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学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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博 士 ( 医 学 ) 金 田 利 華

学 位 論 文 題 名

胸腺上 皮細胞の抗 原提示に よるCD4+T細胞クローンの選択的活性化誘導の研究

学位論文内容の要旨

    様 々な タ イプ の細 胞が 抗原 提 示細 胞(APC)とな り得 るこ と が知 られ てい る. そ の中 でも ,表 皮     ゛  1

細胞,アストロ サイト,胸腺上皮細胞とぃった組織特異的に存在するnon‑professional APCは,局所特異 的免疫反応を誘 導する可能性が考えられ,こ れらの詳細な解析が注目さ れている.実際,表皮細胞は偶 発 的に 変異主要組織適合 抗原複合体(altered MHC)を 発現し,そのため表皮細胞に よルペプチド抗原提 示をされたT細胞 は完全には活性化されない ことが報告されている.また,胸腺上皮細胞はprofessional APCとは 異な る 様式 で抗 原提 示 活性 を示 すこ とか ら ,胸 腺細胞のセレクションに 関与する可能性が報 告されている. っまり,non‑professional APCは有効な副シグナル分子 を欠くことが多く,そのため抗 原刺激されたT細 胞は増殖反応やインターロイキン‐2 (IL‑2)産生を欠き,アナジー状態に陥る,しかし,

ア ナジ ー状 態のT細 胞が 細胞 障 害活 性を 示し たり ,IL4を 産 生す るこ とが 報告 さ れている.従って,

non‑professional APCはT細胞のアナジー状 態を誘導することで,生体に とって必要なT細胞活性化反応 を能動的かつ選 択的に誘導していると考えら れる.又,このようにして部分的に活性化されたT細胞が,

末梢トレランス の成立に関与していることも 示唆されている.従って,non‑professional APCである胸 腺 上皮 細胞 の抗 原提 示 能を 詳細 に解析することは胸 腺細胞の分化を考える上でも 重要なことと考えら れる.

    本 論 文 に お い て は , ハ ト チ ト クロ ― ムc 43番 から58番 残 基よ りな るぺ プチ ド(p43‑58)特異 的 CD4゛T細胞 クロ ーン(DB14)に誘 導される様々なエフ ェクター機能(細胞増殖反応 ,サイトカイン産生 能 ,細 胞障 害活 性,detachment活性,細胞表面活性 化抗原の上昇など)をパラメ ーターにして,non‑

professional APC(I、ハL細胞,胸腺髄質由来上皮細胞くm‑TEC),胸腺皮質由来上皮細胞(c‑TEC))の抗原 提示能を詳細に 比較検討した.その結果は以 下の3点にまとめられる.

1.まず,胸腺上皮細胞 を【FN‐Y存在下で培養することにより,細胞表面上にMHCclassII,IIAb分子を発 現誘 導さ せ た後 ,胸 腺上 皮細 胞 の抗 原提示によ り誘導されるT細胞クローン の増殖反応を解析した.

その 結果 ,Tハイブ リドーマ,幾っかのT細胞ク ローン,ラインには増殖反応 が誘導されたことから,

胸腺上皮細胞上のIlA ̄ 分子は機能的であることが 明らかとなった.しかし,DB14T細胞クローンには全 く増 殖反 応 が誘 導さ れな かっ た .次 に,他の幾 っかのT細胞クローンとDB14のサイトカイン産生能を 解析したところ,他のT細胞クローンにおいては, 増殖反応に比例したサイトカ イン産生が認められ,

DB14においても,抗原 高濃度において若干のIFN‐Y,n圷の産生が認められた, しかし,DB14のエフェ クター機能のーつであ る細胞障害活性を解析したと ころ,I・AbL細胞による抗原提示後に,有意なDB14

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の細胞 障害活 性が誘 導されたのに対して,m,c‑TECの抗原提示では細胞障害活性は全く誘導されず,有 意なdetachment活性が 誘導さ れた. すなわ ちDB14はAPCで あルタ ーゲッ ト細胞 であるm,c‑TECの膜透 過性喪失,核断片化いづれも誘導しないが,m,c‑TECを 剥がす (peeling off)活性が有意に誘導された 以上の ことよ りm,c‑TECの 抗原提 示によ って,DB14T細胞ク 口ーン のエフ ェクタ ー機能 が選択的に誘 導されることが判明した.

