論文内容要旨
A new regenerative approach to fetal myelomeningocele by cell sheet transplantation
(脊髄髄膜瘤に対する細胞シート移植を応用した胎児治療)
THE SHOWA UNIVERSITY JOURNAL OF MEDICAL SCIENCES Vol.29 No.1 2017
外科系 外科学 (小児外科学分野)専攻 入江 理絵
内容要旨
【目的】脊髄髄膜瘤は神経障害を引き起こし,出生後も後遺症をもたらす 先天性疾患である.治療として手術加療が行われるが損傷された神経組織 は修復されないのが現状である.今回,我々が用いた細胞シートは,温度 によって水との親和性を変化させる温度応答性ポリマーを固定化した表 面を作製する技術である.専用のディッシュと温度変化を利用し,酵素処 理なく細胞外マトリックスを維持した状態で細胞をシート状に回収を可 能にする.細胞シート技術は現在までに心筋や角膜上皮等の多様な組織に 対して臨床への応用が試みられているが,胎児の脊髄髄膜瘤への応用の報 告は未だされていない.そこでわれわれは損傷された胎児の神経組織改善 を目的に,細胞シートを脊髄髄膜瘤の胎児治療に応用することで細胞シー ト技術を用いた脊髄髄膜瘤の胎児治療への応用を試みた.
【方法】筋芽細胞(L6細胞株)を使用し,1.0x10⁶/2mlの細胞濃度で細 胞シートを作成した.細胞シートを抗Nerve growth factor抗体(抗NGF 抗体),抗α-Smooth Muscle Actin 抗体(抗α-SMA抗体),抗β-tubulin
Ⅲ抗体により評価した.また妊娠10日目の SDラットに60mg/kgのレチ ノイン酸を経口投与し,脊髄髄膜瘤を誘発した.妊娠19 日目に脊髄髄膜 瘤と判断した胎仔に対して経開腹子宮切開施行し,子宮外から胎児の脊髄 髄膜瘤を確認して患部上に細胞シートを移植した.細胞シート移植4時間 後に検体を摘出し,HE 染色と抗NGF抗体,抗α-SMA 抗体,抗β-tubulin
Ⅲ抗体により評価した.
【結果】細胞シートのみで染色した結果,3抗体とも陽性であった.また,
移植4時間後にHE染色よりL6で作製した細胞シートの患部への接着が 確認された.抗α-SMA抗体による染色によっても L6で作製した細胞シ ートの生着が確認され,抗 NGF 抗体及び抗β-tubulinⅢ抗体における染
色も陽性であった.
【考察】細胞シートのみの染色と同様に抗α-SMA 抗体によって染色され たことでL6によって作製した細胞シートの生着が確認出来た.また,抗 NGF抗体及び抗β-tubulinⅢ抗体における染色が陽性であったことから,
脊髄に移植された細胞シート内に生存しうるニューロンが活動的に働い ていると考えられる.
【結論】細胞シートは胎児の脊髄髄膜瘤に対して神経細胞の再生を促す可 能性があり,今後の更なる評価検討が必要である.