• 検索結果がありません。

学位論文審査の要旨

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "学位論文審査の要旨"

Copied!
4
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

博 士 ( 農 学 ) 天 野 朋 子

学 位 論 文 題 名

ブ夕体外成熟卵子の発生能を制御する要因に関する研究 学位論文内容の要旨

  ブタ 体外胚 の作出 効率を高めるためには、発生能の高い体外成熟卵子を作成する必要がある。

体外 成熟卵 子の発 生能は 細胞質の 成熟度 と関わ ると考 えられ ているが、細胞質成熟に伴って卵 子細 胞質に 起こる 現象や 、その後 の初期 発生に 影響を 及ばす 機構はほとんど明らかにされてい ない 。本研 究では 、ブタ 卵子の初 期発生 を制御 する要 因につ いて明らかにすることを目的とし て、 それら の要因 が卵子 成熟と関 わりを 持って いるの かその 機序を解析するとともに、卵丘細 胞が 卵子の 細胞質 成熟に 果たす役 割につ いて検 討した 。

1.ブタ成 熟卵子 の初期発生を制御する要因

  成熟卵子における細胞質内カルシウムイオン濃度([Ca2゛]i)の上昇は、減数分裂の再開や表 層顆 粒の放 出、前 核の形 成を促 進するこ とによ って初 期発生 を誘起させることが報告されてい る。 これら の報告 は細胞外から人為的にカルシウムイオンを流入させる手法に基づいているが、

受精時に観察される[Ca2゛]i上昇には細胞外だけでなく、細胞内に蓄積されているカルシウムイ オンの動員が必要である。卵子における[Ca2゛]i上昇は、イノシ卜ーノレ、トリスリン酸(IP3)を介 した 小胞体 からの カルシ ウムイ オン放出 が重要 な役割 を果た している。第ー章では、より生理 的な条件で誘起した[Ca2゛]i上昇が卵子の活性化および胚発生に与える影響について知見を得る こと を目的 とし、 濃度の異なるIP3をブタの体外成熟卵子に注入した際に起きる[Ca2゛]i上昇、

注入 後の卵 子活性 化率、 および 胚発生率 を観察 した。 本章の 実験結 果より 、IP3注入 がブタ成 熟卵子に[Ca2゛]i上昇と活性化および胚発生を引き起こすことが実証された。また[Ca2゛]iの上 昇と 発生率 は注入 したIP3に 対して 濃度依 存的に高まったために、IP3に由来する[Ca2゛]i上昇 とブタ卵子発生能に密接な関連があることが示唆された。

2.成熟 中の卵 丘細胞の 存在が ブタ卵 子のIP3へ の反応 性に与 える影響

  卵 子がIP3注 入に対 してカ ルシウ ムイオ ンを放 出する 能カは 、成熟中 に高ま り、受精時のカ ル シウム オシレ ーショ ンの強さ を制御 し、初 期発生 を促進する重要な要因であると示唆されて い る。し かし、 成熟中 の卵子に おけるIP3への 反応性が どのよ うな要 因によ って促進されてい る のか、 その機 構は明 らかにさ れてい ない。 第二章 では始めに卵丘細胞の存在がブタ成熟卵子 のIP3に 対 する反 応性に 影響を 及ぼし ている のか、 次にIP3に 対する 反応性 は卵子 の発生能 と 関 係があ るのか 、を明 らかにす るため に実験 を行っ た。そ の結果 として 、IP3への反応性は卵 丘 細胞の 存在に よって 制御され ている ことが 示唆さ れた。さらに、成熟培養期間中に卵丘細胞

101

(2)

を経 時的 に除 去 した 後成 熟さ せ た卵 子のIP3に対する反応性は 、卵丘細胞の付着時間が長い ほ ど高 いこ とが 示 され た。 またIP3を注 入し た後の活性化率およ び卵割率は、卵丘除去区から 得 られ た成 熟卵 子 の方が、卵丘細胞付 着区や卵丘細胞共培養区に 比べて低い傾向が観察された 。 従っ て、 成熟 中 の卵 丘細 胞の 存 在がIP3に 対する反応性を介し て初期発生を支持している可 能 性が 示唆 され た 。

3. 成熟中の卵丘細胞の存在が ブタ卵子のグルタチオン蓄積 に与える影響

  受 精後 、正 常な 卵子発生のため に必須の現象である雄性前核 形成には、成熟中の卵丘細 胞の 存 在 が重 要で ある ことが、ブタを 含めた様々な動物種で知られ ている。しかし卵丘細胞が どの よ うにして卵子の雄性前核形 成能に関わっているのか、判 っていない。第三章では、卵丘細胞―

卵 子 間の ギャ ップ 結合を介した物 質移送が雄性前核形成に果た す役割を知るために、成熟 培養 中 にギャップ結合阻害剤であ るヘプタノールを添加した卵 子の雄性前核形成の様子を観察した。

