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学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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博 士 ( 理 学 ) 松 崎 俊 明

     学位論文題名

  Study on the Pseudogap and Superconducting     Condensation Energy of La2 ーxSrXCu04

(La2 ―XSrXCu04 の擬ギャップと超伝導凝集エネルギーに関する研究)

学位論文内容の要旨

  1.序論

  銅酸化物高温超伝導体が発見されて16年余り経つ。その発見から問もなく、高温超伝 導も従来型超伝導体と同様に2個のホール(電子)がクーパー対を形成し、それらがボーズ 凝縮を起こすことによって生じることが分かった。しかし、クーパー対の具体的形成機構 は未だ未解明のままとなっている。

  高 温 超伝 導 体 の特 徴 の1っ と し て、NMRの丑 、STS、ARPES等の 実 験 で見 っか った 常伝導状態での擬ギャップがある。この擬ギャップは超伝導ギャップ△oと同程度の大き さを持ち、d波超伝導体に対する平均場の特性温度Zふ (=2△0/4.3kB冫Tc)付近から成長 し、疋で連続的に超伝導ギャップヘ移行すると考えられている。このため、擬ギャップが 高温超伝導の発現に果たす役割に大きな関心が寄せられている。しかし、代表的な銅酸化 物高温超伝導体の1っであるLa214系では、まだ擬ギャップの有無が確認されておらず、

擬ギャップが高温超伝導体に普遍的な現象かどうかが問題となっている。また、従来型超 伝導体と違って、高温超伝導体の疋は△oとスケールしないことぁミ知られている。銅酸化 物超伝導体の疋はホール濃度の増加と共に上昇から下降に転じ、いわゆる釣鐘型のホー ル濃度依 存性を 示すが、 走査トン ネル顕 微鏡(STS)や角度分解型光電子分光(ARPES)実 験で 測 定 され た △oはTcが上 昇 す るホ ー ル 濃 度領 域でも単 調に減 少するの である。

  銅酸化物高温超伝導体では上記の特徴に加え、超伝導の凝集エネルギーぴ (O)に関わる 問題がある。それは、Tcや△oと共に超伝導を特徴付ける重要なエネルギースケールであ るU(O)が最適ホール濃度に近いオーバドープ領域からアンダードープ領域にかけて著し く減少するという現象である。この減少はクーパー対の形成機構と密接に関係するとの認 識 か ら 大 き な 関 心 が 持 た れ 、 こ れ ま で 様 々 な 観 点 か ら 議 論 さ れ て き た 。   以上の状況を踏まえ、本研究ではLa214系の高温までの電子比熱をホール濃度を系統的 に変えながら測定し、この系における擬ギャップの有無と凝集エネルギーU(O)の著しい 減少の原因を調べた。

2.実験

  擬ギャップの有無や凝集エネルギーび (O)を調べるためには電子比熱を高温まで測定す る必要がある。高温まで電子比熱を測定するには格子比熱の見積もりが最も重要な問題と なる。高温超伝導体では、磁場を印加する代わりに少量の不純物を添加して超伝導を抑制 して格子比熱を求めるが、その際、不純物添加に伴う格子比熱の変化が問題となる。我カ は、Ni不純物を用いて超伝導を抑制する場合、格子比熱はほとんど何も影響を受けなぃこ

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(2)

とを見出し、La214系の正確な電子比熱を高温まで測定することに成功した。比熱の測定 は断熱ヒートパルス法を用い、2〜120Kの温度範囲で行った。また、疋は超伝導の反磁性 の 測 定から 決めたが 、この 測定にはQuantum Design社製のMPMS磁化測 定装置 を用い た。

3.実験結果と考察

  得られた結果を項目毎に以下に記す。

(i) La214系の電子比熱

  常伝導相(T冫丑)の電子比熱係数7(=Cei/T)は、高ホール濃度(x=0.22)の試料では 一定値をとるが、x<0.20の試料ではある温度T′(冫疋)でブロードで小さなピークを示し、

