博士(文学)学位請求論文審査報告要旨
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(2) 氏名 石塚 泉美 加者の内省との関係を考察している。3つのグループを取り上げ、データに基づいて生成した4つのカテゴリー (1. 教授者による質問とフィードバック、2. 言語的誤りの扱い方、3. 学習者のイニシアティブ、4. 他の学習者 による発話・理解上の助け)により、グループ内インターアクションの分析を行っている。その結果、同じ授業の 枠内で実施されているグループレッスンでも、グループ毎のインターアクションタイプは大きく異なっていたこと が示されている。グループ A のインターアクションは一方的な情報伝達の「トランスミッション」または質問者と回 答者の役割分担が決まっている「IRF 構造」で、発言権はチューター(母語話者)のみが管理し、メタ言語的質 問とサイドシークエンスが多い。グループ B のインターアクションは「トランスミッション」と「IRF 構造」に加え、ロー ルプレイなど「シミュレーション」の段階が観察され、母語話者により発言権が管理されていたが、メタ言語的質 問より内容に関する質問が多く、サイドシークエンスはそれほど見られない。グループ C では自由な会話「トラン スフォーメーション」がやりとりの多くを占め、学習者も会話の主導権をとり、協働で発話構築を行なうなど、探索 的でシンメトリーな(対称性のある)インターアクションとなっている。母語話者のチューターとしての自己理解 も、A は「権威者」「教師」、B は「学習支援者」、C は「同輩」「仲間」というように大きく異なっている。こうした自己 理解がグループ内インターアクションタイプに反映されていることを、インターアクションデータとインタビューデ ータの分析から明らかにしている。 最後の第5章では、4章で展開したデータの分析結果を元に、「教えと学びのプロセス」が様々な要因が複雑 に絡み合う、多層的でダイナミックな現象であることを考察し、今後の研究への展望が論じられている。同じ授 業の枠組み内で実施されたグループレッスンでも、様々なインターアクションのタイプが観察され、同じインター アクションタイプに分類されるやりとりでも、母語話者の言語行動の違いによって、会話の発展の仕方が変わる ことが明らかにされた。また、自己理解や言語教授・学習観などの内省が、実際の言語行動にも反映されてい ることから、教授者の自己理解や学習者・教授者の言語教授・学習観の研究には、内省的手法と授業インター アクションの分析を組み合わせることで研究の視野を拡げ、インターアクション分析も、内省データと組み合わ せることで、参加者の解釈のズレや学習機会を浮き彫りにすることができるとの展望が提示され、外国語教育 研究の方法論としてのトライアンギュレーションの重要性が論じられている。 審査の過程では、インターアクションにおける非言語行動が問題提起で出されているほど大きく扱われてい ないこと、インターアクションの分析よりもむしろ内省データの分析に比重が置かれている点、また母語話者の 自己理解とインターアクションタイプの関係は、グループすなわちインターアクションの相手が変われば変わりう るのではないかといった疑問など、いくつかの点が指摘されたが、そうした点は本研究からの知見を踏まえ、今 後の研究で精査し取り組むべき課題と考えられる。なにより膨大な量の授業・インタビューデータを収集・分析 し、「インターアクション」と「内省」という、従来一緒に扱われることの少なかった観点を組み合わせて考察したこ とに、本研究の独創性がある。複合的な手法を用いた緻密なアプローチにより、外国語授業研究への新たな 視座を示している石塚氏の分析は、今後のドイツ語教育研究の発展に資すると同時に、授業実践への提言と しても大きな役割を果たすものである。以上のことから、本論文は博士学位の授与にふさわしい論文であると認 められる。. 公開審査会開催日. 審査委員資格. 2016 年. 4月. 所属機関名称・資格. 6日 氏 名. 専門分野. 博士学位名称 博士(ドイツ語学). 主任審査委員. 早稲田大学法学学術院・教授. 星井 牧子. 外国語教育学、 ドイツ語教育. 審査委員. 早稲田大学政治経済学術院・教授. 室井 禎之. 言語学、ドイツ語学. 審査委員. 慶應義塾大学経済学部・教授. 境 一三. 外国語教育学、 ドイツ語教育. 審査委員. カッセル大学人文学部・教授. AGUADO, Karin. ドイツ語教育学. Dr. phil..
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