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論 文 の 内 容 の 要 旨

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Academic year: 2021

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論 文 の 内 容 の 要 旨

1 目的

腸管粘膜におけるリンパ球のマイグレーションは,炎症性腸疾患(inflammatory bowel

disease : IBD)の重要な病態の一つであり,腸管における微小循環は,炎症反応のターゲ

ットの一つとされている。リンパ節やパイエル板など,2次リンパ組織での血管から組織 内へのリンパ球マイグレーションは,高円柱血管内皮(high endothelial venule : HEV)

と呼ばれる特殊な血管内皮において行われる。この際,リンパ球と

HEV

間において,セレ クチン,ケモカイン,接着分子などが作用することが報告されてきたが,腸管炎症の病態 を完全に解明するには至らず,これら以外の新たなメカニズムの模索が続けられてきた。

その中で発見されたのが,リゾフォスファチジン酸(lysophosphatidyc acid : LPA),お よびその産生酵素であり,HEVより発現する

autotaxin (ATX)である。ATX

は血中に豊富 に存在する

lysophosphatidylcholine (LPC)を LPA

に変換し,その結果,LPAがリンパ球 の運動性を亢進させる。一方,慢性炎症下の腸管では,形状・機能共に

HEV

に類似した

HEV-like vessel

がリンパ組織外に形成され,リンパ球の病変部への異所性マイグレーショ

ンを亢進させる。ATXは

HEV

に発現するため,リンパ節やパイエル板に高発現すること は知られているが,

IBD

の病変部における

HEV-like vessel

の有無,および

ATX

HEV-like

vessel

における発現と異所性リンパ球マイグレーションに対する関与は明らかにされてい

ない。本研究において,我々は,IBD患者腸管において

HEV-like vessel

が存在するか否 か,およびそこでの

ATX

発現がみられるかについて検討を行った。また,IBDの活動性と

ATX

の発現の関連についても検討を行い,ATXが

IBD

の病態生理にかかわっている可能 性について追求した。加えて,ATX阻害剤の効果を,実験腸炎モデル及び血管内皮細胞株

bEnd.3 cell

を用いて評価した。

2 方法

まず,IBD患者における

HEV-like vessel

の有無および

ATX

の発現を調べる為,Crohn 病(Crohn’s disease: CD)もしくは潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis: UC)の患者を対象とし,

活動性および非活動性の部位から生検組織を採取した。対照として大腸ポリープ患者の健 常粘膜を用いた。採取した組織に対し免疫染色を行い,HEV-like vesselの存在と

ATX

の 発現を確認した。また,ATX messenger RNA発現量を

RT-PCR

を用いて測定し,病変部 と非病変部での

ATX

発現について比較した。

次に,CD4+

CD25

-

Tcell

移入

SCID

マウスおよび

dextran sulfate sodium(DSS)マウスを実

験 大 腸 炎 モ デ ル と し て 用 い , リ ン パ 球 浸 潤 を 主 体 と し た 慢 性 炎 症 形 成 に 伴 う

ATX

messenger RNA

発現について比較を行った。また,ATX 阻害剤として報告されている

bithionol

を使用し,リンパ球マイグレーションの抑制効果および腸炎抑制効果について比

較検討を行った。

最後に,HEV-like vesselでのリンパ球マイグレーションに対する

ATX-LPA

系の関与に

(2)

ついて評価するため,bEnd.3 cell を

transwell assay

に使用し,bithionol および

LPA

analogue

である

BrP-LPA

を使用した際のリンパ球マイグレーションの変化について検討

を行った。

3 結果

ヒト

IBD

における免疫染色では,両疾患とも炎症部の

HEV-like vessel

に一致して

ATX

の発現が認められた。RT- PCR では,UC・CDいずれの疾患群においても,大腸粘膜の

ATX messenger RNA

発現量は,非病変部の組織と比較して活動性炎症部位で有意に高値

を示した。同一患者内の比較においても,活動部の

ATX messenger RNA

発現は非活動部 より高値を示していた。またその発現量は内視鏡的炎症所見の程度とも一致しており,UC 患者では

Matts grade

の上昇に伴い発現量が増加傾向を示した。

DSS

長期投与および

CD4

+

CD25

Tcell

移入

SCID

マウスの

2

種類の腸炎モデルマウスを 用いた実験で,ともに腸炎モデルマウス腸管における

ATX messenger RNA

発現量は非腸 炎群に比して増加していた。かつ

DSS

慢性腸炎ではその形成に併せて発現量の増強が認め られた。ATX阻害剤の

bithionol

を用いた実験では腸管の微小血管での

lymphocyte migration

が阻害されることが生体顕微鏡下で観察され,また腸炎モデルに

bithionol

を投 与すると腸炎を有意に改善できた。

bEnd.3

細胞を用いた

transwell assay

では,cell layerの

HEV

化に伴いリンパ球マイグ レーションは有意に亢進したが,

bithionol

あるいは

BrP-LPA

による

ATX-LPA

系の阻害に より,亢進したリンパ球マイグレーションが有意に阻害された。

4 結論

ATX

UC・ CD

腸管における

aberrant lymphocyte migration

へ関連している可能性が 示唆された。また,ATX-LPA系は,腸管炎症の異所性リンパ球マイグレーションにおいて 重要な役割を果たしており,IBDに対する新たな治療ターゲットとなる可能性があること が示された。

参照

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