B型およびC型慢性肝疾患における超音波像の検討
一病理組織学三所見と対比して一
東京女子医科大学 消化器内科学教室(主任 小幡 裕教授) モリ ヤ マ リ コ 森 屋 真 理 子 (受付 平成4年11月20日) Correlation between Parenchyma亘Echographic Pattem and Pathological Findings in Chronic L,iver Disease B and C Mariko MORIYA Department of Gastroenterology(D孟r㏄tor:Prof. Hiroshi OBATA) Tokyo Women’s Medical College We classified hepatic parenchymal echo patterns in patients with chronic liver disease types B and C into three types as follows: Pattern 1:almost homogeneous echo pattern. Pattern 2: reticular or nodular㏄ho pattern. Pattern 3: coarse echo pattern. The relationship between these three parenchyma1㏄ho patterns and etiology, stage of disease, and pathological findings三n resected liver specimens were investigated in 28 patients with chronic liver disease type B and 36 with type C.Sixty・eight percent(n=19)of type B pat孟ents showed Pattern 2, while Pattern 3 was dominant in type C disease. All cases of both type B and C at the anodular stage showed Pattern 1.After nodule fQrmation, all type B cases were Pattern 2. Pathological findings in these patients were characterized by macronodular formation with thin septa and minor inflammatory cell infiltration and regular borders. In contrast,68%(n=17)of type C cases with nodule formation showed Pattern 3. Pathological findings in Pattern 3 cases were characterized by sma重1 nodule formation and thick septa with numerous inflammatory cells and irregular borders. In conclusion, distinct parenchymal echo patterns in chronic liver disease type B and C become clearly distinguishable as the disease progresses. Parenchymal echo patterns seem to correlate well with the pathological findings. 緒 言 慢性肝疾患とくに肝硬変の超音波所見について は肝表面や辺縁の性状,内部エコー,・脈管の描出, 脾腫の程度など多方面からの報告がある.肝実質 像については最近B型肝硬変の超音波像の特徴 に関する検討がなされているが,B型慢性肝疾患 とC型慢性肝疾患の超音波像の相違についての 報告や,それを裏づける病理組織像と超音波像の 詳細を対比検討した報告嫁みられない.そこで著 者は,B型とC型の超音波所見の相違を明らかに し,更に両者の所見の差がどのような病理組織像 を反映しているのかについて切除標本を用いて検 討を行った. 対象および方法 1.対象症例 肝細胞癌切除例のうち1983年から1990年に切除Fig. l Three parenchymal echo pattems Pattem 1:almost homogeneous echo pattem, Pattem 2:reticular or nodular echo pattern. Patter皿3:coarse echo pattern. 術が施行されたB型慢性肝疾患合併例28例と, 1988年から1992年に切除されたC型慢性肝疾患 合併例36例である. 2.検討方法 対象例の超音波画像における非学部肝実質像を 下記のごとく3つのパターンに分類し,病因,病 期,および切除標本病理所見と対比検討した. 肝実質エコーのパターン分類は, 1型:ほぼ均一な内部エコーを呈するもの 2型:網目状ないし結節像を呈するもの 3型:粗い点状高エコーを呈するものとした (Fig.1). 1)病因別にみた肝実質パターン B型とC型の慢性肝疾患症例について肝実質 パターンの相違を検討した. 2)病期による肝実質パターンの差 両者を更に慢性肝炎ないし肝線維症と肝硬変 (甲■,甲,乙)とに分けて肝実質パターンを検討し た. 3)肝切除標本病理所見と肝実質パターン 両者の病理組織所見を検討し,偽小葉結節およ び間質の性状について肝実質パターンとの関連性 を検討した.なお,病理組織所見については下記 の条件を基準とした. (1)偽小葉結節の有無 無:偽小葉結節形成の認められないもの 有:完全に結節を形成しているもの,および間 質の線維隔壁が形成されているが結節の囲みが不 十分なもの (2)偽小葉結節の性状 a)偽小葉結節の大きさ