低温側へ向かって緩やかな減少を示す。T′(冫疋)以下で見られる1の減少はフェルミ準位 EFでの状態密度の低下を意味する。また、ピーク温度ずはホール濃度に大きく依存する が、T′はLa214系の平均場の特性温度疋。にほば一致する。これらのことから、La214系 においてもx<0.20の試料では、Tco付近から擬ギャップが発達するものと考えられる。実 際、最 近にな って中性 子実験やNMR実 験からもLa214系における擬ギャップの存在を支 持する結果が報告された。

(ii)超伝導の凝集エネルギー

  La214系の電子比熱係数7から見積もった凝集エネルギーU(O)のホール濃度依存性は、

これまでに報告されている結果と定性的に一致するが、定量的にはアンダードープ領域で 40Vo程度のずれが見られる。しかし、擬ギャップ領域(x≦0.20)でび(0)が著しく低下す るという特徴は確認できた。

  d波 超伝導 体の凝集 エネルギ ーU(O)は、EFにおけ る状態密 度N(O)とギャップの最大 値△oを用いてび(0)〓QN(0)△8と表すことができる。この式を用い、低温での7値から 求めたN(O)およびトンネル実験から求めた△oについてび(0)を計算してみると、高ホー ル濃度の試料(x〓0.22)では測定値と良く一致するが、擬ギャップ領域では実測値より遥か に大きな値となった。この擬ギャップ領域での大きな不一致は、実効的な超伝導ギャップ の大きさ△。f´として△oを用いたことに起因すると思われる。高ホール濃度領域以外で は疋はp△。にスケールすることから、△。ffとして△oではなくpp△o(r8〓co'tr,st)を用 いるべきと思われるからである。そこで、実効的な超伝導ギャップ△。ffを,8p△oとして、

び (O)〓aN (O) (pp△0)2を計算してみると、p= 4.5としたときの計算値は擬ギャップ領域 を含む全てのホール濃度領域で実測値と定量的に→致した。このことから、擬ギャップ領 域では 疋やU(O)を 決める△ 。〃は △oでなくpp△oであり、擬ギャップ形成に伴うN(O) の減少まで考慮することで擬ギャップ領域におけるび(0)の著しい低下を定量的に説明で きることが分かった。

(iii)擬ギャップ領域での実効的超伝導ギャップ

    擬ギャップ領域では、何故疋やU(O)を決める実効的超伝導ギャップの大きさが△oで なく、r8p△oとなるかを議論した。我々は擬ギャップが成長しても、¢でアーク状となっ て生き残る(7r/2,rr/2)付近のフェルミ面に着目した。アーク状のフェルミ面にあるホー ルはCu02面内で非常に大きな易動度をもっており、これらのホールがクーパ対を形成す るとクーパ対の運動がコヒーレントになると考えられるからである。そして、アーク状の フェルミ面上に形成されるギャップが実効的な超伝導ギャップとして働くと考え、そこで のギャップの最大値が伽△oとなる可能性を指摘した。

  以上、本研究ではLa214系においてもTcoから擬ギャップが形成されることを確認し、

超伝導転移温度疋や凝集エネルギーび(0)を決定する実効的な超伝導ギャップの大きさが 擬 ギ ャ ッ プ 領 域 で は △oか らpp△o( p〜0.4)と な る こ と を 明 確 に し た 。     ―10―

(3)

学位論 文審査の要旨 主査

副査 副査 副査

教 授 教 授 教 授 助教 授

伊 土 大 川 小 野寺 小 田

政 幸 房 義     彰   研

     学位論文題名

  Study on the Pseudogap and Superconducting     Condensation Energy of La2 ―XSrXCu04

(La2 −XSrXCu04 の擬ギャップと超伝導凝集エネルギーに関する研究)

