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論文の内容の要旨 氏名:馬

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Academic year: 2021

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論文の内容の要旨

氏名:馬 晴志郎

専攻分野の名称:博士(医学)

論文題名:多発性嚢胞腎への遺伝子転写制御薬としてのGSK3βに対するピロール・イミダゾールポリミ アドの開発

多発性嚢胞腎は、最も多い遺伝性嚢胞性疾患であるが、嚢胞の形成および拡大を完全に停止させるよう な有効な治療法は確立されていない。最近、常染色体優性多発性嚢胞腎(Autosomal dominant polycystic kidney disease: ADPKD)における cAMP 依存性の嚢胞形成、拡大には glycogen synthase kinase 3β

GSK3β)が関与しており、その過程において cAMP response element binding proteinCREB

→GSK3β→Adenyl cyclase→cAMP→Protein Kinase A→CREBという悪循環が存在していることが明ら かとなり、GSK3βが嚢胞形成に対する治療のターゲットとなり得ることが示唆された。

本研究ではADPKDに対する新規治療薬開発を目指し、マウスGSK3βプロモーター配列のCREB結合 部位に結合し、GSK3βの発現を阻害するピロール・イミダゾール(pyrrole imidazole: PI)ポリアミドを 分子設計、合成し、マウスの集合管細胞株M1細胞を用いてその効果を検討した。

M1細胞において、バソプレシン刺激で cAMP産生が増加することを確認した。またフォルスコリン刺 激もM1細胞のcAMP濃度を有意に上昇させ、さらにGSK3β mRNA発現を有意に増加させた。フォルス コリンの刺激は、M1細胞の細胞増殖能を有意に増加させ、バソプレシンおよびフォルスコリンの刺激は嚢 胞径を有意に拡大した。本研究においてフォルスコリン刺激によって cAMP 濃度の増加と共に GSK3β mRNA 発現の増加を認めており、これらの結果から cAMP 依存性に引き起こされる嚢胞形成においては GSK3βが関与することが示唆された。合成したGSK3β PIポリアミドは、フォルスコリン刺激でのGSK3β mRNA発現増加を有意に抑制した。M1細胞に対しフォルスコリンを異なる濃度で刺激した場合、細胞増 殖能は濃度依存性に高まるのではなく、フォルスコリン1µMで有意な細胞増殖能増大を認め、それ以上の 濃度では増殖能増大を認めなかった。M1 細胞はマウス正常集合管細胞由来の細胞株であるため、GSK3β を介した悪循環が起こりにくいと考えられた。

ADPKDに近似した集合管細胞を得るため、M1細胞に PKD1 shRNAを導入し、PKD1ノックダウン M1細胞を作製した。PKD1ノックダウンM1細胞では濃度の異なるフォルスコリンで刺激すると、M1 胞と比較しより高濃度のフォルスコリン刺激でも有意な細胞増殖能増大を認めた。PKD1ノックダウンM1 細胞において、正常細胞である M1 細胞では起こらないと考えられた GSK3βを介した悪循環が存在し、

より高い濃度のフォルスコリン刺激においても細胞増殖の増加が誘導されているが示唆された。M1細胞及 PKD1ノックダウンM1細胞はともに、バソプレシン及びフォルスコリン刺激で有意な嚢胞径拡大を認 めた。PKD1ノックダウンM1細胞において、フォルスコリン刺激で細胞増殖能は有意に増加し、GSK3β PIポリアミドはそれを有意に抑制した。また、GSK3β PIポリアミドは、フォルスコリン刺激による嚢胞 径拡大を有意に抑制した。

本研究においてGSK3β PIポリアミドは、M1細胞においてフォルスコリン刺激によるGSK3β mRNA 発現を有意に抑制し、PKD1ノックダウンM1細胞においてフォルスコリン刺激による細胞増殖能および 嚢胞径拡大を有意に抑制した。以上より、マウス GSK3β遺伝子プロモーターCREB結合部位に特異的な PIポリアミドは、ADPKDへの新規遺伝子治療薬としての可能性を持つと考えられた。

参照

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