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博士(理学)劉 永春

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Academic year: 2021

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博士(理学)劉   永春

学 位 論 文 題 名

合成免疫強化剤による癌免疫と

ウイスル感染防御の増強とその作用機序

学位論文内容の要旨

  細 菌 繦 胞 壁 由 来 のMDPは 、 抗 原 に 対 す る 宿 主 の免 疫応 答を 増強 する 作用 を有 する こと から 、よ り高 い免 疫賦 活作 用を 得る 目的で、多数の誘導体が開発され、その活性 が 調 べ ら れ て き た 。 本 研 究で は 、MDPの 誘 導 体 のう ち、 優れ た免 疫賦 活作fRを 持つ こ と が 知 ら れ て い るMDP− Lys(L18) と B30ーMDPを 選 択 し 、 福 主 の 抗 癌免 疫や 抗ウ イル ス免 疫に 及ほ す免 疫ア ジュバントの増強効果を検討した。癌細胞に 対す る宿 主の 抗癌 免疫 健に 及ば す免 疫ア ジュバントの効果は、マウス癌細胞による転 移モデルを用いた癌転移抑偽゛の増強効果から謂べた。また、抗ウイルス免疫能に及ば す効 果は 、ハ ンタ ウイ ルス の感 染実 験系 を用いた感染防御の増強効果やハンタウイル スの ワク チン の免 疫誘 導に 対す る増 強効 果より検討した。さらに、これらの免疫アジ   ユバントによる免疫増強のメカニズムは、非特異あるいは特異的な免疫増強の観点か

ら 解析 した 。本論 文の 要旨 は、 以下 の5点であ る。

    1.   3種 類 の マ ウ ス 癌 細 胞 (L5178Yー ML25リ ン パ 隠 、  B16ー BL6 黒 色 腫 、Colon26一M3.  1結 腸 癌 ) に よ る 同 系 マ ウ ス へ の 実 験 転 移 モ デ ル あ る い は 自 然 転 移 モ デ ル を 用 い 、 癌 転 移 抑 偽IIに 及 ぼ すMDPーLyS(L18) の 非 特 異 的 な 増 強 効 果 を 調 べ た 。 そ の 結 果 、MDP−Lys(L18) は 、 い ず れ の 癌 細 胞 に よる 転移 を有意 に抑 制し 、そ の効 果は 予防及び治療の面で有効であることが明らか に な っ た 。 ま た 、MDPーLyS(Jj18) に よ る 癌 転 移 抑 制 の 作 用 織 序 を 検 討 し た 結 果 、MDPーLys(L18) は 、 マ ウ ス の 自 血 球 数 の 増 加 、 腹 腔 マ ク ロ フ ァ ー ジ の 活性 化に よる癌 細胞 傷害 活性 の誘 導、 血清による癌細胞増殖榔制効県の誘導など非

‑ 55― ・

より誘導される 5ル ンパ 腫及 び

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   2       

(2)

  B16−BL6黒 色腫細胞に よる転移抑 制実験モデ ルを用い検討した。不活化リンパ   腫 細胞 とB30ーMDPの免 疫後7日 目に同種の 癌細胞を移 植し、その 癌細胞によ る   転 移抑制効果 を調べた結 果、不活化 リンバ腫細 胞をB30―MDPと共に免疫した群   は、  リンパ腫による肝及び脾転移を有意に抑制した。また、黒色腫細胞を不活化しB   30−MDPと 共 に免 疫 した 場 合で も 、  B16―BL6黒色 腫 によ る 肺 転移 の 有意な   抑 制が観察さ れた。さら に、両癌細 胞による転 移抑制に及ぼすB30−MDPの治療   効 果を 調べた 結果、癌細 胞移植後5日目に不 活化癌細胞 とB30ーMDPを投与し た 群は、いずれの癌細胞による転移を有意に抑制した..しかし、不活化癌細胞あるいは   B.30―.MDP単独の免疫群では、いずれも有意な転移抑制効果は認められなかった。

