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博士学位論文要旨

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Academic year: 2022

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博士学位論文要旨 

 

 

ものづくり企業におけるシニアとミドルのリーダーシップ開発

−リーダーの中庸型価値体系の醸成を促す相互作用に関する探索的調査−

早稲田大学大学院  アジア太平洋研究科 柏木  仁

キーワード:リーダー、リーダーシップ、相互作用、価値観、感情

要  旨(2,000文字)

本研究の目的は、ものづくり企業でリーダーとフォロワーの関係にあるシニア・マネジャーと ミドル・マネジャーを調査対象とし、ミドル・マネジャーがリーダーとして成長する過程でミド ル・マネジャーに起こる内面の変化、およびシニア・マネジャーとの相互作用を中心とするミド ル・マネジャーの変化を促す要因について探索的調査によって理解を深め、リーダーシップ開発 に関する理論とビジネスの現場に貢献することである。

研究の枠組みを定めるため、関連分野における先行研究調査を実施し、結果、組織におけるリ ーダーとの相互作用を通じフォロワーの内面に起こる変化のプロセスに関する概念の全体マップ を構築した。次に、先行研究調査の結果から、理論的な研究が進んでいる部分はどこか、また理 論的な研究に加えて実証研究まで行われている部分はどこか、などと全体マップの内容を評価し た上で、価値観の内在化に関する部分を理論的空白域として特定し、本研究で探索するための調 査のフレームワークを作成した。また、調査のフレームワークを基に、以下の通りリサーチ・ク エスチョン(RQ)を定義した:

RQ1:ものづくり中小企業のミドル・マネジャーがリーダーとして成長する過程において、ミ ドル・マネジャーにはどのような変化が起こっているのか?

RQ2:ミドル・マネジャーの変化は、どのような要因によって促されたのか?

人がリーダーとして成長している典型的ケース、すなわち、成功事例を複数調査することを目 的として、サンプリングに関する先行研究調査を踏まえた上で、組織およびマネジャーについて のサンプリング条件を設け、グローバルに活躍しているものづくり中小企業を選出し、シニア・

マネジャーとミドル・マネジャーの2人1組をケースとして、計6ケースの調査を実施した。デ ータ収集は、インタビューを中心に、質問票調査、関連文書の入手など、フィールド・ワークの 各手法を組み合わせて行った。データ分析の大きな流れとしては、各ケースの概要について理解 を深めた後で、複数ケース分析により全てのケースを通じたパターンの探索を行った。こうした 定性的データ分析の基礎となる作業は、コーディングであり、データの解釈、概念化、関係付け である。また、定性的調査の質を向上させることを目的に、情報提供者であるマネジャーに分析 内容をフィードバックし確認してもらうなどの具体的方策を実施した。

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結果、ミドル・マネジャーの価値観の変化として、シニア・マネジャーの価値体系との類似点 や、個人の目標と組織の目標が一体化し、組織の存続のための保守と変革が表裏一体となること が示され、こうした特徴を持つリーダーの価値観を中庸型の価値体系と命名した。中庸型の価値 体系とは、ミドル・マネジャーが 2つの対極にある価値観のどちらか一方に偏るのではなく、両 者が一体化した価値観を持つことである。こうした中庸型価値体系への変化は、自己や組織に対 するプラスの感情を経験するなど、ミドル・マネジャーの感情経験と正の相関関係があることが 示された。さらに、価値体系の変化に伴い、ミドル・マネジャーが自己感情をマネジメントする 姿勢も明らかになった。ミドル・マネジャーの価値観、感情の変化には、相互信頼、シニア・マ ネジャーのリソースの認知、委任に伴うリスク管理、感情を用いたメンタリング、などの相互作 用が影響を与えることが確認された。また、変化の背景的要因として、会社の命運を左右する任 務に従事するなどの変化のきっかけとなる出来事や、変化を促す組織風土の特徴について提示さ れた。

一方、シニア・マネジャーは、ミドル・マネジャーの姿勢や行動の変化を知覚することで、自 己認識の明確化という変化(ありのままの自己と作為的自己の気づき、適正な自尊心の醸成)が 起こっていること、およびシニア・マネジャーの価値体系は、中庸型の価値体系がシンプルな原 則へ収斂している可能性があることが示唆として得られた。

理論的示唆として、本研究の焦点である価値観と感情に関する示唆、関連するリーダーシップ 理論に対する示唆などについて議論されている。また、実務への示唆として、シニアとミドルの リーダーシップ開発支援として、シニア・マネジャーとミドル・マネジャーのメンター関係をフ ァシリテートし、両者に対し内省を促すコーチングを行うことで、アクション・ラーニングを通 じたリーダーの中庸型価値体系を醸成するプログラムについて提案を行った。

今後の研究として、今回のサンプルに対して再び調査を行うこと、企業の価値マップの作成な どについて提示した。さらに、大企業のトップ・マネジメントを対象とした調査や、分野を拡大 してサービス業の組織を対象とする調査を行うことで、一般化可能性を追求することや、シニア・

マネジャーの価値体系の変化とその要因に重点を置いた調査を行うことについて言及している。

以  上 

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