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業績管理のための共通費の配分 : 公平性と動機づけをめぐって

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(1)

滋賀大学経済学部研究叢書第

3

7

業績管理のための共通費の配分

一公平性と動機づけをめぐって一

誠 著

(2)

滋賀大学経済学部研究叢書第

3

7

業績管理のための共通費の配分

一公平性と動機づけをめぐって一

誠 著

(3)

は し が き

管理会計は、各時代のニーズに答えて、改良、発展を遂げてきた。グローパル 化、新しい有機的組織の出現、工場の生産技術の進歩、競争の激化といった環境 の変化に対応して、業績管理会計は革新を迫られている。基本的には業績管理会 計は戦略の実施プロセスであるマネジメント・コントロールを行うためのシステ ムである。近年では、業績評価だけではなく、対話を引き起こし組織学習を促進 したり、戦略を創発する機能が注目されている。 本書で扱う共通費あるいは間接費の配分の問題はさまざまな形で繰り返し議論 されてきた古くて新しい研究テーマである。 まず最初に、共通費とは何か、卑近な例で説明しておくことにしよう。 今、企業に就職した先輩が大学の後輩二人を連れて三人て。回転寿司へ行ったと する。食べた寿司については、各人が食べた分は、皿の種類と数で正確に把握で きる。しかし、三人で飲んだ二本のビールについては、お互いにコップに注ぎあっ たので、どれだけ誰が飲んだか不明であるとしよう。この場合、コストの発生原 因が明確で、各人の消費額に応じてコストを負担させられる寿司代は直接費あるい は個別費であり、誰がどれだけ飲んだか不明なビール代は間接費あるいは共通費 にあたる。ここで、どのように寿司代とビール代を負担するかが問題になる。社 会人である先輩はボーナスが出たところなので、学生の身分の後輩の分もすべて 負担するということで合意が成立するかもしれないし、社会人になったばかりで 給料も安いということで最初からすべての費用を3等分するということで合意が 成立することもあろう。問題なのは合意が容易に成立しない場合であるo このよ うなコストの配分に伴うコンフリクトが存在する時、その解決策を提示すること (利害調整)が原価配分の一つの重要な機能である。 管理会計に話を戻そう。今、ここに事業部制をとっている企業があるとする。 本社費の額が大きい場合、配分方法次第で、各事業部の業績は大幅に変化する。

A

事業部でリストラや敷地の削減があったとしよう。もし本社費が人員や敷地面 積の比で配分されているとすれば、 B事業部は、 A事業部への配分が少なくなっ

(4)

た分、多くの本社費を負担することになる。このような配分基準には問題はない だろうか。製品の価格決定の場合も間接費の配分が問題となる。伝統的な操業度 関連の基準(直接作業時間や機械運転時間)で間接費を製品に配分すると、大量 生産品が製造支援活動のコストを多めに負担することになる。製造原価の正確な 計算はできず、利益の出ない製品を沢山生産してしまうという恐れがある。 製品の収益性や価格決定の問題は、正確なコストを計算するという原価計算の 機能に関する問題であるが、寿司屋の例や事業部の業績評価については、コスト を公平に配分することの方が重要になる。「公平な配分」によって逆機能的行動を 抑制し、モチベーションを高揚することができるからである。さらに、より積極 的に組織メンバーの行動に影響を与え現実を変えるために原価配分を利用する場 合さえある。岡野浩教授は、これを「築像

J

と呼ぶ(岡野 (1995))。例えば、製 品の表面積あるいは重量に応じて製造間接費を各製品に配賦することで、より小 さな製品を設計・生産するインセンティブを与える場合がこれである。 小林哲夫教授の言葉を拝借すれば、原価計算の機能には「コスト・ビへイビア を正確に写像する」という機能と「利害調整をする

J

r

組織メンバーの行動に影響 を与える

J

という機能があり、これらは区別きれるべきである(小林 (1983))。 このうち筆者の研究の焦点は後者の機能にある。筆者の最終的な目的としては、 組織メンバーを組織目的に貢献するよう動機づけるためにより優れた業績管理会 計システムを構築することをめざしている。 業績管理会計において共通費・間接費の配分が重要な課題になるのは、独立的 業績測定や評価の公平性が損なわれる可能性があるからである。業績測定は、各 管理責任単位毎に与えられた目標をどれだけ達成したかだけではなく、組織の全 体目的の達成にどれだけ貢献したかということもみなければならない。さらに、 最初に設定した目標や計画が不適切で、あった場合の結果の解釈、他の管理責任単 位の行動や外部の環境要因によって生じた影響のうちどこまでを当該責任単位の 業績とすべきかを、組織メンバーの動機づけを考慮、しつつ決定することも重要課 題となる。これが「公平な業績評価jの問題であり、公平な業績評価を行うため の前提条件の1つが「共通費の公平な配分」である。

(5)

筆者が共通費の配分の問題に興味をもったきっかけは、滋賀大学入学当初、玉 木輿乗先生の経済原論の講義を受講し、

Samuelson

Economics

を読み、「成 果分配の公正とは何か?

J

という問題に大いに興味を惹かれたことに端を発する。 姥木賓先生、小倉栄一郎先生のゼミナールで会計学に触れ、会計学上の財務的業 績評価に基づいた成果分配こそが客観的で、公平で、あろうと考えた。 小林健吾先生の授業において業績管理会計という分野があることを知り、神戸 大学の小林哲夫先生の門を叩き、管理会計を学ぴ始めたが、「そのうち会計数値が 如何に不完全なものであるかがわかるよ j と言われ惇然とする。 その後、特に、共通費・間接費の配分が恋意的な計算の元凶であり、古くから 重大な問題であること、そして原価配分自体がある種のインセンティブとして機 能しうることを知ったことが、筆者がコントロール・ツールとしての原価配分に 興味を持つに至った理由である。組織構成員に逆機能的行動を取らせないための 「公平な配分とは何か」という問題を探究したいと,思ったのである。かくして、 成果分配から原価配分へテーマは移行したものの、振替価格の理論やシャプレイ 値を思い起こせばわかるように、両者は表裏の関係にあり、公正・公平性の追究 という点では何ら変わることはない。 業績管理会計の諸問題は今日までの筆者の研究領域であり、修士論文では管理 会計情報と最適なインセンティブ・スキームについて言及している。博士後期課 程では、小林教授、谷教授の研究に触発され、「本社費・共通費の配賦jというテー マに取り組むことになった。その後の筆者の研究は、マネジメント・コントロー ル・システムの研究、管理会計の国際比較研究、分社制の研究へと拡大すること になる。 「小林哲夫先生の通った後は草もはえていない

J

ということを兄弟子浅田孝幸 教授がおっしゃっていたが、それでも取り残しのある雑草を探して育てようと苦 労したのが本書の原論文である。 本書の原論文の作成に際しては、神戸大学大学院時代の指導教官 小林哲夫先 生の御研究の一部を引用、解釈、発展させた部分、あるいは神戸大学の谷武幸先 生の御研究や筑波大学大学院 小倉昇先生の御研究を参考にさせていただき私な りに解釈発展させた部分が少なくない。大学院時代以来、神戸大学管理会計研究

(6)

会の溝口一雄先生、両頭正明先生、浅田孝幸先生、加登豊先生、古田隆紀先生、 岡野憲治先生、小田切純子先生、滋賀大学の後藤寅男先生を始めとして数多くの 先生から助言、アイデアをいただいた。心から感謝申し上げたい。

(7)

目 次

はしがき 第

I

部 共 通 費 配 賦 論 の 基 礎 … 序章・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3 第

1

節原価配分論の展開………・……...・H ・..………...・H ・..…

.