  銅 酸 化 物 高 温 超 伝 導 体 の 低 ホ ー ル 濃 度 領 域 で は 、 え が 超 伝 導 ギ ャ ッ プ の 最 大 値 & と ス ケ ー ル せ ず 、 超 伝 導 の 凝 集 エ ネ ル ギ ーU(O)も 著 し く 減 少 す る こ と が 知 ら れ て い る 。 こ れ ら の 問 題 は 、 高 温 超 伝 導 の 発 現 機 構 と 密 接 に 関 係 す る と の 認 識 か ら 大 き な 関 心 が 持 た れ 、 こ れ ま で 様 々 な 観 点 か ら 議 論 さ れ て き た 。 申 請 者 は 、 こ れ ら の 問 題 の 背 後 に 常 伝 導 相 で の 擬 ギ ャ ッ プ 形 成 が あ る と 推 測 し 、La214系 の 電 子 比 熱 の 研 究 か ら 凝 集 エ ネ ル ギ ーU(O)の 著 し い 減 少 と 擬 ギャップ形成との関連 性を詳しく調べた。

  申 請 者 は 、Ni不 純 物 を 添 加 し て 超 伝 導 を 抑 制 し た 試 料 の 格 子 比 熱 を 用 い る こ と で 信 頼 陸 の 高 い 電 子 比 熱 を 測 定 す る こ と に 成 功 し 、 以 下 に 記 す 興 味 深 い 結 果 を 得 た 。 (i) La214系における常 伝導相の電子比熱

  xSO. 20の電子比熱係数Y(二ニCel/T)から、常伝導相の平均場の特陸温度ゑ。〓2Ao/ (4〜5) kB(〉ゆ 以 下 で 、 犀 で の 状 態 密 度N(O)が 擬 ギ ャ ッ プ 形 成 に 伴 っ て 緩 や か に 減 少 す る こ と を 確 認 し た 。 ま た 、 こ のN(O)の 減 少 とLa214系 の 常 伝 導 相 で 見 ら れ る ネ ル ン ス ト 信 号 異 常 と の 関 連 性 を 指摘した。

(ii)超伝導の凝集エネ ルギー

  超 伝 導 相 の 電 子 比 熱 か ら 凝 集 エ ネ ル ギ ーU(O)を 系 統 的 に 見 積 も り 、d波 超 伝 導 体 の 凝 集 工 ネル ギー 駅O)二 ニocN(O) A02 (a=0.4) を基 に解 析 を行 った。擬 ギャッブ領域では、トンネル 実験 等 か ら 求 め た & を そ の ま ま 超 伝 導 の 特 陸 エ ネ ル ギ ー と す る と 、U(O)の 計 算 値 は 実 測 値 よ り 遥 か に 大 き い 値 と な る 。 そ こ で 、 申 請 者 は 、 擬 ギ ャ ッ プ 領 域 で は アcがPに ス ケ ー ル す る こ と か ら 、 超 伝 導 の 特 陸 エ ネ ル ギ ー と し て &の 代わ りにppAo(pニ ニ4.5) を用 いてU(O)を 再評 価し た 。 そ の 結 果 、 擬 ギ ャ ッ プ 領 域 を 含 む 全 て の ホ ー ル 濃 度 領 域 でU(O)の 実 測 値 を 定 量 的 に 説 明できることを始めて 明らかにした。

(iii)擬ギャップ領域に おける超伝導の特陸エネル ギー

  さ ら に 、U(O)や 五 を 決 め る 超 伝 導 の 特 陸 エ ネ ル ギ ー が 擬 ギ ャ ッ プ 領 域 で[3pAoと な る 理 由 を 、 擬 ギ ャ ッ プ が 成 長 し て も1ま で ア ー ク 状 と な っ て 生 き 残 る ( 兀/2, 兀/2)付 近 の フ ェ ル ミ 面 に 着 目 し て 議 論 し た 。 そ し て 、 ア ー ク 状 の フ ェ ル ミ 面 に あ る 大 き な 易 動 度 を も っ ホ ー ル が

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クーパ対のコヒーレントな運動に関与すると考えると、このフェルミ面に形成されるギャツ プ がち ょう ど擬 ギャ ップ 領域 での特 陸エ ネル ギーppAo に対応することを指摘した。

  

以上の申請者の研究は、高温超伝導の発現機構に関する新たな知見をもたらすものとし

て高く評価できる。また、本研究に関連する申請者の6 編の論文は、いずれも権威ある国際

学術誌に公表されている。よって審査員一同は、著者が博士(理学)の学位を受けるに十分

な資格を有すると認めた。

参照

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