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日本内科学会雑誌第106巻第4号

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はじめに

 動脈硬化を基盤として生じる心血管病は,が んに続いて日本人の死因の上位を占める.特 に,冠動脈疾患の抑制のためには,脂質異常症 に対する早期の介入が重要である.血清脂質検 査は,脂質異常症のスクリーニングと診断,な らびに治療評価に必要であるが,リポ蛋白分画 や脂質の亜分画・関連酵素・転送蛋白等を測定 することで,より正確に病態を評価できる.本 稿では,保険収載されている基本的な脂質検査 の特徴を中心に解説する.

1.リポ蛋白代謝と血清脂質検査

 脂質とは,生体から脂溶性溶剤により抽出さ れる非水溶性の有機化合物の総称である.血中 には,主にコレステロール(遊離型;free choles-terol:FC),コレステリルエステル(cholesteryl ester:CE),トリグリセライド(triglyceride: TG),リン脂質(phospholipid:PL),遊離脂肪 酸(free fatty acid:FFA)が存在する.FFAはア ルブミンと結合して血中を運搬されるが,それ 以外の血清脂質は,疎水性のCEとTGを中心に, アポ蛋白とPLを外層に配置した複合体(リポ蛋 白)として循環する(図 1).リポ蛋白は,組成 や比重が異なるカイロミクロン(chylomicron:

実地医家のための血清脂質検査

―脂質異常症のスクリーニングと

診断の進め方―

要 旨 平山 哲  増加する脂質異常症の診断には,血清脂質を正確に測定する臨床検査の

存在が不可欠である.特に,LDL(low density lipoprotein)コレステ ロール測定における正確性と標準化に関する国内独自の検討もなされて きた.正確な病態評価のためには,リポ蛋白分画や脂質亜分画などの関連 検査も重要になる.動脈硬化性疾患の抑制のためには,脂質に関連する臨 床検査の意義と注意点を十分に理解して診療することが重要である. 〔日内会誌 106:682~689,2017〕 Key words LDL-C直接法,トリグリセライド国際標準化,アポ蛋白,リポ蛋白分画 順天堂大学臨床検査医学講座

Dyslipidemia:From the pitfalls in daily practice to future therapeutics. Topics:I. Laboratory tests of serum lipids for general physician- screening and diagnostic procedures of dyslipidemia.

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CM),超低比重リポ蛋白(very low density lipo- protein:VLDL),中間比重リポ蛋白(intermedi-ate density lipoprotein:IDL),低比重リポ蛋白 (LDL),高比重リポ蛋白(high density lipopro-tein:HDL)に分類される.これらのリポ蛋白の 代謝は,食事由来の外因性経路と肝臓由来の内 因性経路からなり,末梢の余剰コレステロール は肝臓へと逆転送される(図 1).  臨床検査では,総コレステロール(total cho-lesterol:TC)やTGに加え,これらのリポ蛋白中 の コ レ ス テ ロ ー ル をLDLコ レ ス テ ロ ー ル (LDL-C)やHDLコレステロール(HDL-C)とし て定量する.アポ蛋白とリポ蛋白分画の測定 は,リポ蛋白の増減を評価し,正確に病態を把 握するために必要である.その他の特殊検査も 動脈硬化の残余リスクの評価に有用である.

2.脂質異常症の診断と病態評価の進め方

 脂質異常症のスクリーニングのためには, TC・TG・HDL-C濃度を測定し,空腹時採血かつ TG 400 mg/dl未 満 の 場 合 にFriedewaldの 式(F 式)からLDL-C値を算出する(図2)1).食後やTG 400 mg/dl以 上 でF式 が 使 え な い 場 合,non- HDL-C値を算出する.LDL-C直接法(ホモジニア ス法)は,空腹時と食後のいずれにも用いるこ 図1 リポ蛋白の代謝経路 1)食事由来のコレステロールは,NPC1L1を介し,小腸で吸収された後,CMとして門脈に分泌される.CMは, LPLの作用により,TGが加水分解を受けて小型化し,肝臓に取り込まれる. 2)肝臓では,VLDLが合成・分泌され,LPLやHTGLによるTGの加水分解により,VLDL→IDL→LDLと異化が進み, 末梢組織および肝臓のLDL受容体に取り込まれる.PCSK9は,LDL受容体のリサイクリングを抑制する. 3)末梢の余剰なコレステロールは,ABCA1/G1を介し,HDLへと引き抜かれ,肝臓へと逆転送される. CE:cholesteryl ester,CM:chylomicron,FC:free cholesterol,HDL:high density lipoprotein,IDL:inter-mediate density lipoprotein,LDL:low density lipoprotein,VLDL:very low density lipoprotein,ABCA1/G1: ATP-binding cassette transporter A1/G1,CETP:cholesteryl ester transfer protein,HTGL:hepatic triglyceride lipase,LCAT:lecithin cholesterol acyltransferase,LPL:lipoprotein lipase,M Φ:macrophage,NPC1L1: Niemann-Pick C1-like 1 protein,PCSK9:proprotein convertase subtilisin/kexin type 9

