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学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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博 士 ( 理 学 ) 伊 藤 由 紀

     学位論文題名

Mechanlsms of interaction between silica and      ●

    organlCmaterialSlnSur [ ・ aCeenVlronment      (地球表層環境におけるシリカと有機物の相互作用)

学位論文内容の要旨

  地球 表層に は多種多 様な有 機無機 相互作 用があり、環境問題を含む様々な物質循環に重要 な役割を担っている。例えば、湖沼水、海水、地下水等の表層水圏には、プランクトンの他、

岩石や 土壌粒 子が流 入し、 さらに 様々な 人間活動からの有害汚染物質が流入している。その 中でもここでは特に、地球表層環境におけるシリカと有機物の相互作用に着目した。それは、

地球化 学と環 境問題 のニつ の面に おいて 重要だからである。シリカは地球表層無機物の代表 であり 、水圏 には多 種多様 な有機 物が普 遍的に存在する。このような、環境中に豊富に存在 する物 質同士 がなん らかの 相互作 用を起 こす可能性は十分にあるが,その実体は殆ど明らか にされ ていな い。ま た、放 射性廃 棄物の 処分においても、ガラス固化体から溶出するシリカ が 地 下 水 中 の 溶存 有 機 物 とど の よ う な相 互 作 用 をす る か を 調べ る こ と は重 要 で あ る。

  まず 、この ようなシ リカと 有機物 の相互 作用の 天然環 境にお ける例として、1)有機物に 富んだ 褐色温 泉中( 札幌近 郊、十 勝川温 泉)の シリカ 、2)珪 藻(生物源シリカ)の埋没・

続成過 程にお ける脱 水・結 晶化と それに 対する有機物の役割とぃう事例に着目し、それぞれ 分析を 行った 。その 結果、 上記の 温泉水 中のシリカ濃度は高く、有機物の種類によっては有 機物量とシリカ濃度が比例していることが示された。また、異なる年代の珪藻(中新世の珪藻 土、海底堆積物中の珪藻、海水中の現生の珪藻)一個体について顕微赤外分光法を用いて状態 分析を行い、赤外スペクトルから、全ての珪藻に0―H,SiーO,Si―0―Si,SiーOHの存在が認め られ、 さらに 、現生 、表層堆積物中の珪藻中にはC=O,N−Hなどのタンパク質様物質の存在が 確認さ れた。 また、C=OやC―Hなどの 有機物は 全ての 珪藻に 見られ 、これらの有機物は続成 過程においても残されていることが示された。さらに、Si―OH/Si−O―Si比は続成度が上がる にっれ て減少 すると いう結 果を得 た。こ の結果は埋没・続成によるシリカの脱水を示唆して い る。 こ の よ うに 、 従 来 定量 で き な かっ た 初 期 続成 過程の 非晶質 状態に おいて も、Si− OH/Si―OーSi比を用いれば珪藻の相対進化度の定量表現ができると考えられる。以上の結果は,

シリカ と有機 物(フ ミン酸 やたん ぱく質 あるいはその分解生成物)の相互作用を示唆するも のであ る,そ こで, 水溶液 中での シリカ の挙動(存在状態、溶解、結晶化)について、それ らに対する有機物の影響を確かめるための様々な実験を行った。

  実験 に先立 ち、天然 環境に おける 有機物 の中で最も代表的な腐植物質に着目し、特にフミ ン酸の さまざ まな状 態分析 を行っ た。本 研究で 用いた フミン酸 試薬(Aldrich)は、動的光散 乱法などから溶液状態では主(こ1. 3nmから25nmの大きさで存在しており、また特徴的な紫外 可視ス ベクト ルはイ オン強 度など によっ て変化することが示された。しかし、固体状態に比 べて溶 液の状 態分析 は困難 であり 、さら にさまざまな方法で溶液の分析を試みることが望ま れた。

