博博博博 士士士士 論論論論 文文文文 概概概概 要要要要
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(2) No.1 本論文の目的は、オープンソースという開発方法論およびオブジェクト指向プ ログラミングという技術を利用することで、計算機に対して相対的に希少となっ た人間の労働力を建築設備シミュレーションソフトウェアの開発、維持、応用と いう過程に取り込み、建築設備シミュレーションソフトウェアの継続的な開発を 可能にする方法を示すことである。 この目的を達成するため、既存のソフトウェアの開発者や管理者等へのヒアリ ング調査を行うことで、現在の建築設備シミュレーションソフトウェアの開発が 抱える問題点を明らかにした。また、問題のいくつかについて、以下に示す方法 で解決手法を提案した。権利関係が複雑化し、開発の引継ぎが不可能となる問題 に関しては、オープンソースという開発方法論について調査を行い、建築設備シ ミュレーションの分野においてオープンソースによる開発を行うための方法を示 し、実践した。データやプログラムコードの再利用性が低いという問題に関して は、オブジェクト指向言語を利用したデータ構造および機器モデルの設計方法を 示すことで解決した。さらに、実務への応用、実例の不足という問題に対応する た め 、運 転 デ ー タ お よ び シ ミ ュ レ ー シ ョ ン を 利 用 し た 設 備 シ ス テ ム の 定 量 評 価 法 、 エネルギー効率の改善法について、具体的な実践例を挙げながら示した。 本論文は 9 章構成であり、各章の位置付けは以下の通りである。 第 1 章では、本研究の目的を述べるとともに、関連する既往の研究・調査・活 動について概観した。 第 2 章では、国内の建築設備シミュレーション分野において開発された主要な ソ フ ト ウ ェ ア の 開 発 者 や 管 理 者 、利 用 者 に 対 し て ヒ ア リ ン グ 調 査 を 行 っ た 。ま た 、 海外のソフトウェアに関しては、公開されたメーリングリストやソフトウェアラ イセンスを調査した。これらの調査により開発に関連する 3 つの大きな問題点を 明らかにした。第一に権利関係が複雑化し、開発の引継ぎが困難になる問題、第 二にデータの再利用性が乏しいという問題、第三にプログラムをモジュール化す る際の問題である。 第 3 章 、4 章 、5 章 で は 、 本 章 で 明 ら か に さ れ た 問 題 点 に 対 し て 、 権 利 関 係 の 明 確化、仕様の明確化と公開、プログラムデータのクラス化、プログラムの抽象的 表現によるモジュール化という解決策を示した。 第 3 章では、権利関係が複雑化するという問題を解決するため、オープンソー スという開発方法論を調査し、建築設備シミュレーションソフトウェアの開発に 導 入 す る 方 法 に つ い て 検 討 し た 。 具 体 的 に は 、「 開 発 の 動 機 」「 ビ ジ ネ ス モ デ ル 」 「ソフトウェアの品質」という観点から、ソフトウェアのオープン化によって予 見される問題を整理し、建築設備シミュレーションソフトウェア開発の現状と関 連づけながら考察を行った。また、実際にオープンソースという開発方法論を利 用したソフトウェア開発を行った。 第 4 章では、データの再利用性が乏しいという問題を解決し、設計の各フェー.
(3) No.2 ズにおいて利用したデータを次のフェーズへ書き出すことを可能とするために、 データを保持するクラスの設計方法について検討を行った。具体的には、オブジ ェ ク ト 指 向 言 語 で あ る C # を 用 い て 、計 算 対 象 の 要 素 を ク ラ ス に 分 割 し 、モ デ ル を 階層状のクラス群で表現することでデータの再利用性を高める方法を示した。 ま た 、内 部 デ ー タ へ の 干 渉 可 能 性 を 制 御 す る interface を 利 用 す る こ と で 、ク ラ ス内のデータの破壊可能性をプログラムコードレベルで排除し、計算の高速化と データの堅牢化を両立させる方法を示した。提案した手法の利用例として、最大 熱負荷計算から年間動的熱負荷計算、エネルギー計算から制御系動的計算へデー タを書き出すためのクラス構成を示し、計算結果にも整合性が保たれることを確 認した。さらに、これらのプログラム間で共通して利用することが可能な、建築 環境シミュレーション用の汎用スケジューラの設計方法について記した。スケジ ューラを構成する要素である期間構造およびスケジュール内容を抽象的に表現す る方法を示し、スケジューラ本体と期間構造およびスケジュール内容をソースコ ードレベルで分離する方法を示した。 第 5 章では、プログラムをモジュール化する際の問題を解決するため、シミュ レーションにおける各種の機器モジュールの定義法について検討を行った。 H VA C S I M + ( J ) お よ び T R N S Y S を 例 に 取 り 、「 モ ジ ュ ー ル の 特 徴 づ け と 永 続 性 の 保 証 」「 反 復 収 束 計 算 へ の 対 応 」「 機 器 モ ジ ュ ー ル の 追 加 と コ ン パ イ ル 」 の 3 点 に つ い て 、 F O RT R A N 言 語 で モ ジ ュ ー ル を 定 義 す る 際 に 問 題 が 生 ず る こ と を 明 ら か に した。 