.

3

第2節研究目的と研究概要…・…...・H ・....・…...・H ・-…...・H ・...・H ・...・H ・9 第

3

節 結ぴ・……・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

1

5

第1章 日米の実態調査………...・H ・..………...・H ・H ・H ・..19 第1節はじめに………...・H ・...・H・...・H ・...・H ・..………19 第2節 共通費・間接費の配分基準とその問題点………...・H ・..………19 第3節 共通費配分の実務…....・H・...・H ・-・……...・H・..…...・H ・...・H ・..…..24 第4節 業績管理のための原価配分………....・H ・..………...・H ・...33 第5節結び…………....・H ・..……...・H ・..…...・H ・...……...・H ・...…….39 第

I

I

部 業 績 管 理 の た め の コ ス ト ・ ア ロ ケ ー シ ョ ン … ・ … … ・ …H・H・...43 第2章相互満足的配分……...・H ・..……...・H ・...・H ・..…………H ・H ・...・H ・-….45 第I節はじめに...・H ・..…...・H ・..………...・H ・...・H ・H ・H ・..………45 第2節 配 分 方 法 の 変 遷 … … … …H ・H ・-…H ・H ・..…...・H ・....・H ・...…...・H ・.46 第3節 コア概念とゲーム論的思考...・H ・..………...・H ・..…………

5

5

第4節 シャプレイ値による配分……...・H ・..…...・H ・..………...・H ・..58 第5節結び………...・H ・..…...・H ・..…...・H ・..………...・H ・..61 第3章 交渉力による共通費の配賦・・・H ・H ・..…...・H ・..………...・H ・H ・H ・..…….65

(8)

1

節はじめに……...・H ・..………...・H ・H ・H ・..…………...・H ・..……

6

5

2

節会計とパワー……….,.・H・..………...・H・..………

6

5

3

節交渉力に応じた配分...・H ・H ・H ・..………...・H ・H ・H ・..………

7

3

第4節結び…...・H ・..…...・H ・..………...・H ・..……...・H ・..…83 第

4

章原価配分における公平性…………...・H ・...・H ・H ・H ・..…...・H ・..………

8

7

1

節はじめに...・H ・..………...・H ・H ・H ・..………...・H ・..…………

8

7

2

Thomas

によるコスト・アロケーションの公平性………

9

1

3

Hamlen

らによる公平なコスト・アロケーション……...・H ・..…

1

0

4

4

節結び……...・H ・..………...・H ・...・H ・..……….,.・H ・..…

.

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.

1

1

1

第田部 責任会計とマネジメント・コントロール・...・H ・-……...・H ・

.

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1

1

7

5

章 責 任 会 計 と 原 価 配 分 … … …H ・H ・...・H ・....・H ・...・H ・....・H ・-…………

1

1

9

1

節はじめに………...・H ・..…...・H ・..………...・H ・H ・H ・..……

1

1

9

第2節 大学組織における共通費の配分の事例……...・H・..………...・H ・

.

.

1

1

9

第3節 共通費配分ベース選択基準…...・H ・...・H ・H ・H ・..…….,.・H ・..……

1

2

1

4

節 配分ベース選択モデルのプロセス...・H ・..………...・H ・..…………

1

2

6

第5節 業績管理システムとしての有効性……….,.・H ・..……

1

2

7

第6節 強化理論ないし条件づけ理論の立場からみたモデルの特徴……

1

3

0

第7節結び……...・H ・………...・H ・...・H ・...・H ・-………....・H ・-…

.

.

1

3

2

第6章 管理可能性原則の意義とその適用……..,・H ・..…...・H ・..…...・H ・..…

1

3

5

第l節はじめに...・H ・H・H ・..…...・H ・..…...・H・.,…...・H ・..…...・H ・..………

1

3

5

2

節業績管理会計と管理可能性原則………・…・……H ・H ・-……...・H ・

1

3

6

3

節管理可能性原則の国際比較………...・H・...・H・..……

1

3

9

4

M

e

r

c

h

a

n

t

による管理可能性原則の適用に関する実態調査……

1

4

0

5

節 目本のコントロール・システムの特徴………...・H ・..………

1

5

0

6

節結び…...・H ・..………'"・H ・..………...・H ・..…………...・H・..………

1

5

3

(9)

7

章 業 績 評 価 と

ABC

……...・H ・..………...・H ・..………

1

5

9

1

節はじめに………

1

5

9

第2節責任会計の変貌と管理可能性原則....・H ・-…....・H ・..…・…H ・H ・

.

.

.

.

1

5

9

3

McNail

によるアクティビティー・ベイスト責任会計

(ABRA) 1

6

4

4

節 目米のコントロールの相違と責任会計………...・H ・..………

1

6

8

5

節結び………...・H ・..…・………...・H ・..……・・

1

7

2

おわりに…...・H ・..………...・H ・..………...・H ・..177 補論…・

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1

8

1

前川製作所と

T

社の事例...・H ・H・H ・..…………...・H ・..……...・H ・..………

1

8

5

参考文献

(10)
(11)

3

序章

1

節 原 価 配 分 論 の 展 開

まず最初に、 Scapens,et a

1

.

(1991)やAtkinson(1987)を参考に原価配分論 の歴史的展開について語ることにしたい。その後、筆者が特に興味がある範囲を 限定し、本書で「共通費の配賦jというテーマをとりあげる理由と研究課題を示 すことにするo 1.配分肯定論と否定論 原価配分が問題になった背景について、 Scapens

et a

.

1

(1991)では、 SoIomons (1952)、Brummet (1957)等の研究に基づき以下のように述べている。 原価配分が初めて重要な問題になったのは、 19世紀後半である。その当時、事業は ますます複雑化、大規模化した。鉄道業や工業の発展に伴い、巨額の設備投資が行わ れるようになったことが間接費の増大をもたらし、その配分は無視できないものと なった。生産活動の複雑化につれて、監視、プランニング、コントロール、調整等の 管理活動の増加も間接費の増大につながった。また、意思決定目的を達成するために、 単位原価の測定が必要とされ、数々の原価配分方法が工夫された。 要するに、設備投資に伴い間接費が増大したために配分の問題は回避できなく なったということである。ここで重要なことは、配分される原価の種類とレベル (結合原価、補助部門費等)、配分目的や配分状況を分類した上で、配分の是否を 議論すべきであるということである。では、どのような配分が望ましいのだろう か。 配分否定論者は、恋意的な配分が重大な問題を引き起こすと主張してきた。 例えば、 Thomas(1969)(1974)では、恋意的であるという理由で配分に否定 的立場がとられている。それでも彼は、配分を行わざるをえない場合、理論的に

(12)

4 第I部 共 通 費 配 賦 論 の 基 礎 正当な配分スキームとして、加算的であること、配分の理論的根拠があること、 正確に計算できることを必要条件としている。 しかし、

