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学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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博 士 ( 薬 学 ) 原 田 陽 介

     学位論文題名

Analysis of CD28 cosignaling pathways     (CD28 を介するシグナル伝達機構の解析)

学位論文内容の要旨

  抗原が抗原 提示細胞(APC)によってT細胞に 提示される と、その抗 原に 特異的なT細胞の増殖と機能細胞への分化が起こり、抗原特異的な各種の免 疫応答が誘導される。このT細胞の十分な活性化のためには、抗原特異的な T細胞レセ プター(TCR)を介するシグナルに加え、co‑stimuLatory分子間の 相互作用により伝えられるco‑stimulatoryシグナル(補助シグナル)が必要で ある。この補助シグナルを誘導する分子のなかでも最も重要だと考えられてい るCD28分 子は 、APC上 のB7分子 群 との 相 互作 用 によ りT細胞 に 補助シ グ ナルを伝達し、T細胞の増殖、アポトーシスの抑制、サイトカインの産生など T細胞の活性化とそれに続く機能発現に広くかかわっていることが明らかに なっている。しかし、これらCD28の多様な機能が、どのようなT細胞内のシ グナル伝達経路を介して発現されるかということに関しては、よくわかってい ない。そこで本研究ではCD28を介するシグナル伝達経路とそれにより発現さ れるT細胞の機能との関係を明らかにするためにCD28の細胞内領域に存在す る、シグナル伝達に重要である可能性の高いアミノ酸残基に変異を導入した CD28分 子 を 作 製 し た 。 そ し て 、こ れ らの 変 異CD28分 子 をヒ トT細 胞 株 Jurkat及びCD28欠損マウスに導入、発現させ、変異分子を発現したT細胞の 機能を検討した。

  CD28分子の細胞内領域にはりン酸化によりSH2ドメインに認識される可能 性 のあるチ口シン残基が4つ、SH3ドメインに認識される可能性のあるプ口 リ ンリッチモチーフ(PxxPモチーフ)が2ケ所存在している。また、第一番 目 のチ口シン 残基を含むYMNMモチーフに はPI3‑kinaseとGrb‑2が結合する ことが明らかとなっている。そこでこれらのシグナル伝達に重要であると考え られるアミノ酸残基を変異または欠失させた遺伝子を作製し、どのアミノ酸が CD28によるIL‑2 promoterの活性化に重要であるかをヒトT細胞株Jurkatを用 い、検討した。

  そのりン酸化によりPI3‑kinaseとGrb‑2が結合し、CD28によるシグナル伝達 に 重要であると考えられている189番目のチ口シン残基の置換体、Y189Fは wild type CD28の40%程度に活性が減少したが、まだIL‑2 promoterの活性化能 を 十分有して いた。YMNMモチ ーフ内のア スバラギン残基の置換体、N191A は 、CD28の細胞内領域のほぼすべてを欠失させた変異体、TMと同程度まで 活性が減少し、ほとんど活性を持っていないことが明らかとなった。一方、

YMNMモ チーフ内の メチオニン 残基の置換 体、M192Lはwild type CD28とほ ぼ同等の活性を有していた。これまでの研究からPI3‑KinaseはYxxMモチーフ に 、Grb‑2はYxNxモチーフに結合することが知られているので、Y189Fには

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PI3‑Kinase、Grb‑2の両方が結合せず、N191AにはPI3‑Iくinaseが選択的に結合 し、M192LにはGrb‑2が選択的に結合することが予想される。これらのこと はCD28によるIL‑2 promoterの活性化にはGrb‑2は重要な働きをしているが、

