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川崎晴通 (昭和39年9月30日受理)

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(1)

長崎大学学芸学部自然科学研究報告第16号49‑52 (1965)

昇華法による陶磁器用粘土の脱色

川崎晴通

(昭和39年9月30日受理)

Decolorization of China Clay by Sublimation

Harumichi KAWASAKI

I.緒言

陶磁器用粘土中の鉄分は,鉄分粒子の大きさが焼成後0.3mm以上であれば半透明紬を使用 しても班点を示し1),酸化焼成の場合は製品に赤褐色の色彩をあたえるO筆者はさきに浮遊遍 鉱法による粘土中の鉄分の除去を試みたが,粘土中の粒状の鉄分は大体除去できても,錬鉄砕 されたコロイド状の鉄分は除去できなかった2)。

コロイド状の鉄分の分離除去は機械的には一般に困難であるが,単位体積当りの表面積が大 きいので界面的な化学反応性がよく,化学的処理法が適していると思われる。従来化学的処理 法として高温高圧下で希酸に滑する溶解性を利用した加圧水熱法3),沸点の低い塩化物にかえ

て輝発させる塩素処理法4),チオ硫酸ナトリウムやホルムプルヂヒドを還元剤とする硫酸浸積 法5)6)等が研究されたが,まだ共用化の段階に達していない。

筆者は今回塩化アジモ‑ウムの熱分解による塩化水素処理を試み,ある程度の成果を得たの でここに報告する。

2.脱鉄脱色法の考察

無水塩化7‑/千‑ウムは加熱により約335‑Cで昇華し,次式の如く解離する。

(NEUCl)ア5 (NHO + (HCl) ‑41.9Kcal!mol

グヲ!、ムの法則によれば,多孔質板を掃出する気体の速度は,その密度の平方根に逆比例す るから,それぞれの密度の平方根の逆数を求めると

(HH0 ‑両〒幸i.i4 9ie

1

1

(NCI) ‑‑・フ斎幸0.72 g 」

*長崎大学学芸学部化学教室

(2)

50

川  崎  晴  通

 したがって多孔質である乾燥粘土中に塩化アンモニウムの微結晶が分散している状態では,

加熱分解によって生成したアンモニアガスは粘土外に流出し,流出速度のおそい塩化水素ガス は粘土内に残留する。

 粘土中のコ・イド状水酸化第二鉄は,この残留した塩化水素ガスと反応して塩化第二鉄とな るが,このものは沸点が315。Cであるから塩化アγモニウムが335QC以上に加熱されていれば 粘土外に気体として流出する。

   Fe(OH)3十3HCl=FeC13十3H20−76.5Kcal/mo1

 したがって粘土に適量の塩化アγモニウムを紛末状または水溶液として配合し,塩化アγモ 轟ウムの昇華温度以上に加熱するだけで脱鉄脱色ができる。

3.実験方法と実験結果

実験試料としては一般陶磁器用のバィ土を使用した。大体の化学組成は次の通りである。

       SiO2   A1203   Fe203  1g.10ss

      74.96%    16.14%    1.4496     4.1%

 試料生粘土を105◎Cで24時間乾燥し,乳鉢で粉砕後,この乾燥試料109を磁製小るつぽにと り,20%塩化アンモニウム水溶液を所定量加え,さらに水を加えて試料を泥ショウ状態とし,

105。Cで24時闇乾燥した。これをあらかじめ温度調節した電気ルッボ炉に入れて1時間加熱し てとり出し,放冷後粉砕して粉末の色をJ I S Z8721−1958準拠標準色票と肉眼で比較し た。結果はTable1に示す。

Table l Colour of Clay powder after Calcination    Blended Ammon三um Chloride mg/10g

Temp.OC

  200   250   500   550   400

  0

10YR9〆2

5YR9/2 5YR9/2 5YR9/2 5YR9/2

 100

10YR9/2 10YR9/2 5YR9/2 10YR9/1 10YR9/1

 200

10YR9/2 2.5Y9/2 10YR9/2

10R9/0 10R9/0

 500

10YR9/2 2.5Y9/2 10YR9/2

10R9/0 10R9/0

 400

10YR9/2 2.5Y9/2 10YR9/2

10R9/0 10R9/0

 すなわち姫化アγモニウム添加量200mg,加熱温度350。Cでほとんど脱色されたが純白とは ならなかった。これは粘土中の有機物が炭化したためか,または其他の有色成分によるものか 解明できなかった。しかしながら一般に粘度を使用するヨウ業,たとえば陶磁器工業において は成型後800QC以上の焼成工程に入るものであり,セメγトエ業においては石灰石と配合して さらに高温のキルン作業に入るものであるから,上記の様に加熱脱色された焼成物がさらに高 温に加熱されても発色しなければよいわけである。この点を検討する意味で上記の各温度に加 熱した試料をさらに900QCで1時間加熱した。結果をTable2に示す。

