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Academic year: 2021

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博 士 ( 医 学 ) 河 上    洋

     学位論文題名

Adrenomedullin antagonist は血管新生抑制を介して SCID におけ る癌細胞 の励 vivo 増殖を抑制する

・学位論文内容の要旨

【背景およぴ目的】

  騰直は難治癌の代表であり,画像診断の進歩がみられ た現在でも多くの症例は切除不 能 な 進 行 癌 の 状 態 で 発 見 さ れ る . 治 癒 切 除 例で も5年生 存率 は20§以 下 であ り, 手 術不 能例 に対 して はイ 燃法 や放 射線 ある いは その併用療法も試み られているが,いず れ も 有 効 な 治 療 法と は言 い難 く,1年 生存 率 でさ え5を前 後で ある .し た がっ て, 膵 癌の予後を改善させるためには手術療法のみでは限界が あり,新たな治療法の開発およ び発展が切望されている.そのためには,新たな発想に より膵癌の病因・病態に対する 詳細な分子生物学的理解をする必要がある.最近,筆者 の所属した研究グループは購直 細 胞 株 の 大 部 分 (75暑 ) がHypoxia―inducible factor一la(HエF−la)蛋 白を 恒 常的に発現していることを見出し,それゆえ膵癌は低酸 素や低栄養によるアポトーシス 誘導に抵抗陸を示すことを明らかにした.この報告は低 酸素適応応答が膵癌細胞の生存 にとって重要な働きをしてしヽることを示唆してしヽる.さらに,彼らのクンレープにより低 酸 素 下 で 発 現JIJ進 す る 遺 伝 子 と し てautocrine motility factorが 報 告さ れた . こ の 報 告 の 中 で ,低 酸素 誘導 遺伝 子と して 同定 され た38個の 遺伝 子の1っがHエF−1 依 存 陸 に 誘 導 さ れ , 血 管 拡 張 作 用 を 示 すAdrenomedullin( 以 下AM)で あ っ た .AM は1993年 にヒ ト褐 色細 胞腫 より 単離 され た血 管拡張因子ペプチド として報告され,最 近 で は 血 管 拡 張 作 用 に 加 え て 癌 細 胞 のgrowth factorで ある こと や, 癌 細胞 や血 管 内 皮 細 胞 のsurvival factorと し て 働 く こ と が 報 告 さ れ て い る . ま た ,AM| 燗 素下 でHエF―1依 存陸 に誘導されることが明らかとなっている.こ れらの報告から低酸 素下 で発 現亢 進す るAMが血 管拡 張や 血管 新生 を増強して膵癌細胞 の増殖に有利に働く 可 能 陸 が 予 想 さ れ , ま た 逆 にAMantagonist( 以 下AMA)が 血 管 拡 張 阻 害 や 血 管 新 生阻害を介して膵癌細胞の増殖を抑制する可能陰が考えられる.

  以上の仮説に基づいて,筆者らはヒト臓直細胞株を含 めた各種癌細胞株の低酸素分圧 下 で のAMmRNAお よ び 蛋 白 の 発 現 亢 進 を 確 認 し , ヒ ト 膵 癌 細 胞 株 に お け るAMAベ プ チ ド のin vivo腫 瘍 増 殖 抑 制 効 果 も 見 出 し た . 病 理 細 織 学 的 に は8um以 上の 大血 管 形成が抑制されており,腫瘍増殖抑制効果の機序として 毛細血管腔の形成阻害が推測さ れ た . 近 年 , ヒ トglioblastoma細 胞 株 に 対 し て 抗AM抗 体 を3日 毎 に 腫 瘍 内 投 与 を 行うことにより腫瘍の退縮傾向が得られ,病理組織学的 にコントロール群と比較して血 管内 径が 有意 に細 かっ たこ とが 報告 され た. この結果は,筆者ら の結果を支持する.

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  本 研究 では 最 初にAMA発現 ベク ター を作 製 し, 次に その 抗腫 瘍効 果を 明ら かにする た め に 膵 癌 ・ お よ て 埓 脚 餅 田 月 ぎ 妹 のinvヱ vo腫 瘍 増 殖 を 検 討 し た .

【方法およぃ碚ニ果】

1)AMの 前 駆 体 で あ るPreproAM(185ア ミ ノ 酸 ) の 全 長cDNAはHLー60細 胞 をDFX 処 ヨ 里 し たmRNAよ り 作 製 し , こ のcDNAを テ ン プレ ート にし てAMA発現 ベク ター を作 製した艦浬藷己歹|Jを確認済み).

