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学位論文審査の要旨

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Academic year: 2021

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博 士 ( 農 学 ) 川 崎 正 隆

学 位 論 文 題 名

近赤外分光法による搾乳時乳質のりアルタイム測定技術 学位論文内容の要旨

  近 年, 北海 道で は 酪農 家の 戸数 の 減少 とと もに 酪農 家1戸あ た りの 飼養 頭数が増 加し,酪農は大規 模化 の傾向にある。そのため に乳牛を群管理する技術が 普及しつっある。一方で乳質 や産乳性の向上,

乳牛 の栄 養管 理や 病 気の 予察 には , 個体 管理 が重 要で ある。本研究は大型酪農にお ける個体管理を実 現す るた め, 搾乳 時 にお ける 乳質 の りア ルタ イム 測定 技術の確立を目的とした。本 研究では近赤外分 光法 を用いた乳質測定装置を 試作し,実用化を想定した 検量線の作戒とその測定精度 の検証を行った。

以下 にそ の内 容を 記 す. 。   1. 試作した乳質測定装置

  試 作した乳質測定装置はスペクトr/iij定部,分光器部,データ処理部,畢し量計,試零陀荘艮部から構 成 され る 。ス ペク トル 測 定部 は生 乳に 光を 照 射す るハ ロゲン ランプ,生乳を透過した光を 分光器部に 送 る光 フ ァイ バー ,冷 却 ファ ンか ら構 成さ れ る。 測定 室の生 乳体積は約230 mLである。ハ ロゲンラン プ と 光 フ ァイ バー の 光軸 は同 一水 平 面上 で直 交す るよ う に取 り付 け,SN(Signalpernoise) 比の 向 上 を図 っ た。 測定 室内 は 洗浄 性を 考慮 し構 造 を円 柱型 にし, 内壁の材質にガラスを用いた 。光源の光 は 測定 室 内で 生乳 を拡 散 透過 し, 光フ ァイ バ ーに 入る 。測定 室内では生乳をオーバーフロ ーさせ,光 軸 から 生 乳液 面ま での 距 離が 一定 (93m) にな るよ う にし た。 分光 器は 回 折格 子型である 。測定波長 範 囲は 実 用化 した 場合 の セン サー 部の コス ト を考 慮し ,短 波長 域 (600〜1050nm冫を用い た。波長分 解 能は5nmであ る 。ヒ ータ ーユ ニッ ト は分 光器 内部 の 温度 を一 定(28℃ ) に保 ち,周囲の 温度変動に よ る ス ペ クト ルの 変 動を 防ぐ 。測 定 室内 が乾 燥し た状 態 の光 の信 号強 度をReferenceとし ,lnm毎 の 透過 率を算出し,これを生乳スペ クトルとした。

  2. 試作 した 乳質 測定 装 置の 測定 精度

  試作 した 装置 の 性能 を検 証す る ため ,搾 乳時 に流 動 する生乳のスペクトルを測 定し,乳質測定用検 量 線の 作成 およ て 購度 検証 を行 っ た。 その 結果 ,乳 牛1個体 お よび 複数 個体 の生 乳の乳脂肪,乳糖,

乳 タ ン パク 質, 体細 胞数(Somatic cell count: SCC), 乳中 尿素 態窒 素(Milk urea nitrogen: MUN) を 精度 よく 測定 す る事 がで きた 。 また その 際, 検量 線 作成のためのスペクトルの 前処理は不要である 事 ,検 量線 作成 方 法と してPartial least squares (PLS)回 帰 分析 が適 切で ある ことが分かった。よ っ て試 作し た装 置 によ る乳 質測 定 の可 能陸 が示 唆さ れ た。

  3. 検量 線の 測定 精度 に 影響 を与 える 要因 の 検討

  本 装 置の 実際 の運 用を 想 定す ると ,検 量線 作 成識H (Calibrationset)に含 まれ な ぃ乳 牛個 体や 泌 乳 期間 の試 阿を 測 定す る事 が考 え られ る。 そこ で安 定 して高い精度を得られるロ バストな検量線を作 成 する ため に, 検 量線 の測 定精 度に影響を与える要因 について検討を行った。その 結果,Calibration setと 精 度 検 証 試 料(Validation set)で 個体 や 期間 が同 じ試 料 が含 まれ る場 合, 実 用上 充分 な精 度

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が得られた。っすで個体や期間が異なる場合,乳脂肪は高い精度で測定できたが,他の乳質の測定精 度は低下した。

  また 近 赤 外分 光法によ る計測 システム の実用 では精度 を維持す るため に,従来 用いて きた Calibration setに新たな試陣を加え検量線を作成する,検量線の改良更新が行われる。そこで本装 置において検量線の改良更新を行った場合の精度検証を行った。その結果,乳脂肪は高い精度で測定 できたが,他の乳質の測定精度は低下した。また精度低下を起こした乳質の検量線はPLS factor数(nF) が過剰であり,0ver−fittingが生じていた。そこでnFの最適値を検討した。その結果,乳糖の測定 精度はnFを調整する事により,決定係数(めの向上が認められた。しかし他の乳質では充分な精度 を得る事はできなかった。