S

c

a

p

e

n

se

t

a

.l(1

9

9

1)によれば、エコノミストは

1

9

3

0

年代には、原価 配分の恋意的な性格を認識し、

1

9

5

0

年代には間接費の配分は誤解を招くと主張し ているという。 また

A

t

k

i

n

s

o

n(

1

9

8

7)では、

1

9

3

0

年代のアカデミックな論争において、機会原 価や限界費用の概念のような経済的意思決定の視点によってかなり影響を受けた 数々のモデルが生み出きれてきたという。しかし

A

t

k

i

n

s

o

n

は、経済学説は原価 配分に役に立たないと指摘しているo 他方、配分に肯定的立場をとる場合には、後述のように望ましい配分の特性と は何かを論じることになる。 2.原価配分のプロセス研究と相互満足的配分 伝統的原価配分のプロセスには3つの側面がある。すなわち、①原価対象(製 品やセグメント)の選択、②配分すべき原価項目ないし範聞の選択と集計、③原 価対象と配分される原価を関係づけるための配分ベースの選択である。配分が恋 意的であると言われないためには、この「配分ベース」を選択するにあたって納 得のいく理論が必要になる。つまり議論の

1

つの焦点は配分基準(配分ベース選 択基準)にある(これについては、第

1

章で説明する)。

H

o

r

n

g

r

e

n

は配分基準のうち「因果関係」が基本的原則で、「公平性」が最も望 ましい基準であり、会計学研究者は「中立性

J

を満たす原価配分スキームに最も 注目してきたという。 また、配分問題を論じる場合には配分のレベルに注意すべきである。たとえば 「結合原価の配分」と「補助部門費の配分」とは区別して論じられることが多い。 補助部門費の配分方法としては、直接法、階梯式配賦法、相互配賦法がよくとり あげられている。直接法は、サービス部門の総費用を製造部門に直接に配分する が、サービス部門聞のサービスのやりとりは無視きれる。他方、階梯式配分法で は、サービス部門費は、製造部門ばかりでなくサービス部門へも配分きれ、サー ビス部門へ配分された費用は、最終的に製造部門へ配分される。しかし、複数の

(13)

序 章 5 サービス部門間で同時に行われるサービスの相互的なやりとりは考慮されていな い。この点を計算に反映しようとしているのが、相互配賦法である。 Scapens等によれば、これらのいずれも弱点をもっ。第1に、意思決定目的の ためには、共通サービスの利用者は、そのサービスを利用する機会原価のみを負 担させられるべきであるという立場に立てば、直接法と階梯式配分法は平均原価 を算定し、必ずしも機会原価を反映しない。第

2

に、売上高、全部原価のような アクティビティー尺度の使用は全社的利益の極大化へ導かない。そこで、機会原 価を反映しようとしているのが規範的モデルである。 例えば、第2章でとりあげる Moriarity (1975)は、あるサービスを内部と外 部、どちらからでも調達可能な場合に、共同サービスの利用により発生する節約 額を分配することによって管理者を内部サービスを利用するように動機づける配 分スキームを考案した。これに対して Louderback (1976)は、 Moriarityモデ ルがある部門に負の共通費の配分を行うことがあることから、これを修正した。 彼のモデルでは、部門にチャージきれる総費用は、内部でサービスを調達する増 分原価以上であり、かつ、外部からそれを調達する増分原価よりも小さくなって いる。 このようなアプローチは、 1970年代末にゲーム理論のアプローチを利用するこ とによってさらに拡張された。すなわち、原価配分は、全社的利益を極大化する ような動機づけ効果をもつことが望ましいが、それ以外の特性、すなわち中立性、 公平性、協力的行動、効率性といった特性をもっ配分スキームが提案きれてきた。 ただし、 Scapensらによれば、配分スキームは、協力ゲームの状況や、原価関数、 特性関数、因果配列等について、利害関係者間に共通の理解、そして利用者の数 学的素養を必要とする。これが理論上は優れていても実務では簡便な配分方法の 方が使用きれることがある理由の

1

つである。なお、筆者がみたところでは、若 干の例外として、水資源の共同設備費用の配分がシャプレイ配分になっている ケース、米国における電話料金システムのケースが存在する。以上の研究に続き、 一連のいわゆる「相互満足的配分」の研究が現れた。

(14)

6 第I部 共 通 費 配 賦 論 の 基 礎 3.エイジェンシ一理論によるアプローチ 1970年代には、規範的モデルを展開するノーマティブなアプローチよりも、観 察きれた管理会計実務を記述し説明するポジティブなアプローチの導入がみられ るようになった。本書では割愛するが、 Zimmermanのモデルはこの一例である。 Zimmerman (1979)は、理論上、共通費の配分に対する批判があるにもかかわら ず、実務上配分が行われている理由をエイジェンシー・モデルにより説明した。 管理会計上のエイジェンシー・モデルでは、上司であるプリンシパルが部下であ るエイジェントに意思決定権限を委譲し、エイジェント (A)がプリンシパル (p) の望んでいるような行動を選択するようにエイジェントに結果に応じて報酬を与 えるという状況を想定している。モデルの特徴は、①

P

A

の行動を観察できな いこと、②AとPとの選好に関するコンフリクトを想定していることにある。 A は、自分自身の厚生を改善するために

P

の利益極大化をもたらさないような意思 決定をするかもしれない。そこで共通費の配分方法を操作することで、

A

の業績 評価値さらには報酬に影響を与えることによりAによる逆機能的行動をコント ロールすることが必要になる。 Zimmerman (1979)は、エイジェンシ一理論に基づき、配分の役割を事業部長 (A)が委ねられた資金を個人的目的達成のために消費するのを制限すること、 逆に、事業部長が上司(p) による役得の消費を監視する効果があるためと説明 している。 また Demski (1981)では、ゲーム論的アプローチを批判し、エイジェンシー のフレームワークの中で、いくつかの限定された状況下で共通費の配分方法とイ ンセンティブ・スキームを変化させて、目標への一致がもたらされる条件を説明 しようと試みている。 4.原価配分の実務 以上のようなアカデミックな研究に対して、実務を調査した研究がいくつかあ る。その一部は、第I章第3節で議論するが、たとえば、Fremgenand Liao (1985) では、

u

.

s

.

調査企業のうち84%で、主要なプロフィットセンターへ本社共通費 が配分されていたことが指摘されているo その配分理由は、共通費配分額以上の

(15)

序 章 7 利益をあげなければならないことをプロフィット・センター管理者に知覚させる ためであった。また、本社サービスのコストの抑制、本社サービスの利用の促進、 税金の削減などの理由もある。別の調査では、配分は意思決定と業績評価を歪め るので利用されていないという。日本での実態調査については、後述の神戸大学 管理会計研究会 (1986)による研究が有名である。 なお、配分方法に関する調査の数学的原価配分方法は実務では使用きれていな い。むしろ、理解しやすい簡便法が使用されてきた。ところが、間接費の額が無 視できないほど大きくなってきたことから、恋意的な配分は深刻な問題となり、 正確な原価計算の技法として ABCが出現することになる。その後、 ABCから 得られた情報を基にしてプロセスの改善やコストを削減する ABMへの発展が みられた。とはいえ、 ABCではすべての間接費を特定の活動に関係づけることは できないと仮定している。さらに、 ABCでは営業単位問、営業とサービス職能聞 の協力関係を仮定し、配分プロセスにおけるコンフリクトはないと仮定している 点にも注意したい。また、 ABCの提唱者は、なぜ実務で簡便な原価配分方法が好 まれているかを説明しょっと試みていない。これらは ABCを実務に適用しよう とする際の課題となるo 樫井道晴教授によれば、日本企業では特定製品の収益性の向上よりも原価企画 のような技法による製品系列別、長期的継続的原価引き下げ努力が重視されてき たために、 ABCは必ずしも必要で、はないという。生産管理におけるような原価改 善が行われてきたことからもこう言えよう。しかし、山本浩二教授らの実態調査 によれば、日本でも ABCに近い計算が行われているケースは存在している。

5

.

