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骨 芽 細 胞 様 細 胞

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Academic year: 2021

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博 士 ( 歯 学 ) 小 畑    真

学 位 論 文 題 名

骨 芽 細 胞 様 細 胞 (MC3T3 − E1) の

、カルシウム依存 ATPase の部分精製とその性質 学位論文内容の要旨

I‐緒言

  骨 組織の形 成にお いては ,骨芽 細胞が コラー ゲンな どの石 灰化の基質を合成した後に細胞外に分 泌し,形成された基質にカルシウムやりンが蓄積して石灰化が生じる.多くの細胞の形質膜にはカルシ ウム 輸送た んぱく質としてCa―・ATPaseが存在し,骨基質へのカルシウムの輸送担体として形質膜の Ca―ATPaseを候補 とする 報告も ある. 骨芽細 胞系細 胞のCa−ATPaseに関する研究では,形態学系や 酵素 系の観 点から 様々な 研究が なされ ている が,これ まで分 離精製が行えた報告はなく詳細は不明 であ る.ま た,マ ウスの 頭蓋冠 から樹 立され たMC3T3―El細 胞(El細胞)は骨原性細胞から骨芽細胞 に分 化し, 培養中にディッシュ内に石灰化組織を形成することから,硬組織形成機構の研究に広く用 い ら れ てい る 有用 な細胞 である。 そこで ,この 細胞の 石灰化 過程で のCaおよ ぴMg依存 性ATPase活 性の 経時的 変化を 調べた 上で, その性 質を明 らかにす るため に両ATPaseの分離を試み,分離精製し たCa−ATPaseの性質を調べた.

H.材料および方法

  El細 胞 は5%C02―95%空 気 下(37℃ ),10%牛胎 仔血清 を加え たaーMEM中 で通法 に従い 培養し た. コンフル エント後,1週から5週後まで毎週細胞を回収した,回収した細胞に超音波処理を行い,

細胞のホモジェネートを得た.その後,7,000 rpm,20分間の遠心を行って上清と沈殿に分け,さらにこ の上清を18,000# rpm,50分間の遠心を行うことによルミクロソーム分画と細胞質を得た.超音波破砕後 のホモジェネート,ミクロソームおよぴ細胞質の各分画を研究に用いた.

コンフルエント後4週で回収した細胞から得たミクロソーム分画をsodium  dodecyl  sulfate (SDS)で可 溶化 後,グリ セロー ルの密 度勾配 遠心を 行い, 上清を 沈殿と ともに上 層から8等分し て回収した.

ATPase活性 はATP加 水分 解 の 結 果生 成 さ れた無 機リン 量をChifflet法に従 って定 量する ことに よ っ て計 測 し た .反 応 はATPの 添加 に よ り 開始 し ,37℃ で30分 間 反 応させ た後に12%SDSを添 加し て停止した,酵素反応の結果生じた無機リンをChifflet法により発色させ,850 nmで測定することによ り 定量 し た . また ,予め300 ulのSDSを 加えて酵 素を変 性させ てからATPを加え て検出 された 値を backgroundとして差し弓|しヽた.

  Caお よ びMg依 存ATPaseの 精 製 の条 件 を 決 定す る た め に, 以 下 のよう に界面 活性剤 に対す る安 定性を検討した.l mg/mlミクロソーム,25 mM sucrose,50 mM tris−acetate (pH 8.56),1mM CaCl2     ‑ 690―

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を含む 反応液 に各種濃 度のTritonXー100およ びSDSを 添加し ,37℃で30分間イ ンキュ ベーションし た後に,60,000 rpm,30分間の遠心を行い,得られた上清と沈殿のATPase活性を測定した,また,可 溶 化 時 の 酵 素 の 安 定 性 に お け るATPお よ びCaCl2の 影 響 を 調 べ る た め に ,1mM ATPお よ び1mM CaCl2の添加の有無で,同様の実験を行い,その後,部分精製を行った.

