博 士 論 文 概 要 書
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(2) 1. 概要. ほぼすべての産業と家計では, 何らかのかたちで下水を排出する。下水処理の過程では, 下水中の汚染物を減少させる一方で, 温暖化ガスや固定廃棄物を新たに排出する。さらに 化学薬品や燃料などの投入も新たに必要となる。これは、特に下水を大量に排出する生産 物のライフサイクルアセスメント (LCA, Life Cycle Assessment) を行う場合には、下水 処理を考慮すべきであることを意味する。下水処理モデルは、このようなアセスメント において有用である。特に、Muñoz et al. (Journal of Industrial Ecology, 2008 12(4)) は、食料品の LCA を行うなかで、環境への最終排出量を決定するためには、下水処理モ デルを用いることが必要であると指摘している。 既にいくつかのプロセスデータに基づく下水処理の LCA モデル (process-LCA) が 開発されている。ただし Lundin et al. (Environmental Science & Technology, 2000. 34) は、下水処理の process-LCA モデルにおいてはシステム境界の選択によって、異 なる分析結果がもたらされることを指摘している。このようなシステム境界の選択にお ける任意性が、process-LCA モデルの弱点としてしばしば指摘される。産業連関分析、 特にハイブリッド産業連関分析を用いることで、この任意性を減少させることができる. (Suh, The International Journal of Life Cycle Assessment, 1997 8(5); Nakamura and Kondo, Journal of Industry Ecology, 2002 6(1))。.
(3) 2 こうした先行研究の展開を受けて、本研究の目的のひとつは、廃棄物産業連関モデ ル (WIO, Waste Input-output Model) (Nakamura and Kondo, Journal of Industry. Ecology, 2002 6(1)) を拡張することで、下水の排出および処理の両方を分析するよう設計 された、新たなハイブリッド産業連関モデルである “wastewater treatment input-output. model (W2 IO model)” を提示することにある。このモデルの特徴は、財・下水・下水関 連の廃棄物のフローのあいだの相互依存関係を考慮に入れることができる点にある。 このモデルの応用例として、482 動脈部門・11 下水処理部門・12 種類の下水関連廃 棄物・6 種類の環境負荷(埋立て量、温暖化ガス、生物化学的酸素要求量、化学的酸素要 求量、全窒素、全燐)から構成される東京都 2000 年度 W2 IO 表を作成した上で、いくつ かの異なる下水処理システムのシナリオ分析を行った。その結果、簡易処理∗1 から高級処 理∗2 へ移行すると、下水処理後の水質は改善されるものの、温暖化ガスの排出が増加し、 さらに、脱水汚泥を埋立てではなく、焼却処理すると、温暖化ガスと埋立て量がともに削 減できることが明らかになった。 本論文のもうひとつの目的は、W2 IO モデルに基づく線形計画モデル (LP) を 開発することである。最適化モデルによって、廃棄物管理の最適計画を見出すことが できることはよく知られている(What’s best scenarios)(Pulido et al., Ecological. Economics, 2008 66)。Azapagic and Clift (Computers and Chemical Engineering, 1995 19; The International Journal of Life Cycle Assessment, 1998 3(6); Journal of Cleaner Production, 1999 7) は、最適化モデルのひとつである LP によって、あるシス テムの中で最も環境負荷が少ない選択肢を決定することができることを指摘している。さ. ∗1. 一次処理しか含まない処理方法を指す。. ∗2. 一次処理と二次処理の両方を含む処理方法を指す。.
(4) 3 らに Kondo and Nakamura (Economic Systems Research, 2005 17(4)) は、ハイブリッ ド産業連関モデルに基づいた LP によって、最適な廃棄物管理とリサイクル戦略を決定す ることが可能であることを示している。本研究は WIO − LP (Kondo and Nakamura,. Economic Systems Research, 2005 17(4)) の方法 を応用するかたちで、W2 IO に基づい た LP を提示する。これは環境負荷の最も少ない下水処理技術の選択を可能にするもので ある。そこで、独自に作成した東京都 W2 IO 表(2000 年度)に基づき、いくつかのシナ リオを想定して、それぞれの最適な技術を明らかにした。 最後に、下水処理システムにおける異なる環境負荷のあいだのトレード・オフの存在 を示すために、本論文で構築した LP によって環境負荷のパレート・フロンティアを導出 した。これにより、脱水汚泥の高温焼却による環境負荷への影響を明らかにした。主要な 結論として、埋立て量、温暖化ガスの排出、化学的酸素要求量の 3 種類の環境負荷を同 時に考慮するとき、高温焼却の導入は環境負荷のパレート・フロンティアを原点方向へ拡 大・シフトさせることがわかった。.
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