政策的側面 最後に、本書ではとりあげないが、政府契約に関する交渉と価格決定という側 面について一言触れておきたい。 Mirghani & Scapens (1991)によれば、軍需物資の場合、それらがユニークな 特性をもち競争市場が存在しないために、契約価格に特別な関心を引き起こし、 結局、共通費を配分するためにさまざまな国家の政府によって計算規則が設定さ れたという。

(16)

8 第I部共通費配賦論の基礎 U. S.においては、 CASBが設置され、商的契約と防衛契約の両方のための共 通費の配分は、 CASBの設置につながる一大要因であったという。 CASBはもは や存在しないけれども、その内容は連邦政府契約に法的効果をもち続けているo U.K.においても、政府契約についての価格設定にずっと関心がもたれてきた。 歴史的には、国防契約に関して価格を高〈設定し過ぎるという状況がよくあった し、利益の過大な発生も広く実証きれているというo これらのケースにおいて、 共通費配分の暖昧性は重大な意味をもっている。このような諸問題に直面して、 二度にわたる世界大戦中に軍需物資の価格が合理的で、公正で、あるように、政府は 規則と会計基準を制定した。共通費配分のための規則や標準もこれらの規定に含 まれていた。 以上のように、原価配分の研究については、いくつかの展開がみられた。 他方、 Atkinson(1987) は会計学の範囲に限定せず、広範な文献レビューや実 務の観察に基づき、以下のようなさまざまな学問分野で原価配分に多様な役割が 期待されていることを指摘している。 【学問分野と役割】 管理論…行動に影響し、管理者の業績を評価し、経済的実行可能性を評価すること。 経済学…複雑な環境を分析するためにコスト・シグナルを提供すること。 行政…社会的厚生に対するコストの回収の負のインパクトを最小化すること。 ゲーム理論…行動の分配的、戦略的公理を満足させること。 社会心理学…平等、公平性の問題を解決すること。 税制…公平性、中立性、効率性の条件にあわせること。 会計学(管理:外部報告のため、およびコスト回収のための議論もみよ)基準を提供 すること。 Atkinson (1987)p.3

(17)

序 章 9 第

2

節 研 究 目 的 と 研 究 概 要

1.問題の所在 (1) なぜ、共通費、間接費の配分なのか 共通費・間接費の配分は、古くから管理会計だけに限定きれない広範な学問領 域において研究されてきた。米国の代表的なテキストブックでも、共通費の配分 は必ず取り上げられている重要テーマであるo ただし、その内容は、「部門共通費 の部門別配分

J

r

製造間接費の製品別配分

J

r

連産品の結合原価の配分」等さまざ まな形で、配分される原価の範囲、配分ベースの選択の決定について議論が重ね られてきた。そのほとんどは「配分方法の説明」であった。 会計学において、共通費・間接費の配分が問題とされてきた理由は、恋意的な 間接費の配分計算が不正確な損益計算の原因になるからであり、製品の収益性の 不正確な計算は誤った意思決定をもたらし、不公平な配分は逆機能的行動を引き 起こす可能性があるからであった。これらの問題を解決するために、どのような 配分方法が最善であるのかを検討しなければならない。その際、共通費の種類、 レベル(製造間接費か部門共通費か等)、配分目的、状況に応じて議論すべきであ る。 このテーマに関わる研究が比較的盛んに行われたのは、1990年以前である。1970 年から1990年の聞に出版された体系的な研究書あるいはレビュー論文としては、 例えば、 Thomas(1969、1974)、Vancil(1978、1979)、Wells(1978)、Moriarity

(1981)、 Fremgenand Liao (1981)、Ayres(1985)、Young(1985)、Atkinson (1987)等をあげることができる。これらを繕解けば、実に多様な観点から各々 の時代の要請に応じて配分の問題が論じられてきたことを伺い知ることができ る。 たとえば、前節でも指摘したように、 Atkinsonの著書では、配分の問題は会計 学以外の広範な分野においても展開きれていることが指摘されている。配分論は 極めて学際的なのである。また、 Thomas(1969、1974)は、財務会計・管理会計 の広範な目的にわたる「恋意的な配分」について議論している。 Vancil(1978、 1979)、Fremgenand Liao (1981)は、後に言及するように、実態調査とその結

(18)

10 第I部 共 通 費 配 賦 論 の 基 礎 呆について検討している。 Young (1985)は、数理的アプローチによる純粋理論 的な分析を行っている。 Wells(1978)は、間接費の配分否定論の立場から、文献 研究による原価計算の歴史的考察を行っている。 1980年代に提唱され急速に普及したアクティビティー・ベイスト・コステイン グ

(

A

B

C

)

も、正確な製品原価を計算するために間接費を正確に配分するという 目的から始まったことを思い起こせば、このテーマの延長線上にあると言うこと もできる。しかし

ABC

は、先端的な製造技術の出現に伴う間接費の増大という 時代の要請に応じて発生してきたのであり、その後、アクティビティーの管理を 改善する

ABM

へと発展を遂げることになるo その後

ABC/ABM

に関する研究は数多く発表きれているが、共通費・間接費 の配分に関する体系的な研究はあまりみられない。だが、このテーマの重要性が 消失したわけではないし、いくつかの間題は未解決のまま残きれている。そこで、 本書では、会計学の範囲を越えた広い観点から配分思考を検討し直し、これまで の研究の流れを共通費配分論として整理した上で、特に未解決・未検討の部分を 確認し吟味しておくことにしたい。 (2) 2つの研究の流れ 原価配分の機能の側面からみて、明確に区別されるべき 2つの研究の流れがあ る。

1

つは、いかにして恋意的な配分を排除するかという研究である。例えば、 正確な製品原価の計算はこれであり、現実をできるだけ忠実に写像しようとする 研究であるoもう 1つは、配分方法の変更に伴う人間行動に対する影響に注目し、 動機づけに利用しようとする研究である。 この後者の研究では配分肯定論と否定論の立場から議論が行われてきた。否定 論とは「不公平な配分」は逆機能的な行動を引き起こすという理由で配分を否定 する立場である。肯定論は、配分せざるを得ないから「公平な配分」を探求する といういわば消極的な配分論である。他方、少数ではあるが積極的に配分を利用 しようとする考え方も存在する。配分方法を変えることで、人聞の行動に影響を 与えようとする考え方である。岡野 (1995)に述べられている「築像論」的な解 釈、あるいは、 Hiromoto (1988)における「影響アフ。ローチ

J

の考え方であるo

(19)

