博 士 ( 薬 学 ) 新 家 瑠 奈
学 位 論 文 題 名
Caspase とその阻 害因子XIAP の各結合 蛋白質の 単離・同定:そのアポトーシス制御機構
学位論文内容の要旨
ア ボト ーシ スは 、発 生の 過程 や生 体の 防御反応において重要な役割 を担っており、
また 脳虚 血や アル ツハ イマ ー病 とい った 神経変性疾患においても神経 細胞のアボトー シス が惹 起さ れて いる こと が知 られ てい る。アボトーシスの実行過程 は、アボトーシ スを引き起こすproapoptotic factorと、逆にそれを防ぐ因子antiapoptotic factorによって 巧みに制御されている。本研究ではproapoptotic factorの代表的な分子であるcaspase とantiapoptotic factorであるXIAPに着目し、ア ボトーシス制御の分子メカニズムの解 明を目的として、以下に記す2種の解析を行った。
1. Yeast iwo‑hybrid法 に よ るcaspase〓 ヱ の 新 規 基 質 蛋 白 質 の 堂 離 caspaseは、哺乳類において現在までに14種が同定されている。その中でもcaspase‑3,
‐6お よび‐7は様々な細胞内基質 を切断することによルアボトーシス特有の形態変化を 弓fき 起こすアボトーシス実行因子として知られている。caspase‑3と―7は、そのアミ丿 酸配列および基質特異性において非常に類似しているが、caspase―3と比較してcaspase‑7 のア ポト ー シス 誘導 時に おけ る役 割は いま だ明らかになっていない。そこで筆者は 、 caspase‑7の基質の単離を試みた。現在までに同定されているcaspase‑3および一7の結合 蛋白 質は 、 すべ て不活性化型pro‑caspaseには結合せず、プロセシングを受けて活性 化 型となったcaspaseとのみ結合することが知られている。した がって、rev‑caspase‑7と よぱれる恒常的に活性化型のcaspase‑7を構築した。また、rev‑caspase−7は、自ら有す る活 性に よ ってyeastに 対し 毒性 を示 す ため 、活 性部 位のcysteinをsenneに変異さ せ た変 異体(Rev‑C/S)をべイト として用い、yeast two‑hybrid法によるマウス脳cDNAラ イ プラリースクリーニングを行った 。
そ の結 果 筆者 は、caspase‑7結合蛋白質としてプロテアソーム活性化因子PA28‑tの 単 離に成功した。PA28‑tは、in vitroにおいてcaspase−3および―7によって切断され、また 予 想 さ れ る 切 断部 位DGLD80を変 異さ せる こと によ っ て、 その 切断 が完 全に 抑え られ た。 またHeLa細 胞に おい て、Fas刺激 に より 濃度 依存 的に 内在 性PA28,yがプロセシ ン グ を 受 け 、caspase阻 害 薬z‑VAD−fmkお よびz‑DEVD‑fmkを前 処理 する こと によ り、
その プロ セ シン グは 完全 に抑 えら れた 。さ らにcaspase−3欠 損型 のMCF‑7細胞にお い て、 シス プ ラチ ン刺 激に より その 処理 時間 依存 的に 内在 性PA28yが プロセシングを 受
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け 、同 様に その プロセシングはcaspase阻害薬により完全に抑制された。これらの結 果 は 、PA28yが アボトーシス誘 導時においてcaspase‑7およ び‐3の細胞内基質であるこ と を 示し 、caspaseによるアボ トーシス誘導に対するプロテアソーム系の関与を示唆す る ものである。またさらに、本研究により確立されたrev‑caspaseを用いたyeast two‑hybrid 法 は 、caspaseの 基 質 を 単 離 す る 上 で 有 効 な 手 段 で あ る こ と を 示 す も の で あ る 。
