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学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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博 士 ( 医 学 ) 本 宮    真

     学位論文題名

Activity − dependent regulation of BRINP family genes

(神経活動による新規神経特異的遺伝子BRINP フんミリーの発現制御)

学位論文内容の要旨

【 背 景 と 目 的 】 : 我 々 は こ れ ま で に 、 交 感 神 経 細 胞 の 分 化 過 程 に お い て 骨 形 成 因 子(BMP Bone morphogenetic protein)と レ チ ノ イ ン 酸(RA)に よ っ て 発 現 が 調 節 さ れ る 新 規 タ ン パ ク 質 フんミ リー、BRINP (BMP/RA‑lnducibleぷニural specific Protein‑l,2,3)を同定した1,2、。BRINP フ ァ ミ リ ー は 、 種 間 で 保 存 性 が 極 め て 高 い が 、 既 知 の タ ン パ ク 質 と 類 似 性 を 全 く 有 さ な い 新 規 の タ ン パ ク 質 フ ん ミ リ ー で あ り 、 中 枢 お よ び 末 梢 神 経 系 の 広 範 な 領 域 に お い て 発 達 期 か ら 神 経 細 胞 特 異 的 に 発 現 し て い る 。 ま た 我 々 は 強 制 発 現 さ せ た 各BRINPが 正 常 動 物 細 胞 に 対 し て 細 胞 周 期 抑 制 能 を 有 す る こ と を 明 ら か に し た 。 こ の 知 見 か ら 、 各BRrNP遺 伝 子 は 増 殖 性 の 神 経 幹 細 胞 か ら 非 増 殖 性 の 神 経 細 胞 へ と 分 化 す る 過 程 で 、 細 胞 周 期 の 抑 制 を 介 し た 神 経 分 化 調 節 に 関 与 し て い る と 考 え ら れ る 。 一 方 で 、 成 熟 期 に も 各BRINP遺 伝 子 の 神 経 細 胞 特 異 的 な 発 現 を 認 め る が 、 神 経 組 織 に お け る 生 理 的 役 割 は ほ と ん ど わ か っ て い な い 。 今 回 我 カ は 、 神 経 活 動 が 中 枢 神 経 に お け るBRINPフ ァ ミ リ ー 遺 伝 子 の 発 現 に 及 ぼ す 影 響 を 検 討 し た 。

【 方 法 と 結 果 】 : 神 経 細 胞 興 奮 の モ デ ル と し て 、8週 齢 のC57/BL6雌 マ ウ ス に グ ル タ ミ ン 酸 受 容 体 ア ゴ ニ ス 卜 で あ る カ イ ニ ン 酸(20mgg) を 腹 腔 内 投 与 し た 。 ま ず 、 カ イ ニ ン 酸 刺 激 後 の 脳 内 に お け る 各BRlNPmRNAの 発 現 変 化 を 、digoxigeninで 標 識 し たcRNAプ ロ ー ブ を 用 い た 加sf ハ イ ブ リ ダ イ ゼ ー シ ョ ン 法 に よ り 評 価 し た 。 成 熟 マ ウ ス に 対 す る カ イ ニン 酸 腹 腔 内 投 与 後6時 間 で 、 脳 海 馬 、 中 で も 歯 状 回 に お い てBRINP1の 発 現 が 特 異 的 に 上 昇 し た

( 図lAF) 。 海 馬 組 織 の 定 量 的RTPCRで は 、BRINP1mRNAの 発 現 上 昇 が 、 カ イ ニ ン 酸 刺 激 後3時 間 よ り 開 始 し 、6時 間 を ピ ー ク と し て 、12時 間 後 に は 定 常 レ ベ ル に 戻 っ て い た ( 図 1G) 。 次 にinvitroに お け る 各BRlNPmRNAの 神 経 活 動 に よ る 発 現 制 御 を 調 査 す る た め 、 E17胎 生 マ ウ ス の 海 馬 初 代 培 養 を 行 っ た 。 培 養5日 目 の 初 代 培 養 神 経 細 胞 に 対 し て カ イ ニ ン 酸 刺 激 を 行 い 、 各BRlNPmRNAレ ベ ル を 定 量 的R1PCR法 に よ り 評 価 し た 。 成 体 脳 に お け る 変 化 と 同 様 に 刺 激 後6時 間 を ピ ー ク と し てBRINP1mRNAの 特 異 的 な 発 現 上 昇 を 認 め た

