 め るた めの有効 な手 立 て を明 らか にす る。 五 小学校6年
生 の児 童 を想 定 して、導 き出 され た手 立 て を組 み 込 ん だ授 業 を 構 想 す る。 面 構想 した授 業 に必 要 な教材 、 ワー クシー ト、提 示 用 資料 、検 証 資料 等 を準 備 す る。 市 構想 した計 画 に従 つて授 業 実践 を行 い、手 立 て の有 効性 の検 証 を行 う。v
研 究 で得 られ た成 果 と課題 を整 理 す る。第 1章
第
1章
古 典 世 界 に親 しみ を持 た せ る小 学 校 国 語 の 授 業 の 構 想
第
1節
学 習 者 との つ な が り
第
1項
古典の価値 をどのように学ぶのか
古典世界 と現代 との間には、絶対的な距離がある。つま り、古典作品は、現
代 とは異なる時代 に制作 されたものであ り、言語 も生活習慣 も価値観 も、現代
とは大きく異なっている。 この違いによつて、学習者 は古典世界を遠い世界の
もの と感 じて しまつているといえる。では、一体 どのよ うに古典に接 した らよ
いのだろ うか。
学習者 と古典の間に距離があることは、古典作品が、過去に成立 したことか
ら考えると、仕方のないことである。だか ら、距離があること自体が問題では
ない。古典 との距離について、飛 田多喜雄 (1974)は 、次のよ うに述べている
6。言語的抵抗があつて、ある程度むずかしいということと、取りあげられている事がらが
現代生活 か らみ て縁遠 い とい うこ とは、制作 の時間的距離 か らみ て已む を得 ない こ とで あ り、古典 の持う運命 的 な要素 で あ る。それ だか らこそ、私 どもは古典 にみ る時代 を越 えた 価値 とともに、音 は あつて現在 は無い もの、昔は無 くて現在 あ る もの を通 じて変化 の価値 をも味得 しよ うと してい るのであ る。 飛 田の指摘 に よ る と、距離 が あ る こ とが 問題 なので は な く、そ の距 離 自体 が 古典 の価値 を持 つて い る とい うもの で あ る。 現代 とは異 な る時代 の作 品の 中か ら、音 の人 の もの の見方や 考 え方 を学ぶ の で あ る。 た だ し、 問題 は、 そ の古典 の 中にあ る価 値 を どの よ うに学ぶ かで あ る。仮 に、古典 の価値 を一方 的 に与 え られ る学習 だ と した ら、学 習者 が受 け身 の姿勢 とな り、古典 に親 しむ こ とは難 ヒ/い。 この 問題 に対 して 、長 谷 川 孝 士(1973)は
「中学校 にお け る古 典 の学 習指 導 」 の 中で 、古 典 教 育 の 目標 につ い て 、「古 典 の価 値 を ス タテ ィ ック に 考 え る」こ と を否 定 し、 次 の よ うに述 べ て い る7。 古典を広 くそれぞれの時代・社会において行動 し感動 し思索 した典型的な人間の記録 だと考えるとしても、その大きさは読み手の大きさだけしか機能 しない。つま り、そ う 6飛田多喜雄 「国語科 古典指導 の基本 的 な考 え方」『 国語教 育基本論文集成17
国語科 と古典第 1章 した古典 の価値 は古典 か ら読 み手へ の、いわば上か ら下へ の一方通行 で はない とい うこ とで あ る。 古典 か ら読 み手 へ の働 きか け とは、読み手 か ら古典へ の働 きか けを意 味す る もの ととらえるべ きであ る。 古典 を古典 た らしめ るものは実 は読 み 手主体 なので あ る。 その価値 も意義 も、読み手 主体 が発 見 し、引 き出 して、初 めて存在す る もので あ る。 要 す るに、古典 か ら読 み手へ の働 きか け と読み手 か ら古典へ の働 きか け と、 この相 互作用 の うえに、初 めて古典が古典 として成 立 し機能す る と考 えるべ きであろ う。 長 谷 川 の 指 摘 は 、 古 典 の価 値 を普 遍 的 な もの と して 、 学 習 者 が 一 方 的 に受 け 取 る もの で は な く、 学 習 者 の視 点 か ら古 典 を読 む こ と も必 要 だ とい うもの で あ る。 つ ま り、 学 習 者 の視 点 で 、 古 典 の 中 に あ る価 値 を 引 き 出す 読 み 方 と、 古 典 を客観 的 に読 む 読 み 方 の 両 方 向 か らの読 み が必 要 だ とい うもの で あ ろ う。 この こ とにつ い て は 、 長 谷 川 だ け で は な く、 渡 辺 春 美
(2008)も
指 摘 して い る。 渡 辺 は 、序 章 第3項 (3頁
)で
述 べ た 古 典 学 習 の 問題 点 を指 摘 した 中 で 、「典 型 と して の古 典 観 」「関係 概 念 と して と らえ る古 典観 」とい う言 葉 を使 っ て整 理 して い る8。 内容理解中心の古典学習指導の実際には、古典を、時代の風雪に耐えて今 日に継承 され た典型的、規範的価値を持つものとする古典観に基づ く学習指導が見られる。この古典観 に立つ指導者は、古典を先験的に価値あるものとし、学習者をその価値に導き理解 させる ための読みの指導を行お うとする。指導は教え込み ともな り、「大人になれば分かるとき がくる」 と先を当て込んで、学習者に古典 (教材)の
