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博 士 ( 歯 学 ) 相 田

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Academic year: 2021

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博 士 ( 歯 学 ) 相 田    潤 An ecological study on the association of public dental health activities and socio‑demographic characteristics with caries prevalence in Japanese 3‑year‑old children

(市町村の歯科保健活動およぴ社会背景因子と3 歳児う蝕有病者率の関連)

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

【目的】

先進 諸国 にお いて この30年 間う 蝕 の減 少が 続い てい る。 日本 にお いて は、 う蝕の減少は1960年 代か ら70年代 にか けて 始ま って い る。 日本 では 、市 町村 保健 セン ター にお いて、う蝕予防のた めの フッ 化物 塗布 や保 健指導の事業が行われている。こ うした事業がう蝕の減少に寄与している のかは興味深い。大規模な地域ごとの保健事 業の影響を評価するには地域相関研究が適している。

これ まで う蝕 の減 少に フッ化物歯磨剤の普及や、社会背 景因子が関連する報告が見られる。しか し、 日本 にお ける ,う 蝕有病者率と保健事業との関連を しらべた報告は見られない。一方、こう した 地域 相関 研究 を行 う際に、人口に依存した、人口が 少ない地域における有病者率の変動が問 題と なる こと があ る。 この変動の調整には経験的ベイズ 推定の利用が解決方法のひとっとして知 られ てい る。 本研 究の 目的は、全国の市町村保健センタ ーの歯科保健事業の頻度と社会背景、市 町村の3歳児う蝕 有病者率の関連を調べることである。

【方 法】

地 域歯 科 保健 データバンクおよび各都道府県保健部署より、2000年 の日本の全3,251市町村から 3歳 児う 蝕有 病者 率の デー タを 集め た 。厚生労働省および総務省の データベースを利用し,歯科 保 健教 育 やフ ッ化物塗布事業の一人当たりの年間回数、行政の常勤 の歯科医師の有無およぴ歯科 衛 生士 の 有無 、人口当たりの歯科医師数を歯科保健に関連する指標 として算出した。また、地域 の 社会 背 景に 関連する指標も用いた。人口の少ない市町村における う蝕有病者率の変動を調整す る ため 、 経験 的ベイズ推定値を算出した。算出の際には、う蝕有病 者数を確率変数の実現値と考 え、 確率密度関数を二項分布とし、事前分布の確率密度関数にべータ分布を仮定し、EB estimation for Binominal‑Beta software (Takahashi)を用いて算出した。まず、市町村ごとに疾病地図を用い て 地域 差 の観 察を行った。次に、う蝕と歯科保健事業の関連の解析 には重回帰分析を用いて算出 し た。 重 回帰 分析 は, 正規 性の 確認 と単 回帰 分析 およ ぴ多 重共 線 性の検討をした後,Backward Stepwise法を 用いて行った。歯科健康教育とフッ化物塗布事業の年 間回数、その他の歯科保健関 連 指標 お よび 社会 背景 変数 を説 明変 数と して用い、目的変数には3歳児う蝕有病者率の経験的べ

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イズ推定値を用いた。解析にはSTATA7.0(Sta1ニaCorpLP)を用いた。

【結果】

市町 村の3歳児 う蝕 有病 者率 の平 均は40.4土14.2%であった。経験的ベイズ推定値により、人口 の少 ない 地域 にお ける 変動 が 抑制 され 、39.8土10. 0%となった。疾病地図に より、3歳児う蝕有 病者 率に は地 域差が存在し、関東,東海,近畿, 山陽ではベイズ推定値が低い傾向にあり,北海 道東 部, 東北 ,紀伊半島,四国南部,九州南部で 高い傾向にあった。重回帰分析の結果、フッ化 物塗 布事 業の 頻度は、う蝕を減少させる方向に有 意に関連していたものの、非常に弱い関連であ った(偏相関係数=‑0.116,pく0.001)。歯科健康教育とは有意な関連が示されなかった。行政の歯 科医 師・ 歯科 衛生士の有無およぴ、開業医も含め た人口当たりの歯科医師数には有意な関連は認 めら れな かっ た。社会背景変数では、高学歴者の 割合(大学卒業以上)(偏相関係数‑ ‑0.414. pく0.001)、第二次産業従事者の割合(偏 相関係数〓‑0.214,pく0.001)の増加がう蝕を減少させ る方向に、合計特殊出生率(偏相関係数〓0.216,pく0.001)の増加、失業率(偏相関係数〓0.190, pく0.001)の 増加がう蝕を増加させる方向に有意 に関連をしていた。重回帰分析に投入した変数 によ り、 う蝕 の全分散のうちの39%が説明できた 。その内フッ化物塗布事業の変数は、う蝕有病 者率 の分 散を0.8%説 明していた。一方学歴の変数は26%,合計特殊出生率の 変数は7.7%を説明 しており、う蝕に対する寄与が大きいこと が示された。

