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博 士 ( 歯 学 ) 田 村

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Academic year: 2021

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博 士 ( 歯 学 ) 田 村    勉

     学位論文題名

Functional IVIagnetic Resonance 工 maging     of Human Jaw IVIovements

  fMRI による顎運動時の脳活動領域に関する研究 学 位 論 文 内 容 の 要 旨

【緒言】

  近年、ヒトの顎運動を解析することを目的として、positron enussion tomography(以 下PET)、xenon enhanced tomography(以下Xe一(汀)を用いた研究が行われるようにな っ た。し かし 、こ れら の装 置は 、放 射線被爆の問題から繰り返しの測定が困難であ り、時間分解能に劣るので経時的変化が計測できない。これに対し、functional magnetic resonance imaging( 以下fMRI)は、 非侵襲的であり、空間分解能に優れているとい う 優位性 を持 って いる 。こ のfMRIの 手法を用いて、脳活動と顎運動の関係を明らか にすることを目的として本研究を行った。

【被験者および方法】

  被験者 は、 神経 学的 、生 理学 的疾 病がなく、脳に構造的異常の認められない右利 き 男性ボ ランティア14名を選択した。被験者にtま予め実験内容を説明し、同意を得 た。.MR装置として、GE社製1‑5テスラSIGNA.H()RIZON LXとへッドコイルを用いた。

夕 スクと して 、ク レン チン グ( バイ トプレートを装着した随意最大噛みしめ)、ガ ム 咀嚼( ガム自由咀嚼)、夕ッピング(1秒間に約1回のタッピング)の3種類を行わ せ た。被 験者には、25秒の顎運動と25秒の休止を交互に5回繰り返すタスクを課し、

そ の間のMR画 像を 撮像 した 。撮 像ス ライ スは 、前 交連 と後 交連に 平行な8スライス と し、そ れぞ れに 対し て解 析を 行っ た;得られたデータからタスクの周期とMR信号 変 化 の 周 期 が 統 計 学 的 に 一 致 す る 領 域 を ク 口 ス コ リ レ ー ジ ョ ン 法 を 用 い て pく0.000001で抽出し、fMR画像とした。脳活動領域では、脳血流量が増加しOxy−Hb が 増加す ることにより、Blood oxygen level dependent (BOLD)効果が現れ、MR信号

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が大きくなることが知られており、この効果を用いて脳活動領域の視覚化を行った。

脳 の活 動領 域の部 位を 推定 する ため 、同じスライス面を撮影した解剖学的MR画像も 撮 影 し た 。 な お、 この 時fMRIで は、 被験 者の 動き がア ーチフ ァク トと なる ため 、 3.125X3.125X5 mmとい う比 較的 大き いポ クセ ルを 用い たが 、頭 部が0.5mm以上動い た デ ー タ に つ い て は フ リ ー ソ フ ト で あ るSPM96を 用 い て 、 除 外 し た 。   【結果】

  顎運 動時 には頭 部の 動揺 が生 じる ため 、fMR画像 の撮 像が 危惧 されたが、撮像時 に 、0.5mm以 上の 頭部 動揺 が感 知さ れた ために 削除 され たデ ータ は少なく、クレン チ ング10デ ー夕、 ガム 咀嚼10デ ー夕 、夕ッピング10データの計30データを解析する

;ことが可能であった。各々のタスクで3名づっ、別の日に同条件で撮影を行ったが、

その結果は、ほぼ同様であり実験の再現性が確認できた。

  得 ら れ たfMR画 像 の 各 ポ ク セ ル のMR信 号 変 化は 、運 動時にMR信 号が 増加 し、 安 静 時に 減少 する正 の相 関を 示す もの と、MR信号変化の周期は一致するものの、運動 時 に減 少し 、安静 時に 増加 する 負の 相関を示すものに区分することができた。BOLD 効 果の 内容 から、 脳活 動領 域の 変化 を示すポクセルは、顎運動と正の相関を示すボ ク セル のみ である と考 えら れる ため 、この領域のみを脳活動領域とした。また、負 の 相関 を示 すポク セル は、 クレ ンチ ング時に多く観察され、また、低いスライスで 多く観察された。

