九州の蜘蛛(第三報)
長崎県産の蜘蛛(2) 山口 鉄男
(昭和30年1月20日受理)
Fam. ULOBORIDAEウヅグモ科
8 ‑ Hyptiotes montanus kishida オウギグモ
体長約4.5m.m.の小型の蜘妹で.キュウシユウオウギグモと同じような環境に生活してい る。扇網を張るが、また一本の糸を張っただけのものも多い。本州産のものと比較して殆んど 同じような形態、蝕紋をもっている。 ]0月に成熟する。
13/Xl、 1953.大村
9. Uloborus sybotides Boesenberg et strand
カタ!、リウズグモ(カタノ、リヒカゲグモ)
(‑図版】)
最も普通な至る処vz:見られるウズグモである。体長約4m.m位の小形の蜘味で.丸網を張 り.中央に渦巻状のかくれ帯を作る。
Fam. OECOBIIDAEチリグモ科
10. 0ecobius nipponicus kishida
(‑図版2)
ヤマトチT)グモ
約2.4m.m位の小さなくもである。脊甲は円く.腹部は長楕円形、育甲は灰白色でその周 辺は黒くこれに内接して8個の黒点がある。腹部は淡黄褐色で周辺の上半部は黒色.中央から 下辺には黒色小点が散在する。然しこの舞紋は濃厚なものから淡色で殆んど消失するものまで 変異が大きい。
眼は8眼で.育甲の中央に近く眼域を作る。
建物の壁に接したさんの上等vz:薄く糸を紡いでその中に住む。動作は敏活、 7月頃成熟し、
8月初旬少数の卵(10数粒位)を産み疎い糸で包む.二回位,松けて産卵することもある。
25!Vl. 1953、大村、各地に普通である。
藤長崎大学学芸学部生物学教室研究業蹟第13号
‑37‑
Fam.SCYTODmAE ヤマシログモ科
11. Seytodes nigrolineata Simon ヤマシログモ 体長約6−7m.m.位で、脊甲は濃黒褐色、腹部も黒色のくもであるα九州産のものぽ黒相種
が多い。眼は6眼。
床下や物置、押入れ等からよく出てくる蜘蛛で、動作は余り活濃ではなく静かに歩む、♀は あらく糸でかがつた卵塊を口器に附けている。
12.Seytodesthomeica』Latreille ユカタヤマシ・グモ (一図版3)
体長約7m.m.脊甲はほ葉円形、腹部は短い楕円形、全体淡い褐黄色である。脊甲の周辺に 褐色斑紋があり.腹部には心臓斑が中央辺まで走り、黄褐色の4−5条の横条を有する。この 横条は連続したものから、写真に示したように、点状をなし(いるものまで変異が多い。
・眼は6眼で2眼づつ三個所にある。
押入れや物置等でよく見かける蜘蛛である。8月中下旬頃産卵し、あらく糸で包んで口器に 附けて運ぶ。
口から糸を吐いて餌にするものを捕えたり・敵左攻撃したりするので有名である。4月頃か ら初秋までに屋内で時々とれる。5/V、29/冊、 53、大村,12/鴇 54対馬
盲3㌔Loxoseelesr皿fesens(Duβour) イトグモ (一図版4)
体長8−9m.m.脊甲は卵形.腹部は楕円形、脊甲と脚とは暗褐色で.放射溝は明瞭、腹部は 一様に薄い鼠色で、心臓斑が走る外は全く斑紋を有せす,一面に粗毛がある。
眼は6眼で2個づつ3集団をなす。物置等を片づける時発見されるが・極めて少く鮭.今まで に3ゆを得たに過ぎない。運動はのろV・。
18/M、 52,大村2♀、15/W、 53、長崎.(小野田採)1♀。
Fam.THERIDIIDAE ヒメグモ科
14. ArgyTodes bonadea(Karsch) シロガネイゾウロゥグモ (一図版5)
体長約2m.m位の小さなくもで、腹部は横から見ると三角形で.その下部は黒いが、他は 白銀色の金属光沢に輝いている。ジヨ・ウグモ,オニグキ、コガネグモ等の巣に居候してい て.自分では巣は作らない。
