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学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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(1)

博 士 ( 医 学 ) 長 谷 川 秀 樹

学 位 論 文 題 名

DOCK180, a Major CRK‑Binding Protein, alters Cell Morphology upon        Translocation to the Cell Membrane (CRKの主要結合夕ンパクDOCK180の細胞膜への移行による細胞形態変化の誘導)

学位論文内容の要旨

[目的]

v‑CrkはCT10レ ト ロ ウ イ ル スの 癌 遺 伝 子 産 物 と し て 同 定 さ れ 、 そ の 大 部 分 の 構 造 がSrc hom010gy2(SH2)領 域お よびSrchomology3(SH3)領 域か らな るア ダプ ター タン パクであ る 。 細 胞 内 のv‐Crkの 同 族 体 は ニ ワ ト リ 、 ヒ ト 、 マウ スで 単離 され てお り、 ヒト のCRK 遺 伝 子 か ら は ス プ ラ イ シ ン グ に よ り28kDaのCRK‐Iと42kDaのCRK‐Hの2つ の タ ン パ ク が 翻 訳 さ れ る 。CRKをPC12細 胞 に マ イ ク ロ イ ン ジ ェ クシ ョンす ると 神経 分化 が誘 導さ れ る。 また 、v‐Crkの過 剰発 現に よりEGF刺 激下 でのPC12細胞 の神 経分 化を 加速 させる。

こ れ ら のCRK依 存 性 の 分 化 に はRaSの 活 性 化 が 必 要 で 、 そ れ はCRKの 過 剰 発 現 に よ り 増強される。CI水,(}rb2/Ash,Nckなどを含むアダプター分子はそれ自身酵素活性を持たず、

SH2を 介 し て り ン 酸 化 チ ロ シン を 含 む 分 子 よ り 情 報 を 受 け 取 り 、SH3を 介 し て プ ロ リン に 富 ん だSH3結 合 領 域 を 持 つSH3結 合 タ ン パ ク ヘ と 情 報 を伝 え て い く 。 ま た ア ダ プ ター 分 子の 機能 とし て、SH3領域に 結合 した 細胞 質内 の酵 素を 細胞 膜ヘ 運ぶ 役割 をは たしてい る 。CRKのSH3を 用 い た フ ァ ー ウ エ ス タ ン 法 に よ り こ のSH3が135〜145,160,180kDa の タ ン パ ク と 結 合 す る こ と が 明 ら か に さ れ て い た 。 本 研究 で は 、 こ れ らCRKSH3結 合タ ン パ ク の う ち180kDaの タ ン パ ク を コ ー ド す る 遺 伝 子 を180kDaのCRKの 下 流 因 子 (180 kDapmtemdowns眦amofCRK) よ りDOCK180と 名 付 け 、 そ の 分 子 ク 口 ー ニ ン グ を 試 み 、 かつ得られた分子の機能解析を行なった。

[材料と方法]

1. 遺 伝 子 の ス ク リ ー ニ ン グ の た め に ヒ ト 脾 臓cDNAラ イ ブ ラ リ ー を 用 い た 。 2. 結合 タン パク を検 索す るた めにHeLa細胞 ライセ ート を抗DOCK180抗体 で免疫 沈降し、

  GST‑CRK SH3.GST‑Grb2/Ashを プ ロー ブ と し た フ ァ ー ウ エ ス タ ン 法 を 実 施 し た 。 3.ノーザンプロット解析、ファルネシル化、細胞への遺伝子トランスフェクションなどは   常法に従った。

4.DOCK180の 細 胞 内 分 布 とDOCK180導 入 後 の 形 態 変 化 を 免 疫 組 織 染色 お よ び 共 焦 点 レ   ーザー顕微鏡にて観察した。

[結 果]

1. ヒト 脾臓のcDNAの発 現ラ イブ ラリーよ   プ ロ ー ブ と し てcDNAラ イ ブラ リー をス を 単離し た。 このcDNAは、5,598 bpの の アミノ 酸か らな る計 算上215 kDaのタ のC末 端 に プ ロ リ ン に 富 ん だCRK SH3

り 陽 性 ク ロ ー ンST2が 得 ら れた 。 こ のST2.を ク リー ニン グし 、全 長6,519 bpの未知のcDNA オ ープンリーデイングフレームを持ち1.866個 ン パクをコードしていた。アミノ酸配列からそ に 結合 しえ る部 分が2つ存 在す ること、および

230―

(2)

  

そのN末端に

SH3

領域が存在することが判明した。

2

.ファーウエスタン法では、免疫沈降後の上清中には

CRKSH3

およびGrb2/Ashに結合す

  

180kDa

のタンパクはみられず、沈降物中に検出された。逆に、細胞のライセートを

  

抗CRK抗体 で 免疫 沈 降し た とこ ろ、

DOCK180

は 抗

CRK

抗体 の沈降物の 中に含まれ い

  

た。

3

DOCK180

7

4kb

のmRNAの発現を ノーザンブ ロットにて 調べると、 末梢自血球 以

  

外の全身諸臓器で発現が認められた。発現量の多い臓器は胎盤、肺、腎臓、膵臓、卵巣

  