2)scエDマウ ス 皮下 ヒト膵癌移植モデンレの腫 瘍増殖に対するAMA発現ベク ターの腫瘍 内投 与の 検討 を した .膵癌モデルはsCエDマウスにヒト膵癌細胞(PCエ‐43)を皮下移 植 し て 作 成 し ,AMA発 現 ベ ク タ ー は1匹 当 た り500ルgを 腫 瘍 内 投 与 し た , これ によ り腫瘍はほぼ退縮した.

3)同 腫瘍 組織 にお いて 抗cD31抗 体を 用い て 免疫 染色 を行 い, 血管 内皮 細胞 の検討を し た .AMA発 現 ベ ク タ ー 腫 瘍 内 投 与 群 でCD31陽 性 細 胞 は 認 め ら れ な か っ た . 4)ScエDマウ ス 皮下 ヒト 膵癌 移植 モデ ルの 腫瘍 増殖 に対 するAMA発 現ベ クタ ーの大腿 四 頭 筋 肉 内 投 ご 与 の 検 討 を し た .AMA発 現 ベ ク ター は1匹当 た り500Hgを筋 肉内 投与 した.これにより腫窃はほぼ遇縮した.

5)同 腫瘍 組織 にお けるCD31陽陞 孫田 胞の 検 討を した.m蛾発現ベクター筋 肉内投与群 でCD31陽隆5ロ胞は認められなかった.

6)SCエDマウ ス 皮下 ヒト 写I癌移 植モ デル の 腫瘍 増殖に対するAMA発現ベク ターの大腿 四頭 筋投 与の 検 討を した,乳癌モデルはSCエDマウスにヒト乳癌細胞(MDA−MB−231) を 皮 下 移 植 し て 作 成 し ,AMA発 現 ベ ク タ ー は1匹 当 た り25〜500皿gを 筋 肉 内投 与し た.これらにより用量非依存陸に臓瘍はほば遇縮した.

7) 同 腫 瘍 組 織 に お けるCD31陽性 細胞 の検 討を した .AMA発現 ベク ター の投 与量 に関 わらずCD31陽陞細胞ば認められなかった.

【考案】

  本 研究 にお い て, 触儀 発現 ベク ター を作 製し ,その投与によってヒト膵 癌細胞のみ ならず乳繊田胞のinv.ヱvD腫翦纖も挧埔IJした.その機序としては血管内皮糸田胞の消 失 が 認 め ら れ た こ と よ り , 血 管 新 生 阻 害 を 介 し て 発 揮 さ れ る と 考 え ら れ た .   この結果は,逆にAMがヒト脾蕕糸 田胞およて埓ぱ縣田胞のinv.ヱvD腫翡蒲殖における 重要 な血 管新 生 因子 であ るこ とを 示唆 する 所見 である可能性が示唆された .また,AM は 管 腔 形 成 な ど の 高 次 構 造 を 司 る 血 管 新 生 因 子の1っで ある 可能 陸も 示唆 され た,

  な お,AMA発 現ベ クタ ーの 投与 に際 して は 超音 波遺 伝子 導入 装置 や超 音波 遺伝子導 入 用micてobubbleを用 いる こと に より 有効 投与 量が 減量 可能 であ る可 能陸 が示 唆さ れた.

  今後ユnv・iv,〇での他の細胞株による検討を含めてさらなる検き寸カミ必要であるが,AM は固形癌のヱnv.ivoの腫瘍増殖にあたっては血管新生にニ芭須の因子であり,その単独 阻害によって血管新生を抑制できる可能陸が示唆された.

【結語】

1.AMantagonist発現ベクターを作製した.

2.AMantagonist発 現 ベ ク タ ー の 筋 肉 内 投 与 に よ り 腫 瘍 増 殖 が 抑 制 さ れ た . 3. 血 管 新 生 阻 害 を 介 し て 抗 腫 瘍 効 果 を 発 揮 す る こ と を 明 ら か に し た .