価値を教え、覚えることを強いる。 (中略) 古典を典型 ととらえる古典観に対 し、関係概念 としてとらえる古典観がある。古典は、 学習者の積極的、主体的な読みによつて個々の中に立ち上が り、学習者の生活 と精神を相 対化 し、認識、感動、示唆、指針、反省を新たにさせ、今 日を生きる力 となる。古典の価 値は、先験的にあるのではなく、学習者 との関係性の中に立ち上が り、見出されるとする のが関係概念 としての古典観である。 渡 辺 の用 語 に よれ ば 、 古 典 の価 値 が普 遍 的絶 対 的 な もの で あ る とい う考 え方 が 「典 型 と して の 古 典 観 」、 学 習 者 が 見 出す もの で あ る とい う考 え方 が 、「関係 概 念 と して の 古 典 観 」 とい うこ とに な る。 長 谷 川 、渡 辺 の指 摘 に共 通 す る こ と は 、 古 典 の価 値 は 、価 値 あ る もの と して 最 初 か ら存 在 す るの で は な く、現 代 の 学 習 者 の 立 場 か ら見 出す もの だ と して い る点 で あ る。 8渡辺春美「古典指導の問題点 一学ぶ意味への疑間に応えぬ学習指導」『 教育科学国語教育』696 号 明治図書出版2008年
p.26第1章 古典 の価 値 を学 習者 が 見 出す よ うにす るた め には、渡辺 も指 摘 して い る とお り、学習者 を主体 と した授 業 を位 置 づ け る必 要 が あ る。 指 導者 の構 え も、教材 も、学習活 動 も、学 習者 が主体 とな る授 業 に 向 けた もの で な けれ ば な らない。 そ の 申で 、学 習者 が古 典 と向 き合 って、古典 の価 値 を見 出 してい く授 業 が求 め られ る。 この よ うな授 業 は、古典 の入 門期 で は特 に必 要 で あ ろ う。 入 門期 だか らこそ、受 け身 で は な く、学 習者 が主体 的 に古典 と関 わ る授 業 を構 成 しな けれ ばな らない。 第
2項
学 習者 と古 典 を結 ぶ2つ
の視 点 第1項
で は、学 習者 が主体 とな って古典 と向 き合 ってい く授 業 を構 成 す る必 要性 を述べ た。 第2項
で は 、具体 的 に、学習者 と古典 の 間 に あ る距離 を どの よ うに縮 め、学 習者 が主 体 的 に古典 と向 き合 う授 業 を構 成 してい くの か を探 つて い く。 町 田守 弘(2009)は
、 古 典 に親 しむ た め の 具 体 的 な方 策 の 一 つ と して 、 現 代 との接 点 を と らえ る こ とが 大 切 で あ る と し、 次 の よ うに述 べ て い る9。 国語教育の多 くが読解に関するもので、教師主導型の「読んで、説明 して、分からせて、 暗記させる」とい う一方向的な授業であるとい う現状の抱える問題に関 しては、本書の中 で何度か指摘 した。古典の授業では、さらに 「語意」「文法」 とい う専門的な知識に関わ る要素が介入することになる。古典に親 しむための様々な工夫を駆使 して、まず古典に対 する興味 。関心を喚起することが先決であろう。現代 との接点を探ることによつて古典の 面白さに気付かせ、少 しずつ古典の世界にいざなうとい う粘 り強い学習指導がいま求めら れている。 町 田は 、 高 等 学 校 の 学 習 とい う立 場 か ら述 べ て い る。 一 方 向 的 な授 業 に な り や す か つ た り、語 意 や 文 法 な ど専 門 的 な知 識 を学 習 した り して 、 古 典 に親 しみ に くか つた 現 状 に対 して 、「まず 古 典 に対 す る興 味・関心 を喚 起 す る こ とが先 決 」 と述 べ て い る。そ して 、そ の た め の 手 段 と して 、現 代 との接 点 を提 案 して い る。 つ ま り、現 状 の 問題 点 を克 服 す る た め に 、 現 代 との接 点 を探 る こ とで 、 学 習者 の興 味・ 関 心 を喚 起 し、 古 典 の世 界 にい ざな お うと して い るの で あ る。 現 代 との 関連 に つ い て は 、小 和 田仁(1983)も
次 の よ うに指 摘 して い る10。9町
田守弘『国語科の教材・授業開発論一魅力ある言語活動のイノベーシヨンー』 東洋館出 版 2009イ手 p.259第 1章 少 な くともまず 、過 去 と現代 との対話 の態勢 を確 立す るこ とか ら始 めな けれ ばな らない。 過去の 中に現在 を発 見 し、現在 にない ものを見つ ける、そ こに古典 を読 むお も しろ さ、喜 び、感 動 が生 まれ るのであろ う。古典学習 の根本的意義 は、こ うした学習態度 に よつて得 られ る ところの 「読むお も しろ さ、喜び、感動」 なのであ る。 こ こで は、現 代 との共 通 点や相 違 点 を見つ け る こ とに、古典 を読 む お も しろ さ、喜 び 、感 動 が あ る と して い る。 小 和 田 も町 田 と同 じよ うに、現代 と関連 さ せ る こ とで 、学 習者 に古典 を読 む 面 白 さや 喜 び を感 じさせ よ うと して い る。 二 人 の指 摘 に共 通 して い る こ とは、学習者 の興 味・ 関心 を喚起 しよ うと してい る 点 で あ る。 これ は 、学 習者 が主体 的 に古典 と向 き合 う授 業 の第一 歩 で あ ろ う。 現代 との接 点 を持 たせ 、学 習者 の興 味