  3種類 の顎 運動 を負 荷し た時 、す ぺて の被験 者か ら8スラ イス のfMR画像データが 得 られ た。この8スライスの内で脳活動が観察された領域は、すべての被験者に共通

,して、クレンチングとタッピング時では、両側の運動野、感覚野、および前運動野 で あり 、ガ ム咀嚼 時で は両 側の 運動 野と感覚野のみであった。なお、ガム咀嚼とタ ッ ピン グ時 に比較 し、 クレ ンチ ング 時において、脳活動領域の広さは大きかった。

【考察】

  負の相関を示すポクセルは、クレンチング時に多く観察され、また、.低いスライ ス で多 く観 察され たこ とか ら、 側頭 筋と翼突筋により圧迫される翼突筋静脈叢に関 連 し た 血 管 の 血 流 の 減 少 を 表 し た ピ ク セ ル で あ る 可 能 性 が 考 え ら れ た 。   ガム 咀嚼時の脳活動領域の結果は、PETやXe・CTを使用して行われた報告とは異な っ てい た。運動野、感覚野での変化は共通するものの、PETやXe―CTで観察された補

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足運動野、視床、帯状回などの領域では、本実験において脳活動が認められなかっ た。PETやXeーcrは、ガム咀嚼後の血流増加領域を画像化し、抽出するのに対して、

fMRIは、運動の周期と運動中の血流変化に伴うMR信号変化の周期が一致している 領域を抽出している。これら測定法、解析法の違いにより、結果に差異が生じたと 考えられる。

  手指の運動時では、右側の運動では左側の運動野と感覚野に脳活動領域が認めら れるが、随意の顎運動時には、左右両側の運動野、前運動野と感覚野に、ガム咀嚼 では運動野と感覚野に活動領域が観察された。この差異の原因は、片側のみに咬合 カを負荷した場合でも、両側の咀嚼筋が活動していることと、片側の咀嚼筋の制御 を両側の大脳皮質の運動野と感覚野が行っていることから生じたと推察される。ま た、脳活動領域は、ガム咀嚼とタッピング時に比較してクレンチング時の領域が広 かった。ガム咀嚼、夕ッピングに比較し、クレンチングは、咬合カが大きく発揮で き、本実験では、随意最大クレンチングを行わせた。っまり、咬合カが増加するに っれて脳活動領域が広くなったと推察される。しかしながら、咬合カの増加と脳活 動領域の関係は、更なる検討が必要であろう。

  本実験において、すべての顎運動時に運動野と感覚野で活動がみられた.ことは、

過去のサルやネコでの動物実験でこれら領域が咀嚼を含む顎運動に関与していると いう結果と矛盾しない。さらに、舌や歯牙などの感覚器での口腔感覚情報が、感覚 野に入カされ顎運動の制御や食物性状の識別に使用されているという報告があり、

さらに運動野と感覚野をっなぐ繊維の存在が確認されていることから、これら2つの 領 域 は 密 接 に 関 わ り 、 顎 運 動 の 制 御 に 関 与 し て い る こ と が 推 察 さ れ る 。   ところが、前運動野の活動は、クレンチングとタッピング時には、観察されたも のの、ガム咀嚼時には観察されなかった。これには、両者の運動制御の相違が考え られる。咀嚼時においては、皮質下のバターンジェネレーターが下顎および舌の運 動のサイクル、パターンを制御していることが知られており、前運動野が顎運動の 制御に関与する必要性が低いための結果と考えられる。これに対し、クレンチング やタッピングなどの随意顎運動時は、前運動野による運動の統合制御が必要である と推察される。以上のことから、顎運動の中枢性制御は、運動の種類によって異な ることが示唆された。

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学位論文審査の要旨

     学位論文題名

Functional rvIagnetic Resonance Imaging     of Human Jaw IVlovements

fMRI

による顎 運動時の脳 活動領域に 関する研究

  

審査は、吉田および川崎審査委員による審査と赤池審査委員による審査の2 回行われ、論文提出者に対し提出論文の内容とそれに関連する学科目について 口頭試問によって行われた。以下に、提出論文の要旨と審査の内容を述べる。

  