そこで、オブジェクト指向言語を用いて、設備機器一般を示す抽象クラスを設 計することで、これらの問題を解決する手法を提案した。さらに、提案した構造 を持つシミュレーションプログラムを実際に開発し、動作検証を行った。複数の 言語で記述した機器モジュールを派生クラスとして開発し、これらを相互接続し たモデルの計算結果と既存のシミュレーションプログラムの計算結果を比較する ことで、多言語で記述された機器モジュールが問題なく連成計算されることを確 認 し た 。 ま た 、 既 存 の プ ロ グ ラ ム 資 産 を 活 用 す る こ と を 目 的 に 、 F O RT R A N 言 語 で記述された機器モジュールを派生クラスで接続し、建物の一次側システムを構 築した。計算結果と実建物の実測値とを比較することで、計算結果に一定の相関 があることを確認した。 第 6 章 、7 章 、8 章 で は 、 開 発 さ れ た 手 法 の 利 用 に あ た り 必 要 と な る 、 運 転 デ ー タの収集方法ならびにデータとシミュレーションを連携させて設備システムを定 量評価し、エネルギー効率を改善する方法について示した。 第 6 章では、オープンネットワークを利用した大規模な運転データの収集シス テムを利用し、運転データに基づいた設備システム性能の定量評価について記し た。ビル管理システムにオープンネットワークを採用した大学施設を対象に、イ ンターネット回線を介して分単位の詳細な運転データを収集した。.
(4) No.3 アンモニア冷媒空冷ヒートポンプチラーについて、期間的な性能や氷蓄熱運転 開 始 時 の 挙 動 な ど を 明 ら か に し た 。ま た 、電 力 負 荷 平 準 化 を 目 的 と し た NaS 電 池 システムについて、充放電効率の実現値や長期的な性能劣化の有無などを評価し た結果を報告した。 第 7 章では、システム性能の把握が困難であった個別分散型空調システムの評 価を行うことを目的に、個別分散型空調システム物理モデルの開発を行った。構 成要素である圧縮機、凝縮器、蒸発器、膨張弁のモジュールを開発し、これらを 連成させて解くシステムモデルを提案した。 また、計算の高速化を目的に、ニューラルネットワークによる冷媒物性値近似 法 を 提 案 し て お り 、 平 均 近 似 誤 差 を 0.2% 以 下 に 抑 え な が ら 、 計 算 速 度 を 最 大 で 400 倍 以 上 に 向 上 さ せ る こ と を 可 能 と し た 。 加えて、製造者により公開されている技術資料に記載された定格条件から物理 パラメータを推定する方法を示した。本システムモデルの計算結果は技術資料に 記載の特性とほぼ一致している。また、計測値とも一定の相関を示しており、開 発したモデルの妥当性を確認している。 第 8 章では、開発したソフトウェアと運転データを連携させた設備システムの エネルギー削減事例として、新聞印刷工場の熱源システムの運転改善について記 した。熱源システムをモデル化し、モデルの予測と実運転データとの比較を行う ことで、以下に示す運転改善手法を提案するとともに、手法を実際の運転に反映 したことによるエネルギー量削減効果を定量的に算出した。 開発したモデルを実際のオフィスビルの性能評価に適用した。蒸発温度を高め に設定することで得られるエネルギー消費量削減効果を開発したモデルを用いて 予測した。積算の消費電力量に関して、モデル予測値と実績値がほぼ一致し、蒸 発 温 度 高 め 運 転 の エ ネ ル ギ ー 消 費 量 削 減 効 果 は 約 6.3%と 試 算 で き た 。 中間季に出現頻度の高い冷熱負荷範囲において、空冷ヒートポンプ 1 台+ター ボ冷凍機 1 台運転から空冷ヒートポンプ 2 台同時運転に変更することによる省エ ネルギー効果を検討し、実施設の運転に反映させた。熱源台数制御変更による熱 源 シ ス テ ム 消 費 電 力 量 削 減 率 は 平 日 で 16.4% 、 休 日 で 10.8% と な っ た 。 冷却塔および熱源のモデルを利用して、外気温度に対応する最適な冷却水温度 設定値を明らかにし、実施設の運転へ反映させた。ターボ冷凍機系統の効率向上 が 熱 源 シ ス テ ム 消 費 電 力 量 の 約 5.3% 削 減 に あ た り 、 冷 却 水 設 定 温 度 変 更 に よ る 省エネルギー効果が確認された。 冷却塔モデルによる冷却水出口温度の検討結果から、フリークーリング稼働条 件 を 外 気 湿 球 温 度 5.4°C 以 下 か ら 7.5°C 以 下 に 変 更 す る こ と が 可 能 と 予 測 さ れ たため、稼働条件の変更を実施設の運転へ反映させた。熱源システム消費電力量 削 減 量 は 約 1.6MWh、 削 減 率 は 、 約 34.0%の 試 算 と な っ た 。 第 9 章では、各章の研究結果を総括した.
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