( 図2B) 。 こ のBRP1mRNAの 発 現 上 昇 は50pMを ピ ー ク と し て 容 量 依 存 的 な 変 化 を 示 し た ( 図2A) 。 一 方 、BRINP23mRNAは 成 体 脳 お よ び 海 馬 培 養 細 胞 に お い て カ イ ニ ン 酸 刺 激 に よ っ て ほ と ん ど 変 化 し な か っ た ( 図1G、 図2AB) 。 こ の よ う なBRINPlmRINAの 発 現 変 化 は 、 神 経 活 動 に 伴 う 神 経 栄 養 因 子BDNFの 発 現 増 加 の パ タ ー ン と 類 似 し て い る ( 図 2C) 卦 。 し か し 、 海 馬 ニ ュ ー ロ ン をBDNFで 刺 激 し て もBRP1の 発 現 は 変 化 し な か っ た こ と か ら 、BRINP1の 発 現 増 加 は 培 養 液 中 に 分 泌 さ れ たBDNFに よ っ て 二 次 的 に 引 き 起 こ さ れ る も の で は な ぃ こ と が 確 か め ら れ た 。

【 考 察 】 : グ ル タ ミ ン 酸 刺 激 に よ る 海 馬 神 経 細 胞 の 過 剰 な 興 奮 は 、 神 経 細 胞 死 、 神経 可 塑 性 、 お よ び 神 経 再 生 に 関 与 す る こ と が 知 ら れ て い る 。 神 経 細 胞 の 興 奮 に よ り 誘 導 さ れ る 神 経 栄 養 因 子 やTGF‑pフ ァ ミ リ ー な ど が こ れ ら の 現 象 に 関 与 す る こ と が 報 告 さ れ て い る が 、 詳 細 な 分 子 レ ベ ル の メ カ ニ ズ ム は 明 ら か に さ れ て い な い 。

  神 経 活 動 に 伴 っ て 特 異 的 に 誘 導 さ れ るBRINP1の 役 割 と し て 、 い く っ か の 可 能 性 が 考 え ら

‑ 427

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れる。一っは、BRINP1が過剰に活性化された神経を細胞死から保護する可能性である。成 熟した神経細胞は分裂を停止した状態にあるが、過剰に活性化された神経細胞では細胞周期 関連遺伝子が増加することが報告されており、分裂はできないものの再び細胞周期に入ろう とし、最終的にアポトーシスに陥ることが知られている4、。また、通常の増殖性の細胞にお い て強制発 現させたBRINPが細胞周期を抑制することを我々は見いだしている11。これら のことから、過剰に活性化され細胞周期に再び入ろうとする神経細胞において、誘導された

BRINP1

が細胞周期を抑制し、結果的に神経細胞を細胞死から救う可能性が考えられる。ま

た、BRINP1のシナプス可塑性への関与も考えられる。発達期のマウスにおいては神経細胞 が突起を伸長しシナプス形成を行う時期にBRINP1の発現が高く、成体になるにっれてその 発現は減少するい。成体脳では定常レベルにあるBRINP1がカイニン酸刺激により一過的に 上昇しその後定常レベルに戻る。このことからBRINP1が発達期のシナプス形成、成体にお け る 神 経 活 動 に 伴 う シ ナ プ ス 可 塑 性 に 関 わ る 可 能 性 が 示 唆 さ れ る 。

【 結語】: 海馬神 経細胞に おいて 神経特異 的新規 遺伝子群

BRINP

ファミリーの内BRINP1 遺伝子が特異的に神経活動依存的な発現調節を受けることが明らかとなり、本遺伝子が中枢 神経細胞における生理的・病的活動に関与していることが示唆された。今後BRINP1遺伝子 のノックアウトマウスを作成し、BRINP1の脳海馬組織における具体的な生理機能を解明し ていく予定である。

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図1カ イニ:/酸 腹腔内投 与Iこお| ナるBRINP77ミリーmRNAの発現変f     (A+)n sltu町 ヒrldizatlonlこ よるEPINPl‑rNAの発 現     (G慶 蛍 勺RTPCRIこ よ るBRNOァ ミ リ ーmRNAの 発 現

  4 墨3

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G  

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 jIBRINP1  IIBRINP2     lロ BRINP3 鹹kN

Control   3   .   6     12     24        KA (hr)

Controi1  3― 。  g  12  1e     50 pH KAfhn

図2濁鳥初代 培糞神 rrIHRailこおけるカイニン酸静朧によるBFUNP     フ ァ ミ リ ー (AB) お よ ひBDCHRN^ 発 現 燹 化

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学位論文審査の要旨

     学位論文題名

Activity ― dependent regulation of BRINP familygenes

(神経活動による新規神経特異的遺伝子 BRINP ファミリーの発現制御)

  