県下各地(長崎、大村、諌早.小値賀、五島。対馬)に極めて普通。
一38一
15.Argyrodes fissifrons O.P.cambridge
チリイソウロウグモ(セイロンイソウロウグモ)
普通クサグモの巣に居候している。腹部は先端の細る長三角形である・
3/鴨、 54、対馬、(浦田採)
16。Argyrodes minlaceus(Dolesehall)
アカイ・イソウ・ウグモ(マレーイソウ・ウグモ)
体長約5.5−6m。m.脊甲は赤褐色、腹部は側面から見ると三角形を呈し帯黄赤褐色であるが 液浸すると灰色に変る。尾端に黒色の円紋がある。7−8月に成熟する。
29/冊 54,対馬、(浦田採)
17.Ariamnes eylin rogaster Simon オナガグモ
体長20m.m内外、δは少し小形である。腹部は細長く、色彩は全身緑色のもの、黒味の強 いもの等変異が多い。
樹間にあらく糸を張り渡して生活する。県下各地に極めて普通である。冬は亜成体で葉間に
越冬。
18.Rhomphaea SP. ヤワグモの一種 (一図版7)
体長約7.5m.m.脊甲の形態と単眼の配列等は明らかにRhomphaea属の特徴を示し、
R.saganaB.et st.サガヤリグモに近似するが、尚多少検討の要があるので、しばらく種名決 定を保苗する。
腹部側面は三角形を呈し先端細る。 その基部に近く.小黄斑を有し、他は総て黒褐色、先端近 くは濃色である。液浸したものでは心臓斑が現れ脊面及び側面には黄白色の金属光沢を有する 斑点が多数現われる。
生きている時には腹端を脊方に巻き上げているカ㍉八木沼によれば関西地方産の芽ガヤリグ モは、腹端は動かさないというb
5/四、 52、多良岳(小野田採)
0 ◎
8 8
36 0
◎
第一図 Rhomphaea SP。ヤリグモの一種
1.2.頭胸部の脊面及腹面
3.単眼の配列 4.脊甲上部の側面
一39一
19. Dipoena uniforma Boesenberg et Strand ミジン・グモ
(一図版8)体長約L51n.m.位の極めて小さV・朱色のくもである。脊甲は倒卵形、腹部はほ葉円形であ る。脊甲は朱色、腹部ぽ濃桃色で斑紋はなく白毛を疎生する。
夏日草間に採集される普通種、
全県下に普通。
20,EnoplognathafohieolaBoesenbergetStmnd コノハヒメグモ
(一図版9)
体長約3m.m。脊甲は倒卵形で中央に赤褐縦帯があり、他は緑色、腹部は儲円形で脊面中央 部を巾の広い赤福条が走り、その左右に細い白条が縦走し、その部に左右各4小黒点がある。
その両側には薄い赤色の3斜線がある。液浸したものではこれ等の色は殆んどなくなり、中央 の赤褐条も黒色となる。
葉間に生活し、冬も葉間に亜成体で越冬するものがよく採集される。
県下によく見られる普通種
21.Theridion japonic皿m Boese皿berg et Strand ヒメグモ (二図版1)
体長約3.5m.m.脊甲は卵形、腹部はほ寸円形、全体朱色のものが多V・が、黒味の強めもの から淡朱色まで変異が多い。腹部脊面中央部にはu字形の白線が約%位の処まであの、此の 部から更に左右に白線が伸び、この合流部に黒色円紋を有する。白線に周まれた部分及び後端 匠は黒色部があるものが多い。
草間、樹間にかご網を張る、木の葉を折り曲げてハツリグモのように網の中程に垂し.この 中に潜み、或は産卵するものもある。産卵期は9月中下旬頃である。
県下各地に普通。
22.『TheridiontepidariommC.1・.Koch オウヒメグモ
体長約6 n.m.屋内にかご網を張る最も普通なくもであるが、野外に生活するものも多い。