さ ら に、 雄性 前核 の形成過程に重 要な役割を果たしていると示 唆されているグルタチオン が、

成 熟中の卵丘細胞ー卵子間の 物質移送と関わっているかを 調べるために、卵子細胞質内グルタチ オ ン 量も 測定 した 。また、細胞質 内のグルタチオンが実際に雄 性前核形成を促進するかを 確認 す る ため に、 成熟 中の卵丘細胞の 存在とは関係なくグルタチオ ンを蓄積させる作用のある シス テ ア ミン を培 養液 に添加し、卵子 の雄性前核形成率およびグル タチオン量の計測をした。 これ ら の結果から、卵子成熟中に おける卵丘細胞一卵子間のギ ャップ結合を介した物質移動が受精後 の 雄 性前 核形 成能 に必要であるこ とが示された。またギャップ 結合を介して雄性前核の形 成に 関 わる物質として、グルタチ オンが重要であることも示唆 された。

  以上のことか ら、ブタ成熟卵子のIP3由来の[Ca2゛]i上昇は、初期発生能に関与していること が 明ら かと なり 、さ ら に成 熟中 の卵 丘 細胞の存在は、細胞質成熟の ー要因である卵子のIP3へ の 反応 性を 増強 させることも観察された 。同様に卵子の雄性前核形 成能も細胞質成熟に関わる 一要因であり、 卵丘細胞によって促進され ることが知られているが、その機序には卵丘細胞―卵 子 間の 物質 移送 が重要であることが示さ れた。これらの一連の研究 成果は、ブタ体外成熟卵子 の 初期 発生 を制 御する機構について新た な知見を加え、今後発生能 の優れたブタ体外成熟卵子 を作出する上で 、基礎的な情報を提供する ものと示唆された。

102

(3)

学位論文審査の要旨

主 査    教授    渡邉 智正 副 査    教授    近藤 誠司 副 査    助教授    上 田純治   

副 査    助教授    堂 地    修(酪農学 園大学酪農学部)

学 位 論 文 題 名

ブ夕体外成熟卵子の発生能を制御する要因に関する研究

本論文は図9 、表11 を含む61 ぺージからなる和文論文で、別に2 編の参考 論文が添えられている。

   ブ タ 胚 の 体 外 作 出 効 率 を 高め る ため に は、 発 生能 の 高い 体 外成 熟 卵子 を 作 製 す る 必 要 が あ る 。 ブ タ 体 外成 熟 卵子 の 発 生能 は 卵子 細 胞質 の 成熟 度 と関 わ っ て い る と 報 告 さ れ て い る が、 卵 子発 生 能 を制 御 する 要 因お よ び卵 子 発生 能 と 卵 子成 熟 との 関 わり に つい て は ほと んど知ら れていない 。本研究の 目的は、

ブ タ 成 熟 卵 子 の 発 生 能 を 制 御す る 要因 に つ いて 検 討す る こと 、 およ び 卵子 発 生 能 と 卵 子 成 熟 と の 関 わ り を解 析 する た め に、 卵 丘細 胞 が卵 子 の細 胞 質成 熟 に 果 た す 役 割 を 明 ら か に す るこ と であ る 。 得ら れ た研 究 結果 は 以下 の よう に 要 約 され る 。

1 . ブ タ 成 熟 卵 子 の 発 生 を 制御 す る要 因

   成熟卵子における細胞質内カルシウムイオン濃度([Ca2 ゛]i )の上昇は、減数 分 裂 の 再 開 や 表 層 顆 粒 の放 出 、前 核 の形 成 を促 進 す るこ と によ っ て発 生 を誘 起 さ せ る と 報 告 さ れ て いる 。 これ ら の報 告 は細 胞 外 から 人 為的 に カル シ ウム イ オン を 流入 さ せ る手 法 に基 づ ぃて いるが 、受精時に 観察される [ Ca2 ゛] i 上 昇 に は 細 胞 外 だ け で な く、 細 胞内 に 蓄積 さ れて い る カル シ ウム イ オン の 動員 が必要である。卵子における[ Ca2 ゛]i 上昇は、イノシトールトリスリン酸(IP3 ) を 介し た 小胞 体 か らの カ ルシ ウ ムイ オン放 出が重要な 役割を果た して、いる 。 第 一章 で は、 よ り 生理 的 な条 件 で誘 起した [ Ca2 ゛] i 上昇が 卵子の活性 化およ び 胚 発 生 に 与 え る 影 響 にっ い て検 討 し、 ブ タ成 熟 卵 子の 発 生を 制 御す る 要因 を 明 ら か に す る こ と を 目 的 と し た 。 濃 度 の 異 な る IP3 を ブタ の 体外 成 熟卵 子 に 注入 し た際 に 起 きる [ Ca2+ ] i 上 昇、 注 入後 の 卵子 活 性化 率 、お よび 胚発生 率を観 察した結果 、エ P3 注入が ブタ成熟卵 子に[Ca2 ゛]i 上昇と活性化および胚

