博士(獣医学)渡部 学位論文題名
ウシ乳腺上皮における膜繋留夕ンパク質 p115 遺伝子の発現に関する研究
学位論文内容の要旨
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膜繋留夕ンパク質p115はゴルジ装置表在夕ンパク質であり、サイトゾルにも分布す る。哺乳動物の細胞においてp115は小胞体からゴルジ装置への輸送,ゴルジ装置内輸送,
そして分泌小胞から細胞膜への輸送などの様々な小胞輸送に携わる。これらの小胞輸送 において、p115は輸送小胞を標的膜に繋留することによって輸送小胞の拡散を防ぎ、小 胞輸送の効率を高めるものと考えられている。
本研究は、泌乳サイクルの過程における乳腺の発達や機能分化に伴うp115およびその mRNA含量 の動態、 さらに乳腺上皮細胞におけるp115遺伝子転写調節およびp115誘導 のヌカニズムを明らかにすることを目的に行った。
第1章においては、ホルモン誘起泌乳の過程におけるウシ乳腺の発達・機能分化をモ デル に、乳腺 組織中のp115およびそのmRNA含量の変動を調べた。乳腺組織中のp115 mRNA含量をノーザン・ブロット・ハイプリダイゼーション法で調べたところ、total RNA 量および組織DNA量のどちらで補正した場合においても、発達期の乳腺で最も高値で あった。一方、p115夕ンパク質含量をウシp115に由来する組換えタンバク質に対する 抗血清を用いた免疫プロット法で調べたところ、泌乳期で最も高かった。乳腺組織にお けるp115の局在を免疫組織化学的に調べたところ、p115はどの発達・分化の段階にお いても主に乳腺上皮細胞に分布していた。乳腺以外の組織についてもp115は検出された が、乳腺の場合とは異なり、p115およびそのmRNA含量は泌乳のステージによって変化 しなかった。乳腺の発達期におけるp115 mRNA含量の増加および泌乳期において最も高 いp115含量が観察されたことから、乳腺においてp115の合成は泌乳サイクルにおける 乳腺の発達や機能分化や泌乳に関与することが示唆された。
第2章においては、膜繋留夕ンパク質p115の発現調節機構について分子生物学的な検 討を行った。ウシp115遺伝子の5 上流領域,最初のエクソン,最初のイント口ンの一部 を含むクローンを入ファー・ジ・ベクターに構築されたウシ・ゲノムDNAライプラリー―
より単離した。様々な制限酵素で切断したウシ・ゲノムDNAに対するp115の翻訳開始
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点 を 含 む 約0.2 kbに 由来 するcDNAプロ ーブ のサ ザン ・ハ イブ リダ イゼ ーシ ョ ン解 析に よ り、p115遺 伝子 はシ ング ル・ コピ ーの 遺伝 子で ある と推 定さ れた 。9つの転写開始点 を キャ ップ サ イト ・ハ ンテ イン グ法 によ って同定した。ルシフェラーゼ・レポーター遺 伝 子に 連結 し た2.6 kbのウシp115遺伝子の5 上流領域の断片は、ウシ乳腺初代培養細胞 (BME)お よび ヒト 乳腺 上皮 ガン 細胞 株MCFー7中 で機 能的 なプ ロモ ーター活性を示した。
5 上流領域の5 側および3 側欠 失断片のプ口モーター活性をルシフェラーゼ・レポータ ー 遺伝 子ア ッ セイ によ って 調べ 、プ ロモ ーター機能に要求される部位を限定した。プロ モーター機能が維持されている領域には1つのnuclear respira.toryfactor一1(NRF‐1)共通配 列 が 含 ま れ て い た 。 こ のNRF‐1共 通 配列 を無 為 にす るよ うな 変異 を導 入す ると 、BME お よびMCFー7細胞におけるpl15のプロモーター活性が著しく低下した 。EIectrophoretic mobiIiづshiftassay(EMSA)に よっ てpl15遺伝子プ口モーター領域に存在するNRF‐1共 通 配列 はMCF゜7由 来の 核夕 ンパ ク質 と特 異的に複合体を形成することが示された。この 複 合 体 形 成は ウシ ・ チト ク口 ームcオ キシ ダー ゼVna肝臓 イソ 型遺 伝子 プロ モ ータ ー由 来 のNRF‐1結 合部 位を 持っ オリ ゴヌ クレ オチドによって阻止された。スーパーシフト・
ア ッセ イに よ って 、pl15遺 伝子 プロ モー ター領域にあるNRF−1共通配列に結合する核夕 ン パク 質はNRF‐1であることが示された。また、estradiol117B(島)あるいはインスリ ン およ びそ れ ら両 者の 組み 合わ せに よる 刺激は、pl15遺伝子プ口モーターの転写活性を 細 胞増 殖刺 激 の強 さに 従い 上昇 させ た。 以上の結果から、p115遺伝子プロモーター領域 に 存 在 す るNRF‐1共 通配 列へ のNRF‐1の結 合は 、乳 腺上 皮細 胞に おけ るp115遺伝 子の 転 写活 性化 に 重要 であ り、p115遺伝 子の 転写は、島およびインスリンによって刺激され る乳腺上皮細胞の増殖に関連して活性化されることが示された。