  4.検量線による乳質の測定原理

  ロバストな検量線作成のため,乳質の測定原理を調べた。ここではスペクトルと乳質の関係性を表 すPLS factorに着目し,検量線の解析を行った。

  その結果,検量線のPLS factorl(Pfl)はいずれの乳質,個体においても乳脂肪の´時報を持つ事 がわかった。また乳糖とSCCは乳脂肪と高い内部相関を持っためPflから情報を得られたが,乳タン パ ク 質 やMUNは 乳 脂 肪 と の 内 部 相 関 が 低 い た め , 充 分 な 情 報 が 得 ら れ て い な か っ た 。   ま たPLS factor2くPf2)はN−Hstringを有する乳質の情報を持つ事がわかった。しかし,Pf2は その情報量が少なく,ノイズなど他の要因の影響に弱く,実用レベルの検量線では不十分と考えられ た。さらにPLS factor3は同じ乳質の検量線でも個体によって異なるものであった。Calibration set によって異なるPLS factorが検量線に含まれるため,Calibration setとValidation setで個体等 の差異が生じた時に精度低下が起こると考えられた。よってスペクトルに含まれる乳質の挙動を捉え ているのはPflおよぴPf2であった。しかしPf2の持つ 清報量は少なく,実用レベルの検量線ではPfl のみが有効と考えられた。

  また内部相関が測定精度に関係している事が考えられたため,各乳質問の内部相関を調べた。その 結果,内部相関f囃乳1回分のデータセットでは高かった。この内部相関は乳質が搾乳の経過によっ て一定の変動をするために泌乳生理上,必然的に生じる相関と考えられた。また搾乳複数回のデータ セットでは乳脂肪と乳糖,乳脂肪とSCC,乳糖とSCCとの間では内部相関が高いままであったが,他 の乳質の組み合わせでは低下した。これは泌乳期の進行に伴い,乳質値が変動し,内部相関が変動,

低下するためである。そのためCalibration setとValidation setそれぞれに同じ個体や期間の試料 が含まれる場合は,乳脂肪との内部相関の情報を利用して良い精度で測定する事ができるが,個体や 期間が異なると内部相関の情報が共有されなぃため,精度は低下すると考えられる。従って各乳質問 の内部相関の変動や低下もまた,個体や測定期間の変動に伴う測定精度低下の一因と考えられる。

  5.総括

  試作した近赤外測定装置により搾乳中に乳脂肪を高い精度で測定できる事がわかった。また,乳糖 はnFを調整する事により,ある程度の精度が得られた。乳タンパク質,SCC,MUNは実用を想定した 検証では良い精度を得られなかった。これらの乳質を高い精度で測定するためには,測定波長域の再 検討が考えられる。しかし波長域を拡大しても乳脂肪以外の乳質の´庸報を充分に持つスペクトルを測 定できなぃ事から,本論文で示された結果が近赤外分光法による生乳乳質のりアルタイム測定を行っ た際の測定精度の限界と考えられる。

  以上の結果から,試作した乳質測定装置により,乳脂肪のモニタリングによる生乳の品質評価や飼 養管理,乳糖の増減のモニタリングによる乳房炎検知等をオンラインで行う事が可能になると考えら れ る 。 よっ て 本 技 術は 大 型 酪農 に お ける 個 体 管理 に 応 用で き る 技術 で あ る と考 えら れる。

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学位論文審査の要旨

主査   准教授   川村周三 副査   教授   木村俊範 副査   教授   松田従三 副査   教授   野口   伸

副査   准教授   夏賀元康(山形大学農学部)

副査   講師   中辻浩喜

学 位 論 文 題 名

近赤外分光法による搾乳時乳質のりアルタイム測定技術

  本 論 文 は , 全 6章 か ら な る 総 頁 数193の 和 文 論 文 で あ る 。 論 文 に は 図66, 表61, 引 用 文 献88が 含 ま れ , 別 に 参 考 論 文2編 が 添 え ら れ て い る 。

  近 年 , 北 海 道 の 酪 農 は 大 規 模 化 の 傾 向 に あ る 。 そ の た め に 乳 牛 を 群 管 理 す る 技術 が 普 及 し つ っ あ る 。 一 方 で 乳 質 や 産 乳 性 の 向 上 , 乳 牛 の 栄 養 管 理 に は 個 体 管 理 が 重 要で あ る 。 本 研 究 は 大 型 酪 農 に お け る 個 体 管 理 を 実 現 す る た め , 搾 乳 時 に お け る 乳 質 リア ル タ イ ム 測 定 技 術 の 確 立 を 目 的 と し た 。 本 研 究 で は 近 赤 外 分 光 法 を 用 い た 乳 質 測 定装 置 を 試 作 し , 実 用 化 を 想 定 し た 検 量 線 の 作 成 と そ の 測 定 精 度 の 検 証 を 行 っ た 。   以 下 に , 論 文 の 内 容 と 審 査 結 果 に つ い て 述 べ る 。