【考察】

市町 村の3歳 児う 蝕有 病 者率 とフ ッ化 物塗 布事 業の 頻度 は、 有意に関連していたものの寄与は小 さく 臨床 的な 有効 性は 示さ れな かった。一方で社会背景 変数の関連の方が強いことが示された。

ま た 、 経 験 的 ベ イ ズ 推 定 に よ り 、 人 口 が 少 な い地 域に おけ る有 病者 率の 変動 が調 整さ れた 。   本 研究 の欠 点と して は、 横断 研究であり因果関係が示 されなぃこと、地域単位の解析であり個 人単位の関連が分からないこと、使用できる地域単位 の説明変数に限りがあることが挙げられる。

  フ ッ化 物塗 布事 業の 影響 が小 さかった理由としては、 保健行動の良好な者だけが事業を受診す るた め、 う蝕 のり スク が高 いも のが受診していないこと や、すでにう蝕を持つ者が受診すること で数字上有病者率の減少にはっながらないことなどが 考えられる。歯科医師数の関連カ§弱いこと も海 外に おけ る報 告と 同様 であ った。また、歯科保健事 業の有意な関連が示されなかった。集団 の健康の改善に、健康教育のみによることの限界は指 摘されており、より有効な介入が望まれる。

う蝕 と社 会背 景と の関 連に っい ては多くの先行研究で示 されており、日本においても社会背景の 大き な関 連が 示さ れた 。3歳 児う 蝕有 病者 率の 大き な地 域格 差が示され、そして地域格差には社 会背 景が 最も 大き く関 連し てい ることが今回の研究で示 された。格差の解消は近年の大きな保健 課題 であ り、 社会 背景 が関 連す る地域格差の解消には、 集団全体のりスクを低下させるポピュレ ーシ ョン アプ ロー チの 必要 性が 指摘されている。歯科で は例えばフロリデーションがポピュレー ショ ンア プロ ーチ とし て格 差を 縮小する有効性が示され ており、日本においても格差の縮小のた めに検討されるべきであろう。

  今 回の 研究 によ り、 日本 の市 町村 ごと の3歳 児う 蝕有 病者 率に大きな地域格差が存在すること が明 らか にな った 。市 町村 の3歳 児う 蝕有 病者 率と フッ 化物 塗布事業の頻度は、有意に関連して

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いたものの臨床的な有効性は示されなかった。一方で社会背景変数の関連の方が強いことが示さ れた。

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学位論文審査の要旨

    

学 位 論 文題 名

An ecological study on the assoclationofpubliCdenta1 healthaCtiVitieSandSOCiO

demographiCCharaCteriStiCS WithCarieSpreValenCeinJapaneSe3

year

OldChildren

( 市 町 村 の 歯科 保 健 活 動 お よ び 社 会 背 景 因 子 と

3

歳 児う 蝕有 病者 率の 関連 )

  

審査は、3 名の審査員が一同に行った。

それに関連した学科目にっいて行われた。

試験は口頭試問の形式で、学位申請論文の内容と 以 下 に提 出 論 文 の要 旨と 審査 の内 容を 述べ る。

  

欧米 にお ける 健康 政策 の課 題は 、単 なる 健康状態の改善から、残存し続ける健康格差の解 消へと 転換 して おり 、歯 科公 衆衛 生の 分野 では地域間のう蝕格差の是正が主要な課題のひと っとな って いる 。日 本に おい ては 、こ れま で3 歳 児う 蝕有 病状 況の 地域 差が報告されている が,全 国の 市町 村を 同時 に比 較し た報 告は ない。日本では、市町村保健センターにおいて、

う蝕予防のためのフッ化物塗布や保健指導の事業が行われている。こうした公衆衛生事業が、

地域格 差に 影響 をし てい るの か検 討す るこ とは興味深い。本研究の目的は、全国の市町村保 健セン ター の歯 科保 健事 業の 頻度 と社 会背 景、 市町 村の

3

歳児 う蝕 有病 者率の関連を調べる ことである。

  

まず 、2000 年 の日 本の 全3 ,251 市町 村か ら3 歳 児う 蝕有 病者 率の デー タを集めた。人口の 少ない市町村におけるう蝕有病者率の変動を調整するため、経験的ベイズ推定値を算出した。

算出の 際に は、 う蝕 有病 者数 を確 率変 数の 実現値と考え、確率密度関数を二項分布とし、事 前分布 の確 率密 度関 数に べー タ分 布を 仮定 した。説明変数には、歯科健康教育とフッ化物塗 布事業 の年 間回 数、 およ び社 会背 景変 数を 用い 、目 的変 数とし て3 歳児 う蝕有病者率の経験 的ベイ ズ推 定値 を用 いて 重回 帰分 析を 行っ た。また、疾病地図を用いて地域差の観察を行っ た。