大:直径6mm以上
中:直径5mm以下
小:直径3mm以下
b)間質の幅 狭:狭いもの 広:広いもの c)間質の炎症細胞浸潤 無:殆ど無いかあっても僅かなもの 有:明らかに認められるもの d)実質と間質の境界 整:境界が整っているもの 不整:境界が不整となっているもの 3.統計処理 統計学的有意差検定はλ12検定を用い,p<0.05 をもって有意とした. 成績および結果 1.病因別にみた肝実質パターン B型では2型が19例67.9%と多数を占め,1型 は9例32.1%であり,3型は認められなかった.Type B 氏≠Q8 9 i32.1) 19 i67.9) i0.0) Type C 氏≠R6 17 i47.2) 2 i5,6) 17i47,2) (%) p〈0.001 Table 2 Re呈ationship between parenchymal echo pattern and stage of chronic liver disease Pattern 1 Pattern 2 Pattern 3
Type B CH∼F{b 9 2 0 n=11 (81.9) (18.1) (0.0) LC 0 17 0 n=17 (0.0) (100.0) (0.0) Type C CH∼Fib 11 0 0 n;11 (100.0) (0.0) (0.0) LC 6 2 17 n;25 (24,0) (8,0) (68.0) CH:chronic hepatitis Fib:丘brosis of the liver LC:Iiver cirrhosis (%) p<0.001 C型ではB型に比して3型が17例47.2%と多く, 2型は2例5.6%のみであった(Table 1). 2.病期による肝実質パターンの差 B型の慢性肝炎ないし肝線維症では,大部分が
1型を呈し9例81.9%を占めた.2型は2例
18.1%であった.肝硬変になると,17例全例が2 型を呈した.C型の慢性肝炎ないし肝線維症では 全例1型を呈した.肝硬変では3型が17例68.0% と多数を占めた(Table 2). 3.肝切除標本病理所見と肝実質パターン 1)偽小葉結節形成の有無 B型では,結節形成を認めない9症例は全例1 型を呈し,結節形成を認める19症例はすべて2型 を呈した.C型でも,結節形成を認めない11症例は 全例1型を呈した.結節形成を認める症例につい ては,1型が6症例24,0%,2型が2症例8.0%認 められたが,3型が17例68.0%と多くを占めた (Table 3).すなわち肝硬変か否かで分けるより も偽小葉が形成されつつある時期で分けた方が, Type B 皿 9 0 0 n=9 (100.0) (0.0) (0.0) 十 0 19 0 n=19 (0.0) (100.0) (0.0) Type C 一 11 0 0 n=11 (100.0) (0.0) (0.0) 十 6 2 17 n=25 (24.0) (8.0) (68,0) 一:no nodule formation 十:nodule formation (%) p<0.001 より肝実質パターンとの相関が明瞭であった. 2)偽小葉結節の性状 B型では2型の肝実質エコーを呈した19症例中 16症例84.2%が大結節型を呈し,他の3症例も大 小の偽小葉結節が混在し比較的大きな結節を主体 とした所見であった.また17症例89.4%で間質の 幅は狭く,炎症細胞浸潤は認めず,実質と間質の 境界は整であった.一方C型では1型および3型 には大結節を呈する症例は認めず,1型は全例小 結節であり,3型では小結節が7例41.1%,中小 混合が10例58.9%認められた.問質の幅は広く,1型は狭いものと広いものとがそれぞれ3例
50.0%ずつであったが,3型では17例全例が広 かった.炎症細胞浸潤は,1型は無いものが4例 66.7%と多いが,3型では有るものが14例82.4% 認められた.実質と間質の境界は,1型では整が 4例66.7%であるが,3型では不整が12例70.6% を占めた.2型を呈した2症例は,大結節例と中 小結節混合例で,結節が大きな点ではB型で2型 を呈した症例と類似していたが,間質の幅は広く炎症細胞浸潤が認められる点で異なっていた
(Table 4, Fig,2), 考 察 Bモード超音波検査装置の分解能の向上に伴っ て肝内部エコー像の検討が行われるようになり, 1986年Freemanら1)により超音波検査にて病理 組織と対応したびまん性の結節像が得られること や,結節周囲のhigh echoは線維性の間質であるTable 4 Histological findings of chronic liver disease 1n patients with nodule formation Type B Type C Histological丘ndings Pattern 2 @n=19 Pattern l @ n=6 Pattern 2 @ n=2 Pattern 3 @n=17 large rize of small nodule @ mixed 16(84.2) O(0.0) R(15.8)a 0(0.0) U(100) O(0.0) 1(50.0) O(0.0) P(50.0)b 0(0.0) V(41.4) P0(58.9)b thin @ mixed 17(89.5) O(0.0) Q(10.5) 3(50.0) R(50.0) O(⑪,0) 0(0.0) Q(100) O(0.0) 0(0.0) P7(100) O(0.0) InHammatory − @ cells in septa + 17(89.5) Q(10,5) 4(66.7) Q(33.3) 0(0.0) Q(100) 3(17.6) P4(82.4) Borders regular