0関
心 を喚起 す る こ とに関 して、町 田 は、次 の よ うに も述 べ てい る11。 古典の世界が自分たちの生活する「いま、ここ」につながっているという事実を知ると、 生徒たちの関心も自ずと喚起されることになる。 ここで大切 な こ とは 、学習者 の 「い ま」「ここ」につ なが つて い る とい うこ と で あ る。 この 「い ま」「ここ」 とい う視 点 か ら見 る と、学 習者 と古典 の間 の距離 が どの よ うな もの か は っ き りして くる。 序 章第1節
第4項
(4頁
)で
も述べ た が、学習者 と古典 の 間 には、言語 面 で の違 い 、 内容 面 で の違 い 、価 値観 の違 い な ど絶対 的 な距離 が あ る。 しか し、 この よ うな違 い に よ る距離 だ けで は な く、 根底 には、学 習者 と古 典 との心理 的 な距 離 が あ るので は ない か。つ ま り、「古典 は、遠 い音 の話 で あ る」「古典 は、 どこか遠 くの場所 の話 で あ る」 とい う心理 的 な距離 が、 自分 とはか け離 れ て い る世 界 だ と感 じさせ 、古典 との距 離 を大 き く してい る と考 え られ る。 この心理 的 な距離 を、「時 間的 距離 」「空 間的距離 」 と 仮 定 した。 「時間的距離 」 …・古典 は、 「空 間的距離 」…古典 は、 遠 い昔 の話 で あ る。 どこか遠 くの場所 の話 で あ る。 しか し、時 間的 に も空 間的 に も、 自分 と古典 がつ なが つてい る こ とを実感 さ せ るこ とが で きれ ば 、古典 との距離感 は な くな り、古典 に親 しみ を持 つ こ とが で きるだ ろ う。 そ こで 、本研 究 で は、学習者 と古典 の 間 に あ る時 間的距離 と空 間的距離 を どの よ うに縮 めて い くのか を研 究 の視 点 に据 え る。 そ して、2つ
の 距離 を縮 め るた めの具 体 的 な手 立 て を次 の よ うに考 えた。 11前掲 書9と 同 じ p.259第1章 時間的距離 を縮 め るた めの手 立 て 創 作活 動 を手 立 て とす る。 古 典 作 品 を も とに創 作 をす る活 動 を位 置 づ けた 単元 を構 成 す る こ とに よ り、作者 の立場 に立 って作 品 を追 体 験 す る こ とにな り、「自分 も作者 と同 じよ うな気 持 ち を持 つてい る」「昔 も今 も考 え る こ とは 同 じだ」 とい う思 い を持 たせ る こ とがで きる。 空 間的距離 を縮 め るた めの手 立 て 地域 教材 を手 立 て とす る。 地域 に関係 の あ る古典 作 品 を教材 と して取 り入 れ た単元 を構 成 す る こ とに よ り、「自分 の地域 に関係 の あ る話 だ」「自分 の地 域 につ い て理解 が深 ま った」 とい う思 い を持 たせ る こ とが で き る。 時 間的距離 を縮 め る手 立 て は、創 作活 動 だ けで は ない。 他 の手 立 て と して、 レポー トの作成 や話 し合 う活動 な ど、古典 の内容 を も とに、 自分 の視 点 で意見 を述べ る活 動 が考 え られ る。 ま た、視聴 覚教材 を使 つて 、 時 間的 距離 を埋 め る 方法 もあ る。た だ し、今 回 は入 門期 で あ る小学校 で の実践 を想 定 してい るた め、 作者 にな りきつて考 え、作者 を よ り身近 に感 じさせ るた め、創 作活 動 とい う手 立 て を とる。 同様 に、空 間的 距 離 を縮 め る手 立 て も、地域 教材 だ けで は ない。 他 の手 立 て と して、実 際 に舞 台 とな つて い る場所 に行 く活動 や 、視 聴 覚教材 の利 用 な どの 方法 も考 え られ る。 た だ し、入 門期 で あ り、 自分 の住 ん でい る地域 との接 点 が 大 き く、かつ 日常 の授 業 と して無 理 の ない活 動 を考 え、地域 教材 とい う手 立 て を とる。 創 作活動 と地域 教材 の
2つ
の手 立 て につ い ての詳 細 は 、第2節
と第3節
で述 べ る。第
2節
時 間 的 距 離 を縮 め る た め の 手 立 て
第
1項
創作活動の意義
(1)創
作活動の意義
これまで、国語科の授業では、書き換 えとい う方法での創作活動は広 く行わ
れてきた。青木幹勇
(1986)、首藤久義
(1999)、府川源一郎・高木ま さき
(2005)は、それぞれ、「書替え
″
」
「翻作法
B」「書き換え
14」とぃ ぅ言葉で提案 している。
第 1章
まず、それぞれが捉えている方法について整理すると、表 1-1の ようになる。
表1-1