序 章 11 また、 Dent (1987) による水平的なインターアクティブ・コントロールのシステ ムは、部門間でコストを配分しあうことにより、相互の監視によるコスト削減効 果とインターアクションを高めることを狙っているo これらは皆、原価配分の積 極的な利用を志向するものである。 (3) ABC/ABM 一方、実務に目を転じると、実態調査の結果からみても、配分することのデメ リットを上回るメリットがあれば配分するという立場をとる場合が多い。ところ が配分基準に関しては、場合によっては、可能で、あっても発生原因主義に基づく 配分を選択しないことさえある。 この具体例を新しいコスト・マネジメントの一つである ABC/ABMに関わら せて見てみよう。 伝統的原価計算では、操業度に関連する直接作業時間や機械運転時聞を間接費 と相関関係があると仮定して製品への間接費配分の基礎とした。しかし、間接費 の恋意的な配分を排除することを目的として出現した ABCでは、正確な製品原 価を計算するために同質的なコスト・プールを作り、各々のコスト・プールにつ いて適切なコスト・ドライパーを用いて正確にコストを配分する。これは、前述 の正確な原価配分志向に他ならない。 この ABCから得られる情報をアクティビティーを管理し現実を変革するため に利用するのがABMである。これは、人間行動に対する影響機能(利害調整機 能)に対応する。アクティビティーの管理とは、お互いに連鎖しているアクティ ビティーを最終的に企業外部の顧客満足に寄与するょっに付加価値活動を増や し、非付加価値活動を除去することを意味する。

(

4

)

理論と実務の黍離 理論と実務の聞にはなにがしかの恭離があるのが普通で、ある。この講離を縮小 するための第 Iの方法は、実態調査の結果を基に理論を修正すること(理論→実 務)である。本書と関わらせて言えば、管理可能性原則によれば本社費・共通費 の配分はすべきではないが、実務では、共通費が配分されていることが多いこと

(20)

12 第I部 共 通 費 配 賦 論 の 基 礎 がわかっている。これは、配分のベネフィットあるいは必要性がコストを上回る と判断されているからである。この点に関して

Zimmerman(

1

9

7

9

)

Demski

(1

9

7

6

)

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1

9

7

8

)

などの論文にみられるように、エイジェンシ一理論のフレームワー クが大きな貢献をした。エイジェンシー・モデルは、共通費の配分方法や報酬シ ステムを変化させた場合に動機づけ効果がどう変化するかを限定的にとはいえ分 析可能にしたからである。逆に、実務上の問題点を探り、理論が提示するより改 善きれた方法を実務に導入すること(実務→理論)は、恭離の第2の縮小方法で ある。ここに、本書で論ずるような、理論的に「公平な配分方法」の代替案を複 数用意しておく意義がある。本書で公平性の議論に多くのページを割いているの もこういう理由からである。

(

5

)

受容性と適応性 だが小林

(

1

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9

7

)

によれば、配分の必要性や配分方法の「受容性」に関する研 究は比較的行われてきたが、配分方法の[適応性」については研究が遅れている という。「公平な配分とは何かりという聞いを追究するのは「受容性」の研究で ある。これに対し「何らかの望ましい状態(例えばパレート最適)を実現するに はどうすればよいかりという問いに対する答えを追究するのは「適応性」の研 究である。本書第5章・第7章では、受容性の研究だけでなく、不十分で、ある適 応性の研究に取り組んでいる。 2.各章の概要と論点 本書は、三部構成である。第一部「共通費配賦論の基礎」は、原価配分論の展 開に関する概要と基本概念を説明し問題の所在を明らかにする。第二部「業績管 理のための原価配分」は、第2章「相互満足的配分」、第3章「交渉力による共通 費の配賦」、第 4章「原価配分における公平性」から成り、業績管理のための共通 費の配分に的を絞り、公平な配分とは何かについて議論しているo 第三部「責任 会計とマネジメント・コントロール」は、第5章「責任会計と原価配分」、第6章 「管理可能性原則の意義とその適用」、第7章「業績評価と ABCJから成り、影 響システムとしてのコスト・アロケーションについて述べている。

(21)

序 章 13 第

1

章では、まず、共通費・間接費の定義と基本概念について述べるo その後、 実態調査の結果を紹介し、それを踏まえて、実務と理論の講離の存在を確認する。 実態調査にあたっては、どの配分方法が利用度が高いかというだけではなく、ど ういう配分方法がなぜ使用きれてきたのかという理由まで踏み込むことが重要で、 あることを述べている。 共通費のさまざまな配分方法は、時代の要請に応える形で展開されてきた。こ れまで何が問題とされ、何が未解決の問題点として残されているのだろうか。そ の範囲はあまりに広すき、るので、第2章以下では、動機づけのための原価配分に 焦点を当てて論じているが、その準備として配分方法を変えれば動機づけの面で どういう効果があるかをいくつかの簡単な例で説明するのも第1章の目的であ る。 動機づけあるいは利害調整機能を果たすために公平な配分とは何かということ をめぐっては数々の議論が行われてきた。ゲーム論におけるゲームの解を利用し た配分はその一例であるが、ゲーム論的な配分方法ではリスク選好や交渉力を考 慮に入れたより複雑なモデルが考えられている。そこで、第

2

章ではモリアリ ティー・アプローチからゲーム理論を適用したシャプレイ値に至るまでの主要な 「公平な配分スキーム」の特徴を検討する。これに続く第3章では社会学の理論 を援用し「パワーによる配分」を検討する。 しかしながら、ゲームの解を配分に利用するやり方には限界がある。規範的な ゲーム論的アプローチに対し、

Demski

(1

9

8

1

)

は、共通費の配分方法とインセン ティブ・システムを工夫することにより、いくつかの限定された状況下で、管理 者を組織目標へ動機づ、けるメカニズム自体が重要で、あることを説明している。状 況しだいで、目標整合性を達成するためには、配分の是否も配分の優劣も変化し、 インセンティブ・システムをうまく利用することが重要になる。 第

4

章では、以上のスキームも含めて、共通費の配分を経済学における成果分 配の考え方と摺り合わせて両者の関係を比較し、公平性、公正性、平等性がどの ような意味をもつのかを考察する。そこでの一応の結論は、全ての人を満場一致 で満足させられる配分は存在しないだろうということである。しかし、配分せざ るをえない状況の下で代替的な説得力のある配分方法をいくつか用意しておくこ

(22)

14 第I部 共 通 費 配 賦 論 の 基 礎 とは意義があると考える。 これらと対照的なのが、第3部の最初の第5章である。第5章では、第2部てい の議論とはスタンスを変え、まず「原価配分ベース選択モデル

J

をとりあげる。 このモデルは「配分の結果の公平性」ではなく「配分プロセス自体の公平性」を 問題にしている。利害関係者の相互作用のパターンという面にはあまり注目して いないが、合理的経済人よりは複雑な人間行動モデルを仮定し、多目標の達成に 部門管理者を動機づける手段として共通費の配分を利用しようと試みている点に 特徴がある。このモデルは、行動科学的アプローチに基つ。いたモデルを使用して、 不確実性下で多目標を達成させるために、原価配分を責任会計に適用する方法を 提案している。 第6章では、「管理可能'性原則」の意味について再検討する。「管理可能性原則」 は責任会計の大前提となっており、共通費配分後利益を業績評価に利用すべきで はないという根拠となっているからである。 管理可能性の意味は、職能別組織を前提にしていた伝統的責任会計の下でも論 者によって異なり、さらに、さまざまな有機的組織が出現するにつれて変化して きた。また、小林(1993) に述べられているように、管理可能性は短期的性格を もち、長期的には「会計責任」に関する別のルールが前面にでてくるのかもしれ ない。 また第6章では、管理可能性基準が作用している共通費の配分以外の会計処理 の側面に触れる。国籍の違いに基づく諸要因が日米の管理可能性基準の適用方法 の違い、マネジメント・コントロールそして共通費の配分方法に影響していると いう仮説を提示するo 最後の第7章では、 ABCを責任会計に適用し実務と恭離した責任会計の有用 性を高める方法を提案している。 伝統的責任会計は、職能部門・責任者毎に会計数値を集計し、責任を負わせる ものである。だが相互依存性の強い組織では、業績の独立的測定が困難になるた め、従来の責任会計の基礎にある仮定や諸原則を変更しなければならない。