以 上 の結 累 か ら、B30―MDPは 、不 活 化癌 細胞によ り誘導され る抗癌免疫 能を増 強することによって癌転移を抑制し、その抗癌免疫増強効果は、予防及び治療の面で 有 効 であ る こ とが 示 され た 。ま た 、こ うし たB30−MDPの免疫 増強効果の 作用機 序 を 検討 し た 結果 、B30―MDPは、 不 活化 癌 細胞 の 免疫 に より 誘 導さ れ るT一細 胞 介 在 性 の 細 胞 性 免 疫 を 特 異 的 に 増 強 す る こ と が 明 ら か に な っ た 。     3.免疫ア.ヽジュパントによるウイルス感染防御実験に用いた2株のウイルス(HT N株 、SR‑1l株 ) の 病 原 性 の 相 違 を調 ぺ るた め 、 生後24時 間 以内 の 幼若 マ ウス に お ける 両 ウ イル ス の感 染 能を 比 較し た 。そ の 結果 、SRーll株 はHTN株 に比ベ 1約4000培高い 病原性を持 つことが示 された。し かし、低感 染竃の感染 による耐 過 例 に お い て は 、HTN及 びSRーll株 は い ず れ も 高 いIFAや 中 和 抗 体 価 を 示 し ながら臓器中の持続感染の成立を認めた。また、両ウイルス間の病原性の相違のメカ ニ ズ ムを 解 析 する た め、CV−7細胞 を 用い たi亠n―一vitro感染実験 より、両ウ イ ルスの増殖 能を比較し た結果、SR―11株感染群は 細胞内及び培養上清中におい て、い.ずれもHTN株感染群に比ぺ、高いウイルス量を示した。以上の結果から、  S R―11株 の 強い 病 原性 は 、高 い ウイ ル ス増 殖 能 に起 因 する こ とが 推 察さ れた。

    4.  免 疫 龝 能 の 未 熟 な 宿 主 に 対 す るMDP−Lys(L18) の 免 疫 増強 効 果を 調 べ るた め、  ハンタウイ ルスの幼若 マウスへの 感染におけ るMDP−Lys(L・L8

) の防御効果 を検討した 。幼若マウスとHTN株の組み合わせによる感染実験から、

HTN株は宿主 の成熟に依 存的な感染 パターンを 示すことを 見い出し、生後1日目の 幼 若マウスにHTN株を感 染する実験系を、免疫機能の未成熟な宿主への感染モデル

(3)

と し て 確立 し た 。 そ の 実 験 モ デ ル を 用 い 、  HTN株 の 幼 若 マ ウ ス 感 染 に 対 す るMDP

‑Lys(L18) の 防 御 効 果 を 調 べ た 結 果 、  ウ イ ル ス 感 染1口 前 ( 生 後24時1現 以 内 ) のMDP−Lys(L18) の 投 与 は 、  HTN株 に よ る 幼 若 マ ウ ス へ の 致 死 的 感 染 を 有 意 に 防 御 す る こ と が 示 さ れ た 。  ま た 、MDPーLys(L18) の 感 染 防 御 効 果 は 、 感 染 後 の 投 与 に お い て も 認 め ら れ 、HTN株 の 幼 若 マ ウ ス 感 染 に お け るMDP

‑Lys(L18) の 防 御 効 果 は 、 予 防 及 び 治 療 の 面 で 有 効 で あ る こ と が 明 ち か に な っ た 。  さ ら に 、  そ の 作 用 機 序 を検 討 し た と こ ろ 、MDP−Lys(L18) は 、 幼 若 マ ウス の造 血作 用の促 進や 免疫 関連 細胞 のマ イト ゲンに対する反応性の上昇など非特 異 免 疫 増 強 を 誘 導 し 、 そ の 結 果 、 幼 若マ ウ ス のHTN株 に対 する 抵抗 カが 強化 される ものと考えられた。

    5.  ウ イル スの組 み換 えワ クチ ン、 ある いは 不活化ワクチンの免疫原性に対する B30―MDPの 効 果 を 調 べ る た め 、  HTN株 の 組 み 換 え 蛋 白 あ る い はB−1株 の 不 活 化 ワ ク チ ン を 用 い 、  こ れら のワ クチ ンに より 誘導 され る免 疫能 に及 ばすB30−M DPの 増 強 効 果 を 検 討 し た 。 各 ワ ク チ ン 単 独 、  あ る い は 各 ワ ク チ ン とB30ーMDP を 共 に 免疫 し た マ ウ ス を 用 い 、IFA抗体 価 、 中 和 抗 体 価 、  DTH反応 そ し て り ン パ     ■一

球 増 殖 活 性 な ど 様 々 な 免疫 応答 を比 較し た結 果、B30―MDPと: 共に 免疫 した 群は、

いずれのワクチン単独による免,疫群に比ベ、有意に高い活性を示した。この結果より、

B30ーMDPは 、 ハ ン タ ウ イ ル ス の 組 み 換 え あ る い は 不 活 化 ワ ク チ ン に よ り 誘 導 さ れ る 液 性及 び 細 胞 性 免 疫 を 有 意 に 増 強 す る 作 用 を 有 す る こ と が 明ら か に な っ た 。

‑ 57− .