2. 次に,m,c‑TEC抗原提示により誘導されたT細胞クローン,DB14のエフェクター機能,detachment活 性 に関し て解析 した.1990年にRusselらが,detachment活性は細胞障害活性とは異なるエフェクタ一機 能 である と報告 している.この(缸achment活性がT細胞の能動的な機能であることを確認するため、以 下の実験を行った.まず,実際,m,c−TECの抗原提示によりDB14のチロシンリン酸化がおきているかど う かを確 認する ため,ウエスタンブロットを試行した.その結果,出現するバンドのパターンは異なる が ,抗原 刺激に より有意にチロシンリン酸化が認められた.次に,このチロシンリン酸化がdetachment 活性機能に関与しているか否かを解析するために,phosphotymsinぬnaSc¢TK)inhibitorであるゲニステ イ ンでDB14を処理後 ,その 機能を 解析し た.そ の結果 ,ゲニ ステイン処理されたDB14では,I‐AbL細 胞 の抗原 提示に よって 誘導さ れる増 殖反応, 細胞障 害活性 がゲニステイン濃度依存性に抑制された.

一 方,cーTECの抗原 提示に より誘 導され る鹸achment活性も,ゲニステイン濃度依存性に抑制されるこ と か らdetachment活 性 はPTK依 存 性 のT細 胞 エ フ ェ ク タ ー 機 能 で あ る こ と が 判 明 し た .     この(bachment活性と 細胞障 害活性 との関係についてだが,1)凡→2添加によりm,c.TECの抗原 提 示によ るDB14の増 殖反応 は回復 した. この際 ,DB14のde眦hment活性 も増加 するが ,細胞障害活性 へ の移行 が認め られな いこと が観察 された.2)細胞障害活性のターゲット細胞の膜透過性喪失と核断 片 化との 相関性 が認め られた が,detachment活性とDNA断片化 との相関性は認められなかった.3)他 のT細 胞 ク ロ ーン, ライン はあら ゆるAPCに 対して 細胞障 害活性 を示さな いが,IAbL細胞 に対し ては detachment活性のみを示した.4)上で述べたウエスタンブロットの解析より,I−.AbLcellsにより抗原提 示 された 時とc‐TECにより 抗原提 示され た時のDB14におけ るりン酸化バンドが異なったパターンを示 し た.以 上のこ とから,細胞障害活性detachment活性は量的とぃうよりはむしろ質的に異なる機能であ ると考えられた.

3. 胸 腺 上皮 細 胞 の 抗原 提 示 に よりDB14の 機 能 が選 択的に 誘導さ れること が判明 した. アナジ ー状 態のT細胞は 細胞障 害活性な どの幾 っかの エフェ クター 機能が 発揮し うることが1993年にDr.Germ ain をは じめ何 人かの科 学者に より報 告され ている .そこ で,こ の胸腺 上皮細胞の抗原提示によるDB14の 選 択 的 機 能 ,detachment活 性 が ア ナ ジ ― に 含 ま れ る 機 能 で あ る の か ど う か を 検 討 し た .     m,c‑TECの抗原 提示に よりDB14で は活性 化抗原(CD69,IL‑2Ra chain,JL‑2Rp chain,CD44,cell volume)の有意な上昇,IL‑2添加により増殖反応の回復が認められ,この状態はアナジーの特徴と極似し てい た.そ こで実際 に,DB14にアナ ジーが 誘導され ているか否かをrestimulation assayにて調べた.

DB14を , 最初 の 抗 原 刺激 でECDI処 理 し た脾 細 胞 をAPCに 用いると ,次の 放射線 照射脾 細胞で の抗原 刺激に対して増殖低反応を呈しアナジー状態に陥る.しかし,最初に,胸腺上皮細胞で抗原提示した後,

次の 放射線 照射脾細 胞での 抗原刺 激にお いてDB14は 増殖低 反応は 示さず ,胸腺上皮細胞の抗原提示に よルアナジーは誘導されていないことが判明した.

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学位 論文審査の要旨 主査    教授    小野江和則 副 査    教 授    上 出 利 光 副 査    教 授    小 林 邦 彦

学位論文題名

胸 腺 上 皮 細 胞 の 抗 原 提 示 に よ るCD4゛T細 胞 ク ロ ー ン の 選 択 的 活 性f匕 言 ゑ 導 の 研 究     一  丶

  表皮細胞,アスト ロサイト,胸腺上皮細胞など の組織特異的non‑professional抗原提示細胞(APC)は,

局所特異的免疫反応 を誘導する可能性が考えられ ている.実際,胸腺上皮細 胞はprofessional APCとは 異な る様 式 で抗 原提 示活 性 を示 すこ とか ら,胸腺細 胞のセレクションに関与する 可能性が報告されて いる .従 っ て, 胸腺 上皮 細 胞の 抗原 提示 能を詳細に 解析することは,胸腺細胞の 分化を考える上でも 重要なことと考えら れる.