これまでに、新規神経特異的遺伝子群

BRINP

ファミリー、BRINP1,2,3を同定してきた。各BRINP 遺伝子は,中枢および末梢神経系の広範な領域において神経細胞特異的に発現しているが、神経 組織における生理的役割はほとんどわかっていない。今回申請者は、神経活動が中枢神経におけ る各BRINPファミリー遺伝子の発現に及ぼす影響を検討した。

  

グルタミン酸受容体アゴニストであるカイニン酸を成体マウスに腹腔内投与し、脳内における 各BRINP−

mRNA

の発現変化をヵsitu hybridization法により評価した。その結果、カイニン酸投 与後6時間で、海馬、中でも歯状回においてBRINP1の発現が特異的に上昇した。さらに胎生マウ ス海馬の初代培養神経細胞に対してカイニン酸刺激を行い、各BRINP―mRNAレベルを定量的RT―PCR 法により評価したところ、成体脳における変化と同様に刺激後6時間をピークとしてBRINP1―mRNA の特異的な発現上昇を認めた。一方、BRINP2,3―mRNAは成体脳および海馬培養細胞においてカイ ニン酸刺激によってほとんど変化しなかった。

  

グルタミン酸刺激による海馬神経細胞の過剰な興奮は、神経細胞死、神経可塑性、および神経 再生に関与することが知られている。神経細胞の興奮により誘導される神経栄養因子やTGFー・フ ァミリーなどがこれらの現象に関与することが報告されているが、詳細な分子レベルのメカニズ ムは明らかにされていない。本研究から海馬神経細胞においてBRINPファミリーのうちBRINP1遺 伝子が特異的に神経活動依存的な発現調節を受けることが明らかとなり、本遺伝子が中枢神経細 胞において神経保護作用や神経可塑性などの生理的・病的活動に関与していることが示唆された。

  

審査にあたり、副査藤堂教授からグルタミン酸刺激が神経に及ぽす刺激はどのようなメカニズ ムなのか、カイニン酸刺激によるBRINP1遺伝子の発現誘導はヵぷノtu hybridizationの結果を見 ると海馬のみでなく脳切片全体に生じているのではないか、脳虚血モデルでカイニン酸刺激と同 様に海馬に神経変性が生じることが知られているのでより臨床に近いモデルとして脳虚血モデル でBRINPファミリーの発現制御を検討したらどうか、との質問があった。申請者はグルタミン酸 刺激がどのように脳組織ヘ作用しているのかはっきりしたことは分かっていないが、容量依存的 に生理的刺激としても毒性刺激としても作用すること、カイニン酸によるBRINP1遺伝子の発現誘

429

則 省

和  

  明

田 堂

安 藤

授 授

敦 教

査 査

主 副

(4)

導は脳組織全体に認められるが本研究では最も変化した部位を対象に研究を行ったことを回答し た。次いで主査安田教授から、mRNAレベルでの実験系がおこなわれているが実際のBRINP夕ンパ クの作用などは検討しないのか、カイニン酸刺激で誘導される遺伝子群とBRINP1遺伝子の相互作 用の検討はしないのか、BRINPファミリーの神経系以外の細胞への作用は分かっていないのか、

ノックアウトマウスの表現型で何か欠落症状は見っかっていないのか、との質問があった。申請 者はBRINP夕ン バクがま だ精製されていないだけでなくBRINP抗体も存在しないため、現在研究 が遺伝子レベルでしかおこなえていないこと、そのためBRINP1遺伝子と誘導遺伝子の関係を検討 することは困難なこと、またBRINP1遺伝子が膀胱癌に関与する遺伝子としてすでに研究されてい ること、ノックアウトマウスの表現型に特に異常が見っかっていないことを回答した。また副査 三浪教授から、最終的には脊髄損傷モデルにおけるBRINP.ファミリーの役割を解明できれば素晴 らしいとのコメントがあり、またBRINP2,

3

に関して他にわかっている知見は何か、との質問があ った。 申請者は

BRINP2

は細胞周期抑制作用以外に分かっている知見はないが、BRINP3に関して は下垂体腫瘍で発現が亢進するという報告があることを回答した。

  

この論文は、神経活動依存的に誘導されるBRINP1が神経保護に寄与する可能性を示唆しており、

さらな る研究に よりBRINP1遺伝子が神経損傷のヌカニズム解明や治療法の開発に重要な役割を 担っていくと期待される。

  

審査員一同は、これらの成果を高く評価し、大学院課程における研鑽や取得単位なども併せ申 請 者 が 博 士 ( 医 学 ) の 学 位 を 受 け る の に 十 分 な 資 格 を 有 す る も の と 判 定 し た 。

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参照

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