1)外因性経路 小腸 肝臓 Cho吸収 200 ~ 500 mg/日 末梢組織 2)内因性経路 3)逆転送系経路 AI・CⅢ・E CM VLDL IDL LDL HDL CⅢ・E CⅢ・E B100 B100 B100 CⅢ・E AI CⅢ・E Cho吸収 500 ~ 2,000 mg/日 食事 胆汁 Cho合成 500 ~ 1,000 mg/日 B48 NPC1L1 LPL LPL LPL PCSK9 CMレムナント CETPCE TG ABCA1/G1 Preβ1-HDL MΦ 血管壁 レムナント受容体 LDL受容体 HDL受容体 コレステロール HTGL CⅢ・E AI・CⅢ・E B48 →→ CE FC HTGL LCAT

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とができる.日本医師会を含む国内 13 団体は, 「脳心血管病予防に関する包括的リスク管理

チャート2015」におけるスクリーニング項目を TC・HDL-C・non-HDL-Cとしている2).脂質異常

症の診断後,アポ蛋白検査やリポ蛋白分画検査 により,WHO(World Health Organization)分

類の表現型を判定する(図2).続発性脂質異常 症が除外される場合,原発性脂質異常症の鑑別 を進める. 1)スクリーニングのための血清脂質検査 (1)各測定法の基本原理  TC測定法には,コレステロールオキシダーゼ (cholesterol oxidase)を用いる酵素法のほか, ア メ リ カ 疾 病 予 防 管 理 セ ン タ ー(Centers for Disease Control and Prevention:CDC)の基準分 析法であるアベル―ケンダル(AK)法(化学法), 絶対基準分析法である同位体希釈質量分析法 (isotope dilution mass spectrometry:IDMS)が ある.酵素法は,標準物質を介した測定値の正 確性と精度が担保されており,日常検査のほと んどが酵素法で行われる.  LDL-C測定法には,CDCが採用する基準分析法 であるbeta-quantification(BQ法)のほか,超遠 心法,高速液体クロマトグラフィー(high per-formance liquid chromatography:HPLC)法,ゲ ルろ過法,直接法,F式がある.BQ法では,最 初にCMやVLDLなどのTGリッチリポ蛋白(TG rich lipoprotein:TGRL:比重<1.006)を超遠心 で除く.得られた画分(A)にヘパリン-Mn2+ 沈殿薬を加えて,遠心後,上清(HDL画分(B)) と画分(A)のコレステロールを化学的にAK法 により測定し,その差(A―B)をLDL-C濃度とす る.臨床検査で測定するLDL-Cは,IDL,狭義の LDL,Lp(a)を合わせたもののコレステロール の総量である.  HDL-C測定法には,CDCの基準分析法(上記 BQ法のHDL画分(B))のほか,デキストラン硫 酸と塩化マグネシウムでアポBを含むリポ蛋白 を沈殿させ,遠心後の上清中コレステロールを AK法で測定する比較対照法(TG<200 mg/dlの 場合に限る),13%ポリエチレングリコール法, 簡便な直接法がある.直接法では,試薬による アポEリッチHDLへの反応性の差異が影響する 図2 脂質異常症のスクリーニングと診断手順 文献1および動脈硬化性疾患予防ガイドライン2017の概要(2017年1月発表案:最終案では修 正などの可能性あり)から引用して作図. Non-HDL-Cの算出 (Non-HDL-C=TC-HDL-C) LDL-C ≧ 140 mg/dl TG ≧ 150 mg/dl HDL-C < 40 mg/dl Non-HDL-C ≧ 170 mg/dl 空腹時採血 (絶食10 ~ 12時間以上) TG<400 mg/dl Friedewaldの計算式による LDL-Cの算出 (LDL-C = TC-TG/5-HDL-C) TC・TG・HDL-Cの測定 アポ蛋白検査  (Apo-AⅠ,AⅡ,B,CⅡ,CⅢ,E) リポ蛋白分画検査 表現型の判定 (WHO分類) 原発性脂質異常症  or 続発性脂質異常症の鑑別 (病歴/身体所見/検査値/内服薬/家族歴) Yes Yes No No