  本 論文 に おい ては ,ハ ト チト クロ ームc 43番から58番残基よりなるべプチド(p43‑58)特異的CD4゛T 細胞 クロ ― ン(DB14)に誘 導 され る様 々な エフウクタ ー機能をバラメー夕一にして ,non‑professional APC (I̲bL細胞,胸腺 髄質由来上皮細胞(m‐TEC),胸腺皮質由来上皮細胞(c―ECりの抗原提示能を詳 細に比較検討した.

  ま ず,IFNIY存 在下で培 養し,細胞表面上にIlAb分 子を発現させた胸腺上皮細胞 の抗原提示により,

Tハ イブ リド ーマ , 幾っ かのT細 胞ク ロー ン,ライン には増殖反応が誘導された. 従って,胸腺上皮細 胞上のI‐ハ分子は機 能的であることが明らかと なった.しかし,DB14T細胞 クローンには全く増殖反応 が誘導されなかった .また,他のT細胞クローン においてIよ,増殖反応に比 例したサイトカイン産生が 認め られ た が,DB14は, 抗 原高 濃度 にお いて若干のIFNイ,n岬の産生が認められ るのみであった.次 に,細胞障害活性を 解析したところ,Iイ`bL細 胞による抗原提示後に,有意なDB14の細胞障害活性が誘 導されたのに対して ,m,c‐ECの抗原提示では細 胞障害活性は全く誘導され ず,著明なdetachm帥t活性 のみが誘導された. 以上よりm,c‐TECの抗原提 示によって,DB14T細胞クロ ーンのエフウクター機能が 選択的に誘導される ことが判明した.

  次 に,del鬣hm囲t活性 がT細胞 の能 動 的な機能であ り,m,c‐TECの抗原提示に よりDB14のチロシン リン酸化がおきてい ることを確認するため,ウエ スタンブロットを試行した.その結果,I.パ細胞で刺 激さ れた も のと 出現する パンドのパターンは異なるが ,m,c‐TECによる抗原刺激 後にDB14細胞質に有 意なチロシンリン酸化が認められた,またphosphoぢrosinkinase(mく)inhibitorのゲニステインで処理さ れたDB14で は,c‐TECの 抗 原提 示に より 誘導されるdetachm印t活性が抑制される ことから,m鴛hmalt 活 性 はPTK依 存 性のT細 胞エ フウ ク ター 機能 であ るこ と が判 明し た. さ らに ,鹹achm卸t活性 は凡12 添加により増加する が,細胞障害活性への移行が 認められなかった.また,detachm伽t活性と蹴`断片

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化との相関性は認められなかった.以上より,細胞障害活性と&tachment活性Iま量的というよりはむし ろ質的に異なるT細胞機能であると考えられた.またm,c‑TECの抗原提示により,DB14では活性化抗 原(CD69,IL‑2Ra chain,IL‑2Rp chain,CD44)および細胞容積の有意な上昇,またIL‑2添加による増殖 反応の回復が認められ,この状態はアナジーの特徴と極似していた.そこで実際に,DB14にアナジー が誘導されているか否かをrestimularion assayにて調べたが,TECの抗原提示によルアナジーは誘導さ れていないことが判明した.

  以上より胸腺上皮細胞は通常のAPCとは異なる部分的活性化をT細胞に誘導することが明らかとな った.この活性化バターンは胸腺内における胸腺上皮細胞の機能を反映するものと考えられ,今後の 胸腺機能の研究に一石を投じた.

  公開発表にあたって,副査の小林邦彦教授よりDB14という特殊なT細胞クローンを用いた結果をど のように生体内の現象と結びつけるのか,detachment現象の分子メカニズムについて,上出利光教授よ り,胸腺上皮細胞によってアナジーが誘導されないことをむしろ能動的現象として捉えられないのか,

detachment活性の生理学的意味,主査の小野江より胸腺髄質と皮質上皮細胞のAPC活性の差について,

副刺激分子について質問があったが,申請者は大概妥当な回答をした.審査員一同は胸腺上皮細胞に よって示される特有なAPC活性を自分の豊富な実験結果を元に解明した成果を高く評価し,申請者が 博士(医学)の学位を受けるのに充分な資格を有するものと判定した.

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参照

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