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【学位論文審査の要旨】

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Academic year: 2021

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【学位論文審査の要旨】

本学位申請論文は、看護学生が仲間や研究者とともに実習経験を振り返ることにおいて、

その経験がいかなる意味を帯びて立ち現れ、新人看護師の態度にいかに位置づけられるの かを明らかにした現象学的研究である。研究参加者は看護系大学生6名であり、4年次秋、

卒業時、新人看護師となった 2 ヶ月半後に、グループインタビューと個別インタビューに よって振り返りが行われた。結果では、実習中には言葉になっていなかった経験や実践が、

各時期における振り返りによって、模索されながら言語化され、意味づけられたことが解釈 された。併せて、その振り返りにおいて、看護とは何であるか、自分たちの実践が看護にな っているかという問いが生まれ、その問いに応えつつ語り合うことを通して、看護師として の態度がいかに形作られているのかが解釈された。

論文審査会では、学生と新人看護師の経験の区別、生きられた経験と振り返りの経験のい ずれに焦点を当てた研究であるか、インタビューでの研究者の応答、結果・考察の「看護と 看護でないこと」の区別の妥当性、研究の限界に研究者の立ち位置や調査期間を挙げたこと の妥当性、研究者の立場と語りの内容の関係、教育への示唆などについて質疑がなされた。

申請者からは概ね妥当な回答が得られ、検討が必要な事項については、洗練していくための 課題として真摯に受け止められていた。

公聴会では、インタビューの設定時期の根拠、結果の構成、倫理的な配慮のプロセス、研 究者と研究参加者の共通の背景や信頼関係を基盤とした語りの可能性等について質疑があ り、申請者は適切に回答をしていた。

以上の議論を受け、本論文は次の点において、看護学および看護教育・実践に貢献し得る と評価された。

第1に、本研究の成果は、まさに実習をしているその時には、何が学ばれているのかが明 確に意識されないままであった実習での経験が、振り返ることによって「段階的な学びの過 程」として現れ、その意味が解釈された点にある。これは、教育において予め準備された段 階的学習過程とは異なる、学習者にとっての時間的な秩序において「学び」が実現している こと、またそれゆえに、振り返って語ることが長期的な視点からみて学習を支える重要な要 件となっていることが示された。

第 2 に、学生たちにとって患者との「関わり」が成立するとはどういうことなのかが、

「深い関係」「濃い時間」「向き合えた」「入り込むことができた」などの語りの解釈を通し て示された点にある。学生たちには、相互的な関係としての看護の成立が、実習において体 感されていること、そしてその経験が、看護とは何かを考えていく手がかりとなっているこ とが見出された。

第 3 に、本研究が教育者としての研究者の立場から得られた豊かな語りに導かれた成果 である点が評価された。現象学的研究は、研究者の立場自体を問い直し、事象との距離を丹

(2)

念に検討する。本研究においては、実習や学習過程に直接的・間接的に関わった教員として の研究者という立場と、信頼関係を基盤とした共感的理解が、共同の語りを生み、実習経験 の意味を了解できるものとしていた。他方で、この研究者と研究参加者の関係のあり方が、

グループおよび個別の語りをいかに成立させたのかを前面に出し、独自の研究方法として 議論することが期待され、また課題とされた。

以上より、申請者の研究は博士論文として妥当な水準に至っており、博士(看護学)の学 位にふさわしい専門的知識と能力を備えていると判断した。

参照

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