  1. 試 作 し た 乳 質 測 定 装 置

  試 作 し た 乳 質 測 定 装 置 は ス ペ ク ト ル 測 定 部 , 分 光 器 部 , デ ー タ 処 理 部 , 乳 量 計, 試 料 採 取 部 か ら 構 成 さ れ る 。 スペ ク ト ル測 定 部 では 搾 乳 され た 生 乳に 光 を 拡 散透 過 さ せ,

そ の 透 過 光 を 光 フ ァ イ バ で 分 光 器 部 に 送 る 。 測 定 波 長 範 囲 は600〜1050 nmで ,lnm 毎 に 拡 散 透 過 率 を 測 定 し , こ れ を 生 乳 ス ペ ク ト ル と し た 。

  2.試 作 し た 乳 質 測 定 装 置 の 測 定 精 度

  試 作 し た 装 置 の 性 能 を 検証 す る ため , 搾 乳時 に 流 動す る 生 乳の ス ペ ク トル を 測 定し , 乳 質 測 定 用 検 量 線 の 作 成 お よ び 精 度 検 証 を 行 っ た 。 そ の 結 果 , 乳 牛1個 体 お よ び 複 数 個 体 の 生 乳 の 乳 脂 肪 , 乳 糖 , 乳 タ ン パ ク 質 , 体 細 胞 数 (Somatic cell count:SCC) , 乳 中 尿 素 態 窒 素 (Milk urea nitrogen: MUN)を 精 度 よ く 測 定 す る 事 が で き た 。 よ っ て 試 作 し た 装 置 に よ る 乳 質 測 定 の 可 能 性 が 示 唆 さ れ た 。

  3.検 量 線 の 測 定 精 度 に 影 響 を 与 え る 要 因 の 検 討

  本 装 置 の 実 用 に 際 し て は , 検 量 線 作 成 試 料 (Calibration set) に 含 ま れ な ぃ 乳 牛 個 体 や 泌 乳 期 間 の 試 料 を 測 定 す る 事 が 考 え ら れ る 。 そ こ で 安 定 し て 高 い 精 度 を 得 られ     −872―

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るロバストな検量線を作成するために,検量線の測定精度に影響を与える要因につい て検討を行った。その結果,Calibration set と精度検証試料(Validation set )で 個体や期間が同じ試料が含まれる場合,実用上充分詮精度が得られた。一方で個体や 期間が異なる場合,乳脂肪は高い精度で測定できたが,乳脂肪以外の乳質では精度が 低下した。

  4. 検量線による乳質の測定原理

   ロバストな検量線作成のため, PLS factor に着目し乳質の測定原理を調べた。

   その結果,検量線のPLS factorl はいずれの乳質,個体においても乳脂肪の情報 を持つ事がわかった。また乳糖とSCC は乳脂肪との高い内部相関により情報が得られ ていた。

   またPLS factor2 はN −Hstring を有する乳質の情報を持つ事がわかった。しかし,

その情報量が少なくノイズなど他の要因の影響に弱く,実用レベルの検量線としては 不十分と考えられた。さらにPLS factor3 は同じ乳質の検量線でも個体によって異 なった。このように普遍性を持たないPLS factor が検量線に含まれる事が,個体等 の差異による精度低下の原因と考えられた。

   また内部相関が測定精度に関係している事が考えられたため,各乳質問の内部相関 を調べた。その結果,内部相関は搾乳1 回分のデータセットでは高かった。この内部 相関は乳質が搾乳の経過によって一定の変動をするために生じると考えられた。また 搾乳複数回のデータセットでは乳脂肪と乳糖,乳脂肪とSCC ,乳糖とSCC との間では 内部相関が高かったが,他の乳質の組み合わせでは相関が低下した。これは泌乳期の 進行に伴い,乳質値が変動するためである。そのためCalibration set とValidation set で個体等が異なると内部相関の情報が共有されないため,精度低下が起こると考 えられる。従って各乳質問の内部相関の変動や低下も個体や測定期間の変動に伴う測 定精度低下の一因と考えられる。

  5. 総括

   試作した近赤外測定装置により搾乳中に乳脂肪を高い精度で測定できる事がわか った。乳糖は PLS factor 数を調整する事により,ある程度の精度が得られた。乳タ ンパク質,SCC ,MUN は実用を想定した検証では良い精度を得られなかった。これらの 乳質を高い精度で測定するためには,測定波長域の再検討が考えられる。しかし波長 域を拡大しても乳脂肪以外の乳質の情報を充分に持つスベクトルを測定できない事 から,本論文で示された結果が近赤外分光法による生乳乳質のりアルタイム測定を行 った際の測定精度の限界と考えられる。

   以上のように,試作した乳質測定装置により,乳脂肪のモニタリングによる生乳の 品質評価や飼養管理,乳糖の増減のモニタリングによる乳房炎検知等をオンラインで 行う事が可能になると考えられ,本技術は大型酪農における個体管理に応用できる技 術であると思われる。

   よって,審査員一同は川崎正隆が博士(農学)の学位を受けるのに十分な資格を有 するものと認めた。

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参照

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