  精 製 後 の酵 素を 用いて ,まず 上記方 法によ りpH依存 性を調 べた. 遊離Ca濃 度依存 性を調 べる際 には,1 mM EGTA,100 mM tris―acetae(pH8.56)にCaC12を0〜5.3mMと変 化させ てATPase活性 を 測 定 し た .ATP濃 度 依 存 性を 調 べ る 際に は ,1mMEGTA,lmMCaC12の 条件 下 にATP濃度 をO.08

〜5mMと 変 化 させ ,ATPase活 性を 測 定 し た. 金 属 イ オン 要 求 性 を調 べ る 際 には ,2mMのCaC12, MgC12,MnC12,EDTA,EGTA,5mMのNaCl,10mMのKC1お よ び2mMのCaC12とMgC12を 組 み 合 わせ て 上 記 の反 応 液 に 添加 し てATPase活 性を測 定した .また ,2mMのCaC12に対し て,MgC12の 濃 度 をO〜lomMと 変 化 さ せ ,ATPase活 性 を 測 定 し た . 阻 害 剤 の 影 響 を 調 べ る 際 に は ,1mMの vanadateおよびtetramiSoleを添加してATPase活性を測定した.

  タンパ ク量の 測定に はLowげ法 を用い た.また,すべての結果は1つの測定条件に対してtnplicate で測定した平均値とSDを示した.

m.結果と考察

  近 年,骨 芽細胞 の分化 ・機能 の調節に関する分子メカニズムの解析の進展がめざましいが,石灰化 部 位 へ のカ ル シ ウ ムの 輸 送 の 機構 に関 しては 不明な 点が多 い,El細 胞は骨 原性細 胞から骨 芽細胞 に 分化す ると, 由vitroで分 泌した 基質を 石灰化 し,十 分に石灰化した細胞ではアルカリ性に至適pH の あ るCa依 存ATPase活性 の 存 在 が報告 されて いる. 本研究 で,El細 胞培養 中の石 灰化に 伴う経時 的 なATPase活性 の 変 化 を調 べ た とこ ろ,コ ンフル エント 後,Caお よびMg依 存ATPase活性 は経時 的 に 増加し ,総活性は4週日でほば最大となった,この経過はディッシュ内での石灰化の経過と一致して い た こ とか ら , 両ATPase活 性 がCaあ る い はMgを 石 灰化 部 位 に 輸送 す るATPase活性 とし て石灰 化 に 関 与 して い る 可 能性 が 示 唆 され た . ま た,Caお よびMg依 存ATPaseい ず れの 活 性 もpHが 中性か ら ア ル カリ 性 に シ フト す る の に伴 っ て 増 加し ,Ca依存ATPase活 性はpH 8.56,Mg依存ATPase活性 はpH 9.47で 最 大活 性 を 示 した .Ca依存ATPase活 性で はpH 10.43付近 で活性が 上昇し てショ ルダ ーを示し,2相性の変化が見られた.

  こ れらCaお よびMg依 存性ATPaseの 性質 と 骨 芽 細胞 に お け る機 能 を 調 べる た め に は,ATPaseの 分 離 ・ 精製 が 不 可 欠で あ り ,El細 胞からATPaseの精 製を試 みた. 両ATPaseの培 養中の 総活性 はコ ンフルエント後4週でほば最大となったため,4週の細胞から精製することにした.次に,細胞内の局在 を調べたところミクロソーム分画に回収されたため,ミクロソーム分画を可溶化して精製を試みることに し た . まず ,界面 活性剤 による 可溶化 の条件 を詳細 に検討 すると比 較的低 濃度のSDSでは安 定であ る ことが わかった.また,ATPの添加により活性の安定性が増大し,Caでは不安定になることが明らか に な っ たの で , こ れら の 条 件 を組 み合 わせてATPaseを可 溶化した .膜結 合ATPaseの 精製を 試みた 従来の報告では,可溶化後のカラムクロマトグラフイーを用いた精製法では成功例が皆無に近いため,

Na.K一ATPaseの 精製に おいて 経験のあ るグリ セロー ルの密 度勾配遠心を行った.遠心時間を変えて 得 ら れ た各 分 画 の 活性 を 調 べ たと ころ ,いく っかの 分画で 明確にCaおよぴMg依存ATPaseを分離す る ことが できた .文献検 索にお いて, 骨芽細 胞の両ATPaseの分 離の報告 は見ら れず,本研究で得ら

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れ た標 品に よ って 初め て骨 芽 細胞 のCa―ATPaseとMg―ATPaseの 酵素 学 的性質を明らかにす ること が可能に なったと考えられる.