で、少ない臓器は胸腺、精巣、大腸であった。血球系細胞である

Molt4Tcells

,RajiB

  ceus

,THP‐1monocytesではDOCK180の発現はみられなかった。

4

. 野生 型 の

DOCK180

Nm3T3

細胞 に ト ラン ス フェ ク ショ ン する と、DOCK180は細胞

  

質内にびまん性に分布し、細胞形態に変化は認められなかった。一方、

Ki

−Rasのフんル

  

ネシ ル 化 信号 で ある

CAAXbox

DOCK180

C

末 端に 融 合さ せ て作出 した

DOCK

F

  

ト ランスフェ クションす ると、

DOCK180

は 細胞膜に局 在し、紡錘 形の

MH3T3

細 胞を

  

平坦な、多角形細胞へと変化させた。

5

Nm3T3

細 胞はヒト

EGF

レセプタ ーを発現さ せた紡錘形 の細胞であ り、EGFで刺激す

  

る と特徴的な トランスフ オーム(こ の場合は細 胞の球形化 )を起こす 。野生型の

  DOCK180

あるいはフんルネシル化GST(

GST

‐F)のみをトランスフェクションした場合

  

に は

EGF

の刺 激により細胞の球形化がみられた。一方、

DOCK

‐Fをトランスフェクシ

  

ヨンした細胞においてはEく弭刺激により細胞質が樹枝状に進展する樹状様細胞となっ

  

た 。さらに、 自己リン酸化部位を欠いたEGFレセプターの変異体を持っために

EGF

  

激に対して形態的なトランスフオームを示さない株化細胞を用いてEGF刺激の効果を

  

調べたところ、DOCK‐Fをトランスフェクションしても細胞は樹枝状に変化しなかった。

[考察]

新たに 同定された

CRK

結合 タンパクDOCK180を膜ヘ移行 させることによりに細胞形態 が変化することが明らかとなった。

DOCK

ーFの発現によって引き起こされる細胞形態の 変 化が

DOCK180

やGST‑Fの発現によ って起こら ないことか ら、この変 化は

DOCK180

を 膜へ移行させたことに起因するものと考えられる。本実験で

DOCK‑F

がNIH3T3細胞にお いて

EGF

によるトランスフオーメーションに拮抗していることが示されたが、もう―ーつ の

CRK SH3

結合分子で ある

C3G

もファルネシル化により

Ras

によルトランスフオームし た

NIH3T3

細胞 を正常に戻 すことが知 られている 。従って、

2

つの主要な

CRK‑SH3

結合 タンパクは癌化抑制作用があることが推測される。また、DOCK180は血球系細胞におい て発現がみられないことから細胞接着に関連した情報伝達に関与していることが推察され る。

CRK

,Grb2/Ashはもともと細胞質内のアダプター分子として同定されたが、現在では 細胞の接着に関与する情報をも伝えることが知られている。

CRK

SH2

領域はインテグ リン刺激によルチロシン残基がりン酸化されるパキシリンや

p130CAs

とぃった分子とも結 合する。このように細胞内のCRK夕ンパクの中には細胞接着に関与する情報伝達に関わ っ てい る ものもあ り、

CRK

SH3

に結合 し、細胞形 態を制御す る

DOCK180

の同 定は、

CRK

タ ン パ ク の 細 胞 の 接 着 に お け る 新 た な 役 割 を 示 す も の と 推 測 さ れ た 。

[結語]

  

新しい

CRK

主要結合夕ンパクとして

DOCK180

を同定し、その機能解析を行い次の結果 が得られた。

1

. DOCK180は全長6,519 bpであり、5,598 bpの翻訳領域を持ち、1,

866

個のアミノ酸か

  

らなる計算上

215 kDa

のタンパクをコードしており、そのタンパクはプロ1Jンに富む

  SH3

結合領域を持っていた。

2

. DOCK180はほぼ全ての臓器で発現がみられたが、血球系細胞ではみられず接着細胞で

  

の情報伝達に関与していることが示唆された。

3

. DOCK180を細胞膜へ移行させると紡錘形の

NIH3T3

細胞の形態を平坦な、多角形細胞

(3)

  

へ と変化させ た。またフんルネシル化されたDOCK180からの情報はEGF刺激による

  

トランスフオーメーションの情報と拮抗していた。

  

以上の結果より、DOCK180は細胞接着機構を介して形態形成や癌化抑制に関与してい る可能性が示唆された。

(4)

学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

DOCK180, a Major CRK‑Binding Protein, alters Cell Morphology upon        Translocation to the Cell Membrane

(CRKの 主 要 結 合 夕 ン パ クDOCK180の 細 胞 膜へ の移 行に よる 細 胞形 態変 化の 誘導 )