(23)

序 章 15 第

3

節 結 び

以上、共通費の配分論がどう展開してきたかを概観し、研究目的と研究概要に ついて論述してきた。最後に筆者の問題意識をいくつかの研究課題として明らか にしておきたい。 本書の課題の第

1

は、業績管理会計の重要課題の一つである本社費・共通費の 配賦に焦点をあて、マネジメント・コントロールに役立つ配分について議論する ことである。そのために「公平な配分(公平な業績評価)とは何か」という問に 対しいくつかの代替案を提供する(主として第2部)0管理可能性原則の再検討(第 6章、第 7章)、ゲーム理論の解概念の利用(第 2章、第 3章)、経済学の成果分 配の考え方と共通費の配分基準との比較(第 4章)など、いくつかの切り口でこ のテーマを検討したい。 第2に、共通費の配分方法への影響要因を確認する(第I章第3節、第7章等)。 実態調査により、なぜ配分されているのか、どのような配分方法がとられている のかについてはある程度わかっているものの、どのような要因によって配分方法 が決まるのかについては十分確認されていないと思われるからである。 日本の実務を視野に入れた場合、組織戦略と国籍の違いに起因する諸要因が「責 任会計システム」さらには上位システムである「マネジメント・コントロール・ システム」に影響を与えていると考えられる。これについては、第

1

章の他、第 6章、第 7章でも部分的に触れている。そこでは管理可能性原則の運用の仕方(管 理不能要因による影響の調整と責任の負わせ方)の違い、その背景にある組織の 違いや国籍の違いに伴う経済的・社会的・文化的・制度的要因、戦略が、どのよ うに、「特定の管理会計技法や概念」の決定、あるいは「会計技法の使われ方」に 影響しているかについて考察を加えている。特に筆者が注目するのは、国籍が違 えば管理会計の内容や意味が異なること、および環境が不確実・複雑になれば、 きまざまな組織が出現し、会計も変化せざるをえないことである。第6、7章で 述べるように、これらを反映して日米のコントロール・システムの仕組みは異なっ たものになっている。 第3に、どのような配分方法が全体最適な行動を引き起こすかは、上述のよう

(24)

16 第I部 共通費自己賦論の基礎 に様々な要因によって異なってくるo しかし、どのような配分がどのような行動 を引き起こすのかを検証することで、望ましい配分の特性をいくつかの状況の下 で示すことができると,思われる(例えば、予定配賦、事前一括配賦、中立的な配 分など第

1

章第

4

節、第

2

章等)。 共通費・間接費の配分は、現実を正確に写像するためだけではなく、組織メン ノ〈ーを動機づけ、現実を変革するためのシステムとしても利用しうる。筆者の関 心は後者にある。そこで組織メンバーの聞にインターアクションを引き起こす可 能性があるシステム、組織メンバーに学習・戦略の創発を引き起こす可能性のあ るシステムについても考察を進める。これらについては、配分ベース選択モデル (第5章)の他、責任会計の変革を提案する議論(第7章)の中で言及している。 第4の研究課題は、第 1章で紹介する実態調査の結果が示しているように、理 論と実務の北離に関するものである。この講離を縮小することが、本書全体の研 究課題である。 理論が現実をうまく説明できるものになっていないとすれば、それは正しい理 論ではない。理論が現実に役立たなくては実学としては意味がない。例えば、管 理可能性原則に反するはずの共通費の配分が行われていることに対し合理的な説 明を与えることに成功したポジティブな理論は、理論が実務に接近した例である。 逆に、公平な配分方法を提案し実務に受け入れられたとすれば、実務が理論に近 づ、いたことになる。 第

5

に、小林哲夫教授の指摘によれば、配分の必要性や配分方法の「受容性」 に関する研究は比較的蓄積されているが、配分方法の「適応J性」については研究 が遅れているという(小林(1997))。本書の 2、 3、 4、 6章は、「受容性」に関 する研究であるのに対し、

5

7

章の議論はこの「適応性

J

にも関連する研究で あると言ってよい。それゆえ本書の課題は、これまでの「受容性」に関する研究 の意義を再検討、整理するだけではなく、「適応性」に関する研究の可能性を模索 し、なぜこの研究が難しいのかを考察することにある。

(25)

序 章 17 (注) 1) Scapens,et al. (1991) p. 40.製造間接費については, Wel1s (1978)に詳しい. 2 )配分目的とは,外部への財務報告,原価基準による価格決定や政府契約,業績評価,管理者 の動機づけを指す(Ibid.,p. 41, pp. 46-48). 3) Homgren (1982) p. 507.; Scapens, et a,.lop. cit., pp. 42-43. 4) Scapens, et a,.lop. cit., pp. 46-48.;もっとも,第4章で一部とりあげる Thomas (1977) においては, I結合原価の配分」として両者を区別せずに議論している. 5 )これは,線型計画法による最適プロダクトミックスや最適産出量の決定において結合原価 の配分を回避する提案に関係しているのかもしれない.スケイペンス(1992) pp.174-181. ; 拙稿 (1985b)参照. 6 )拙稿 (1987a) p. 4.以下参照.総費用 t二,i,十f" 内部でサービスを調達する増分原価 f" 外部からそれを調達する増分原価X,とすれば, Louderbackモデルでは, f,<t,<x,が保証さ れる.Thomasの数値例では, Vについてこれが保証きれない.

7) Billera, Hearth

&

Raanan (1978); Scapens. et al.op. cit.. pp. 49-51. 8 )小倉 (1982). 9) Scapens, et al..op. cit.. p. 54.;拙稿(1985c)参照. 10)拙稿(1985c )に紹介.拙稿 (1987b) p. 54も参照. 11) Scapens. et al..op. cit. pp 55-56;ただし,エイジェンシー・モデルにも,理論的,方法論 的限界がある.すなわち,多期間の状況や複数のエージェント問で提携ーがある状況を分析でき ない.現実の組織では,複雑な相互依存関係の調整がかなり必要になることは注意しておかな ければならない.特に, 日本企業の組織の分析には,エイジェンシー・モテルの拡張が必要で あることは,会計フロンティア研究会編(1994)の 中 で 議 論 さ れ て い る 拙 稿 ( 1986)では, Demskiのモデルを一部検討した. 12) Ibid.. p. 51. 13) Ibid.. p. 53. 14)楼井(1991)p. 95 15) Scapens. et al..op. cit.. pp. 56-57.;神戸大学管理会計研究会 (1977) (1978) (1981). 16) Scapens. et a,.lIbid.(1991)p. 58. 17)第7章で説明するように, ABMは, Iアクティビティ一分析

J

Iコストドライパ一分析」 とアクティビティーの業績に注意を喚起するための「業績iHIJ定」から成るとするTumeyらの 見解がある.いわゆる「フ。ロセスの視点」である. このプロセスの視点における問題は,アクティビティー閣の連鎖をどう考えるか,どの活動 をどう変更すれば,顧客満足を最大化し,全社的財務目的を達成できるか,換言すれば,最下 層の業績と最終的財務業績(目標)の聞の関連つi!tと最善の行動を組織メンバー自身に発見・ 学習させ,選択させるような仕組みが必ずしも明確になっていないことであろう.組織目標の 達成へ向けて組織メンバーの努力を統合させていくためにはどうすればよいか,とし寸研究自 体が不十分でmあるように思われる.

