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学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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(1)

博 士 ( 農 学 ) ル ミ ア ナ ツ ェ ン コ ヴ ァ

    学 位 論 文 題 名

Near Infrared Spectroscopy of Raw Milk for     (JOW SBiomonitorlng

( 生 乳 の 近 赤 外 分 光 分 析 によ る 乳 牛 の バ イオ モニ タリ ング )

学位論文内容の要旨

1.目的と背景

  酪農の経営形態は多頭飼育に変わりつっあり,乳牛の管理は個別管理から群管理へと変化 しつっある。しかし,乳牛の泌乳能カの向上及び牛乳の質を向上させるためには個々の乳牛 の生体状態をモニタリングし,個々の乳牛に対して適切な飼養条件を与え,健康管理を行う ことが必要である。さらに,乳製品の安全確保の見地からも乳牛の生体情報と原料乳に関す る各種情報を収集する必要がある。

  本研究は近年,農産物や食品を対象とした非破壊計測技術として発達しつっある近赤外分 光法(Near infrared spectroscopy: NIRS)用いて脈動状態で空気を含んで流動する搾乳直 後の生乳の成分値及び体細胞数の測定方法の確立,さらに乳牛の生体情報を得るために血液,

尿,胃液等の測定方法を検討した。

2.生乳の成分測定

  個 カ の 乳 牛 か ら 採 取 し た生 乳 に っい て 、NIRSによ り 、 生 乳中 の 脂 肪, 蛋 白 質, 乳 糖 ,乳 中 尿 素 態 窒 素(Milk urea nitrogen: MUN)を 測 定 し 、 そ れ らの 測 定 精度 を 検 討し た 。 これ に よ り 、 各 成 分 に 対 す る 最 適 な 測定 波 長 域, 光 路 長, 光 学 プロ ー ブ , デー 夕 処 理方 法 を 明ら か に し た 。 測 定 波 長 域 と 光 路 長 は、 脂 肪 ,蛋 白 質 ,乳 糖 の 成分 測 定 に 対し て 、 非常 に 重 要な 要 素 で あ っ た 。Partial Least Squares (PLS)回 帰 分 析 に よる 最 も 精度 の 高 い検 量 線 モデ ル は 、 波 長1100―2500 nm, 光 路 長1mmで 測 定 し 、 一 次 微 分 ス ペ ク ト ル デ ー タ 処 理 を行 う こ とで 得 ら れ た 。 脂 肪 の 測 定 で は 、 測 定 標 準 誤 差(Standard error of prediction: SEP)と その 相 関 係 数(Correlation coefficient:r)は 、それ ぞれSEP=O. 113% 、r二 ニO.998と なった。 蛋白質 と乳糖に対しては、それぞれ、SEP=O. 095%,r二ニO.848およびSEP=O. 082%,r二ニ0.828となった。

ま た 、 乳 牛 の 健 康 栄 養 管 理 に 用 い ら れ るMUNのPLS回 帰 分 析 で は 、 波 長700−1100 nmに お け る 原 ス ベ ク ト ル を 用 い て 、 精 度 の 高 い SEP=1.09 mg/dL, r=0. 906が 得 ら れ た 。   生 乳 中 の 体 細 胞 数(Somatic cell count: SCC)が 多 いと 脂 肪 ,蛋 白 質 ,乳 糖 の 測定 精 度 が 低 下 し た 。 こ の 問 題 を 解 決 す る た め に , ニ つ の 方 法 を 提案 し た 。 一っ は 、SCCの 多少 に よ り 異 な る 検 量 線 モ デ ル を 作 成 する 方 法 であ る 。 もう ー っ は、 前 者 の 方法 に 比 べて 測 定 精度 は や や 低 下 す る が 、 広 い 範 囲 のSCC分 布 か ら な る 大 き な デー タ セ ッ トを 用 い て汎 用 性 の高 い ー つ の検量線モデルを作成する方法である。

(2)

3.乳牛の生乳,血液,胃液,尿の成分とNIRスペクトルの相関関係

  生乳のNIRス ベクトル には、血 液,胃液 ,尿など の生体液成分の情報が含まれることを示 した。ま た、生乳 のNIRスベク トルと生 体液成分 だけでなく 、生体液 のNIRスベク卜ルと生 乳成分と の相関関 係も見られることも明らかとなった。これにより泌乳牛の様々な生理機能 のプロセス間の相互作用をより良く理解することが可能である。

  乳房炎に よって引 き起こる 尿成分の 変化は、 ある特定の点においてNIRスペクトルに影響 を与え、 それによ り尿のNIRスベクトルから生乳中のSCCを定量分析できることが分かった。