  

市町 村の

3

歳 児う蝕有病者率の平均は40.4 土14.2 %であった。経験的ベイズ推定値により、

人口の 少な い地 域における変動が抑制され、39.8 土10.O %となった。疾病地図により、3 歳児 う蝕有 病者 率に は地 域差 が存 在し 、関 東, 東海,近畿,山陽ではベイズ推定値が低い傾向に あり, 北海 道東 部, 東北 ,紀 伊半 島, 四国 南部,九州南部で高い傾向にあった。重回帰分析 の結果 、フ ッ化 物塗 布事 業の 頻度 は、 う蝕 を減少させる方向に有意に関連していたものの、

非常に弱い関連であった(偏相関係数: ‑0.116 ,p く0.001 )。歯科健康教育とは有意な関連が示 学 彦

     

英 保

田 野

森 佐

授 授

教 教

査 査

主 副

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さ れな かっ た。 行政 の歯 科医師 ・歯 科衛 生士の有無およぴ、開業医も含めた人口当たりの歯 科 医師 数に は有 意な 関連 は認め られ なか った。社会背景変数では、高学歴者の割合(大学卒 業以上)(偏相関係数=‑0.414 ,p くO.OOl )、第二次産業従事者の割合(偏相関係数=‑0.214 ,

p

くO.OOl )の増加がう蝕を減少させる方向に、合計特殊出生率(偏相関係数=0.216 ,p く0.001 ) の 増加 、失 業率(偏相関係数=0.190 ,p く0.001 )の増加がう蝕を増加させる方向に有意に関 連をしていた。重回帰分析に投入した変数により、う蝕の全分散のうちの39 %が説明できた。

そ の内 フッ 化物塗布事業の変数は、う蝕有病者率の分散を0.8 %説明していた。一方学歴の変 数 は26.0 % ,合計特殊出生率の変数は7.7 %を説明しており、う蝕に対する寄与が大きいこと が示された。

  

本研 究の 欠点 とし ては 、横断 研究 であ り因果関係が示されないこと、地域単位の解析であ り 個人 単位 の関 連が 分か らない こと 、使 用できる地域単位の説明変数に限りがあることが挙 げ られ る。 フッ 化物 塗布 事業の 影響 が小 さかった理由としては、保健行動の良好な者だけが 事 業を 受診 する ため 、う 蝕のり スク が高 いものが受診していないことや、すでにう蝕を持っ 者 が受 診す るこ とで 数字 上有病 者率 の減 少にはっながらないことなどが考えられる。歯科医 師 数の 関連 が弱 いこ とも 海外に おけ る報 告と同様であった。また、歯科保健事業の有意な関 連 が示 され なか った 。集 団の健 康の 改善 に、健康教育のみによることの限界は指摘されてお り 、よ り有 効な 介入 が望 まれる 。う 蝕と 社会背景との関連にっいては多くの先行研究で示さ れており、日本においても社会背景の大きな関連が示された。

  

今回 の研 究に より 、日 本の市 町村 ごと の3 歳児 う蝕 有病者 率に 大き な地域格差が存在する こ とが 明ら かに なっ た。 市町村 の3 歳児 う蝕 有病 者率 とフッ 化物 塗布 事業の頻度は、有意に 関 連し てい たも のの 臨床 的な有 効性 は示 されなかった。一方で社会背景変数の関連の方が強 いことが示された。

  

本論文 申請 者に 対し て、 主査 およ ぴ副 査からまず本論文の概要についての説明が求められ た 。続い て行 われ た口 頭試 問に おい て、 市町村の人口とう蝕有病者率に関連があるのか、保 育 園の園 児の 生活 習慣 はう 蝕と 関連 をす るのか、地域格差を解消するにはどうすればぃいの か 等、詳 細に わた って 行わ れた 。

  

申請者 はこ れら の設 問に 対し それ ぞれ 適切な回答を行った。従って申請者は研究の立案と 実 行、結 果の 成集 とそ の評 価に つい て、 十分な能カがあることが理解され、本研究に直接関 係 する事 項の みな らず 、予 防歯 科学 およ び疫学全般にわたり広い学識を有していると認めら れ た。ま た本 研究 は、 日本 全国 の市 町村 のう蝕有病者率を把握した貴重な資料であると同時 に 、分析 結果 は今 後の 日本 にお ける 地域 格差を解消する上での保健政策の方向性を示す重要 な もので あり 、歯 科領 域の みな らず 広く 一般の国民を対象に広報していくべき題材であり、

予 防歯科 学の 領域 にお いて 大い に貢 献し たと評価された。従って、本論文申請者は博士(歯

学 )にふ さわ しい もの と認 めら れた 。

参照

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