(26)

18 第I部 共 通 費 配 賦 論 の 基 礎 18) 例えば短期的業績を報酬に反映する度合いが,少なくともこれまでの日本てーは小きかった. 日本では人事考課により長期的に決まる昇進が米国とは質的に違った長期的な競争を引き起 こすが,短期的には協調を重視する.日本では,業績管理会計上の業績が報酬にほとんど連動 していないとすれば,本社費配分後の利益が悪くてもあまり問題にはならなかったとも考えら れる.つまり,米国で生まれた伝統的な業績管理会計が,日本企業の実務で、は違った使われ方 をしていることが推測される.また,様々な組織(チーム組織やカンパニー制等)の出現によ り,職能別組織を前提としてできている伝統的な責任会計の理論は現実にあわなくなってい る.以上のような問題を認識し解決することが本研究の課題である.

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19

1

日米の実態調査

1

節 は じ め に

原価配分で問題とされてきたのは、共通費・間接費の恋意的な配分である。 本章の目的は、まず、共通費・間接費の定義と配分の意味を明らかにすること にある。その次に、日米の有名な実態調査の一部をとりあげることにより、共通 費の配分が実務ではどのように行われているのかを明らかにする。これは、実務 と理論との恭離を認識した上で、理論を修正するか、実務に提案をすることによ り、理論と実務の聞のギャップを縮小するための第一歩である。 しかし、共通費の配分といってもその範囲は広すぎるので、特にコントロール 目的に限定する。次章以下では、正確な共通費の配分(計算技法の精轍化)を追 究するのではなく、逆機能的行動が起こらないような「公平な配分」とは何かと いうことついて、理論側からの提案を行むその前に、第4節では、配分方法を 変えると動機づけにどのような影響を与えるかという簡単な例をいくつか列挙す る。 第

2

共通費・間接費の配分基準とその問題点

1.共通費・間接費の意味 原価は、費消の目的または対象(原価対象ないし製品)に対して直接的に把握 しうる原価か否かによって、直接費と間接費に区分できる。このような区分は、 原価部門に対しでも行われ、特定部門で発生したことが直接に認識されるか否か によって部門個別費と部門共通費という用語が用いられる。 本稿てやは、原価対象に対して直接跡づけることができるか否かによって直接費 と間接費、原価部門などセグメントに対しては、個別費と共通費という用語を原 則として用いるが、間接費も含めて共通費ということばで説明することにする。 そして、原価対象に直接費を直接負担きせることを、賦課とか直課と呼ぴ、間 接費を負担させる場合は、配賦と呼ぶ。直課と配賦をあわせて配分と呼ぶ。

(28)

20 第I部 共通費自己賦論の基礎 では次に原価配分の意味を説明するo

2

.

配分ベース選択基準と配分ベース

(

1

)

配分プロセス 伝統的原価計算では、原価配分とは、コストを製品や部門などの原価対象に割 り当てることである。そこで原価配分のプロセスを考えてみると、以下の3つの 側面のあることがわかる。 すなわち、①原価対象(原価配分の対象)、②配分すべき原価項目ないし範囲 の選択および集計、③原価対象と配分される原価を関係づけるための「配分ベー スの選択

J

である。ここで配分ベースとは、配分する際に使用する売上高、面積 等の具体的な配賦基準のことである。 Horngrenは、コストを、それを発生させた原価対象に結びつけ因果関係に基 づいて配分するのが理想であると述べている。ところが、間接費・共通費につい ては、この因果関係を明確に把握することが困難であるために、これらを配賦す るために、因果関係を反映する配分ベースが探求されてきた。たとえば、用役の 利用、規模、活動量を測定する尺度などがこれである。 重要なことは、実務で利用されるベースは、「正確性」だけではなく、「測定・ 計算上の簡便さ

J

I

理解のし易さ

J

I

経済性」の観点から選択されるということで ある。いくら理論上優れている精綴な計算技法でも、理解が困難なために、ある いは、時間的・金銭的コストがかかりすぎるために実務では利用きれないことが よくある。さらに、管理目的を前提としている場合には、現実を正確に写像する ことを目的としているのではないから、人間行動に対して配分が及ぽす影響につ いて考慮すべきである。

(

2

)

配分ベース選択基準の意味と相互の関係 配分ベース選択基準とは、換言すれば、原価計算の基本原則および計算原則の ことである。これには、いろいろな考え方があるが、以下のようなドイツ流の考 え方と米国流の考え方を紹介しておきたい。 まず、(原価)発生原因主義原則であるo これは「原価は、それに影響を及ぼす

(29)

第1章 日米の実態調査 21 作用因に帰属計算されなければならない」とする考え方であるが、このような配 分が困難であるために、「原価を給付単位の負担能力に応じて按分する」負担能力 主義という計算原則がある。また、「原価は給付単位との聞に比例的関連が存在し、 給付ー単位の増加は、それに応じた原価増加を惹起させるので、この事実関係か ら製品への原価割り当てを行う」という比例性原則がある。この比例性原則によ れば、間接費は「ある一定の基準値ないし標準値に比例させて原価部門に配分し なければならない」のであり、「原価作用因の特性が直接的に測定可能で、ある」か、 あるいは、「間接費測定の場合には、……原価作用因の特性に比例する」配分ベー スが選択されなければならない。この比例性原則は、発生原因に従った配分を志 向しているとみることもできょうoこの考え方は、アクティビティー毎にコスト・ ドライパーを設定し、活動量を測定し、それに応じた配分を考える ABCに通じ るところがある。 発生原因主義原則を否定する基本原則として、給付対応原則という原則も存在 する。この原則は、「原価も給付生産量も同じ行動プロセスの要素であり、これら の聞には何らの因果関係も存在していない」のであり、「等量の給付単位には等し い原価部分が割り当てられ、……相対的に多量の給付単位には少量の給付単位に 比してそれだけ大きな原価部分が割り当てられるような方法で測定されなければ ならない」とする。最後に、平均原則は、間接費を給付単位や他の基準に平均的 に配分することを要求する。 他方、米国の Fremgen等のあげている複数の配分基準も相互に関係をもって いる。彼等も述べているように、「公平性・平等性の基準」は主観的な性格を帯び ているので、 トップ・マネジメントとセグメント・マネジャーとの間で何が公平 かということについて意見の一致がみられない。 受益基準は、共通費の発生するもととなったサービスから原価対象が受け取る ベネフィットに比例して配分を行うという考え方である。この受益基準は、公平 性の基準よりもややオペレーショナルであり、また、「因果関係の基準」と代替的 な基準と考えることができょう。 「中立性の基準」とは、「一つの原価対象に配分きれる原価の額が、配分が行わ れる期間中の他の原価対象に関する行動や事象によって影響きれない」という条

