博 士 ( 薬 学 ) 黒 住 公 一
学 位 論 文 題 名
Bh/IP 夕イプIa 受容体会合分子の遺伝子クローニング 学位論文内容の要旨
【 序論】
TGF‑ロ スー バ ーフ ァミ リ ーに 属す る 因子 の細 胞 内情報伝達にはタ イブIとIIからなる2種類のセリ ン・ スレオニンキナー ゼ型受容体カミ関 わることが知られているが、細胞内への情報伝達には、タイブI 受容 体による細胞内基 質のりン酸化が大 きな役割を果たして いると考えられている.そこでこれまで、
タイ ブI受容 体会合分子のクロー ニングが行われて きた。
一 方 、 新 規MAPKKKで あ るTGF‑ロactivaued kinasel(TAK1) 、 お よ び そ の 活 性 化 因 子 で あ る TAK|binding proteinl(TAB1)がTGF‑ロ スー′ヾーファミ リーの情報伝速に関与することが明らかと な っ て い る 。TAK1はMKK3.4、6.さ ら にSAPK/JNK. p38を 活 性 化 す る こ と か ら 、 こ れ ら の 新 規 MAPKカスケードが1、GF・ロスー バーファミリーの 情報伝違に関与す ることが示唆されている。現在の と こ ろ、TAB1よ り下 流の 情 報伝 達経 路 につ いて は 明ら かと な って きた が 、受 容体 とTAK1、TAB1の 間の 情報伝達因子は不 明である。そこで 、本研究ではyeast tvro‑bybrid systemを用い、BMPタイブIa 受容 体細胞内ドメイン 会合分子の遺伝子 クローニングを試み た。
【 結果および考察】
1. BMPreceptorassociatedmolecule (BRAM) cDNA(Jp:20二三22
マ ウ スBMPタイ ブIa受 容体 (BMPRIa)の 細胞 内ド メ イン をbaitとし て、 ヒト胎盤cDNA lib rary をyeast tvro‑bybrid syscemによルスク リーニングした。 その結果、新規遺 伝子であるBMP receptor associated molecule2(BRAM2) 、既 知の タ イブI受容 錐会 合 因子FKBP12. NF‑KBの サブ ユ ニッ トで あ るp50の前 駆 体p105ゐi得ら れ た.p105に つい ては 受容 体への結合は認め られろものの、受容 体刺 激 によ る 活性 化が 認 めら れな ぃ こと から 検 討を 止め た .新 規遺f云子 で あるBRAM2は完 全 長cDNAの クロ ーニングを行ったと ころ、少なくとも4種のsplicing variancゐ 得られた。これらは、アデノウイ ル スEIA結合 蛋 白質 であ るBS69の内 部 配列 をコ ー ドし てい た 。こ れら をBRAM2a.b、cと命名し た・
こ の 中 でBRAM2cは 一 番 短 く 、 さ ら にN末 端 の12ア ミ ノ 酸 がBS69や 他 のBRAM2 isoformと 異 な っ てい た.
2.BRAM2と旦MPRIaゝ:TAB1とQ盤盒Q捻誼 ・
得 ら れ た 全 て のBRAM2 isoformお よ びBS69に つ い てBMPRIa細 胞 内ド メ イン およ びTABIとの 結 合をcwo‑bybrid systemによ り検討し た。その結果、BS69を除き全てのBRAM2 isoformで結合カi確 認 され た .こ れよ りBRAM2 isoformはBMPRIaとTABIの 間の 情 報I云 遅に 働く 可 能性 が示 さ れた .た だ し 、BRAM2is。formは 核蛋 白 質で あるBS69の 部分 配 列を コー ド して いた . そこ でBS69と最 も構 造 が異 な るこ とか ら 、濺 能も 異 なる 可能 性 が高 いBRAM2cに 絞っ て 以後 の解 析 を行 うこ と にし た.
3. BRAM2 mRNAQきB獵 公査
BRAM2cを ブ 口 ー ブ と し て ヒ ト の 各 組 織に お けるBRAM2 mRNAの発 現 を検 討し た .そ の結 果 、 調 べた 全 ての 組織 で4.4 kbお よび1.35 kbのmRNAが 発現 し てい た.1.35 kbのmRNAはBS69をコー ド す る に は 短 す ぎ る こ と か ら BRAM2 isof armを コ ー ド し て い る こ と が 示 唆 さ れ た .