kpa「欝ma〕翻・・
17(89.5) O(0.0) Q(10.5) 4(66.7) Q(33.3) O(0.0) 1(50.0) P(50.0) O(0.0) 5(29.4) P2(70.6) O(0.0) Size of nodule large :6mm≦ medium=3mm<,5mm≧ small :3mm≧ a:large and small mix b:medium and small mix (%) pく0.05 ことが初めて報告された.また木村ら2)によって 低エコー結節は肝硬変の再生結節(偽小葉結節) に基づくものであることが報告された.一方B型 肝硬変に認められる特徴的な肝実質エコーは,ウ ロコ状パターン3>,メッシュ・パターン4),粗大斑 状像5)などと報告されている.著者らも,B型慢性 肝疾患の肝実質像が斑状のヌケまたは大小の結節 像を呈することを既に報告した6)が,これらはい ずれも本検討の2型に相当する像である.今回は更にB型慢性肝疾患とC型慢性肝疾患の肝実質
エコーの差を検討し,肝切除標本との対比により, 超音波像の裏づけとなる病理所見を明らかにし た.1.B型とC型の超音波像の差
偽小葉結節を認めない時期にはB型C型とも
に肝実質エコーはほぼ均一で差はみられなかっ た.しかし結節形成が認められるようになるとB 型は全例網目状ないし結節像を示し,C型は約 70%が粗い点状エコー像を呈したことより,超音 波画像上での両者の鑑別診断は充分可能と考えら れた.ただしC型にはB型類似の結節像を示すも のが8%あり,これらについての鑑別診断は困難 と考えられた. 更にこれまでの報告では,B型の肝硬変症にお いて特徴的な肝実質像を生じるとされているが, 今回の検討では慢性肝炎でも偽小葉結節が形成さ れつつある時期になると,すでに網目状ないし結 節状の肝実質エコーを呈することが明らかとなっ た.一方C型では,結節形式の明瞭な時期でも, 屏実質エコーは均一に見える症例が約1/4あり,内 部エコーのみでは結節形成が認められない時期と の区別がつかない症例もあることが判明した. 2.B型とC型の超音波像と病理組織所見 B型の偽小葉結節形成を認める時期の病理組織 像には,偽小葉が大結節型で間質の幅が狭いma・ cronodular thin septalで,間質の炎症細胞浸潤は 少なく実質と間質の境界は整っているという特徴 が認められ,本所見が音響学的な差として反映さ れ網目状ないし結節状のエコー像(2型)を形成 するものと考えられた.一方C型で偽小葉結節を 認める時期の病理組織像では,偽小葉の大きさが 中ないし小結節であり,間質の幅は広く,炎症細 胞浸潤を伴い,実質問質境界が不整であるという 明らかにB型とは相反する所見が認あられた.そPattern 1 i》Ilttem 2 Pattern 3 Fig.2 Histological findings of three parenchymal echo patterns として描出され,C型に特徴的な肝実質像となる ものと考えられた.これらの結果を諸家の報告と 比較すると,木村ら2)の検討では,実質パターンと 組織上の結節の大きさとの間に有意差は認められ ず,中島ら5)も,線維占拠率の程度とエコー像の粗 密との関係は無かったとしている.また,木村ら2) および石川ら7)は,超音波画像上の結節が大きい ほど組織における間質の幅が広いと報告してお り,いずれも著者とは一致しない.また石川ら7)は 炎症細胞浸潤と肝実質パターンとの間に有意差は なかったとしているが,本検討では,間質の炎症 細胞浸潤の多寡や実質と間質の境界の整・不整と いう要素も超音波像の差を生じる一因になると考 えられた.肝硬変は肝全体にびまん性変化を生じ る疾患と定義されるが実際に切除標本をみると偽 小葉結節の形成および性状は場所によってかなり 差が認められる.従ってこれらの結果の相違は, 著者の切除標本による検討と,諸家の生検標本や 腹腔鏡による肝表面の観察所見による検討との差 がその一因として考えられた.また,本検討の対 象例がすべて肝細胞癌を合併した時点の慢性肝疾 患であり,時期的な要因も関与している可能性が あった. 以上よりB型とC型慢性肝疾患の進行に伴っ て,各々の超音波肝実質像には明らかな差が認め られるようになり,それらは病理組織学的に偽小 葉結節の大きさと間質の性状の差を反映している ものと考えられた. 結 語 1.B型およびC型慢性肝疾患の超音波肝実質 像を3パターンに分類し,病因,病期,切除標本 病理所見と対比した. 2.病因ではB型に2型の肝実質像を呈するも のが多くC型に3型の肝実質像を呈するものが 多かった. 3.病期では,慢性肝炎ないし肝線維症ではB 型C型ともに1型が多く,肝硬変になるとB型で は2型,C型では3型の肝実質像が多くみられた.
4.病理組織像で偽小葉形成が見られない時期 にはB型C型いずれも1型を呈した. 5.偽小葉結節形成を認める症例ではB型は2 型の肝実質像を呈し,.その組織所見は,偽小葉が 大きく間質の幅は狭く炎症細胞浸潤が少なく実質 問質境界は整という特微が認められた.一方C型 の多くは3型を示し,偽小葉が中ないし小結節で あり,間質の幅は広く炎症細胞浸潤を伴い実質問 質境界が不整であった. 結 論