  分離 後のCa‑ATPase活性 はア ルカ リ性 へ のpHのシ フト に 伴い 増加 し,pH 8.56とpH 10.43付近で 2相性 の最 大活 性を 示 した .従 来か ら知 ら れて いる 筋小 胞 体や 形質 膜に 存在するCa‑ATPaseの至適 pHは中 性で あ るこ とか ら,今後,ア ルカリ性至適pHの意義につ いても検討する必要がある.ATPase 活 性 は 遊 離Ca濃 度 依 存 性 に 増 加 し ,1.67mMで 最 大 と な っ た . 遊 離Caに 対 す るATPase活性 のKm 値 は115 nMで あり ,非 常に 低 い濃 度のCaで 容易 に 活性 化さ れた ,ATP濃 度を 変 化さ せる とATPase 活 性はATP濃度 依存 性 に増 加し ,Lineweaver‑Burk plotを行う と直線は折れ曲がった.そし てKm値 が80ルMと3.lmMの 高 ・ 低 親 和 性 の 結 合 部 位 が 検 出 さ れ , リ ン 酸 化 反 応 中 間 体 を 形 成 す るP型 ATPaseの特 徴 を示 した .Ligandの 影響 を調 べる と ,EDTAやEGTAなど の2価金 属 のキ レー ター によ って完全 に抑制されることから,2価 金属要求性であることはわ かったが,Ca以外の他の2価金属でも 活性は抑 制されたことから,特異的 にCaのみを要求していること が示唆された.また,得られたCa依 存ATPase活 性 は ,Mg濃 度 依存 性に 活性 が 阻害 され ,Mg依 存ATPaseは異 なる 酵 素で ある こと が示 された. アルカリ性ホスファターゼ(ALP)阻害薬であるテトラミゾールでは活性は抑制されなかった.ま た , 本 研 究 で 分 離 し たCa依存ATPaseとALP,Na,K−ATPaseのpH依 存性 を比 較 する と, それ ぞれ の 至適pHが 異 なっ たこ とか ら ,得 られ たCa依存ATPaseはALPやNa,K一ATPaseとは異なるア ルカリ 性 に 至 適pHの あ るATPaseであ ると いう こ とが わか った . また ,ATPaseに共 通 した 阻害 剤で ある vanadateの影響を調べると,pH 8.56付近での活性が抑制され,pH 10.43付近の活性は抑制さ れなか っ た.  pH 8.56付 近 で最 大活 性を 示すATPaseは,従来知られ ている形質膜のCa−ATPaseで ある可 能 性 が あ り ,pH 10.43付 近で 最大 活性 を 示すATPaseはvanadateで は阻 害さ れ なぃ 新規 のATPase あるいは ,他の酵素である可能性が示唆された.現在,このATPaseについてさらに検討を行っており,

今後は石 灰化におけるこのATPaseの 機能を明らかにする予定であ る.

IV.結諭

  MC3T3ーEl細 胞 の ミ ク ロ ソ ー ム 分 画 に 至 適pHが アル カリ 性のCaおよ びMg依存 性 のATPaseが存 在し た. そ の活 性は 培養 中経 時 的に 増大 することから,MC3T3一El細胞の石灰化に関与する可能 性 が あ る . さ ら に , アル カ リ性 至適pHのCa依 存ATPaseをMg依 存ATPaseと 分離 し, そ の性 質を 明ら かに した .

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学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

     骨 芽 細 胞 様 細 胞 (MC3T3 − E1) の カ ルシウム 依存 ATPase の部分精製とその性質

   審査は、 審査員全 員が出席 の下に行 った。学位申請者に対して提出論文の内容の 説明を求 め、随時 、研究内 容とそれ に関連した知識について口頭試問を行った。学 位申請者 からは以 下の内容 の論述が なされた。

   骨 芽 細 胞 様 細 胞 株 (MC3T3‑EI) に カ ル シ ウ ム (Ca) お よ び マ グ ネ シ ウ ム (Mg) 依存性 A IPase の 存在が報 告されて いるが、分 離の報告 はなく詳 細は不明 である。