野外に住むものには、土粒を糸で綴つて、ツリガネグモの巣を思わせるようなものを、かご網 の中程に作つて、この中に潜んでいるものもある。更に木の膚や、木の皮、紙片等をこの材料 に加えているものもあるo
各地に多産する普通種
23・ TheridionsubabidesBoesen.bergetstrand ヨツコブヒメグモ (第二図、3、4)
体長約2m・m.の小形の蜘珠である。脊甲はほ讐卵形で、飴色を呈するが頭端から中窩にか 一40一
けては三角形に濃褐色、腹部は携円形で全体飴色、中央部及側面には白斑が走る。最も大きな 特徴は腹部脊面に4個の小隆起があつてその頂点には黒点があることである・
夏日草間に生活しているが少い。
5/朕、 53、大村
24. Teutanatransiversifoveata Boesenberget Strand カレハヒメグモ (二図版2)
体長約8m。m.脊甲は卵形で全体黒褐色、腹部は携円形で脊面の中央は広く黒紫色を呈しそ の周辺には黄色の細い線がある。左右両側は淡紫黒色。
樹間に生活、成体で越冬・
25/鳳、『54、大村。16/1、 55、長崎
25・ Chorizopes guadrifidus Kishida カナエグモ
(第二二図1、2)
体長約5m.m.この蜘蛛は頭胸部の形態に非常な特徴がある。頭端から円い隆起をなして中 窩部で深く落ちこみ、胸部も低い円隆起を作る♂眼は8眼のうち4眼が正面に2眼づつが両側
面にある。
樹間に生活するが、非常に少く珍品に属する。
17/VI、・51、大村
3
第二図
1.2. Chorizopes guadrifi(ius Kishida カナエグモの脊面及側面の概形
3.4.Theridion subabides B.et,S.
ヨツコブヒメグモの脊面及側面の 4 概形
2
26・ Theridion sp.
(二図版3)
体長7m・m・内外、脊甲はほ讐倒卵形で頭端は細つて突出する。中窩は横向き、全体淡黄褐 色・腹部は紡錘形で腹端は細る、灰褐色の地色で、脊面中央部の左右には各短い2黒条が横八 字状をなし(2つが連続して弧状をなすものもある)尾端にも2黒点を有する。尚脊面には白 点を散在する・尾端に近く長毛を疎生。歩脚は全体黄色、1脚の腿節、脛節、踪節の末端は黒 一41一
色、腿節中部、脛節初部に赤色、2脚の腿節中部に赤色,その末端と脛節、踪節末端に黒色、
3脚の脛節末端に赤色、4脚の腿節末端に赤色、脛も踪節の末端は黒色、山地性のくもで、平 地では決してみかけない、山道の路傍等で低い所に不規則なかご網を張る美しい蜘蛛であ
る0
6/㎜、・53、温泉、高屋山(小野田採)
27. Topo sp。
(二図版4)
体長2・5m。m。の小さくて美しく可愛らしい蜘蛛である。
頭端は円く僅かに突出し、脊甲は円形、腹部は円味をおびた紡錘形で腹端脊部は尖る。脊甲 は全体淡黄白色で、中窩部はたてに長く黒色、腹部は淡黄色で、その前端と後方に近い両側に は各々2黒点がある。中央には8個の淡褐色点があり、後方の黒点に近く左右各1個の褐点を 有する。中央の褐色点と後側方の黒点にはさまれた部分には、淡緑色と白色小点とが混在して 美しい。腹端の突出部の基部には刺毛を疎生する(脊面からは4本見える)F脚は淡白桃色。
眼は頭部前端にあつて8眼、前眼列は後曲し後眼列は前曲し、その両側眼は接する。
草間に住む。
この種ぽ或は未記録種ではないかと思われるので、充分に文献を調査して種名を決定したい
と思う。
八木沼がARACHNOLOGICAL NEWS NO.1(1952)に記載したAriamnes argyrodiform−
isオダカグモに最も近似する。最近Gen.をTopoと改めているので、ここにもこの属名を 採用した。
5/短、 53、大村、
②o
%。8 第三図加SP.