PI3‑kinaseは必須ではないことを示唆している。驚いたことにN191Aの結果か ら 活 性 を 持 た ない こ と が 予想 されたYMNMモチ ーフ の欠失 体、YMNM del は、Y189Fとほぼ同等の活性を持っていた。以上の結果から、YMNM モチー フにはIL‑2 promoterの活性をポジティブに制御する因子とネガティブに制御 する因子のニっが結合し、N191Aにはネガティブに制御する因子のみが結合 することが予想された。N191AにはPI3‑Kが実際に結合しうることが判明した ので、このIL‑2 promoterの活性をネガティブに制御する因子としてはPI3‑K が候補として考えられた。PI3‑KがIL‑2 promoterの活性をネガティブに制御す るかどうかを検討するために、CD28によるIL‑2 promoterの活性化に対する PI3‑Kのinhibitor、LY294002の効果を調べたところ、inhibitorによりIL‑2 promoterの活性化の程度は増強された。さらに、活性化型のPI3‑Kを導入した ところ、CD28によるIL‑2 promoterの活性化は強く抑制された。以上の結果 は、PI3ーKがCD28によるIL2 promoterの活性化をネガティブに制御している 可能性を示唆している。

  っぎにCD28分子により伝達されるシグナルにおける189番目のチ口シン残 基の役割について詳細に検討するためにhuman CD2 promoter/enhancerの制御 下でCD28 wild type、Y189F、TMをそれぞれB6 CD28ノックアウトマウスに 発現させたトランスジェニックマウスを作製した。

  これらのトランスジェニックマウスから得られたT細胞の機能を解析する ために、血vitroにおいてT細胞を抗CD3抗体と抗CD28抗体で刺激し、その 増殖およびIL‑2の産生を検討した。刺激開始から24h後ではB6とwild typeの トランスジェニックマウスでは抗CD28抗体の濃度依存的に増殖反応の大きな 増強が見られたが、Y189Fの卜ランスジェニックマウスでは増強は見られる ものの、かなり弱いものであった。48h後での増殖反応はY189Fトランスジ エニックマウスでも抗CD28抗体によって十分な増強が見られたが、wild type の卜ランスジェニックマウスよりも、その程度は弱かった。同様の刺激による T細胞 のIL‑2産生 量をELISA法 を用いて測定すると24h後ではY189Fはほと んどIL‑2を産生しておらず、wild typeと圧倒的な差が見られたが、48h、72h と時間が経つにっれ産生量が増大し、72h後ではwild typeと同等の量のIL‑2 を産生することがわかった。

  っぎに生体内の免疫応答におけるYMNMモチーフに存在するチ口シン残基 の重要性を検討するために各トランスジェニックマウスから得られた脾臓細 胞を(B6xDBA/2)F1マウスに移入しacute GVH反応が誘導されるかどうかを 調べた。その結果、Y189Fトランスジェニックマウスの脾臓細胞を移入した マウスではTM卜ランスジェニックマウスの脾臓細胞を移入したマウスと同様 に全くacute GVH反応が誘導されなかった。以上の結果は、YMNMモチーフ に存在するチ口シン残基が、特に生体内における免疫応答においては、極めて 重要な働きをしていることを示唆している。

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学 位 論 文 審 査 の 要 旨 主査    教授   有賀寛芳

副査    教授   安部   良(東京理科大学)

副査    助教授   松本健一 副査    講師   山下俊之

     学位論文題名

AnalySiSOfCD28COSignalingpathwayS      (CD28 を介するシグナル伝達機構の解析)

  生 体内 にお ける 免疫 応答で中心的な役割を果たしているT細胞の活性化の た め に はT細 胞 レ セ プ 夕‑ (TCR)を 介 す る抗 原特 異的 なシ グナ ルに 加え 、 CO−stimulatory分子間の相互作用により伝えられるco‑stimulatoryシグナル

(補助シグナル)が必要である。この補助シグナルを誘導する分子の中で最 も 重 要 だ と 考 え ら れ て い るCD28分 子 は 、APC上 のB7分 子 群と の 相 互 作 用 に よ りT細 胞 に 補 助 シ グ ナ ル を 伝 達 し 、T細 胞の 増殖 、ア ポト ーシ スの 抑 制、 サイ トカ イン の産 生などT細胞の活性化とそれに続く機能発現に広くか かわ って いる こと が明 らか とな って いる 。し かし 、これらCD28の多様な機 能が 、ど のよ うなT細 胞内のシグナル伝達経路を介して発現されるかという こと に関 して は、 いま だ不 明な 点が 多い 。本 論文 は、CD28の細胞内領域に 存在する、シグナル伝達に重要であるとされているアミノ酸を変異もしくは 欠 失 さ せ たCD28分 子 を 用 い て、CD28か ら の 補 助 シ グ ナ ル に よ るT細 胞 の 機能発現にどのような細胞内シグナルが関与しているかを明らかにし、しい ては 正常 およ び病 的な 免疫 応答 にお けるCD28を介 する補助シグナルの役割 を解明することを目的としている。