(4)

学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

合成免疫強化剤による癌免疫と

ウイスル感染防御の増強とその作用機序

    細菌 細胞 壁由 来のMDPは 、宿 主の 免疫 応答 を増強する作用を有することから、よ り高 い免 疫賦 活作 用を得る目的で、多数の誘導体が開発され、その活性が調べられて 巻 た 。 本 研 究 で は 、MDPの 誘導 体の うち 、優 れた 免疫 賦活 作用 を持 つこ とが 知られ て い るMDP― Lys( L18) と B30ーMDPを 選 択 し 、 宿 主 の 抗 癌 免 疫 や 抗 ウ イル ス免 疫に 及ぼ す免疫アジェバン卜の増強効果を検討した、また、これらの免疫ア ジュ バン トに よる 免疫増強のメカニズムを非特異あるいは特異的な免疫増強の観点か ら解析した。本論文の要旨は、以下の5点である。

    1.   3種 類 の マ ウ ス 癌 細 胞 (L5178YーML25リ ン パ 腫 、  B16−BL6 黒 色 隠 、Colon26ーM3.  1結 腸 癌 ) に よ る 同 系 マ ウ ス ヘ 転 移 モ デ ル を 用 。 ヽ 、 癌 転 移 抑 制 に 及 ば すMDP―Lys(L18) の 非 特 異 的 な 増 強 効 果 を 調 べ た 。 そ の 結 果 、MDP−Lys(L18) は 、 マ ウ ス の 自 血 球 数 の 増 加 、 腹 腔 マ ク 口 フ ァ ー ジ の活 性化 によ る癌 細胞傷害活性の誘導、血清による癌細胞増殖抑制効果の誘導など非 特異 的免 疫増 強に よりいずれの癌細胞による転移を有意に抑制することが示された。

    2.  X線照射により不活化した癌細胞をワクチンとし、その免疫により誘導される 抗 癌 免 疫 能 に 及 ば すB30−MDPの 効 果 を 、   L5178Y− ML25リ ン パ 腫 及 び B16←BL6黒 色 腫 細 胞 に よ る 転 移 抑 制実 験 モ デ ル を 用 い 検 討 し た 。 そ の 結 果 、  B

― .58

郎ミ 三       二 市フ 九       田地 東盛 菊 授授 授 教教 教 査査 査 主副 副

(5)

30−MDPは、不活化 癌細胞の免 疫により誘 導されるT―細胞介在性の細胞性免疫 を特異的に増強し、いずれの癌細胞による転移を有意に抑制することが示された。

  3.免疫アジュ バン卜によ るウイルス 感染防御実 験に用いた2株のウイルス(HT N株 、SR−ll株 ) の 病 原 性 の 相 違 を 調 べ る た 結 果 、  SRー11株 はHTN株 に比 べて約4000培高い病原性を持つことが示された..しかし、低感染量の感染による 耐週例にぁいては、いずれの株も臓器中の持続感染の成立を認めた。また、両ウイル ス闖の病 原性の相違 のメカニズムを解析した結果、SRーll株の強い病原性は、高 いウイルス増殖能に起因することが推察された。

  4.  免 疫 機 能 の 未 熟 な 宿 主 に 対 す るMDP―Lys(L18) の免 疫 増 強効 果 を、

幼若マウ スとHTN株 の組み合わ せによる感染実験系を用い検討した。その結果、M DP―Lys(L18) の投 与 は、 幼 若マ ウ スの 造 血作 用 の促 進 や免 疫 関連 細 胞 のマ イ卜ゲンに対する反応性の上昇など非特異免疫増強を誘導することにより、HTN株 による幼若マウスへの致死的感染を有意に防御し、その効果は予防及び治療の面で有 効であることが明らかになった。

    5.  ウイルスの組み換えワクチン、あるいは不活化ワクチンの免疫原性に対する B30―MDPの 効 果 を 調 べ る た め 、  HTN株 の組 み 換え 蛋 白あ る いはB−1株 の不 活化ワク チンを用い 、これらのワクチンにより誘導される免疫能に及ばすB30−M DPの 増 強効 果 を検 討 した 。 その 結 果、B30―MDPは 、ハ ン タウ イ ルス の 組 み換 えあるいは不活化ワクチンにより誘導される液性及び細胞性免疫を有意に増強する作 用を有することが明らかになった。

    以上により審査貝一同は,申請者が博士(理学)の学位を得るに充分な資格を有す るものと認定した。

‑ 59一 ‐

参照

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