(3)

Temp OC

200一・900 250… 900 500一・9DO 550一・900

400…990

Table

昇華法による陶磁器用粘土の脱色

2 Colour of Clay powder after Calcination Blende(1Ammonium Chloride mg1109

  0

5YR9/2 5Y良9〆2

ワ.5YR9/2

5YR9/2 5YR9/2

 100         200         500

5R9/2  5R9/1  5R9/0 10R9/2  5R9/1  5R9/0

2.5YpR9/2   5R9/2    5R9/2

10R9/2  10/0   10/0 ユOR9/ユ  10/0   10/0

 400 5R9/0 5R9/0 5R9/1

10/O lO/0

51

 以上の結果から塩化ア;ソモニウム添加量200mg以上,加熱温度3500C以上のものは,さらに 高温に加熱した場合,発色するどころか完全に脱色されることが明らかである。

 350QCで加熱した場合,加熱開始後まもなく塩化アγモニウムの白煙が炉より溌生し,約20 分間継続する。これは未反応の塩化水素が大気中に於てふたたびアγモニアと結合したためと 考えられる。このこととも考えあわせ脱色に要する時間をしらべた。結果をTable3に示す。

T&ble 3 Colour of Clay powder after Calcination

Heating hour    O.5    1.0    1.5

Blen(led Ammonium Chloride mg/109

 0   100   200   500   400 5YR9/2 ,10R9/工 10R9/0 10R9/0 10R9/0 5YR9/2 10R9/1 10:Rg10 10R9/0 10R9/0 5YR9/2 10R9!1 10R910 10R9/O lO:R9/0

すなわち加熱時間は30分間でも充分であり,このことは本脱色法がトンネルキルγや,・一 タリーキルγの様に温度匂配のある加熱法でも効果のあることを示している。

 また粘土中の鉄分をすべてFe20・として,当量の塩化アγモニウム量を計算すると次表の 如くなる。

   Fe203十6NH4Cl=2FeC13十6NH3十3H20

Fe203%

 1.0  1。1  1.2  1。3  1.4  1.5

Fe203mg/109   100   110   120   130   140   150

NH乙Clmg/109    139    156    167    180    195    208

 本実験にはFe203として,L44%の粘土を使用したから,所要の塩化アγモニウ!、量は大 体において鉄分と当量ということになる。

 粘土中の鉄分は酸化物,硫化物,水酸化物等が複雑な鉱物組成をとっているのであるから塩 化水素との反応も複雑であり,したがって上記の当量値は偶然的なものといわざるを得ない。

しかし所要の塩化アγモニウム量を推定するのに有力な手がかりとなるであろう。

(4)

 52     川崎晴通

       4.結    語

 陶磁器用粘土に含有鉄分の当量に相等する塩化アγモニウムを配合し,塩化ア}/モニウムの 昇華温度以上に加熱するだけで,脱鉄脱色することができ,さらに高温に加熱しても発色しな かった。

 従来のガスの発生をともなう処理法では,機器の腐食,農林水産物の被害等をまねくもので あるが,本法による場合大気中に放出されるのはアγモニアガス,および塩化アγモニウムの 微粉である。したがって除塵器等により塩化アγモニウムを回収すれば公害はほとんど無くな

る。

 また一般に粘土に可溶性塩類を含有させると可塑性が低下するが,本処理法による場合塩類 を残さないので可塑性は良好である。

      参  考  文  献  1)大石;窯業会誌 71,C541(1965)

 2)川崎:長大学芸自然科学研究報告 15,15〜16(1964)

 5)檜山:名工大3,265(1951)

 4)鈴木:工化 54,445(1951)

 5)水野=特許公告 No.19680(1961)

 6)蜂須賀3特許公告 No.7759(1962)

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