  第 一 章で はヒ トT細胞株Jurkatを 用い て、CD28によ るIL‑2遺 伝子 の転 写 活性 化にPI3‑Kの 活性 化がどのような役割を担っているかを詳細に検討して い る 。CD28の 細 胞 内 領 域 に 存 在 す るYMNMモ チ ー フ に は そ のチ 口 シ ン 残 基のりン酸化によりPI3‑kinase、Grbー2といったシグナル伝達に重要であると 考え られ てい る分 子が 結合 する こと が知 られ てい る。CD28シグナルにおけ るPI3‑kinaseの役割についてはいくっかのグループにより報告があるが、統 一 的 な 見 解 は 得 ら れ て い な い 。 本 論 文 で はCD28のYMNMモ チー フ に 点 変 異を導入し、PI3‑kinaseを結合するがGrb−2が結合できないようにした変異 CD28分 子が 、P13‑kinase、Grb‑2の 両分 子を 結合 でき ない よう な変 異CD28 分子 に比 ぺIL‑2 promoterの活性化能が低いことから、CD28によるIL‑2遺伝 子の 転写 活性 化をPl3‑kinaseがnegatlveに調 節し ている可能性を見いだし た 。 さ らに 、P13‑kinaseのinhibitorで あるLY294002がCD28依 存性 のIL‑2 promoter活性化を増強すること、また、活性化型のPI3‑kinaseの導入により CD28依存 性のIL‑2 promoter活性化が抑制されることを示し、P13‑kinaseの

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活性化がCD28によるIL‑2遺伝子の転写活性化に抑制的に働くことを明らか にした。これらの結果は、細胞増殖に対して正の調節因子と考えられている PI3‑kinaseが、ある局面では負の調節因子となりうる可能性を示した点で非 常にユニークなものである。

  第2章で は 、CD28のYMNMモチー フのチ□シ ン残基に点 変異を導入 し た変異CD28を発現する卜ランスジ工二ックマウスを作製し、primaryT細胞 のCD28補助シグ ナルにおけ るYMNMモチーフ の役割につ いて詳細に検討 している。in vitroにおいて、このトランスジェニックマウスから得られたT 細胞を抗CD3抗体お よび抗CD28抗体 で刺激すると、刺激後の早い段階で は変異CD28を発 現するT細胞は、 野生型CD28を発現 するT細胞に比ぺ、

増殖能およびIL‑2の産生能は非常に劣っているが、時間が経過するにっれて 野生型CD28を発 現するT細胞と同 等のレベル になること 、また、PMAと 抗CD28抗体の組み合わせによる刺激では十分な時間が経過してもほとんど IL‑2を産生しないことを明らかにした。これらの結果はT細胞への刺激の入 り方や活性化の状態によって、このYMNMモチーフからのシグナルの重要 性が変化することを示唆している。生理的な増殖能や機能分化能を保持して いるprimaryT細胞を用いたこのような研究は国際的にも報告はなく、変異 遺伝子トランスジェニックマウスの確立なくレてはできないユニークな研究 である。さらに、この研究ではin vivoでの免疫応答におけるYMNMモチー フの役割について、acute GVH reactionの系を用いて検討している。変異 CD28を発現するトランスジェニックマウスから得られた脾臓細胞をFlマウ スに移入してもacute GVH reactionが全く誘導されないことを示し、CD28の YMNMモチーフを介するシグナルが生体内の免疫応答において非常に重要 な働きをしていることを明らかにした。これらの結果は、in vivoでの免疫応 答にこのモチーフを介するシグナルが必須であることを示した点で非常に学 問的価値が高い。

  以 上 を 持 っ て 、 本 論 文 は 学 位 論 文 に 十 分 値 す る と 考 え ら れ る。

参照

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