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学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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    デ イ ー ン   グ リ サ ダ 博 士 ( 水 産 科 学 ) DeeinGridsada

    学位論文題名

AffeCtationofforeSt‐ deriVedhumiCSubStanCeS OnphotOSynthetiCOrganlSmSlnaquatiCregionS・     (森林起源の腐植物質が水圏の光合成生物に及ぽす影響)

学位論文内容の要旨

  昔 から私 達は 森林を 有形 の資源 ある いはエ ネル ギー資源として使用し てき たが、 さら に大切 な森 林の重 要な 働きは 環境 保全である。その働き とし て、酸 素の 供給、 防風 、防砂 、防 雪がよ く知 られているが、その他 に大 気浄化 、騒 音防止 、山 崩れ防 止、 土砂の 流出 防止、水源涵養が上げ ら れ る。 私 達 に と っ て これ ら の す べ て が 重要 で あ る が、 特に保 水の 役 割は極めて重要である。

  森 林が皆 伐さ れ、裡 地に なった とす ると、 雨は 斜面の無機土とともに 表層 を流れ 、地 下への 浸透 はほと んど 期待出 来な い。従って、雨になる と洪 水が発 生し 、逆に 乾期 には川 は渇 水にな る。 即ち、河川での生き物 の生 存は困 難に なる。 また 、土砂 の流 出とし ては 沖繩における赤土の海 への 流出が あげ られる 。流 出した 土砂 によっ てサ ンゴは死滅した。熱帯 や亜 熱帯に おけ るサン ゴ、 寒帯や 亜熱 帯にお ける 海藻は魚介類の産卵の 場、生育の場として.の役割を果たしているため、これらの死滅は魚介類 の減少にっながることになる。

  環 境保全 の観 点から みる と森林 の役 割は大 きい 。私達は土壌という言 葉を よく用 いる が、こ れは 岩石が 風化 しただ けの 無機物質でなく、微生 物に よる分 解や 発酵を うけ た有機 物質 が含ま れて いる。森林の枯葉、枯 枝が 微生物 的、 化学的 作用 を受け 、硝 酸や炭 酸の ような無機酸やしゅう 酸や 酢酸等 の有 機酸が 生じ る。こ れが 鉱物に 作用 し、風化を早める。細 紛さ れた鉱 物と 有機物 質が 混合し たの が、い わゆ る腐植土である。腐植 土中 の腐植 物質 は分子 量数 千程度 で水 に溶け ると されているフルポ酸と さら に分子 量の 大きな 不溶 性のフ ミン 酸に分 けら れるが、これらはカル

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ボキシル基、カルボニル基、アミノ基、フェノール性水酸基等の官能基 を有している。このため、多種の金属と錯体を形成するが、鉄も錯体形 成によって粒子態から溶存態へ変化する。これはフルボ酸鉄といわれて いる。

  フルボ酸鉄や腐植物質がプランクトンや海藻の増殖ならびに成長に果 たしている役割が極めて大きいこと、ならびに石灰藻の胞子を殺すこと が 分 か っ て い る 。 本 研 究 で は 以 下の 項 目に っい て 研究 を行 っ た。

@河川水中のフルポ酸鉄の主起源:北海道道南に位置する大沼に流入し ている宿野辺川周辺は森林や湿地帯があり、それを通って多くの沢水が 宿野辺川に合流している。宿野辺川では上流から下流に向かうにっれて フルボ酸ー鉄濃度が増加するが、この要因を確かめるため、宿野辺川に 注ぎこんでいる多くの沢水を採取し、フルボ酸ー鉄濃度を測定した。宿 野 辺川流域にある湿 地帯の表層地下水中 のフルポ酸ー鉄濃 度は数10u Mと極めて高濃度であり、そこを流れる沢水も同様に高濃度であった。

これらの沢水は宿野辺川に注ぎこんでいる。宿野辺川上流のフルポ酸ー 鉄 濃 度はluM以下 で あっ たが 、下流では数びMに高まる理由 として、

湿地帯からの沢水の流入によることが明らかとなった。なお、河川水量、

そこに流入する沢水の水量、フルボ酸ー鉄濃度からフルポ酸ー鉄の収支 も計算したが、それらからも下流でのフルポ酸一鉄濃度の増加が裏付け られた。

  道南の森町を流れる鳥崎川にっいても、上流から下流にかけてフルポ 酸鉄を測定したが、宿野辺川と同様に下流で数¢Mと高濃度であった。

この河川を詳細に調査したところ、下流に大きな湿地が存在しており、

この中を河川が流れていることがわかった。湿地帯から高濃度のフルボ 酸ー鉄が河川にしみ出すためであることが明らかとなった。森林地帯の み を流れる河川水中 のフルボ酸鉄濃度は1〃M以下と考えらえるが、下 流で濃度が増加する要因は湿地帯の高濃度のフルボ酸鉄の流入によるも のである。