  この フミン 酸とシリ カ(シ ルカゲ ル粉末 ・シリカコロイド)を用いて、シリカとフミン酸 の相互 作用を 確かめ るため の予備 的な反 応実験を行った。その結果、フミン酸はlOmg/L,イ オン強 度1=0. 1Mで 約40−50%程度粉 末シリカ ゲルには吸着するものの、シリカコ口イドには 吸着し なかっ た。ま た吸着 の程度 はシリ カ表面積よりもイオン強度に依存していた。一方、

シ リカ ゲ ル ・ シリ カ コ ロ イド からのSiの溶解 について は、モ リブデ ンブル ー法とICP発光

‑ 243

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分析法 の両方で 測定し た。そ の結果 、イオ ン強度 、フミ ン酸濃 度に関わ らずオ ルトケイ酸量 と全シ リカ量は ほぽ同 じであ ること が確認 された 。すな わち、 このシリ カゲル ―フミン酸実 験系に おける溶 液中の シリカ はオル ソケイ 酸(Si(OH)よ)として存在していることが確認さ れた。 また、溶 解度・ 溶解速 度とも にフミ ン酸濃 度によ るー定 の変化を 示さな かった。フミ ン酸 の シ リ カヘ の 吸 着 とシ リ カ か らのSi溶 解は独 立して起 こって いる可 能性が 示され た。

  さらに 上記の 実験を 発展させ て、さ まざま な溶存 有機物 存在下 でのシ リカゲ ルの溶解実験 を系統 的に行っ た。そ の結果 、クエ ン酸溶 液でシ リカゲ ルから のSi溶解 速度が かなり速く、

また従 来の溶解 モデル にはあ てはま らない ことが 示され た。そ の他にも 、アミ ノ酸溶液も初 期過 程 に お けるSi溶 解速 度 が 速 かっ た 。ま た、フ ミン酸溶 液も初 期過程 におい てはシ リカ ゲルの 溶解を速 める傾 向を示 し、ま た濃度 に比例 して溶 解速度 は高くな ってい た。また、溶 存有機 物の種類 によっ ては逆 にシリ カの溶 解速度 を下げ るもの も存在し た。こ のように、シ リカ の 溶 解 を速 め る 有 機物 も あ れ ば、 逆 に 遅 くす る 有 機 物も 存 在 す るこ と が 示 され た 。   一方、 シリカ の結晶 化に対す る有機 物の影 響を調 べるた めの実 験も行 った。 まず有機物が 存在 し な い 状態 で、 結晶化 を速める ために180℃、 アルカリ 溶液中 でのシ リカの 結晶化 実験 を行 っ た 。 およ そ7日 でSilica―Xが生 成 し、その 後11日 目に石英 に変化 した。 また、 有機 物(ア ミノ酸、 糖、脂 肪酸) の存在 下での シリカ ゲルの 脱水実 験を行っ たが、14日でも結晶 は生成 しなかっ た。そ こで、 このよ うなシ リカの 結晶化 の初期 過程を表 す指標 に赤外測定に よるSi−OH/Si―O−Si比を用 いたところ、有機物存在下での実験生成物についてもアルカリ溶 液中と同じくSi― OH/Si−0―Si比が時間と共に減少した。さらに、この指標は天然の珪藻(土)‥

の続成 度を示す のにも 使って いたも ので、 実験と 天然試 料で同 じ指標を 用いて シリカの 結 晶度 が示され ること がわか った。このSi−OH/Si←O―Si比からは、シリカの 結晶化 はpH の影響 を強く受 けるも のの、OH基を持 つ有機 物やア ミノ酸 存在下 で 結 晶化¨ が若干促進さ れる傾 向があり 、逆に 結晶化 を抑制 するも のも存 在した 。さら に、pHの 影響を なくすため、

pH緩 衝 溶 液(pH12) で実験 を行った ところ 、プラ ンク溶 液では11日で石 英が晶 出する のに対 し、ア ミノ酸溶 液では クリス トバラ イトが 存在し た。ク ルスト バライト は石英 の結晶化の前 段階 に あ た ると 一 般 的 に考 え ら れ てい るの で、ア ミノ酸 は高いpHでは逆 にシリ カの結 晶化 を阻害する傾向があると考えられた。