その分析結果は、SEP=O.328 Log SCC/mL、r=0. 875である。乳房炎診断に関して、生乳中SCC を閾値とし、生乳・血液・尿のNIRスペクトルにSoft independent modeling of class analogy

(SIMCA定性分析 法)を適用すると、それらの結果は類似したものとなった。最も優れた分類

結果は原 スペクト ルを一次微分した場合に得られ、それぞれの体液スペクトルデータにおい て97―99%の 識別率と なった。 生乳のNIRス ベクトル のSIMCA定性分析 法への適 用は乳房炎 診断に有 用であり 、尿と血 液のNIRスペ クトルを 加えることでその精度は向上することが分 かった。

  4.乳牛の機能的研究のための近赤外分光法と人工知能

  乳牛 の生理機 能を理解 するため のスベク トルデー タの解析に 対して、 二次元相関分光法   (Two−dimensional correlation spectroscopy: 2DCOS)、ウェーブレット、そして、ニュー ラルネットワークといった様々な解析方法が提案されている。

  分娩 後の乳牛 の生理状 態の回復 にっいて 調べるた め、3年間に 渡るSCCとMUNの変化とNIR スベ クトルと2DCOSにより評 価した。 生乳中SCCを摂動として、波長領域700―l100nmにおけ る生 乳のNIRスベ クトルを2DCOSに適用し た解析結 果は、分 娩後の生理 的な順応過程と良く 一致 した。ま た、乳成分の変動と分光学的な方法で得られる変化の順序との相関は、乳成分 のみ に適用し た2DCOSにより 得られる ものと同 様であった。よって、分娩後の順応における 生乳成分の変動に伴った連続的な変化は、まず水から始まり、次いで脂肪、蛋白質、そして、

乳糖の順番に起こることが明らかになった。

  個々 の乳牛生 体の動的状態に関する情報を把握することを目的に、Infra Alyzer 500を用 いた アトライ ン測定に より得ら れた前搾 り分房乳のNIRスペクトルに対してウェーブレット 変 換(WT)を行 い 、得られ たデータの 周波数特 性を調べ た。これ より、唯 一つのNIRス ベク トル へのWTによ り、乳牛、及び、検査分房の両方にっいて、健康であるか乳房炎であるかを 同時に識別するための情報が増すことが分かった。

  飼料 条件の異 なる牛からのInfra Alyzer 500により得た生乳スベクトルと飼料データを収 集し 、個々の 乳牛の飼料に対する応答について調べた。これにより、各乳牛の生乳の時間分 解NIRSと それ ぞ れの生理 データに基 づく人工 ニューラ ルネット ワーク(ANN)モ デルは、 乳 牛 の 個 体 レ ベ ル で の 飼 養 管 理 に 有 効 な ツ ー ル で あ る こ と が 分 か っ た 。

以上の結 果から, 近赤外分 光法を用 いた分析 法を採用す ることに よって,個カの乳牛の管 理を容易 に,精密に行うことが可能であることを確認した。さらに,近赤外分光法は生体機 能を研究 する上で生体情報を取得する手段として有効であり,新しい研究領域に利用できる ものと考 える。

(3)

学位論文審査の要旨

     学位論文題名

Near Infrared Spectroscopy of Raw Milk for     (JOW SBiomonitoring

(生 乳の近赤 外分光分 析による 乳牛のバ イオモニ タリング)

  本論文は図130,表44を含み,7章からなる総頁288の英文論文であり,別に参考論文17 編が添えられている。

  酪農の経営形態は多頭飼育に変わりつっあり,乳牛の管理は個別管理から群管理へと変化 している。しかし,乳牛の泌乳能カを増加させ,乳質を向上させるためには個カの乳牛の生体 情報を常にモニタリングし,個々の乳牛に対して適切な飼養条件を与え,健康管理を行うこ とが必要である。さらに乳製品の安全確保の見地から,乳牛の生体情報と原料乳に関する各種 情報を収集する必要がある。

  本研究は近年,農産物や食品を対象とした非破壊計測技術として発達しつっある近赤外分 光法(Near infrared spectroscopy: NIRS)を用いて脈動状態で空気を含んで流動している搾 乳直後の生乳の各種成分値およぴ体細胞数の測定方法の確立,さらに乳牛の生体情報を得る ために血液,尿および胃液等の測定方法を検討した。本研究の結果は下記に要約される。

1.生乳の成分等の 測定

  個 々 の 乳 牛 か ら 採 取 し た 生 乳 に つ い て ,NIRSに よ り 生 乳 の 成 分 , 即 ち , 脂 肪 , 蛋 白 質 , 乳 糖 の 含 有 率 , 乳 牛 の 健 康 栄 養 管 理 の 良 否 を 判 断 す る 指 標 と し て の 乳 中 尿 素 態 窒 素(Milk urea nitrogen:MUN)含有 率を測定し,それらの測定 の精度を検討した。