2:質量分極によるcaspase阻害国王XIAPの結合蛋白質の精製
IAP (inhibitor of apoptosis protein)は、種々のアボトーシス刺激下において、細胞に対 して保護的に作用するantiapoptotic factorとして知られる蛋白質である。ヒトでは、現 在 ま で に5種 のIAPフ ァミ リ ー蛋 白質 が同 定さ れて いる が、 その 中で もXIAP、c‑IAP1 およびc‑IAP2は、caspase‑3、‐7、−9に直接結合し、その 活性を阻害することが報告さ れて い る。 そこ で、 この 抗ア ボト ーシ ス作 用の メカ ニズムの解明を目的として、XIAP 結合夕ンバクの精製を行った。
実 験 に は 、 よ り 生 体内 の 結合 を反 映さ せる ため にHEK293細胞 を用 いた 。細 胞に 過 剰 発 現 さ せ たFlag‑XIAPを 抗Flag抗 体 に よ っ て 免 疫沈 降し 、そ の後SDS‑PAGEによ り XIAP結 合夕 ンバ クを 分離 した 。分 離さ れた 各々 の蛋 白質を質量分析により同定した結 果、新規のXIAP結合蛋白質とし て、apoptosis inducing factor (AlF)を見い出した。AIF は、 ア ボト ーシ ス誘 導時 にミトコンドリアから核ヘ移行し、caspase非依存的にアボト ーシスを誘導する因子である。
XIAPに 結 合 し 、 そ れ を 阻 害 す る 蛋 白 質 と し て 、現 在 まで にSmacやOmi/HtrA2と い った 因 子が 同定 され てい るが 、こ れら はい ずれ もア ボトーシス刺激によってミトコン ドリアから細胞質に漏出し、XIAPと結合し作用することが分かっている。したがって、
同様 に ミト コン ドリ アタ ンバ クで あるAIFが 細胞 質に おい てXIAPと 結合 する ことは、
大 変 興 味 深 い も の で ある 。 実際 に、HEK293細 胞を 用い て、 抗XIAP抗 体を 用い た免 疫 沈 降 の 結 果 か ら 、 内 在性XIAPとAIFの結 合が 確認 され た 。ま た、 .他 のIAPフ んミ リ ー蛋 白 質で あるc‑IAP1、c‑IAP2とAIFと の結 合も 確認 され たが 、survivinと の結合は 認め ら れな かっ た。 この 結合 様式 は、Smacおよ びOmi/Htr蛇の それ と一 致す るもので ある。
っ ぎ に 、 ア ボ ト ー シ ス 誘 導 時 に お け る 姆APとAIFの 結合 の生 理的 意義 につ いて 検 討し た 。最 近、 ハエ のSmacホ モロ グで あるreapeリgdmが 、XIAPホモ ログ であ るDL廿1 をユ ピ キチ ン化 し、 その 分解 を促 進す ると いう 報告 がなされたことから、Smacおよび 心Fが 刄APをユ ピキ チン 化し 、分 解 を促 進す るか 否か につ いて 検討 した 。そ の結果、
invitmに お い て 、Smacお よ びAIFが 刄APの 自 己 ユ ビキ チン 化を 促進 する 作用 が認 め ら れ 、 ま た 動 物 細 胞 内 に お い て も 、Smacお よ び 心FがXAPの 分 解 を 促 進 す る 作用 が 認 め ら れ た 。 そ こ で 、触Fの抗 姆AP作用 をよ り明 確に 観 察す るた め、AIFの細 胞質 へ の漏 出 がよ り顕 著に 起こ るア ボト ーシ ス刺 激に つい て検討した。その結果、ミトコン ド リ アcomplexI阻 害 薬 で あ るmtenone刺 激 下 に お い て 、Smac、HtrA2に 比 ベ 、 心F の細 胞 質へ の漏 出が より 顕著に弓Iき起こさ れることが確認された。そこで、rotenone 刺 激 下 に お け る 心Fの 瓢AP分 解 作 用 が 、 ア ボ ト ー シス 誘導 に対 して どの よう に影 響 するかについて検討した。その 結果、roteaone刺激下において、AIF共発現により、姆AP