『書替 えJ「翻作法 」「書 き換 えJに
つ いての捉 え方これ らの方法は、言葉は異なるが、同 じよ うな学習活動 を想定 していると考
えてよい。また、書 き換 えと創作は別物ではなく、書 き換 えも創作の一部であ
り、書き換 えの最終的な形が創作だ と捉えている点 も共通 している。
では、この方法を取 り入れ ることは、 どんな意義があるのだろ うか。青木幹
勇は次のよ うに述べている
15。 書替 えをす る こ とに よつて 、読 み を確 か に し、読み を深 めてい きます。 各 自独 自な想 像 を付加 し て、書替 えの文章 を豊 かな ものに していきます。 したがつて、 この書替 えは、 書 くた めに読 み 、読 むた めに書 く とい う個別 の学習活動 で、発 間に引回 され 、応答 に汲 々 とす る学習 とは、全然 ちがいます。 各 自が 教材 に没入 して読 み ます。ひ と通 り読みすす めた ら、そ こで反 転 して 、書 き手 の立場 に な るのです。 ここが非常 に大事 な ところです。 この学習 のポイ ン トです。 こ こか らわ か る こ とは 、読 む こ と と書 くこ とが 関連 し合 つ て い る こ とで あ る。 つ ま り、読 み を深 め る こ と と豊 か な表 現 をす る こ とを別 々 に捉 え るの で は な く、 理解 す る こ と と表 現 す る こ とを 自然 な形 で 関連 させ る こ とを 目指 した 指 導 だ と い え るだ ろ う。 この 点 につ い て 、首藤 久 義(2004)は
、「表 現・ 理 解 ・ 言 語 事 項 の総 合 学 習 」 だ と捉 え 、次 の よ うに説 明 して い る16。 翻作法では、翻作すること自体が表現の学習になるが、翻作するために原作を繰 り返 し 読む うちに内容理解が、より確かなものになります。そ うい う意味で、これは、表現を通 14府 川源一郎・高木まさき『認識力を育てる「書き換え」学習―小学校編一』府川源一郎 。高 木まさき/長
編の会 東洋館出版2005年
p.121 15前 掲書 12と 同じ p.126 16首 藤久義『翻作法で楽 しい国語』監修者桑原隆 編著者首藤久義・卯月啓子 著者桑の実会 東洋館出版2004年 p.9
氏 名 方 法 どのようなものか 青木幹勇 (1986) 書替 え 子 どもたちが、教材 を読み 、その理解や想 像 に よつ て、教材文 を書替 えてみ る学習 首藤久義 (1999) 翻作法 何 らかの原 作 を も とに して、それ をなぞ つた り変 え た りして表現す るこ と 府 川 源 一 郎 ・ 高 木 ま さ き (2005) 書 き換 え 一度 書 かれ た文 章 を別 の文 体や別 の 立場 か らも う 一度 「書 き換 え」 る学 習活動 をす るこ と第 1章 して精読する (精密に読む
)方
法にな ります。 そ うすることを通 して、原作にした作品の内容や形式になじみが深ま ります。表現され た作品の内容や形式になじみが深まることは、表現 されたものを読んで理解 した り、自分 で表現 した りする際に活用 される素養が豊かになるとい うことです。 こ こで重 要 な こ とは 、表 現 を 目的 に読 む こ とを通 して 、 内容 を精 読 す る こ と に な り、 さ らに 、 作 品 の 内容 や 形 式 に な じみ が深 ま つ て い く とい うこ とで あ ろ う。 つ ま り、理 解 す るた め に精 読 す るの で は な く、表 現 を前 提 に読 む 中で必 然 的 に精 読 す る こ とに な り、 そ れ が 自分 の表 現 に生 か され る とい うこ とで あ る。 何 の た め に読 む の か 、 読 ん だ こ とが ど う生 かせ るの か が 、 学 習 者 に とつて 明確 な学 習 だ とい え るだ ろ う。 ま た 、 首 藤 は 、 表 現 と理 解 を 関連 させ な が ら読 む こ との も う一 つ の効 果 と し て 、学 習 者 が 主 体 的 に 取 り組 む こ と も指 摘 して い る17。 翻作法による授業では、従来の読解授業と違つて、解釈のために作品を読まされるので な く、表現 のた めに作 品 を利 用す る とい う、よ り能動 的な態度 を引き出す ことが可能 にな るのです。翻 作法 を取 り入れ た授 業 で子 どもが生 き生 き と活動す るよ うにな るのは、その ためです。 これ も、翻 作法 の見逃せ ない利 点の,つ
です。 目的意識 を持 つて読 んで い る こ とで 、学習者 が主体 的 に取 り組 む とい う指 摘 で あ る。青木 幹 勇 が 、「発 間 に引回 され 、応 答 に汲 々 とす る学 習 とは、全 然 ちが い ます。各 自が教材 に没入 して読 み ます。」 と述べ てい る点18も 、 同様 の指摘 で あろ う。 以上 の こ とか ら、創 作活 動 の意義 は、次 の よ うな もの だ と考 え られ る。 ・ 目的意識 を持 つて読 む こ とで学習者 が主体 的 に取 り組 む こ と ・ 作者 の書 いた 内容 や表現形式 に注 目す るな ど読み が精密 にな つてい くこ と(2)古