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学位論文審査の要旨

     学位論文題名

Adrenomedullin antagonist は血管新生抑制を介して SCID における 癌細胞の励 vivo 増殖を抑制する

  膵癌はhypovascularであるがために常に低酸素・低栄養に曝されている.それに も関わらず旺盛な増殖カを示し,多臓器への浸潤・転移を示す.したがって,既知の血 管新生因子と異なる新たな血管新生因子が産生される可能性がある.以上の仮説に基づ い て,申請 者らの研 究グループ ではヒト 膵癌細胞 株を用い て低酸素条件下でDNA miCro缸ray法を佩ヽ,血管拡張の他に血I管新生にも関与するa血eno鵬dullin(M) の発現亢進を見出した.また,各種癌細胞株の低酸素分圧下でのAM弧淞およぴ蛋白 の 発現亢進 を確認し ,ヒト臓讎 翻包株に おけるAMantagonis七 ベプチドのinぬvD 増殖抑制も見出した.今回申請者はAMantag匸冫Ilist発現ベクターを作製し,その抗 膕 赫操を明 らかにす るために騰 晦およて 鯏癌細胞 昧のinぬm増 殖を検討した.次 に各腫瘍細織における血管内皮細胞を抗CD31抗体を用いて検討した.AMantagonist 発 現ベクタ ーはAM前駆 体であるPrepてoぬMcDNAをt餌叩1a.teとして作製した.

次 に,SCエDマ ウス皮下 ヒト癌細胞 株移植モ デルにお けるAMantagonist発現ベク タ ーの抗腫 瘍効果を検討した.ヒト膵癌細胞株モデルに対しては1匹当たり500ロg を腫瘍内およU鴻芳肉内投与としたところ伺れも腫瘍は遇縮した.病理細織学的に腫瘍内 および筋肉内投与群共にCD31陽性細胞は認められなかった.また,ヒト羽癌細胞株モ デ ルに対し ては25〜500ロgを超音波遺伝子導入装置および超音波用Inicてobubble の併用により筋肉内投与を行ったところ用量非依存性に腫瘍は遇縮した.病理組織学的 にAMantagonistの投与 量に関わ らずCD31陽性 細胞は認 められな かった,こ れら の 結果より ,AMantagonist投与に よる腫瘍の退縮は血管新生阻害を介して発揮さ れると考えられた.そのためAMがヒト膵癌細胞および浮憐孫田胞のinviv・〇腫瘍増殖 における重要な血管新生因子であることを示唆する所見であると考えられた,したがっ て AMの 単 独 阻 害 に よ っ て 腫 瘍 増 殖 を 抑 制 で き る 可 能 性 が ガ 破 さ れ た .   口 頭発表に 際し,副 査の守内教 授よりAMantagonist投与時の循環動態の検討の 有無,ヒトに臨床応用する際の用量設定や副作用の可能性,膵癌・乳癌以外の適応症,

AMantagonistに よる治療 法の特許 の有無にっいての質問があった.これに対して 申請者は,本研究では未検討であるものの,今後,非観血的血圧測定を用いた実験系を

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検討予定であること,用量は超音波遺伝子導入装置たどを併用することにより漸減可能 であること,AM発現が亢進している癌細胞は何れも適応となること,特許取得済みで あることを 回答した .次いで 副査近藤 教授よりAM antagonist筋肉内投 与の際の 膕募への到達経路,AMantagonist単独で血管新生を阻害し,た理由,AMあるしヽはAM antagonistが生体内に存在するのか否かにっいての質問があった.これに対して申 き青者は,血行性経路を推測していること,詳細な機序にっいては不明であるが,追加実 験では低酸素・低栄養下では血管内皮細胞はアポトーシスに陥るが,AM添加により抗 アポトーシ ス作用を 示し,逆にAM antagonist添加によルアポト←シスに陥ること を確認したこと,AMは生体内に存在するものの低濃度であり,生理活性を有しないこ と,AM antagonistは生体 内に存在 しないこ とを回答 した,さ らに主査 浅香教授 よ りAMのtransgenic/knockoutマ ウス の 報告 の 有 無,AM antagonistの 血 中濃 度の測定の可能性にっいて,ウイルスベクターを用いずnaked DNAを用いた理由,今 後の臨床応 用への道 筋にっき質問があった,これに対し申請者はAM transgenicマ ウスでは血圧低下,knockoutマウスでは胎児水腫や心大血管奇形を起こすこと,血 中濃度は使 用した発 現ベクターでは未検討であるものの,新たにantagonistのC末 端側に直接Tagを付加したベクターを作製し,血中Tag濃度の測定を可能としたこと,

naked DNAは導ス、効率や発現持続期間より安全陸を重んじて使用したこと,前臨床試 験蝋 磯 にpilot studyあ るい はPhaseエ ノII studyによる ヒトへの 応用を考 慮:

していることを回答した.

  本研究はヒ ト癌細胞 株に対するAM antagonist発現ベクターを用いた遺伝子治療 の効果を初めて明らかにしたことで高く評価され,この研究を足掛かりとして今後の癌 治療への臨床応用が期待される・

  審査員一同は,これらの成果を高く評価し,大学院課程における研鑽や取得単位など も併せ申請者が博士(医学)の学位を受けるのに充分な資格を有するものと判定した.

参照

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