これ らの 結 果を 統合 する と、 発達 期の 乳腺 にお いて は、Bによ って誘発された乳腺上 皮 細 胞 の 増殖 に関 連 してpl15遺伝 子転 写が 活性 化さ れ、 これ には 転写 調節 因 子NRF^1 が 関与 する と 推察 され る。 第1章で 示し た よう に、 泌乳 サイ クル でのpl15夕ンパク質含 量 の変 動バ タ ーン は、pl15mRNA量の 場合 とはやや異なるので、転写レベルのみならず、
翻 訳や 分解 レ ベル での 調節 も考 慮す る必 要があるが、いずれにせよ、乳腺の発達を含め た 泌乳 過程 に おい ては 、活 発な 小胞 輸送 が行われており、これにp115が深く関わってい ると思われる。
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学位 論文審査の要旨 主査
副査 副査 副査
教授 教授 教授 助教授
斉 藤 昌 之 桑 原 幹 典 稲 葉 睦 木 村 和 弘
学 位 論 文 題 名
ウシ乳 腺上皮 における膜繋留夕ンパク質 p115 遺伝 子の発 現に関す る研究
膜 繋 留 夕 ン パ ク 質p115は ゴ ル ジ 装 置 表 在 夕 ン バ ク 質 で あ り 、 小 胞 体 か ら ゴ ル ジ 装 置 や ゴ ル ジ 装 置 内 、 分 泌 小 胞 か ら 細 胞 膜 へ な ど 、 様 々 な 小 胞 輸 送 に お い て、 輸 送 小胞 を 標 的膜 に 繋 留 す る こ と に よ っ て 小 胞 輸 送 の 効 率 を 高 め る 分 子 と 考 え ら れ て いる 。 こ のよ う な 小胞 輸 送 は 、 夕 ン パ ク 質 の 合 成 ・ 分 泌 を 伴 う 乳 腺 で 活 発 で あ る と 考 え ら れる 。 本 学位 論 文 は、
ウ シ の 泌 乳 サ イ ク ル に お け る 乳 腺 の 発 達 や 機 能 分 化 に 伴 うp115の 動 態 、 さ ら に 乳 腺 上 皮 細 胞 に お け る p115遺 伝 子 転 写 調 節 の メ カ ニ ズ ム を 明 ら か に し た も の で あ る 。
, 第1章 に お い て は 、 ウ シ 乳 腺 の 発 達 ・ 機 能 分 化 とp115の 関 係 を 把 握 す る た め に 、 ホ ル モ ン 誘 起 泌 乳 モ デ ル を 用 い て 乳 腺 組 織 中 のp115と そ の mRNA含 量 の 変 動 を 調 ぺ た 。 乳 腺 組 織 に お け るp115の 局 在 を 免 疫 組 織 化 学 的 に 調 べ た と こ ろ 、p115は ど の 発 達 ・ 分 化 の 段 階 に お い て も 主 に 乳 腺 上 皮 細 胞 に 分 布 し て お り 、mRNAは 発 達 期 で 最 も 高 値 で あ っ た 。 一 方 、p115夕 ン バ ク 質 含 量 は 、 泌 乳 期 で 最 も 高 か っ た 。 他 の 組 織 に つ い て もp115 は 検 出 さ れ た が 、 乳 腺 と は 異 な り 泌 乳 の ス テ ー ジ に よ っ て は 変 化 し なか っ た 。こ れ ら の結 果 か ら 、p115は 泌 乳 サ イ ク ル で の 乳 腺 の 発 達 ・ 機 能 分 化 や 泌 乳 に 関 与 す る こ と が 示 唆 さ れ た 。
第2章 に お い て は 、p115の 発 現 調 節 機 構 に つ い て 分 子 生 物 学 的 な 検 討 を 行 っ た 。 即 ち 、 ウ シp115遺 伝 子 の5 上 流 領 域2.6kbを ル シ フ ェ ラ ー ゼ ・ レ ボ 一 夕 ー 遺 伝 子 に 連 結 し 、 ウ シ 乳 腺 初 代 培 養 細 胞 お よ ぴ ヒ ト 乳 腺 上 皮 ガ ン 細 胞 株MCF‑7中 で の プ ロ モ ー タ ー 活 性 を 調 べ た 。5 側 や3 側 欠 失断 片、変 異導入断 片での プロモー ター活 性の測定 や、electrophoretic mobility shift assay (EMSA)に よ る 解 析 の 結 果 、p115遺 伝 子 プ ロ モ ータ ー 領 域 にnuclear respiratory factor‑l (NRF‑1) 共 通 配 列 が 存 在 し 、 こ れ へ のNRF‑1の 結 合 が 乳 腺 上 皮 細 胞 に お け るp115遺 伝 子 の 転 写 活 性 化 に 重 要 で あ る こ と が 明 ら か と な っ た 。 更 に 、p115 遺 伝 子 の 転 写 は 、 エ ス ト ロ ゲ ン お よ び イ ン ス リ ン に よ っ て 刺 激 さ れ る乳 腺 上 皮細 胞 の 増殖 に 関 連 して 活 性 化さ れ る こと が 示 さ れた 。
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