‑ 103

(4)

発生を引き起こすことが実証された。また[Ca2 十]i の上昇と発生率は注入し たエP3 に対 して濃度依存的 に高まったた めに、IP3 による細胞質内カルシウ ムイオンの動員によって引き起こされた[Caz ゛]i 上昇は、ブタ成熟卵子の発 生能を制御する要因であることが示唆された。

2 .    成 熟中の卵丘細 胞の存在がブ タ卵子のIP3 への反応性に与える影響    卵子 が IP3 注 入に対して カルシウムイ オンを放出す る能力、すなわ ち IP3 への 反応性は成熟 中に高まり、受精時のカルシウムオシレーションの強さを 制御 し、発生を促 進すると報告さ れている。し かし、IP3 への反応性が促進 され る機構は明ら かにされていない。第二章では、はじめに卵丘細胞の存在 と ブ タ成 熟卵 子の IP3 に対する反応性 との関わり、 次にIP3 に対する反 応性 と卵 子の発生能と の関係を明らかにするために実験を行った。その結果、成 熟中 に卵丘細胞が 付着していた卵子では、卵丘細胞を除去した卵子に比べ、

高 い IP3 へ の反 応性が 観察された。従 ってIP3 に対する反 応性は卵丘細 胞の 存在 によって制御 されていること が判明した。 またIP3 を注入した後の活性 化率および卵割率は、成熟中に卵丘細,胞が付着していた成熟卵子の方が、除 去し たものより高 い傾向が観察された。このことから、成熟中の卵丘細胞の 存在 は、 IP3 に対する反 応性を介して 発生能を高めて いる可能性が示唆され た。 さらに成熟中 に卵丘細胞を経時的に除去した場合、成熟培養開始から 12 時 間 以内 にお ける 卵丘細胞の除 去は、成熟卵 子の IP3 への反応性 および IP3 注入 後の活性化率 および卵割率を低下させるとぃう傾向も観察された。この 結果は、成熟培養初期における卵丘細胞の存在が、 IP3 への反応性を獲得し、

発 生 能 を 制 御 す る 上 で 重 要 で あ る こ と を 示 唆 す る と 考 え ら れ た 。 3 .   成熟中の卵丘細胞の存在がブタ卵子のグルタチオン蓄積に与える影響    受精後、 正常な卵子発生のために必須の現象である雄性前核形成には、成 熟中の卵 丘細胞の存在が重要であることが、ブタを含めた様々な動物種で知 られてい る。しかし卵丘細胞が卵子の雄性前核形成能に関わる機構について は不明で ある。第三章では、卵丘細胞―卵子間のギャップ結合を介した物質 移送が雄 性前核形成に果たす役割を知るために、ギャップ結合阻害剤を用い て実験を 行った。その結果、卵丘細胞ー卵子間のギャップ結合を介した物質 移送が雄 性前核形成過程に必要であることが示された。またギャップ結合を 介して雄 性前核の形成に関わる物質として、グルタチオンが重要であること も示唆さ れた。

   以上の ように、本研究はブタ体外成熟卵子の発生を制御する機構にっいて 新たな 知見を加え、発生能の優れたブタ体外成熟卵子を作出する上での基礎 的な情 報を提供するものである。よって審査員一同は,天野朋子が博士(農 学 ) の 学 位 を 受 け る に 十 分 な 資 格 を 有 す る も の と 認 め た 。

104

参照

関連したドキュメント

第 1

   スケトウダラの遺伝的な変異性を検討するため、北太平洋の主産卵場から 産卵時期のスケトウダラ親魚を採集した。筋肉を採取した後、常法にて粗 DNA を抽 出した。粗

   最後に、申請者はイトウの産卵に及ぽすダム建設の影響を推定している。ま ず 、牧 草地 率 40 %を境 とし て32 支流

検証し、制御性能を整定時間と残留定常振動の振幅によって評価した。制御系はフイ

層状化合物が一層または数層からなる物質を原子層物質という.例えば,グラファイトの 層の一層で形成されるグラフェンは, 2004 年に Geim らにより発見され, massless

さらに、異核の MM’@I h -C 80 錯体の量子化学計算を行い、電子状態に基づき 3 つのグルー プに分類することに成功した。本検討は、異核の MM’@I h

カンタリジン(テルペノイド)は,昆虫がもつ有毒な防御物質の一つである.この物質

最も顕著な促進作用が見られた Bacillus 属細菌( Bacillus licheniformis に近縁)につい