◎ フルボ酸鉄の形態 とプランクトン増殖に果たす役割:□径0.4ゼmの フィルターを通過した元素や化学物質は水との挙動が同じであることか ら、溶存物質といわれているが、それにはコ口イド状の物質も含まれて い る。学問的な興味 で、河川水を口径0.4ロmでろ過後、さらに窒素ガ ス に よる 加圧 に よっ て0.025ロmのフィルタ ーでろ過し、各ろ液 のフ

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ル ボ 酸 ー 鉄 濃 度 を 測 定 を す る と 、0.4びmー0.025Limに 多 く の コ 口イド状のフルボ酸ー鉄が存在することがわかった。なお、コ口イド状 で有機物質は炭素の安定同位体から腐植物質であることが同定されてい る。このコ口イド状鉄は光合成生物に有効か否かにっいて、淡水植物プ ランクトンを用いて培養実験を行った結果、プランクトンはこのコロイ ド状鉄によって増殖することがわかった。即ち、無機鉄のコ口イド状鉄 と異なり、プランクトンが摂取出来る鉄が溶出していることを示唆して いる。

◎湾に流入する腐植物質の拡散:河川から海に流入した腐植物質は塩に より凝集を起こすことが室内、野外実験で明らかにされている。河口に セジメントトラップを設置し、集まった有機物質の炭素同位体の測定か らすると、沈降有機物質は腐植物質であることも明らかにしてきた。即 ち、腐植物質が塩により凝集沈降することを意味している。そこで気仙 沼湾(宮城県)、方座浦湾と神前湾(三重県)の3つの湾にっいて、湾 の採泥を行いそこの有機物質の炭素同位体を測定し、腐植物質の拡散状 況を調べた。

  気仙沼湾にっいては、ほぼ湾全域を河川水が覆っていた。方座浦湾に っいては、湾に 流入する河川の約lkm上流に砂防ダムが建設されてお り、ダムによってダム上流の河川水は地下に浸透するため、ダムの下流 にほとんど水が流れてこないこと、また河口付近の湿地帯が埋め立てら れてしまったこ と等により、湾へ 腐植物質の影響は河口から数10 0m までしか影響し ていない。このた め湾の中央部(lkm)から湾ロにか けての岩や岩盤は石灰藻に覆われている。

  神前湾には3つの河川が流入しており、河川は少なくとも湾の中央部 まで影響している。それより沖側は底質が砂のため採泥が出来なかった。

しかし河川の上流の山で石灰の採掘が50年前から行われており、大雨 時には土砂が湾に流入している。このため一部の岩盤は土砂で覆われて しまい、海藻が生育出きる状況ではなかったが、覆われていない岩盤で は海藻が生育したいた。

  以上のことから森林と海とは深く繋がっていることが従来の研究に加 えてさらに明らかとなった。

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学位 論文審査の要旨 主査

副査 副査 副査

教授 教授 教授 助教授

松 永 勝 彦 角 皆 静 男 久 万 健 志 簗 田    満

    学位論文題名

AffeCtationofforeSt− deriVedhumiCSubStanCeS OnphotOSynthetiCOrganlSmSlnaquatiCregionS.     (森林起源の腐植物質が水圏の光合成生物に及ぼす影響)

  森林 は多 く の機 能 を有 し てい る が、保水の 役割は極めて 重要である。

森 林が 皆 伐さ れ 、裡 地 にな った と すると、 雨は斜面の無 機土とともに 表 層 を流 れ 、地 下 への 浸 透は ほと ん ど期待出 来ない。従っ て、雨になる と 洪 水が 発 生し 、 逆に 乾 期に は川 は 渇水にな る。即ち、河 川での生き物 の 生 存は 困 難に な る。

  私達 は土 壌 とい う 言葉 を よ< 用 いるが、こ れは岩石が風 化しただけの 無 機物 質 でな く 、微 生 物に よる 分 解や発酵 をうけた有機 物質が含まれ て い る。 森 林の 枯 葉、 枯 枝が 微生 物 的、化学 的作用を受け 、硝酸や炭酸 の よ うな 無 機酸 や しゅ う 酸や 酢酸 等 の有機酸 が生じる。こ れが鉱物に作 用 し 、風 化 を早 め る。 細 紛さ れた 鉱 物と有機 物質が混合し たのが、いわ ゆ る 腐植 土 であ る 。腐 植 土中 の腐 植 物質は分 子量数千程度 で水に溶ける と さ れて い るフ ル ボ酸 と さら に分 子 量の大き な不溶性のフ ミン酸に分け ら れ るが 、 これ ら はカ ル ポキ シル 基 、カルボ ニル基、アミ ノ基、フェノ ー ル 性水 酸 基等 の 官能 基 を有 して い る。この ため、多種の 金属と錯体を 形 成 する が 、鉄 も 錯体 形 成に よっ て 粒子態か ら溶存態へ変 化する。これ は フ ルボ 酸 鉄と い われ て いる 。