典 の授 業 で の創 作 活 動 創 作活動 の意 義 は(1)で
述 べ た。 ここで は、古典 の授 業 にお い て 、創 作活 動 は どの よ うな意 味 を持 つ のか を探 つてい く。 古典 の授 業 を活性 化 す る方 法 と して、表 現活動 と関連 させ る こ とは、多 く提 案 され て きてい る。岩 崎淳(2010)は
、創 作 につ い て次 の よ うに述 べ てい る19。第 1章 難行 苦行 で はな く、 これ か らの古典学習 は、「古典 を楽 しむ」活 動 をい つそ う重視す る 方 向 とな る。古典 を題材 とした創 作・ 表現活動へ と発展 させ てい くこ とが実際的 かつ効果 的であ り、音読・筆 写の活動 はその一例 である。その他 に、古典作 品 と関連 した文章 を書 くこ とも考 え られ る。随想 を書 く、新 聞記事 を作成す る、続編 を書 く、別 バー ジ ョンを書 く、戯 由化す るな どアイデ アは尽 きない。 こ うした活動 に対 して、「それ は古典 をだ しに した表現活動 で あ り、古典教育 ではない」 とい う批判 がな され る こ とが ある。 その主張 に は一理 あ るのだが、そ うした考 え方が今 日の古典教育 の閉塞 的 な状況 を生み 出 した原 因の 一つで もあ る。 書 くとい う行為 を前提 とす る と、読み は精密 にな る。 古典 が好 きにな り、 生涯 にわた つて古典 に親 しみ を感 じる生徒 が増 えれ ば、それ は古典教 育の成功 を意味 して い る。
岩崎の指摘か らは、古典教育の閉塞的な状況に対 し、創作活動 を通 して、古
典に親 しませ よ うとしてい ることがわかる。つま り、 これまで、現代語訳に偏
り、学習者が 目的意識 を持 ちにくかつた古典の学習か ら、学習者が主体的に古
典 と向き合 う学習へ転換 しようとい う提案であろ う。これは、
(1)で
述べた表
現 と理解 を関連 させ る創作活動の意義 と共通 している。古典離れ といわれ る状
況だか らこそ、古典の学習においても、学習者が主体的に取 り組む視点は重要
である。
一方、渡辺春美 (2010)は 、登場人物の一人の視点か ら『 竹取物語』を再現
させた片桐啓恵の実践 を例に挙げ、創作活動について、次のよ うに述べている
20。 古典 の指 導 を表現 に関連 づ け るこ とで、学習者 の興 味・ 関心 を喚起す るこ とがで きる。 和歌 を読 んで感 得 した ことを詩 に表現す るの も一つの方法で あろ う。物語 の登場人物 に成 りきつて 日記 を書 く。登場 人物 に手紙 を送 る。あ るいは、あ る場 面や物語 を劇化。絵画化・ 漫画化 した り、紙 芝居 に した りす る こ ともで きる。(中略)登
場 人物 に成 りきつて再表現 す る とい う方法 の面 白さが学習者 を引 きつ けるが、それ以上 に翁 の心情 を物語 の世界 を生 きつつ (想像 しつつ)感
得 してい くこ とが興味・ 関心 を深 い ものにす る。 ここで は、登 場 人 物 に な りきつて創 作す る こ とは、活 動 の面 白 さだ けで な く、 物語 の世界 の 中で登 場 人物 の心情 を感 じる こ とが で き る と述 べ られ て い る。 つ ま り、創 作 活 動 に よつて学 習者 が興 味・ 関心 を よ り深 い もの にす るには、活 動 の面 白さだ けで な く、登場 人物 の視 点 に立つ こ とが で き る点 に あ る こ とがわか 20渡 辺春美「古典に対する興味・関心喚起の方略」『 月刊国語教育』第30巻第8号 東京法令 出 版 2010イ手 pp.23‐24第 1章 る。 同様 の提 案 は、小 田迪夫
(2008)も
行 つてい る。 小 田は、古典 に親 しむ た めには読 み慣 れ か ら表 現 につ なげ てい くこ とが必 要 だ と し、次 の よ うに述 べ て い る21。 もつとも、読みなれは古典に親 しむ態度育成の入 り口である。入 り日からさらに作品世 界に深く入 り込んで、情景をまざまざと思い浮かべたり作中人物に同化 したりして、古典 の世界に遊ぶことで古典に親 しむ境地が開けてくる。 小 田は、「情景 をま ざま ざ と思 い浮 かべ た り作 中人物 に同化 した り」す る活動 に よつて 、古典 に親 しむ こ とが で き る とい う指摘 を してい る。 渡 辺 と小 田の指 摘 の共通 点 は、創 作活 動 に よつて 、登場 人物 を追 体験 して 、登 場 人物 の心情や 情 景 を感 じる とい う点 で あ る。 これ は、学 習者 と古典 の 間 に あ る 「古典 は遠 い 音 の話 で あ る」 とい う意識 を解 消す る こ とにつ なが る。創 作活 動 は 、学習者 と 古典 の間 の時 間的 距離 を縮 め るの に有 効 で あ る とい え よ う。 第2項
創 作 につ いての先行 実践 古典 の学 習 にお い て 、創 作 活動 が有 効 で あ る こ とは 、第1項