咀嚼が脳を活性化させ、痴呆を予防できる可能性が示唆されているが、科学 的根拠に乏しい。この効果を明らかにするためには顎運動時の脳活動を解析す る必要性があるが、動物を対象とした研究は数多く行われているものの,ヒ卜 ではほとんど行われていない。そこで、論文提出者は、顎運動と脳活動の関係 を明らかにするために、非侵襲的であり、空間分解能、時間分解能に優れてい るfunctional magnetc resonance imaging(MRI冫の手法を用い、顎運動時の 脳活動について検討している。神経学的、生理学的疾病がなく、脳に構造的異 常の認められない右利き男性ポランティア14名を被験者とし、夕スクとして、

クレンチング(パイトプレートを装着した随意最大噛みしめ)、ガム咀嚼(ガ ム自由咀嚼)、夕ッピング(

1

秒間に約1回のタッピング)の3種類を行わせ、

その間の

MR

画像を得た。その時、アーチファクトを除くために1っに3.125

X3

.125X5mmとい う比較的大きなポクセルを使用し、2っめに同じタスクを5 回繰り返すポックスパラダイムを採用し、さらに、被験者の頭部の動きを評価 し、

0

.5mm以上動いた撮像はデータから除外した。これらの方法でアーチファ クトをI徐去し、夕スクとMR信号変化の周期をクロスコリレーション法を用い て統計学的に検定し、顎運動時の

MR

画像を得ることができた。得られた瓜皿 画像を構成する各ポクセルの信号変化を詳しく観察すると、運動時にMR信号 が増加し、安静時に減少する正の相関を示すものと、

MR

信号変化の周期は一 致するものの、運動時に減少し、安静時に増加する負の相関を示すものに区分 することができた。BOLD効果の内容から、脳活動領域の変化を示すポクセル は、顎運動と正の相関を示すポクセルのみであると考えられるため、この領域 のみを脳 活動領域とした。このfMR画像を構成する各ボクセルのMR信号変化 の観察と

MR

画像を解剖 学的MR画像と比 較推定することにより、顎運動時の

生 光

貴 重

崎 田

川 吉

授 授

教 教

査 査

主 副

(5)

脳活動領域が抽出でき、その結果は以下に示すものであった。3種類の顎運動 を 負荷した時 、すべての被験者から8スライスのfMR画像データが得られた。

この8スライスの内で脳活動が観察された領域は、すべての被験者に共通して、

クレンチングとタッピング時では、両側の運動野、感覚野、および前運動野で あり、ガム咀嚼時では両側の運動野と感覚野のみであった。なお、ガム咀嚼と タッピング時に比較し、クレンチング時において、脳活動領域の広さは大きか った。これらの結果から、以下のようにまとめられている。1.クレンチング時、

ガム咀嚼時、およびタッピング時すべてにおいて、fMR画像が得られた。2.す ぺての被験者において、クレンチング時およびタッピング時では、運動野、感 覚野、および前運動野に、ガム咀嚼時では、運動野、感覚野のみに脳活動が観 察された。3.これらから、随意的要素が大きい顎運動(クレンチング、夕ッピ ング)では、前運動野が運動を制御し、これに対して随意的要素の小さい顎運 動(ガム咀嚼)では、大脳皮質以外の脳幹を含む中枢が制御している可能性が 示唆された。

    次 いで、本論文提出者に対して、本研究領域に関係する専門分野(特に fMRIの原理、顎運動時の脳活動領域、研究の今後の発展性等)に関連のある質 問が行われたが、`これらの質問に対してそれぞれ適切な回答が得られた。また、

本研究は、顎運動が脳に対していかなる効果を有するかを解明する上で、有効 な解析法であると考えられ、今後様々な研究に応用される可能性を有している ことが評価された。さらに、本論文提出者は、口腔感覚と脳活動の実験も進め ており、口腔領域における運動、感覚と脳活動の関係を解明するという研究の 展望も評価された。本論文は、顎運動時の脳活動領域を主たる研究課題とする ものであったが、これらの領域の学識も十分であるとともに、将来の研究方向 についての展望も、研究の発展を期待できるものであった。以上のことから、

論文提出者の学識は、博士(歯学)に値するものと判断し、主査ならびに副査 は論文提出者を合格と判定した。

参照

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