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学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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氏 名 中村 嘉希

授与した学位 博 士

専攻分野の名称 農 学

学位授与番号 博甲第 6206 号

学位授与の日付 2020年 3月25日

学位授与の要件 環境生命科学研究科 農生命科学専攻

(学位規則第4条第1項該当)

学位論文の題目 粘膜関連リンパ組織リンパ腫転座 1 (Malt1) のプロテアーゼ活性による炎症反応の制御 とその機序に関する研究

論文審査委員 教授 村田 芳行 教授 木村 吉伸 教授 神崎 浩 准教授 前田 恵

学位論文内容の要旨

粘膜関連リンパ組織リンパ腫転座1 (Malt1) は,免疫細胞の活性化を通じて,炎症反応に深く関与する。

Malt1はBcl10及びCARD11などのタンパク質と共に三量体を形成し,NF-κBを活性化させて炎症反応に寄 与するほか,システインプロテアーゼとしても機能し,様々な基質を分解して細胞を活性化させる。Malt1 のプロテアーゼとしての機能がどの程度生体内で炎症反応に関与するか調べるため,Malt1のプロテアーゼ 活性を欠損させたマウス (Malt1 PDマウス) を用いて,T細胞依存的な大腸炎と,自己抗体依存的な血小板 減少症の病態に対するMalt1のプロテアーゼ活性の関与と,その機序について研究を行った。

まず,Malt1 PDマウス由来のT細胞を刺激してIL-2の産生量を測定したところ,野生型 (WT) マウスと 比較してIL-2産生量は有意に低かった。Malt1 PDマウスに抗CD3抗体を腹腔内投与してT細胞を活性化さ せたところ,WTマウスと比較して,大腸におけるIL-17Aの発現が有意に低かったが,IFN-γの発現量には 差がなかった。また,WTマウス由来のnaïve CD4+ T細胞を免疫不全マウスに移入すると,大腸の肥厚並び に下痢を伴う大腸炎を発症したが,Malt1 PDマウス由来の細胞移入群ではその重症度はWTマウスと比較 して軽微であった。このときMalt1 PDマウスの細胞移入群における腸間膜リンパ節のIL-17並びにIFN-γ産 生性のCD4+ T細胞の割合を調べたところ,IL-17+IFN-γ- T細胞 (Th17細胞)と,IL-17+IFN-γ+ T細胞 (Th1/17 細胞) の割合が WT マウスの細胞移入群と比較して有意に低かった。一方で,IL-17-IFN-γ+ T 細胞 (Th1細 胞) の割合に有意な差はなかった。これらの結果から,Malt1のプロテアーゼ活性はT細胞依存的な大腸炎 の発症に重要な役割を果たし,その機序にはTh17細胞やTh1/17細胞の制御が関与することが示唆された。

次に,Malt1 PDマウス由来の骨髄由来樹状細胞を,抗FcγR抗体で刺激したところ,炎症性サイトカイン

の産生量がWTの樹状細胞と比較して有意に低かった。抗CD41抗体をMalt1 PDマウスに腹腔内投与して FcγRシグナルを活性化させたところ,脾臓における炎症性サイトカインの発現量がWTマウスと比較して 有意に低かった。最後に抗CD41抗体を腹腔内投与してFcγRシグナル依存的な血小板減少を誘導したが,

Malt1 PDマウスでは血小板の減少は認められなかった。以上のように,Malt1のプロテアーゼ活性は FcγR

のシグナル伝達に寄与し,FcγR を介した免疫性血小板減少性紫斑病の発症に重要な役割を果たすことが示 唆された。

以上,Th17細胞とTh1/17細胞の制御による炎症性腸疾患の病態,並びにFcγRシグナルの活性化による

自己抗体依存的な炎症反応に,Malt1のプロテアーゼ活性が深く関与することを明らかにした。

(2)

論文審査結果の要旨

本粘膜関連リンパ組織リンパ腫転座 1 タンパク質 (Malt1) はシステインプロテアーゼ活性を有し,免疫細 胞の活性化を通じて,炎症反応に深く関与することが知られている。本学位論文は, Malt1のプロテアーゼ活 性の炎症反応への関与を明らかにするために,プロテアーゼ活性を欠損させたマウス (Malt1 PDマウス) を用 いて,T細胞依存的な大腸炎,自己抗体依存的な血小板減少症の病態に対するMalt1プロテアーゼ活性の関与 と作用機序についての解析を行った結果を論述している。

まず,Malt1 PDマウス由来のT細胞を刺激してIL-2の産生量を測定することで,野生型 (WT) マウスと比 較してIL-2産生量が有意に低いことを確認した後,Malt1 PDマウスに抗CD3抗体を腹腔内投与してT細胞を 活性化させたところ,WTマウスと比較して,大腸におけるIL-17Aの発現が有意に低かったが,IFN-γの発現 量には差がないことを見いだした。次にMalt1 PDマウスの細胞移入群における腸間膜リンパ節の IL-17並び にIFN-γ産生性のCD4+ T細胞の割合を調べ,IL-17+IFN-γ- T細胞 (Th17細胞)とIL-17+IFN-γ+ T細胞 (Th1/17細 胞) の割合がWTマウスの細胞移入群と比較して有意に低いことを明らかにしている。一方で,IL-17-IFN-γ+ T 細胞 (Th1細胞) の割合に有意な差がないことを確認している。以上の結果から,Malt1のプロテアーゼ活性は T細胞依存的な大腸炎の発症に重要な役割を果たし,その機序にはTh17細胞やTh1/17細胞の制御が関与する ことを推察している。

次に,Malt1 PDマウス由来の骨髄由来樹状細胞を,抗FcγR抗体で刺激したところ,炎症性サイトカインの 産生量がWTの樹状細胞と比較して有意に低いことを見いだしている。そして,抗CD41抗体をMalt1 PDマ ウスに腹腔内投与してFcγRシグナルを活性化させたところ,脾臓における炎症性サイトカインの発現量がWT マウスと比較して有意に低いことも確認している。更に,抗CD41抗体を腹腔内投与してFcγRシグナル依存 的な血小板減少を誘導したところ,Malt1 PDマウスでは血小板の減少は認められなかった。以上の結果を総括 し,Malt1のプロテアーゼ活性がFcγRのシグナル伝達に寄与し,FcγRを介した免疫性血小板減少性紫斑病の 発症に重要な役割を果たすことを明らかにした。

以上,Th17細胞とTh1/17細胞の制御による炎症性腸疾患の病態,並びにFcγRシグナルの活性化による自

己抗体依存的な炎症反応に Malt1 のプロテアーゼ活性が深く関与することを明らかにした本論文は,博士論 文として相応しい学問的意義及び価値を有するものと判定した。

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