で述 べ た。 第2 項 では、古典 の学 習 で どの よ うな創 作活動 が実践 され てい るの か を分析 す る。 まず 、小 学校 で の伝 統 的 な言 語 文化 を学 ぶ 実 践22の中か ら、創 作活 動 に 関連 す る実践 を抽 出す る。 なお 、表 現活 動 につ な げ る実践 とい う場 合 に は、朗読や 対談 な どの活 動 も考 え られ る。 た だ し、今 回 は、 よ り創 造 の度 合 い が高 い 、書 く活動 の実 践 に絞 って検討 してい くこ とにす る。 表1-2
書 く活動 に関連付 けた創作活動 の先行実践 番 執筆者 単 元 橡 時 教 材 創 作 の方 法 ① 住田譜 「とも 'さ 勁イソコ も ヽうか /1ヽ1 5 秘 前と特徴な … リジ《ムて,そケ ② 雌 署ヨ罰 'Cり [イ可を」殊dLttδう /1ヽ3 5 夕陶 初 陶 罐 lJT ③ 中催 読んでみよう作うてみよう① /1ヽ4 3 夕H可 夕H句鶴llfF ④ 中篠 読んでみよう作うてみよう② /1ヽ4 3 鰍 麟 咋 21小田迪夫 「言語 文化 に親 しむ態度 を育て る ― 育』696号 明治 図書 出版2008年
p.12 22次の2冊の書籍 の実践 に よる。 古典指導のあ り方 を問 う ―」『 教育科学国語教第 1章 ⑤ 力峨 古典の世界ヘワンダニワンダー /1ヽ6 4 藤 雲をテーマにした短 麟 llft ⑥ 師 慣用句漫画辞典を作ろ う /Jヽ3 4 朗 句 4コ マ輌 萌 晰乍 ⑦ 針 好 まんがで楽しむ故事成語 小4 5 嚇 4コ マ漫画の自lJ● ③ 剛 ことわざα断察″)くろう /1ヽ4 5 ことわざ 講 昨 ⑨ 豊田益子 哩日に凋鯖司1司男しもう /1ヽ4 3 囁
(枷
地 の子、そ¨ 繕 譜 萌 lll■ ⑩ 片山富子 論語の 睦卿Lを自分に置き換え て新聞をつくろう 小5 4 耐 論語の教訓芳間 萌 J 作 ⑪ 岬 書こう /1ヽ6 3 嚇 五十歩百歩 鰈 咋 ⑫ 秦さやか 古典期間をつくろう /1ヽ6 3 珈 妨 lllt ⑬ 鰤 昔ばな しのつづき話をつ くろう /1ヽ2 5 かさこじぞう 続き:静鮪llfF ⑭ /1南叢 夕 ほ 昔ばな しとその童調 こ親しもう /1ヽ2 4 うらしまたろう 崖爵歌の4勧
晰乍 ⑮ 剌 鳥調 ぎt
私の 円菊貼粛麺肇子」をつくろう 小5 4 騰 口 まあけばの) 列¨ lll・ ⑩ 吉田稔 銘 人の教え ―先輩からのア ド バイス集 ―」をつくろう /1ヽ5 4 鮮 (高名の本登り) 現代版名人の教えの 倉llfF ⑫ 審 もし利の注ひ公 なら…「昔ばな し を考える」 /1ヽ2 4 襦 登場人物になって自 動 文を書く 以上 の実践 を大 き く分類 す る と、次 の よ うにな る。i
俳句や短歌の創作
(①∼⑤
)五
表現形式を換えての創作
(⑥∼⑫
)Ш
続きの創作
(⑬∼⑭
)市
現代の視点からの創作
(⑮∼⑩
)v
人物の視点を換えての創作
(①)i群
は、俳 句 や 短 歌 とい う形 式 を利 用 して創 作 した もの で あ る。 言葉 遊 びや俳 句や短 歌 を創 作 した実 践 が多 い。 た だ し、 い きな りす べ て を創 作 させ てい るの で はな く、共 通 の テー マや 共 通 の言葉 を設 け、そ の 中で無理 な く創 作 で き る よ うな手 立 て を とつ て い る。俳 句や 短 歌 での実践 が多 い の は、創 作 す る こ とで、 五音 七音 の リズ ム に慣 れ 、表 現形 式 に親 しむ こ とをね らい と して い るか らで あ ろ う。第1章 五群 は、表 現形 式 を換 えて創 作 した もの で あ る。 こ とわ ざ、慣 用 句 、故事成 語 の学習 で の実践 が多 い。 これ らは、成 り立 ちや 日常 生活 での使 い方 を、多様 な形式 で表 現 させ て い る もので あ る。 また 、⑨ の よ うに情 景 を映像 と してイ メ ー ジ させ る場 合 や 、⑫ の よ うに学 習 の ま とめ と して行 う場合 もあ る。 五群 の特 徴 をま とめてみ る と、漫画や 新 聞 な どの表 現形 式 に換 え る こ とで 、 自分 の 中で 再構成 を行 い 、実感 を伴 つた理解 を させ よ うと して い る とい え るだ ろ う。 面群 は、続 きを創 作 した もの で あ る。 学 習 の 中で読 み 取 つた あ らす じや 人物 像 を生 か して 、想 像 してい る もの で あ る。 も とにな つて い る物 語 は、全員 が共 通理解 して い るた め、低 学年 に も無理 が な く、楽 しみ な が ら創 作 で き る方法 で あ る。 市群 は、 立場 を換 えて創 作 した もので あ る。 これ らは 、 どち ら も随筆 で の実 践 で あ り、作者 が古 典 の世 界 を見 た視 点や形 式 を利 用 して 、学 習者 自身 の立場 か ら、現代 の世 界 を見 る活 動 で あ る。 ね らい は、現代 の世 界 の 中で 、作者 と同 じよ うな状 況 を見 つ けた り、作者 な らで はの感性 に気 付 い た りす る こ とで、古 典 の普遍性 を感 じさせ よ うと して い る こ とで あ る。 この方 法 は、古典 を現代 に 引 きつ け、古典 と同 じ視 点 で現代 を見 る方 法 だ とい え る。