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と考えられたが,これまでの健常人検体での検 討では臨床的には問題とならない.  TG測定法のうち,酵素法と化学法は,リポ蛋 白リパーゼ(lipoprotein lipase:LPL)により, TGをグリセロールと脂肪酸に分解し,産生され たグリセロールをトリオレイン(グリセロール に 3 つのオレイン酸がエステル結合したもの) に換算し,TG濃度とする.CDCは,2012年に同 位体希釈ガスクロマトグラフィー質量分析法

(isotope dilution gas chromatography mass spec-trometry:IDGC/MS)による総グリセライド定 量法を基準法に提案した3).一方,日本のTG測 定法では,最初に遊離グリセロール(free glyc-erol:FG)を消去するため,測定対象が異なる ことに注意が必要である4)  これらの血清脂質の増減は,動脈硬化症のリ スク因子であるが,例えば,コレステロールへ の単独介入によるリスク低下は約 3 割に過ぎな 表 保険収載される主な血清脂質検査および関連検査 検査項目 診断 基準値(臨床判断値)or 参考所見 保険算定(2016 年 4 月 1 日時点) LDL-C 高LDL-C血症* 境界域高LDL-C血症* 低LDL-C血症# ≧ 140 mg/dl 120~139 mg/dl < 65/86 mg/dl(男性・閉経前女性 / 閉経 後女性) LDL-Cは18点,HDL-Cは17点 (ただし,TC,LDL-C,HDL-Cを同時 測定した場合は2項目まで算定で きる.TCは17点である.) HDL-C 高HDL-C血症低HDL-C血症#* ≧ 100 mg/dl< 40 mg/dl TG 高TG血症* ≧ 150 mg/dl 11点

Non-HDL-C 高non-HDL-C血症境界域高non-HDL-C血症* ≧ 170 mg/dl150~169 mg/dl (LDL-C,HDL-C,TGを参照) ApoAⅠ ―――― 110~200 mg/dl40 mg/dlに相当)(下線がおおよそHDL-C † 1項目 31点 2項目 62点 3項目以上 94点 ApoB ―――― FCHL* 50~100 mg/dl†(下線がおおよそLDL-C 140 mg/dlに相当) アポB/LDL-C > 1.0 ApoCⅢ ―――― 5.0~10.0 mg/dl† ApoE 家族性Ⅲ型高脂血症―――― * 2.5~5.0 mg/dl † アポE/TC ≧ 0.05 リポ蛋白分画  Agarose gel  PAG  HPLC 家族性Ⅲ型高脂血症* 高レムナント血症,FCHL* 家族性Ⅲ型高脂血症* broad βパターンの出現 mid-bandの出現・MI 0.4以上 VLDL-C/TG > 0.25 アガロースゲル電気泳動法 49点 PAGディスク電気泳動法 80点 HPLC法 129点 Lp(a) 高Lp(a)血症* ≧ 30 mg/dl 107点(3カ月に1回) RLP-C 高RLP-C血症 § > 7.5 mg/dl(DM(-)かつCAD(-)) ≧ 5.2 mg/dl(DM(+)かつ/またはCAD (+)) 191点(3カ月に1回) MDA-LDL 高MDA-LDL血症§ > 110 U/l(DM+CADでの冠イベント予測・DMでのPCI後再狭窄予測) 200点(3カ月に1回) LPL ―――― 40~60 / 150~250 ng/ml注前/後) †(ヘパリン静 223点

:文献1より引用

:一般の健常集団より求めた値:参考基準範囲として記載

§:患者データから提唱されているもの

PAG:polyacrylamide gel,HPLC:high performance liquid chromatography,RLP-C:remnant-like particle cholesterol,MDA: malondialdehyde,LPL:lipoprotein lipase,FCHL:familial combined hyperlipidemia,DM:diabetes mellitus,CAD:coronary artery disease,PCI:percutaneous coronary intervention