そ こで 、 両ATPase の 分離 を 行 い、 Ca 依 存 ATPase の 性 質を 調 べ るこ と を 目的 と し て研究を 行った。

  MC3T3‑E1 細 胞 を 材 料 と し て 通 法 に より 培 養 し、 コ ンフ ル エ ント 後 1 、 2 、 3 、 4 、 5 週 で細 胞 を回 収 した 。細胞を ホモジェ ネートとし たのち、 ミクロソ ーム分画 と 細 胞 質 を 得 て Ca お よ び Mg 依 存 ATPase 活 性 を 測定 し た。 4 週 の ミ クロ ソ ーム を ドデ シ ル 硫酸 ナ トリ ウ ム (SDS) で可 溶 化 後、 グ リ セロー ルの密度 勾配遠心 を行っ て 、 Ca 依 存 AIPase を Mg 依 存 ATPase と 分 離 し 、 そ の 性 質 を 調 べ た 。    本研究に より以下 のような 結果を得た 。

1 ) 両 ATPase 活 性 と も ア ル カ リ 性 に 至適 pH を示 し 、コ ン フ ルエ ン ト 後、 細 胞の 石 灰 化 時 期 と 一 致 し て 経 時 的 に 増 加 し た こ と か ら 、 Ca あ る い は Mg を 輸送 す る

」 6 冊 aSe とし て石灰化 に関与す る可能性が 示唆され た。

2 ) Ca 依存」 `TPase 活性の 総活性は 4 週で最大と なり、主 にミクロ ソーム分画に検 出 され た 。4 週の ミ ク ロソ ー ムを SDS で 可溶 化 後 のグ リ セロ ー ル の密 度 勾配 遠 心 に よ り 、 Ca 依 存 お よ び Mg 依 存 ハ rPase を 分 離 す る こ と が で き た 。 3 ) Ca 依 存 ATP 髑 e の 性 質 を 調 べ た 。 活性 は 中 性か ら アル カ リ 性へ の pH の シ フト

明 昭

邦 和

木 島

鈴 福

授 授

教 教

査 査

主 副

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に 伴っ て増 加し 、pH 8.56 とpH 10.43 で 2 相性 の最 大活 性を 示した。活性はアルカ リ 性ホスファターゼ阻害薬では阻害されなかった。AIPase 阻害薬のvanadate では、

pH 8.56 付 近 の 活 性 は抑 制 さ れ が 、 pH 10.43 付 近 の 活 性 は 抑 制 さ れ なか った 。 4 )A IPase 活性は遊離Caz →・濃度依存性に増加し、1.67 mM で最大となった。遊離 Ca に対 する ATPase 活 性の Km 値 は115 nM であっ た。

5 )Ca に依 存した 活性 はATP 濃 度依 存性 に増加 した 。Lineweaver 一Burkp10t は折れ 曲 が り 、 Km 値 が 80pM と 3 . lmM の 高 、 低 両 親 和 性 の 結 合 部 位 が 検 出 さ れ た 。 リ ン 酸化 反応 中間 体を 形成 する P 型ATP 鵠 e の特 徴を 示し た。

6 ) Ca 依 存 ATPase 活 性は Mg2 ゛ 、 Mn2 ゛ お よび 2 価 金属 イオ ンのキ レー ター によ っ て 阻害 され た。

   本研 究結 果を まと める と、 MC3T3 ・El 細胞の石灰化に関与する可能性がある至適 pH が ア ル カ リ 性 の Ca 依 存 性 ATPaSe を 分 離 し 、 そ の 性 質 を 明 ら か に し た 。

   審査担当者からは以下のような質問が行われた。

1 .このCa 一ATPase の硬組織形成における機能 2 .アルカリ性至適pH の意義

3 .生体内で実際にアルカリ性に維持される場所、そして維持する機構はあるのか 4 .アルカリ性ホスファターゼとの違い

5 .至適pH が異なる2 種類の酵素の性質の違い 6 . Ca 一ATPase とMg ―ATPase の関係

   回 答が困難な質問も含まれているが、学位申請者からは適切かつ明快な回答が得 られた。また、今後の研究の方向性と将来の展望についても明確な方針が示された。

   本 論文の内容は今後のこの分野の研究に大きく寄与するものと考えられる。さら

に、 試問の結果より学位申請者は専攻分野の専門領域のみならず関連分野について

も幅 広い知識を有していることが示された。従って学位申請者は博士(歯学)の学

位を授与されるのにふさわしいと認められた。

参照

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