  以上の ように 、地球 表層環境 におけ るシリ カと有 機物の 相互作 用とぃ う観点 から、まず天 然環境 中の試料 につい てキャ ラクタ リゼー ション を行い 、さら にそれを 模擬し たさまざまな 実験を 行った。 その結 果から 、天然 中にシ リカと 有機物 が共存 し、相互 作用を していると考 えられ る系も存 在する こと、 さらに いくっ かの実 験から 、有機 物の種類 によっ て影響は異な るもの の、シリ カの溶 解や結 晶化に対して有機物が何らかの作用をしていることが示された。

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学 位 論 文 審 査 の 要旨 主査

副査 副査 副査 副査

教 授 教 授 助 教 授 研究 室長 研究 所長

中 嶋   小 泉   鈴 木 徳 行

Valerie MOULIN( フ ラ ン ス 原 子 カ 庁 地 噺 は 弸 究 翁 Jean‑Claude PETIT( フ ラ ン ス 原 子 力庁 分刊 匕学研J77f)

     学位論 文題名

Iechanisms of interaction between silica and      ●    ●    ●

    organlCnlaterialSlnSurfaCeenVlronnlent

(地球表層環境におけるシリカと有機物の相互作用)

  近年, 地球表層の物質循環における 有機無機相互作用の重要性 については,多くの研究者が指摘 している にもかかわらず,その詳細は 未だに明らかにされていな い.それは,無機地球化学と有機 地 球化 学と ぃう2つの異なる手法 や体系が独立しており,複雑 多岐にわたる有機無機相互 作用に単 独では取 り組み得なかったことによる .

  本論文 は,地球表層の無機物の代表 としてシリカを取り上げ, それと多種多様な有機物との相互 作用を, 天然現象の分析と実験室での 実証的研究との両面から, 様々な状態分析手法を駆使して調 べた.そ の結果,天然の温泉水のうち フミン酸とぃう有機高分子 に富むものでは,無機的な水溶液 中でのシ リカの溶解度を超えたシリカ が溶存しており,溶存有機 物がシリカの溶解を促進している ことが示 唆された.そこで,様々な溶 存有機物存在下でのシリカ の溶解実験を行ったところ,ある 種 の カ ル ボ ン 酸 や ア ミ ノ 酸 が シ リ カ の 溶解 速度 を著 し く増 加さ せる こと が 明ら かに なっ た .   一方, 含水シリカゲルの結晶化に対 する有機物の影響を調べる 実験を行ってみると,OH基を持つ アミノ酸 がシリカゲルの脱水結晶化を 促進することが明らかにな った.この際,赤外分光法によっ て測定さ れるSi―OH/Si−0―Si比が, シリカの脱水結晶化過程の定量的指標となることがわかった,

このよう なシリカの脱水結晶化過程は ,珪藻等の珪質プランクト ンが海底下で埋没続成により石英 へ結晶化 していく際,珪藻自身に含ま れる蛋白質あるいはその分 解生成物によって結晶化が促進さ れ得ると ぃう重要な意義がある.以上 の結果は,シリカと有機物 (フミン酸やたんぱく質あるいは その分解 生成物)の相互作用と,その 地球表層での物質循環ある いは環境汚染問題における重要性 を示唆す るものである.

  このよ うにして,シリカと有機物の 相互作用を,多角的に総合 的に研究した例は従来なく,この 新しい研 究分野の開拓と発展に貢献す るところ大なるものがある .

  よ っ て , 著 者 は , 北 海 道 大 学 博 士 ( 理 学 ) の 学 位 を 授 与 さ れ る 資 格 あ る も の と 認 め る .

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参照

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