  本研 究で は 以下 の 項目 に っい て 研究 を行 っ た。

O河 川 水中 の フル ボ酸 鉄 の主 起 源: 北 海道 道 南に 位置 す る大 沼 に流 入 し て いる 宿 野辺 川 周辺 は 森林 や湿 地 帯があり 、それを通っ て多くの沢水 が 宿 野辺 川 に合 流 して い る。 宿野 辺 川では上 流から下流に 向かうにっれ て フ ルボ 酸 鉄濃 度 が増 加 する が、 こ の要因を 確かめるため 、宿野辺川に 注 ぎ こん で いる 多 くの 沢 水を 採取 し 、フルボ 酸鉄濃度を測 定した。宿野 辺 川 流 域 に あ る 湿 地 帯 の 表 層 地 下 水 中 の フ ル ボ 酸 鉄 濃 度 は 数lOuMと 極

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めて高濃度であり、そこを流れる沢水も同様に高濃度であった。これら の沢水は宿野辺川に注ぎこんでいる。宿野辺川上流のフルボ酸鉄濃度は 1ゼM以下 で あ っ た が 、下 流 で は 数uMに高ま る理由 とし て、湿 地帯か らの沢水の流入によることが明らかとなった。

◎フ ルボ酸 鉄の形 態と プラン クトン増殖に果たす役割:口径0.4ロmの フィルターを通過した元素や化学物質は水との挙動が同じであることか ら、溶存物質といわれているが、それにはコ口イド状の物質も含まれて いる 。学問 的な興 味で 、河川 水をロ径0.4びmでろ過後、さらに窒素ガ ス に よる 加 圧 に よ っ て0.025limのフ アルタ ーでろ 過し 、各ろ 液のフ ル ボ 酸 ー 鉄 濃 度 を 測 定 を す る と 、0.4 um一0.025ロmに 多 く の コ 口イド状のフルボ酸ー鉄が存在することがわかった。なお、コ口イド状 で有機物質は炭素の安定同位体から腐植物質であることが同定されてい る。このコ口イド状鉄は光合成生物に有効か否かにっいて、淡水植物プ ランクトンを用いて培養実験を行った結果、プランクトンはこのコロイ ド状鉄によって増殖することがわかった。即ち、無機鉄のコ口イド状鉄 と異なり、プランクトンが摂取出来る鉄が溶出していることを示唆して いる。

◎湾に流入する腐植物質の拡散:河川から海に流入した腐植物質は塩に より凝集を起こすことが室内、野外実験で明らかにされている。河口に セジメントトラップを設置し、集まった有機物質の炭素同位体の測定か らすると、沈降有機物質は腐植物質であることも明らかにしてきた。即 ち、腐植物質が塩により凝集沈降することを意味している。そこで気仙 沼湾(宮城県)、方座浦湾と神前湾(三重県)の3つの湾にっいて、湾 の採泥を行いそこの有機物質の炭素同位体を測定し、腐植物質の拡散状 況を調べた。

  気仙沼湾にっいては、ほぼ湾全域を河川水が覆っていた。方座浦湾に っい ては、 湾に流 入す る河川 の約1 km上流に砂防ダムが建設されてお り、ダムによってダム上流の河川水は地下に浸透するため、ダムの下流 にほとんど水が流れてこないこと、また河口付近の湿地帯が埋め立てら れて しまっ たこと 等に より、 湾ヘ腐 植物質 の影 響は河 口から 数10 0m まで しか影 響して いな い。こ のため 湾の中 央部 (lkm)か ら湾口 にか けての岩や岩盤は石灰藻に覆われている。

  神前湾には3つの河川が流入しており、河川は少なくとも湾の中央部 まで影響している。それより沖側は底質が砂のため採泥が出来なかった。

  しかし河川の上流の山で石灰の採掘が50年前から行われており、大雨 時には土砂が湾に流入している。このため一部の岩盤は土砂で覆われて   しまい、海藻が生育出きる状況ではなかったが、覆われていない岩盤で は海藻が生育していた。

    以上のことから森林と海とは深く繋がっていることが従来の研究に加   えてさらに明らかとなった。よって審査員一同は博士(水産科学)の学   位を授与するにふさわしいと判定した。

    ー1339―

参照

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