  細 胞 内 の 情 報 伝 達 に 関 わ る ア ダ プ タ 一 分 子 の ー つCR:Kは 、CT10レ ト ロ ウ イ ル ス の 癌 遺 伝 子 産 物 と し て 同 定 さ れ 、 そ の ほ と ん ど の 部 分 がSrc homology2(SH2)領 域 お よ び Src homology3(SH3)領 域 か ら な り 、 そ れ 自 体 は 酵 素 活 性 を 持 た た ぃ 。CRKは 、 そ の SH2を 介 し り ン 酸 化 チ ロ シ ン を 合 む 分 子 に 特 異 的 に 結 合 す る こ と に よ り 情 報 を 受 け 取 り 、 そ のSH3を 介 し て プ ロ リ ン に 富 むSH3結 合 領 域 を 持 つSH3結 合 タ ン パ ク ヘ と 情 報 を 伝 え る 。 本 研 究 に お い て は 細 胞 内 情 報 伝 達 に お け るCRKの 生 理 的 意 義 と 癌 化 に お け る 意 義 を 探 る た め 、 CRK SH3に 結 合 す る 未 知 の 分 子 を 同 定 ・ 単 離 し 機 能 解 析 を 行 っ た 。   ヒ ト 脾 臓 のcDNAの 発 現 ラ イ ブ ラ リ ー を フ ァ ー ウ エ ス タ ン 法 に よ ル ス ク リ ー ニ ン グ す る 事 に よ り 陽 性 ク ロ ー ンST2が 得 ら れ た 。 更 に ス ク リ ー ニ ン グ を 進 め る こ と に よ り1866 の ア ミ ノ 酸 を コ ー ド す る 新 し い 遺 伝 子 が 得 ら れ た 。180 kDa protein Downstream Of CRKの 頭 文 字 を と りDOCK180と 名 付 け た 。 ア ミ ノ 酸 配 列 か ら そ の カ ル ボ キ シ ル 末 端 にCRK の プ ロ リ ン に 富 ん だSH3領 域 に 結 合 し う る 部 分 が2つ 存 在 す る こ と 、 ま た そ の ア ミ ノ 末 端 SH3領 域 が 存 在 す る こ と が 判 明 し た 。 そ れ 以 外 に 他 の 既 知 の 分 子 と の 相 同 性 は 見 ら れ な か っ た 。DOCK1807.4kbrriRNAの 発 現 を ノ ー ザ ン ブ ロ ッ ト 解 析 で 調 べ る と 、 末 梢 自 血 球 以 外 の 全 臓 器 で 発 現 が 認 め ら れ た 。 発 現 量 の 多 い 臓 器 は 胎 盤 、 肺 、 腎 臓 、 膵 臓 お よ び 卵 巣 で 、 少 な ぃ 臓 器 は 胸 腺 、 精 巣 、 大 腸 で あ っ た 。DOCK180の 機 能 を 調 べ る た め にKi ‑ Ras フ ァ ル ネ シ ル 化 信 号 CAAX boxDOCK180の カ ル ボ キ シ ル 末 端 に 融 合 さ せ 、 そ れ を NH3T3細 胞 内 で 発 現 さ せ た 。 野 生 型 のDOCKl80で は 細 胞 質 内 に び ま ん 性 に 分 布 し 、 細 胞 形 態 に 変 化 を 与 え な い の に 対 し 、 フ ァ ル ネ シ ル 化 さ れ たDOCK180 (DOCK ‑F) は 細 胞 膜 に 局 在 し 、 紡 錘 形 のNH3T3細 胞 を 平 坦 な 、 多 角 形 細 胞 へ と 変 化 さ せ た 。 膜 移 行 型 の

哲 政

(5)

D

く)CK180はセリン残基がりン酸化されていることが判明した。CRKはインテグリンの刺激 でりン酸化される分子p13 0CASあるいはPaxillinといった分子と

SH2

領域を介して結合 していることが知られているので、インテグリン刺激でDOCK180がりン酸化されるかど うか検討した。その結果、

DOCKl80

はインテグリンの刺激依存性にりン酸化されること がわかった。またv ‑ crk,v‑ srcで癌化した細胞においてもDOCK180がりン酸化されて いることが明らかにされた。今回新たに単離・同定されたDOCK180は、細胞の形態変化 に関する信号伝達に関与している事が示され、インテグリン刺激からの信号伝達に関わつ ている新しい分子であることが示唆された。

  

発表後、葛巻教授より形態変化に関して

3T3

以外の細胞での検討、膜移行型DOCK180発 現細胞におけるアクチンの変化とファルネシル化について、およびDOCK180の骨髄での 発現などについての質問があった。次いで斉藤政樹教授より、リン酸化とシグナル伝達の メカニズム、シグナル伝達の本質、本研究の意義などについて質問があった。最後に守内 教授より膜移行型

DOCK180

発現細胞の形態上の変化に伴う多核化などについて質問があ った。いずれの質問に対しても、申請者は多くの報告結果を引用し、豊富な知識に基づぃ て明解に解答した

  

本研究で新たに単離されたDOCK180を用いることにより正常細胞および癌化した細胞 における細胞形態を制御する信号伝達のメカニズムおよび細胞接着班の働きなどを解明す る事ができると期待される。

  

審査員一同はこれらの、CRKの主要結合タンパクDOCK180に関する研究成果を高く評価 し、申請者が博士(医学)の学位を受けるのに充分な資格を有するものと判定した。

参照

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