4. BRAM2cQ細 胞 白 壁 蠱吐7屋 在
BRAM2cの 細 胞 内 で の局 在 を 検 討 し た. そ の 結 果 、対 照 と し たBS69は 骸に 局 在 したの に対し 、 BRAM2cは 細 胞 質 に 局 在 が み ら れ た . こ の 結 果はBRAM2cがBMPRlaとTAB1と の間 の 情 報 伝 達に 働 く と い う可 能 性 を 支 持す る と 思 わ れた 。
5.Cos ilmaac:おLtるBRAM2cユBMPRIa,̲ TABlQ遣盒
っ ぎ に 、BMPRlaとBRAM2cのCOS細 胞 に お ける 結 合 をGST puLl down assayに よ り 検討 したと こ ろ 、BRAM2cとBMPRIa細 胞 内 ド メ イ ン の 結 合 が 確認 さ れ た 。 さ らにTAB1とBRAM2cの 結 合 も同 様 に確認された。そこでさらに、 BMPRla. TABl. BRAM2cゐ 複合体を形成するかを共沈実験により検 討 し た 。 そ の 結 果 、BMPRla細 胞 内 ド メ イ ン と共 沈 す るTAB1はBRAM2cの共 存 に よ り 増加 し た . TAB1とBMPRla細 胞 内 ド メ イ ン の 直 接 の 結 合 は 認 め ら れ な ぃ こ と か ら 、 こ の 結 果 はBRAM2cが TAB1とBMPRIaの 結 合 の 仲 介 す る 可 能 性 を 示 す . た だ し 、BRAM2c非 存 在 下 で もTAB1のBMPRIa へ の 結 合 が 見 ら れ た が 、 こ の 結 合 に 内 在 のBRAM2が 関 与 す る か 否 か は 不 明 で あ る ,
6. BRAM2c overexpress塑!三よ墨工△璽!活性Iヒ仝Q髮饗
BRAM2cのoverexpressionに よ るTAKl活 性 化 へ の影 響 を 調 べ た。11GF^ロ に よ り 誘 導さ れ る p|恥minogenactiv缸0rinhibitor^1(P糾‐1)のブロモー夕一活性化にn拭1が関与することゐミ明かとなっ て い る 。 そこ で 、P創 ‐1ブ ロ モ ー ター を っな ぃだrePorterブラ スミド 、T´氷1、1.AB1、お よび BRAM2c発 現 ベク タ ー をTGF.ロ 応答性 の細胞 ヘトラ ンスフ ウク トし、 ルシフ ウラー ゼア ッ七イ によ ル ブ 口 モ ータ ー 活 性 を 検討 し て 、BRAM2cのTAK1活性 へ の 影 響 を調 べ た 。 そ の 結果 、BRAM2cの発 現 により1、AK1お よび1丶AB1によ るPAHブロモ ータ一 活性 化が増 強した 。この作用は1丶AK1あるいは TABI単 強 の 場 合 は恕 め ら れ な ぃこ と か ら 、BRAM2cは1,ABlの 活性 化を介 してT AXIの活 性化を 行 うことゐ 示唆された。
【結 諭】
tYeasr,twa‑hybrid systemを 用 い てBMPタ イ ブIa受 容 体 細 胞 内 ド メ イ ン 会 合分 子BRAM2の cDNAを 単離 し た 。BRAM2は 長さ の 異 な るisof armを も ち 、こ れ ら は ア デノウ イルスEIA結 合 蛋白 であるBS69の部 分配 列をコ ードし ていた 。
2 coS細 胞 に お け る 共 沈 実 験 よ り 、BRAM2cはBMPRIaとTABIの 結 合を 仲 介 す る 可能 性 が 示 さ れた .