v群
は、視 点 を変 えて創 作 した もので あ る。 物 語 の 中の登場 人 物 の視 点 に立 ち、そ の視 点 か ら創 作 してい く方 法 で あ る。 ね らい は 、登場 人物 に な りきる こ とで、心情 や 見 て い た情 景 を具体 的 に想 像 させ よ うと して い るの だ ろ う。 この 方 法 は、学習者 が古典 の世 界 の 中 に入 つてい く方 法 だ とい え る。 大 き く分 類 す る と、i群
か らv群
まで の方 法 で創 作 活 動 が行 われ てい る こ と がわか つた。 どの創 作 活動 を行 うか は、ね らいや 学習者 の実態 や 教材 に合 わせ て考 えてい く必 要 が あ る。 第3項
実 践 の 方 法 本研 究 にお い て 、創 作活 動 を行 う意 図は、学習者 と古 典 との時 間的距離 を縮 め るた めで あ る。そ の た め には、どの創 作活 動 を行 うこ とが有効 な のだ ろ うか。 第1項
で述 べ た よ うに、創 作活 動 の意義 は、追 体験 をす る こ とに よつて、登 場人物 の心情 や 見 て い た情 景 を具 体 的 に想 像 で き る点 に あ る。 この よ うなね ら い にふ さわ しい方 法 は 、i群
か らv群
まで の 中で は、v群
の方 法 で あ る。 そ こ で、本研 究 で は、登 場 人物 にな りき り、古典 世 界 の 中 に入 つてい くこ とで、時 間的距離 を縮 め る とい う方 法 を とる。 なお 、具体 的 に どの よ うな学 習 活 動 を取 り入れ るか につ い て は 、教材 と合 わせ て考 え る こ とにす る。第 1章
第
3節
空 間 的 距 離 を縮 め る た め の 手 立 て
第
1項
地域教材の意義
第 1節 で、空間的距離を縮めるための手立て として、地域教材 を活用 しよう
と考えていることを述べた。では、地域教材 を活用す ることは、 どのような意
義 を持つているのだろ うか。 ここでは、その点について探つてい く。
鳥 山榛名 (1956)は 、「小 中学校における古典教育」の中で、地域教材につい
て次のよ うに述べてい る
23。地域に即した「古典入門」の単元を設けることも、関心を持たせるという点では効果が
ある。「郷 土 の文 学」 とい う形 で教材 を集 めて学習 させ る。 この場合 は、生徒 の教材 に対 す る親 近感 が深 く、古典 の文 章の言語的抵抗 は、親 近感 に よつて努力的 に排 除 され る。「郷 土の文学」的な資料は各地で編集 されてよく、すでに 「二重の文学」な どはそのよい例 を 示 している。東京 を中心 として 「武蔵野の文学」も可能であろ うし、関西の地域では資料 に事欠かないであろ う。 鳥 山 の 指 摘 か らは 、 地 域 教 材 は 、 教 材 に 対 す る 学 習 者 の 親 近 感 が 深 く、 そ の 親 近 感 に よ つ て 、 言 語 的 抵 抗 が 少 な く な る とい う こ とが わ か る。 つ ま り、 学 習 者 と古 典 の 間 に あ る 言 語 的 抵 抗 よ り も 、 教 材 に 対 す る親 しみ の 方 が 上 回 る とい う とい う こ とで あ る。 教 材 に 対 す る親 近 感 が 深 い とい う こ と に つ い て は 、 高 木 功(1996)は
、 次 の よ うに 主 張 して い る24。 郷土教材 を授業化す るとい うのは、ひ とつには郷上の文学的風土を知 ってほ しいか らで ある。 もうひ とつには教科書教材が生徒の実感か らかけ離れていて、興味・ 関心をもつて 取 り組み難 くなってい ることか らである。教科書教材 を学ぶ ことによ り、知識、思考等の 領域を拡大 した り、また、既知を相対化す ることがあ り、その よ うな内容 に、生徒の中に は知的好奇心を抱 く者 もあるが、多 くの場合生活実感 か ら遠 く、受 け身の授業態度になっ て しまい、深ま りの欠ける読解指導になって しま うので、生徒の生活実感や問題意識に触 れ合 うものを求 めて 「投げ込み」教材 として工夫 してきた。 高 木 は 高 等 学 校 の 指 導 者 と して の 立 場 か らの 指 摘 で あ る。 教 科 書 教 材 は 学 習 者 の 生 活 実 感 か ら遠 く 、 受 け 身 の 姿 勢 に な りや す い 状 況 が あ り、 そ の 手 立 て と 23鳥 山榛名「小中学校における古典教育」『 国語教育基本論文集成17
国語科 と古典教育論 古 典教育論 と指導研究』飛 田多喜雄・野地潤家監修 小和田仁 。小りII雅子編 明治図書出版1993
年 pp.140‐141 24高 木功 「提案二 郷土教材の開発 と課題追及学習の展開」『 国語科教育』43号 全国大学国 語教育学会1996年
p.29第 1章 して地域 教材 を使 って い る。 この こ 者 の生活 実感 や 問題 意 識 に触 れ合 う 摘 は、米 国猛 ・松 田明大
(2008)も
