論文内容要旨
The synergistic antitumor effect of combined anti-Human epidermal growth factor receptor 2 antibody and gamma interferon therapy to antibody resistant breast cancer
cells(抗体療法耐性乳癌細胞に対する抗上皮成長因子受容体2抗体とインターフェロンγ併用
療法の相乗的抗腫瘍効果)
THE SHOWA UNIVERSITY JOURNAL OF MEDICINE SCIENCES(Vol.31,No.3,2019年掲載)
病理系薬理学(医科薬理学分野) 牛腸 俊彦
【目的】抗Human Epidermal Growth Factor Receptor 2(HER2)抗体は腫瘍細胞の表面に発現 するHer2受容体に特異的に結合し、抗腫瘍効果を示す分子標的薬である。HER2陽性の乳癌や胃 癌などの標準治療薬剤として臨床応用されている。しかし、治療中に再発や薬剤耐性を獲得した 場合の治療成績は悪く、臨床上大きな問題となっている。以前我々は抗 Her2 抗体と Gamma
Interferon(IFNγ)の併用療法に高い抗腫瘍効果があることを示した。そこで今回は抗Her2抗
体とIFNγの併用療法が抗HER2抗体療法に対して耐性を獲得した乳がん細胞に対しても抗腫瘍
効果を示すこと、また臨床で行われている療法より優れた療法であることを証明する事を目的 とした。
【方法】Her2過剰発現自発マウス乳癌細胞株H2N113細胞にマウス抗HER2抗体(7.16.4)を継 続的暴露し抗HER2抗体耐性マウス乳癌細胞(H2N113R)を作成し、H2N113Rを群分けした後に薬 剤処置を行い、薬剤処置の違いによる抗腫瘍効果を比較する実験を行なった。薬剤は生理食塩水、
抗Her2抗体(7.16.4)、マウスIFNγ剤、ドセタキセル(DTX)、マウス抗PD-L1抗体を用い、生 物原性を統一し異物間で起こる免疫学的影響を排除した。In vivo実験で細胞増殖抑制効果を、
in vitroではmouse xenograft modelを用い、腫瘍径の増大抑制効果を測定した。また、腫瘍 の組織染色法でCD8T細胞、Gr-1陽性細胞、PD-L1発現の比較検討をした。
【結果】in vivo実験では抗Her2抗体 + IFNγ併用群は単剤群と比べて有意に細胞増殖を抑制 した。In vitro実験でも同様に併用療法群は単剤群に比べて優位に腫瘍増大を抑制した。また DTX,PD-L1抗体を使用したIn vitro実験では、抗Her2抗体 + IFNγ + DTX療法群と抗Her2抗 体 + IFNγ + 抗PD-L1抗体療法群が優位に高い抗腫瘍効果を示した。特に抗Her2抗体 + IFN γ PD-L1抗体群が最も抗腫瘍効果が高かった。組織染色法の解析では、抗腫瘍効果とCD8の発 現には正の相関を認め、Gr-1の発現には負の相関を認めた。PD-L1の発現については腫瘍抑制効 果と相関は認められず、更なる検討が必要であることがわかったが、併用療法 + 抗PD-L1抗体
療法においては腫瘍組織でのPD-L1の発現量と関係なく作用していることが分かった。
【結論】我々は抗HER2抗体とIFNγの併用療法が抗体療法に耐性化した細胞に対して高い抗腫 瘍効果を示すことを証明した。また抗体とIFNγを併用すると、耐性化や再発した患者に臨床で 行われている療法よりも高い抗腫瘍効果を持ち、臨床応用の可能性を示した。