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い.2017年1月に発表された動脈硬化性疾患予 防ガイドライン 2017 の概要(案)では,動脈 硬化惹起性のリポ蛋白を包括して反映するnon-HDL-Cも 診 断 基 準 に 組 み 込 ま れ て い る.Non-HDL-Cの基準値は,LDL-C基準値+30 mg/dl未満 である(表). (2)脂質検査における標準化と国内外の現状  脂質検査の標準化は,2016 年 4 月の時点で, CDCを中心に,世界 8 施設による標準化ネット ワ ー ク(Cholesterol Reference Method Labora-tory Network:CRMLN)により進められている. 特に,LDL-C測定法とTG測定法の標準化に関す る議論は国内外で行われている.  コレステロールは,化学的にも純粋な標準物 質が存在する.しかし,LDLは,VLDLから連続 的に変化して生成されるため,組成は常に一定 ではない.TGの分子量もグリセロールに結合す る脂肪酸の種類に左右される.このような不均 一性のために標準物質が存在せず,これらの測 定法の標準化には困難な面があった.加えて, TG測定は,血中FGを含めて測定するか否かで議 論が続いている.  1997 年,LDL-C直接法が日本で開発された. 自動分析装置で測定でき,2008年の特定健診の 検査項目への採用を契機に広く普及する一方, 異なる原理を用いた複数のアッセイ系があり, 各々の試薬の精度も異なっていた.2010年に米 国のMillerらが,遺伝的脂質異常症を含む患者 検体では,市販される 7 社の直接法試薬とBQ法 のLDL-C値が一致しない場合があると発表し, 直接法の正確性と測定精度に関する問題点が指 摘され,実地診療に混乱が生じた5).そのため, 我々はLDL-C直接法の正確性と精密性に関する 多施設共同研究を行い,12社の試薬間差を検討 した6).健常人検体やTG 400 mg/dl未満の患者 検体では一部試薬を除き,その精度は正確で あった.2016年末には4社の試薬とその導入品 に絞られ,現在,国内のLDL-C直接法の正確性 は担保されているといえる.同研究では,HDL-C 直接法の正確性も検討され,性能不良な試薬は 販売中止や他社製品の導入へと移行した7)  TG測定法には,日本に多いグリセロール消去 法(以下,消去法)と欧米に多いFGを消去しな いグリセロール非消去法(=総グリセライド定 量法,以下,非消去法)がある.血中には,TG (約 90%)とFG(約 5%)のほか,グリセロー ルに脂肪酸が 2 つ結合したジアシルグリセロー ル(diacylglycerol:DAG)や 1 つ結合したモノ アシルグリセロール(monoacylglycerol:MAG) が数%ずつ存在する.特にFGの存在は,2 つの TG測定法間での誤差となるため,まず測定法の 違いを認識することが重要である.  我々の検討では,非消去法と消去法で測定し たTG濃度の差から算出した空腹時FG濃度は,肥 満群で高かった4).また,食後にFG値は低下し, 非消去法の場合,食後の高TG血症が,FG値の低 下によりマスクされ,食後高脂血症を見逃す可 能性があると考えられた4).血中FG濃度は,脂 肪とTGRLに由来するものが存在し,肥満度や食 事,インスリン抵抗性などの影響を受けて変動 する可能性がある.今後,仮に欧米の非消去法 が主流となる場合,血中FG濃度が大きく変動す るような病態では,正確にTG値を評価できない ことが懸念される.TG測定法の国際標準化を進 める際に留意が必要である. (3)脂質検査を行うのは空腹時か非空腹時か  個人差はあるが,食後にTG値が上昇しやすい ため,脂質検査は空腹時採血が原則である.通 常,食後2~3時間に上昇するが,午後ピークに 達し,夕食前後にかけて空腹時の値に近づく. しかし,2016年に欧州動脈硬化学会(European Atherosclerosis Society:EAS)とヨーロッパ臨床 化学会は,必ずしも空腹時採血でなくてもよい とする共同声明を発表し,非空腹時のTG値の カットオフ値を 175 mg/dlとした8).実際,TG を除けば,TC,LDL-C,HDL-Cの日中の変動幅は 5%以下とわずかである.しかし,FG濃度は, 個々の病態で異なり,個人差もあるため,前述