3 BRAM2cの 発 現 によ りTAKI活 性 の 増 強 カt見 ら れ た 。こ の 作 用 はTAB1が共 存する 場合 のみ認 めら れたこ とか ら、BRAM2cは1、AB1の活性 化を介 して1一AKlを活 性化 するこ とが示唆された。
学位論文審査の要旨
主 査 教 授 徳 光 幸 子 副 査 教 授 横 沢 英 良 副 査 助 教 授 沢 田 均 副 査 助 教 授 澁 谷 浩 司
学位論文題名
Bh/IP .夕イプIa 受容体会合分子の遺伝子クローニング
TGF‑p ス ー バ ー フ ん ミ リ ー に 属 す る 因 子 の 細 胞 内 情 報 伝 達 に は タ イ プ I と II か ら な る 2 種 類 の セ リ ン ・ ス レ オ ニ ン キ ナ ー ゼ 型 受 容 体 が 関 わ る こ と が 知 ら れ て い る が 、 細 胞 内 へ の 情 報 伝 達 に は 、 夕 イ プ I 受 容 体 に よ る 細 胞 内基 質 の り ン 酸 化 が 大 き な 役 割 を 果 た し て い る 。 一 方 、 新 規 MAPKKK で あ る TGF ‑ pactivated kinasel(TAKI) お よ び そ の 活 性 化 因 子 で あ る TAKl binding proteinl(TABl) が TGF‑p ス ー パ ー フ ァ ミ リ ー の 情 報 伝 達 に 関 与 す る こ と が 明 ら か と な っ て い る 。 し か し 、 受 容 体 と TAK1 、 TAB1 の 間 の 情 報 伝 達 因 子 は 不明 で あ る。
本 論 分 提 出 者 は 、 yeast two‑hybrid system を 用 い 、 BMP タ イ プ Ia 受 容 体 細 胞 内 ド メ イ ン 会 合 分 子 の 遺 伝 子 ク ロ ー ニ ン グ を 行 っ た 。 そ の 結 果 、 BMP 夕 イ プ Ia 受 容 体 細 胞 内 ド メ イ ン 会 合 分 子 BMPre.ceptor associated molecule2 (BRAM2) の cDNA の 単 離 に 成 功 し 、 そ の isoform の 1 つ で あ る BR AM2c の 情 報 伝 達 因 子 と し て の 役 割 を 追 求 し て 、 以 下 の よ う な 成 果 を お さ め た 。 1 . マ ウ ス BMP 夕 イ プ Ia 受 容 体 の 細 胞 内 ド メ イ ン を bait と し て 、 ヒ ト 胎 盤 cDNA library を yeast two‑hybrid system に よ ル ス ク リ ー ニ ン グ し た 。そ の 結 果 、 新 規 遺 伝 子 で あ る BRAM2 、 既 知 の タ イ プ I 受 容 体 会 合因 子 FKBP12 、 NF ‑ KB の サ ブ ユ ニ ッ ト で あ る p50 の 前 駆 体 p105 が 得 ら れ た 。 新 規 遺 伝 子 で あ る BRAM2 は 完 全 長 cDNA の ク ロ ー ニ ン グ を 行 っ た と こ ろ 、 4 種 の splicingvariant が 得 ら れ た 。 こ れ ら は 、 ア デ ノ ウ イ ル ス EIA 結 合 蛋 白 質 で あ る BS69 と BS69 の 内 部 配 列 を コ ー ド し て い る 新 規 物 質 で あ り 、 BRAM2a , b , c と 命 名し た 。 この 中 で BRAM2c は 一 番 短 く 、 さ ら に N 末 端 の 12 ア ミ ノ 酸 が BS69 や 他 の BRAM2 isoform と 異 なっ て い た。
2. 得 ら れ た 全 て の BRAM2isoform お よ び BS69 に つ い て BMP タ イ プ Ia 受 容 体 の 細 胞 内 ド メ イ ン お よ ぴ <TAB1 と の 結 合 を two‑hybridystem によ り 検 討し た 。 そ の 結 果 、 BS69 を 除 き 全 て の BRAM2 isoform で 結 合 が 確 認 さ れ た 。 こ れ より BRAM2isoform は BMP 夕 イ プ Ia 受 容 体 と TAB1 の 間 の 情 報 伝 達 に 働 く 可 能 性 が 示 さ れ た 。 そ こ で BS69 に 最 も 構 造 が 異 な る こ と か ら 、 機 能 も 異 な る 可 能 性 が 高い BRAM2c につ い て 解析 を 行 っ た。
3 . BRAM2c を ブ 口 ー ブ と し て ヒ ト の 各 組 織 に お け る BRAM2mRNA の 発 現 を 検 討 した 。 そ の結 果 、 調べ た 全 ての 組 織で 4 . 4 kb およ び1 . 35 kb のmRNA が発 現
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