5
灘.箏 1欝翻
㌫島τ㌧『 孟」、、 l l
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一42一
Fam.HNYPHIIDAEサラグモ科
28.ILinyphia marginata C.L.Koch サラグモ (二図版5)
29・]L・yunohamensisBoesenbergetStrand ユノハ了サラグモ この2窟はサラグモの類では最も普通で、県下各地に産する。草間に皿網をはる。
30.ILinyphiaalbohmbataKarseh ヘリジロサラグモ(フキグロサラグモ)−
(二図版6)
体長4m.m.内外、−脊甲はほ穿卵形で濃褐色、腹部は楕円形で濃黒色、脊面にはこの黒色の 地色の上に上部から腹端近くに及ぶ非常に顕著な∩形の白斑があり、これに囲まれた部分に6 対、域外に1対の白点がある。
10/VI、β53、大村
31..:Linyphia peltata WiderReuss クサリサラグモ (二図版7)
体長4m.m.内外、脊甲はほ繋卵形で褐色、その中央を黒褐色の帯状線が走る。腹部は携円 形で先端は尖る。色は汚黄色で脊面には切れ込みのある白色帯状線が左右を走る。
L 樹下、草間に皿網をはる。
5/四、 53、大村
32.Linyphia Phrygiana Walek ワヵレサラグモ (二図版8)
賑約5一脊甲購柳形で淡黒艶、腹部備円形で、鼠色の地色の上に左右に6対
の短い黒線があり7対目の黒線は合して人字状をなす。脊部周辺には切れ込みの深い黒帯があ
る。
留顎、 52.高島、(指方採)
33.LinyphiaHmbatinellaBoesenbergetStrand チピサラグモ (二図版9)
体長3m.m.前後の小形のくもである。脊甲は卵形,腹部は長構円形.腹部脊面の斑紋はフ ヵレサラグモにやや似ているが、脊部の対をなす斜状黒斑は5対でその第1対は非常に長い。
草間に住む。
12/X、 54、長崎(大利採)
一43_
Fam.PHOLCIDAE ユウレイグモ科
34. Pholeus eryptieolens Boesenberg et Strand ユウレイグモ 35.Phole皿s Phalangioides FUssli皿 イェユゥレィグモ (一図版6)
ユウレイグモは当地方の野外では、洞の入口に近い所で少し薄暗いような場所や、山路の切 り落し等で雨のかからないようになつた処などに不規則な網をはつている。
イエユゥレィグモは家の附近、屋内、物置等にあらい不規則な網をはつていて時々採集され る、長崎附近のものには腹部の細長いものと、可なり円味をもつたものとの二型が見られる。
以前は可なり多かつたように思うが、原爆以来は容易に見られなくな た。
36. PholcusinermisKlishida ヶナシユラレイグモ
ユウレイグモよりも少し小型で歩脚には毛がない。当地では木の枝にいたものを採集した次 の一例があるだけである。
12/X、f53、大村
37. Simon五ustypie証sKishida ・ 一 ・ シモ1/グモ 白い殆んど斑紋のない小形のくもで、押入や物置等にいる、ふだんあまり整理をしないよう
な所を片付けていると、はい出してくることが多い。引出しから出てくることもある。「 はあ らく糸で包んで口器に附けている。
15/VI、 53、大村、 (他に長崎、諌早、五島、対馬)県下全般に分布しているようである。
普通種。
Fam.ROCTIDAE ヒラタグモ科
38 Uroetea eompactilis IL.Koeh ヒラタグモ 体長7−8m。m.で、家屋の壁、石垣等に白い扁平な巣を作つてV・る最も普通なくもである。
21/四、 53、大村。 (五島、対馬)県下至る処で周年採集される。
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Linyphia marginata C. L. Koch 7. ‑
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第一図版
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