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の細胞死保護作用およびcaspase阻害作用が有意に抑制されることを見出した。以上よ ェ
ル、種々のアボトーシス刺激によってAIFおよびSmac、HtrA2の細胞質への漏出の度 合いが異なり、心Fは、細胞質への漏出がより顕著に弓1き起こされるアボトーシス刺 激下において、抗刄AP作用を示す可能性が示唆された。
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学位論文審査の要旨 主査 教授 野村靖 幸 副査 教授 有賀寛 芳 副査 助教授 上原 孝 副査 助教授 平 敬宏
学 位 論 文 題 名
Caspase と そ の阻害因子 XIAP の各 結合蛋白 質の 単離・同定:そのアポトーシス制御機構
申 請 者 は 、 ア ポ ト ー シ ス の 代 表 的 な 制 御 因 子 で あ るcaspase. とXIAPに 着 目 し 、 そ の ア ポ ト ← シ ス 制 御 の 分 子 メ カ ニ ズ ム の 解 明 を 目 的 と し て 、 各 々 の 結 合 蛋 白 質 の 単 離 お よ び そ の 機 能 解 析 を 行 っ た 。
申 請 者 は 、yeast two‑hybrid法 に よ りcaspase‑7の 新 規 基 質 蛋 白 質 を 単 離 す る 目 的 で 、revーcaspase‑7と よ ば れ る 恒 常 的 に 活 性 化 型 のcaspase‑7変 異 体 を 構 築 し た 。 ま たcaspaseと 基 質 の 結 合 を安 定さ せる ため 、そ の活 性部 位のcysteineをserine に 変 異 さ せ た 変 異 体(Rev‑C/S)を 構 築 し た 。 こ れ を ベ イ ト と し て 用 い 、yeast two‑
hybrid法 に よ るcDNAラ イ ブ ラ リ ー ス ク リ ー ニ ン グ を 行 っ た 結 果 、caspaseー7の 新 規 基 質 と し て プ ロ テ ア ソ ー ム 活 性 化 因 子PA281を 同 定 し た 。PA28yは 、in vitro に お い てcaspase‑3お よ び ‐7に よ っ て 切 断 さ れ 、 ま た 予 想 き れ る 切 断 部 位DGLD80 を 変 異 さ せ る こ と に よ っ て 、 そ の 切 断 が 完 全 に 抑 え ら れ る こ と を 見 出 し た 。 ま たHeLa細 胞 に お い て 、Fas刺 激 に よ り 濃 度 依 存 的 に 内 在 性PA28yが プ ロ セ シ ン グ を 受 け 、caspase阻 害 薬z‑VAD‑fmkお よ びz‑DEVD‑fmkを 前 処 理 す る こ と に よ り 、 そ の プ ロ セ シ ン グ が 完 全 に 抑 制 さ れ る こ と を 明 ら か に し た 。 さ ら にcaspase‑
3欠 損 型 のMCF‑7細 胞 に お い て 、 シ ス プ ラ チ ン 刺 激 に よ り そ の 処 理 時 間 依 存 的 に 内 在 性PA28yが プ ロ セ シ ン グ を 受 け 、 同 様 に そ の プ ロ セ シ ン グ がcaspase阻 害 薬 に よ り 完 全 に 抑 制 さ れ る こ と を 示 し た 。 こ れ ら の 結 果 は 、PA28yが ア ポ ト ー シ ス 誘 導 時 に お い てcaspase‑7お よ び ‐3の 細 胞 内 基 質 で あ る こ と を 示 し 、caspaseに よ る ア ポ ト ー シ ス 誘 導 に お け る プ ロ テ ア ソ ー ム 系 の 関 与 を 示 唆 す る 。 ま た さ ら に 、 本 研 究 に よ り 確 立 さ れ たrev‑caspaseを 用 い たyeast two‑hybrid法 は、caspase
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