(30)

22 第I部 共 通 費 配 賦 論 の 基 礎 図1-1 配分ベース選択基準 件を満足するベースを選択する基準である。後述する

M

o

r

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a

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i

t

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による配分は、 この基準による配分の一種である。

Fremgen

等が述べている配分基準は必ずしも明確で・はないけれども、それらの 関係を図示するとすれば、上図のようになると思われる。すなわち、それぞれの 配分基準は交差している部分があり、因果関係と公平・平等、ベネフィットとを 対置する考え方は、必ずしも適当ではないと思われる。 例えば、 aの部分は、各セグメントが消費している電力をメーターによって計 測することが可能な場合には、因果関係も受益者も明らかであるから、因果関係 による原価配分もベネフィットに基づいた原価配分も可能であるo bの例として は、売上予算に基づく配分がある。これは、中立性を考慮に入れているといえる。 というのは、売上予算による配分は、他部門の実際売上高にかかわらず、売上高 の増大に応じて配分きれる共通費の額を一定にする傾向があるからである(表1 -6後述)。これらはほんの一例に過ぎないが、再言すれば、 ① 全ての配分基準は並列的・独立的に存在しているのではない。 ② それらの基準は相互に関係をもっているけれども、その関係は必ずしも明 らかではない。また、共通費を全額配分しなくてもよい状態においては、負担能 力の一種である実際売上高に基づく配分でさえ、中立性を実現しやすいことや、

(31)

23 日米の実態調査 第l章 管理サーピスのためのコストを配賦するためのごく普通の方法 表

1-1

合計 203 186 209 124 137 120 161 167 173 125 79 143 174 152 その他の 方 法 21 17 13 11 12 12 22 20 19 13 0 13 27 21 資 産 2 8 4 5 5 3 2 8 0 2 6 0 4 9 n4'A'A'A'i'An4 唱 A n ' u ' i ' A 内 4 ' i 利益 n UAU 内 U ' i ' A -1 -n 4 A U n 4 1

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お 姐閣制刊一 辛' の 高 一 際 用 一 u m m U M 世 間 8 u u m u U 3 6 実 利 一 1.財務と会計 2.法務 3.コンピュサによるデータ畑 4.ー般的マサティングトピス 5.広告 6.市場調査サービス 7.宣伝活動 (PR) 8.労使関係 9.人事 10.不動産 11.オペト河川・リトチ部門 12.購買部門 13.本部管理の共通費 14.企業のプランニング部門 (出所)Vancil(1978 and 1979), p. 250. 配分ベースを選択するにあたって利用される基準 表

1-2

応答の 割合(%) 応答数 1.共通費を発生してプロフィット・センターが 得たベネフィット 2.発生させられる共通費を生じる要因 3. 共通費に対するチャージをプロフィット・セ ンターが負担する能力 4. 一つのプロフィット・センターに配分される 額が、何らかの他のプロフィット・センター における活動や条件によって影響されるべき でないという原則 5. 包含されているすべての利害関係者にとって の平等と公平 6.その他の基準 73 17 17 66 79 75 81 17 17 68 10 10 (出所)Fremgen, et al., (1981) p. 48. パレート最適に達していない場合、パレート優位な結果を実現しうるという意味 で公平性を実現しやすい。つまり、③状況によって適用しやすい配分基準の範囲 は変化する。 結局のところ、配分基準自体の意味が暖味で、基準相互の関係も明らかでない

(32)

24 第I部 共 通 費 配 賦 論 の 基 礎 ために、状況(例えば目的)によって複数の配分基準、あるいは配分ベースが選 択されたり、配分基準を考慮せずに、初めから配分ベースの選択が経済的観点等 も交えて行われる可能性がある。したがって、配分基準、あるいは配分ベースの 優劣といったことも特定の状況を想定した上で初めて言えることなのである。 第

3

節 共 通 費 配 分 の 実 務

実務ではどのような共通費の配分が行われているのだろうか。これについて考 察するために、 VanciIによる研究、 Fremgen& Liaoによる研究、および神戸 大学管理会計研究会の調査の一部をとりあげる。これは、理論と実務の講離を確 認し、なぜ、どのような配分方法を実務では利用しているのか問題提起をするた めである。 1.配分ベースについて Fremgenによれば、本部管理費を配分するためにもっとも論理的なベースは、 「サービスの利用量」であるけれども、多くの組織では、その利用量の測定は実 現不可能で、あると考えているo そして、配分するとすれば「売上高」をベースと して配分する企業が多いという。 他方、 VanciIは製造業を対象として、利益センターに企業の管理サービスに関 するコストを割り当てる場合に利用されるベースは何かを詳細に調査した。一部 を列挙すれば、以下のとおりである。 ① プロフィット・センターに本部管理費を負担きせている企業は、概ね60-70% である。(最小値51%を示す購買部門、最大値87%を示すコンビューターによる データ処理サービス部門を除いて、どのサービス部門についても60-70%の範囲 で管理サービス・コストを配分している。 これらの結果から、伝統的に理論上は共通費を配賦すべきでないと述べられて いるけれども、実務ではこれを配賦していることの多いことがわかる。 では、どういう配分方法をとっているか。 ② ほとんどの企業は、利用量に基づくタイプの配分法(usagetype)と、割当タ

(33)

第1章 日米の実態調査 25 イプの配分法

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をとる傾向があり、実際にサービスの利用量を測 定するよりも、「予測された利用高」により配分する傾向が強い。ただし、データ 処理と広告については例外である。 ③ 具体的なベースとしては、「売上高jを利用している企業が50-60%、そして、 「利益」に基づく配賦がそれに続いている。サービスの種類別にみると、 7.宣 伝活動、 10.不動産、 11.オベレーションズ・リサーチ部門、 13.本部を管理す るための共通費、 14.企業のプランニング部門等のサービスについては、「サービ スの利用量j、または「サービスの見積り」による以外の基準でコストを割り当て る可能性が高い。 ④ 原価に基づく配分ベースでは、「予定原価

J

ないし「標準原価j よりも、「実 際原価

J

に基づく企業の方が多い。これは、相互依存性を排除するためには実際 原価よりも予定原価の方が良いという理論(後述の例2)に反した結果になって いる。 2.配分ベースと配分ベース選択基準 (1) プロフィット・センターの数と共通費の配分

Fremgen

等の研究では、何らかの目的で共通費を配分する企業は

84%

であるo そして、プロフィットセンターの数の多いほど、本社費を主要なフ。ロフィット センターに配分する傾向がある。 (2) 配分ベース選択基準(配分基準)

Fremgen

等の表

1-2

から以下のことがわかる。

Fremgen

等による配分基準としては、

1

の受益基準、

2

の発生原因主義基準が 最もよく利用され、その次が5の公正の基準であるようにみえる。 しかし、配分基準の聞には、補完的関係あるいは代替的関係がある。回答者は 複数の基準を選択できることから、たとえば、ベネフィット、因果関係、中立性 を反映する各基準は同時に選択される可能性が高〈、これらの基準は負担能力の 基準と代替的に用いられる可能性が大きい。

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の調査結果に比べ、

Fremgen

等の調査では、

3

の負担能力の基準の数値が小きめであるが、これは、

5

の公正

参照

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