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したTG測定法の違いにより,空腹時や食後のTG 値に少なからず影響が出ることが懸念される. 日本の非空腹時TG値のカットオフ値の設定も 今後の課題である.  食後に低下する検査値もある.2 型糖尿病に おける検討では,脂質亜分画であるsmall dense LDL(sd-LDL)コレステロールは,朝食後に約 35%低下した9).sd-LDLコレステロールは,健 常人でも食後に低下しており,食事と採血時間 について注意する必要がある9).一方,アポ蛋 白は日内変動がなく,食後のアポCIII値とHDL-C 値を用いて,空腹時TG値が推定できる10) (4)脂質検査を行う際の注意点  脂質検査は,循環血漿量の変動時(臥位,心 不全,腎不全)やヘパリン使用時に測定値が低 めとなる.F式LDL-C値も,TG高値の場合,VLDL 中のコレステロール(VLDL-C)を過大評価する ため,低値誤差が生じる.そこで,Martinらは, 新規LDL-C算出法を報告した11).F式では,TG/ VLDL-C=5 として固定化されているが,実際の TG/VLDL-C比は,TG値とコレステロール値によ り変動する.そのため,TG値とnon-HDL-C値の 180 通りの組み合わせから求めた補正係数を用 い,LDL-C値を推定する式を新たに提唱した. LDL-C直接測定法による米国ガイドラインのリ ス ク 分 類 と の 一 致 率 は,F式 よ り も 本 法 が 高 かった.今後,合併症の予測における有用性な ど,引き続き,検討が必要である.  一方,LDL-C直接法は,TG異常高値(TG>800 ~1,000 mg/dl)の場合,通常とは組成の異なる 異常リポ蛋白が存在するため,正しく測定でき ない.I型高脂血症,V型高脂血症でも同様であ り,後述するアポ蛋白とリポ蛋白分画を参考に 病態を評価する.胆汁うっ滞性肝障害時(原発 性胆汁性胆管炎や薬剤性肝障害など)には,LpX と呼ばれるFCとPLに富む異常リポ蛋白が生成 されるため,LDL-C直接法では正確に測定でき ず,TC値とLDL-C値が逆転することもある.通 常,リポ蛋白はアガロースゲル電気泳動で陽極 側に泳動されるが,LpXは寒天ゲル上で陰極側 に泳動される特徴がある12).このような異常リ ポ蛋白の出現時,LDL-CやHDL-Cを直接法や超遠 心法で測定してはいけない. 2)病態評価のために必要な追加検査  アポ蛋白やリポ蛋白分画の測定は,リポ蛋白 の増減を評価し,病態を正確に把握するために 有用である.アポ蛋白は,複数のリポ蛋白に存 在するため,数値の評価や診療への活用に慣れ ることも大切である(図 1,2).便宜上の大ま かな基準範囲や参考所見を表に示した. (1)アポ蛋白検査  アポ蛋白は,現在,6 項目が保険収載され, 2016年4月から1項目のみでも算定可能になっ た(表).アポAIはHDL量,アポB(アポB100) は肝臓から分泌されたVLDLやVLDL由来のIDL およびLDLの粒子総数,アポCIIIはTGRLの量, アポEはTGRLの中で特にレムナントの量を反映 する.  アポBは,主にLDL粒子数を反映するため,ア ポB/LDL-C比の上昇は,LDLの小型化と動脈硬化 リ ス ク を 意 味 す る. 家 族 性 複 合 型 高 脂 血 症 (familial combined hyperlipidemia:FCHL) で は,アポB/LDL-C>1.0またはsd-LDLの存在が診 断基準に挙げられている.  アポCIIは,LPLの補酵素としてTGRLの異化を 促進する.アポCII欠損では,I型高脂血症などの 著明な高TG血症を示す.アポCIIIは,アポCIIに 拮抗してTGRLの増加と関連するほか,HDLにも 含まれるため,著明な高HDL-C血症で増加する.  アポEは,LDL以外のほとんど全てのリポ蛋白 に存在するため,TGRLが増加する病態では高値 を示す.家族性III型高脂血症は,アポEの遺伝的 異常に起因し,レムナントとアポEが増加する. 胆汁うっ滞では,大型のアポEリッチHDLが増加 し,アポEは高値となる.  一方,小腸で合成されるアポB48(保険未収 載)は,食事由来の脂質を運ぶCMとして分泌さ