うに説 明 して い る25。 とか ら、高木 は 、地 域 教材 の意 義 を、学習 もの と捉 えてい る こ とが わか る。 同様 の指 してお り、地域 教材 の意 義 につ い て次 の よ 「地域教材 」は学習者 の 日常に空間的に近い ことが好条件 とな り、「古典 に親 しむ態度」 の第一歩 とな りうる可能性 が高い。 米 田 。松 田の指 摘 で重 要 な点 は 、「空 間的 に近 い こ とが好 条件 とな り」とい う 点 で あ る。 学 習者 が古 典世 界 との空 間的近 さを感 じる こ とで 、古典 に親 しむ第 一歩 にな る とい う指 摘 で あ る。鳥 山、高木 、米 田・松 田の指摘 を合 わせ て考 え る と、地域 教材 は学 習者 に とつて空 間的 に身 近 で あ り、教材 自体 に親 しみ を持 つ効果 が あ る とい うこ とがい える。教材 に対す る親 しみ が あれ ば、「古典 は、ど こか遠 い話 で あ る」 とい う意識 を持 たず 、空 間的距離 を縮 め る こ とがで きるだ ろ う。 地域 教材 の意 義 の二 つ は、 この点 に あ る とい え る。 一方 、米 田 。松 田は、地域教材 の意義 を、別 の点 に も見 出 してお り、次 の よ うに指摘 してい る26。 古典指導における「地域教材」は古典に親 しむ態度を養い、さらには、郷土を見直すと い う内容価 値 的 な観 点 か らも有 益 な もの と判 断 で き る。 ここで注 目 した い の は、後 半の 「郷 土 を見直す とい う内容価値 的 な観 点 か ら も有益 な もの と判 断 で きる」とい う部分 で あ る。こ こで は 、地域 教材 に よつて 、 郷 土 の文化 的価 値 を再発 見す る こ とが で き る こ とが述 べ られ て い る。 小 学校 や 中学校 の学 習者 に とつて 、身 近 に あ るに もかか わ らず 、 ほ とん ど意識 しないで 過 ご してい る事 柄 は多 い。 そ の よ うな学 習者 に こそ 、地 域 教材 は有 効 で あ る。 地域教材 を学 ぶ こ との意 義 は、地域 の文化 的価値 を見直 す こ とに もあ る。 さ らに、広瀬 節 夫(1996)は
、静 岡 を舞 台 に した地域 教材 開発 につ い て、風 土 の持 つ特殊 性 と普 遍 性 とい う点 か ら、次 の よ うに指 摘 して い る27。 25米 田猛 。松田明大 「中学校国語科古典指導における『地域教材』の開発試論― 教材『越中 万葉』の開発 と実践 ―」『 富山大学人間発達科学部紀要』2巻 2号 富山大学人間発達科学部 2008ど手 p.3第 1章 静岡 とい う風 土 は、 もとも と、 日本 のなかのひ とつ の地域 にす ぎない。つ ま り、全体の なかの部分 であ る。 ところが、ひ とたび、その風 土が生 きた人間 とかかわ りを持 ち始 め る と、 日本 のなかのひ とつ の地域 で あ るこ とを越 えて、 日本 そ の ものの風 土に生 まれ変 わ る もので ある。つ ま り、部分 のなかの全体 を引 き出そ うとす る。静 岡 とい う風 土の なかで生 み出 され た言語 文化 に もかかわ らず 、生 きてい く人間 に とつての原風景 としての意味 を持 つ とき、それ は、ひ とつの地域 の特殊性 を越 えて、普遍性 を持つ存在 とな るであろ う。 広瀬 の指 摘 の重 要 な点 は、風 土 が人 間 と関わ りを持 つ と普遍 的 な もの にな っ てい くとい うこ とで あ る。 つ ま り、学習者 が地域 教材 を学 び 、そ の地域 の文化 的価値 を認 識 す れ ば 、 そ の古典 作 品の理解 だ けで な く、 日本 全 体 、 また は、古 典世界全 体 につ な が りを持 つ きつか けにな る とい うこ とで あ る
:自
分 と地域 と の関わ りを意識 で きた学習者 は、 そ の教材 を通 して、昔 の人 々の思 いや 考 えを 学ぶ こ とにな る。 古典 世 界 と自分 とのつ なが りを 自覚 す るきつか け に もな って い くので は ない か。 以上 の こ とをま とめ る と、地域 教材 の意義 は、次 の3点
に あ る とい え る。0学
習者 に とつて身 近 で あ り、作 品 に親 しみ を持 つ こ と ・地域 の文化 的価値 を見直 し、誇 りを持つ こ とがで き るこ と ・古典世界 とのつ なが りを 自覚す るきつか けにな る こ と 第2項
地域 教 材 開発 の 留意 点 地域教材 を活 用 す る意 義 は、第1項
で述 べ た。 こ こで は、 どの よ うな こ とに 気 を付 けて教材 化 して い く必 要 が あ るのか 、そ の点 につ い て探 つて い く。 地域教材 開発 の留意 点 につ い て は、渡辺春 美 (2012)28、 米 田・ 松 田29が述 べ てい る。 それ ぞれ の 内容 につ い て整 理す る と、表1-3の
よ うに な る。 28渡 辺春美『 小学校国語科 教室熱 中 明治図書出版2012年
pp.142‐143 29前 掲書 25と 同 じp.3
!「伝統的な言語文化」の言語活動アイデアB00K』第 1章 表