  各成分に対する 最適測定波長域,光路長(測定時の試料の厚さ),光学フ°ローフ゛およびテ゛ータ処 理 方 法 に 関 し て 検 討 し た 。 測 定 波 長 域 と 光 路 長 は 脂 肪 , 蛋 白 質 , 乳 糖 の 成 分 測 定 に対 して 非常 に 重 要 な 要 素 で あ り ,Partial Least Squares(PLS)回 帰 分 析 に よ る 最 も 精 度 の 高 い 検 量 線 モ デ ル は , 測 定 波 長 域 を1100  2500nmと し , 光 路 長Immで 測 定 し 一 次 微 分 ス ペ ク ト ル デ ー タ 処 理 を 行 う こ と に よ っ て 得 ら れ た 。 脂 肪 含 有 率 測 定 で は 測 定 標 準 誤 差(Standard Error of PredictionSEP)と 相 関 係 数(r)は そ れ ぞ れSEP=O. 113%,r=0. 998と なっ た。 蛋 白質 含量 およ び乳 糖 含量 につ いて はそ れ ぞれSEP=O. 095%,r=0. 848およびSEP=O. 082%,rー−0.828となっ た。

    ―200

彦 三

一 三

和 従

敬 周

藤 田

崎 村

伊 松

島 川

授 授

授 授

   

   

教 教

教 助

査 査

査 査

主 副

副 副

(4)

  MUNのPLS回帰分析では,測定波長域を700〜l100nmとし,原スペクトルを用いることによ って高精度(SEP〓1.09mg/dL,r O.906)で測定を行うことが可能であることを確認した。

乳房炎診断の指標として用いられている生乳中の体細胞数(Somatic Cell Count: SCC)が増 加すると成分測定の精度が低下した。これの解決方法として二種類の方法を提案している。

一っは,SCCの多少により異なる検量線モデルを作成する方法である。他のーっは前者と比較 して測定精度はやや低下するが,広範囲なSCC分布からなる大きなデータセットを用いて汎 用性の高い検量線モデルを作成する方法である。

2.乳牛の生乳,血液,胃液および尿の成分NIRスペクトルの相関

  生乳のNIRスペクトルには,血液,胃液および尿などの生体液成分の情報が含まれている ことを新たに提示した。また,生乳のNIRスペクトルと生体液成分だけではなく,生体液の NIRスベクトルと乳成分との問に相関関係があることを明らかにした。これによって,乳牛の 様々な生理機能の相互作用を理解することが可能になった。

  乳房炎によって引き起こされる尿成分の変化は尿のNIRスベクトルに影響を与えるため,

尿の測定から生乳中のSCCを定量分析することが可能であることを明らかにした。尿の1¥TIR スペクトルから推定した生乳中のSCCと実測値との相関式はSEP=O. 328LogSCC/mL,r=0. 875を 示した。従って,乳房炎の診断に生乳のNIRスペクトルに尿およぴ血液のNIRスペクトルを 加 える こ と によ っ て その 診 断精 度 を 高め る こと が 可能であ ることを 明らかに した。

3.乳牛の生理機能とNIRS

  乳牛の生理機能を解析するために,分娩後の生理状態の変化を生乳および尿のNIRスベク トルの変化から検証した。測定波長域を700t 1100とし,解析法には二次元相関分光法およ びニューラルネットワークを用いて検討した結果,分娩後の生理状態の変化は生乳成分の変 化と一致しており生乳の成分変化は脂肪から開始し,これに蛋白質,.乳糖が続くことを明ら かにした。

  飼料条件を変化させて生乳の成分変化を観察したところ,個々の乳牛は飼料条件の変化に 対する乳成分の変化の応答性は異なり,乳牛の個体レベルでの最適飼養管理法を定める上で NIRS法 を 用 い て 乳 牛 の 生 体 情報 を 収集 す る こと が 有益 で あ ると 結 論づ け て いる 。

  以上の研究成果は生乳成分を始めとする血液,胃液,尿成分を近赤外分光法を用いて非破 壊測定する際の基礎的手法を明らかにしており,各種生体情報問の関係を明らかにして個々 の乳牛に対する最適飼養管理法の確立に資するものであり,学術的に高く評価できると同時 に酪農産業に大きく貢献するものと判断した。

  よって,審査員一同は,Roumiana TSENKOVAが博士(農学)の学位を受けるに十分な資格を有 するものと認めた。

201

参照

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