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れるため,食後高脂血症の評価に有用である. CM代謝は他のリポ蛋白より迅速に進むため,早 朝空腹時に検出されるアポB48は,CMレムナン トの特異的な指標となる. (2)リポ蛋白分画検査  リポ蛋白の増減は,血清を4℃で16時間以上 放置する血清静置試験で簡便に評価できる.CM やVLDLは粒子サイズが大きく,光を散乱するた め,乳び血清の原因となる.CMは血清よりも比 重が軽く,乳び血清を一昼夜置くことで上層の クリーム層(CM)と下層の白濁層(VLDL)に 分離できる.血清静置試験は,WHO分類のI型 とV型の分類に有用であるが,微量なCMは検出 できないため,精密にリポ蛋白の増減を評価す る目的で,電気泳動法やHPLC法を行う.  電気泳動法は,主に荷電や粒子サイズの違い を利用し,アガロースゲル(荷電)や濃度勾配 ポリアクリルアミドゲル(粒子サイズ)を用い てリポ蛋白を分離する.前者は,乾燥させたゲ ルを酵素的に染色し,各分画のコレステロール やTGを定量できる.β位(LDL)~preβ位(VLDL) に幅広いバンドを認めるbroad βパターンは,レ ムナントが増加するIII型高脂血症に特徴的だ が,IV型やV型での偽陽性も多い.後者は,泳 動前に脂質染色を行うため,各分画のコレステ ロールやTGの定量はできないが,VLDLとLDLの 間のmid-band(IDL)の存在やLDL相対的移動度 (migration index 0.4 以上)によるsd-LDLの推定 は,動脈硬化のハイリスク群のスクリーニング に参考となる.ただし,検査施設により濃度波 形の処理方法が異なるため,V型高脂血症や FCHLにおけるsd-LDLの判定が不正確な場合が ある.その場合,健常検体の波形を重ねること, 実際の泳動写真を確認することにより,誤って 解釈することを防ぐことができる.  HPLC法は,イオン強度や粒子サイズの違いを 利用する方法がある.前者は,陰イオン交換樹 脂カラム(保険収載),後者は,ゲルろ過カラム (保険未収載)を用いてリポ蛋白分画を定量す る.前者は,溶離液の塩濃度を段階的に上げ, イオン強度の異なるリポ蛋白を 1 つずつ分離す るため,特にIDLの分離に優れる.後者は,ガウ ス近似法により,デンシトグラム上の 20 個の ピークを分離し,酵素試薬を用いてコレステ ロ ー ル 濃 度 を 定 量 す る. 粒 子 サ イ ズ の 近 い VLDL,IDL,LDLの分離はよくないが,LDLと HDLの分離には優れている.

3. 動脈硬化の残余リスク評価のための

特殊な脂質関連検査

 詳細は成書に譲るが,脂質亜分画検査(Lp (a),RLP-C,sd-LDLコレステロール),脂質酸 化代謝産物(酸化LDL(MDA-LDLなど),オキシ ステロール),脂質関連酵素(LPL,コレステリ ルエステル転送蛋白,レシチン・コレステロー ルアシルトランスフェラーゼ)などは,病態評 価や心イベントの予測にも有用と考えられてい る(表).保険適用は一部に限られるが,今後の 適応拡大が期待される.

まとめ

 脂質異常症のスクリーニングと診断,病態と 治療評価のための脂質検査について概説した. 基本検査により早期に診断し,特殊検査による 動脈硬化の残余リスクの評価を踏まえて治療す ることが重要である.これらの臨床検査によ り,脂質異常症の管理を適確に進めることで, 今後の動脈硬化性疾患の抑制が期待される. 著者のCOI(conflicts of interest)開示:本論文発表内容 に関連して特に申告なし

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文 献

1) 日本動脈硬化学会編:動脈硬化性疾患予防ガイドライン 2012 年版.2012, 13―18, 19―32, 33―36, 37―43, 81―84. 2) 脳心血管病予防に関する包括的リスク管理合同会議:脳心血管病予防に関する包括的リスク管理チャート 2015.

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