博 士 ( 理 学 ) 小 平 秀 一
学 位 論 文 題 名
The crust and uppermost mantle structure in the Lofoten passlve continental margin, off Norway, by OBS refraction profiles
( 海 底 地 震 計 を 用 い た 屈 折 法 探 査 に よ る ノ ル ウ ェ ー 沖ロ フ ォー テ ン受 動 的海 陸 境界 の 地殻 、 及 び 最 上 部 マ ン ト ル 構 造 )
学 位 論 文 内 容 の 要 旨
ノ ルウ ェ一 沖の 海 陸境 界は 地震 、火山活動が低い、受 動的海陸境界、或いは非活勧 的 海陸 境界 と呼 ば、 れ てい る。 この 領域は大陸の分裂と、 それに続く海洋底拡大により 海 洋性 地殻 が大 陸地 殻 縁辺 部に 付加 す るこ とに よっ て形 成 され たと 考え られ て いる。
従 って 、こ の領 域の 地 殻全 体の 構造 を 明ら かに する こと は 、大 陸の 分裂 から 海 洋性地 殻 形成 の過 程を 朋ら か にす る上 で非 常 に重 要で ある 。し か しな がら 、本 研究 の 対象領 域 であ るLafoten marginで はこ れま で に詳 細な 地殻 構造 は 得ら れて おら ず、 形 成過程 に 闘す る十 分な 譲論 は でき なか った 。
そこ で、 本研 究の 目 的はLototen aiarginで行 な われ た海 底地震計を用いた屈折法探 査 の記 鹹を 解析 する こ とに より 、今 ま で明 らか にさ れて い なか った 大陸 から 海 洋にか け ての 地殻 全体 の構 造 を明 らか にす る こと 、そ して 、そ の 結果 から この 領域 で の地殻 の 形成 過程 を考 察す る こと であ る。
本研 究で 用い たデ ー タは 、1988年 にLofoten marginで 行 なわ れた 大規 模な 地 球物理 学 的観 測に よっ て得 ら れた 。観 測は 、 地殻 全体 の構 造を 明 らか にす るた めの 海 底地震 計 と大 容量 エア ガン を 組み 合わ せた 屈 折法 探査 、詳 細な 堆 積層 構造 を明 らか に するた め の反 射法 探査 、更 に 重力 、地 磁気 の 観測 から 成る 。屈 折 法探 査の 測線 は地 磁 気異常 の 縞と 平行 に5本( 海洋 側よ り 、測 線6、5、4、1、3)、そ れらと直交する1本(測線2) か らな る。 測線 長誼130‑ 280 kmであ る。 それ ら の測 線上 に43台の海底地震計を20− 25km間 隔 に 設 置 し た 。 震 源 と し て は81の ェ ア ガ ン を4台 用 い 、150m間 隔 で発 震し た 。本 研究 では 、海 底 地震 計を 用い た 屈折 法探 査の 記録 、 及び 重カ デー タの 解 析から
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地 殻 、 及 び 最 上 部 マ ン ト ル の P波 速 度 構 造 、P波 速 度 と S波 速 度 の 比 の 構 造 ( V p/Vs構 造 ) 、 密 度 構 造 を 決 定 し た 。
P波 速 度 構 造 の 決 定 に は 主 に 上 下 動 地 震 記 録 を 用 い た 。 解 析 に は 二 次 元 波 線 追 跡 法
を用いて、初助、及び後続波の走時、距離に対する振幅変化を全て説明する地下構造 モデルを決定した。
決 定 し た 構 造 か ら 、Lofoten maginの 地 殻 は 厚 い 下 部 地 殻 に よ っ て 特 徴 付 け ら れ る 。 P波 速 度 構 造 は 以 下 の 通 り で あ る 。
地 殻 最 上 部 は 堆 積 眉 二 層 か ら 成 る 。 そ の 速 度 は1.g ‑2.6km/sで あ り 、 観 測 領 域 全 体 で 北 東 側 に 向 か っ て 厚 く な る 。 最 大 で2.5 kmに 達 す る 。 堆 積 層 下 に は 速 度4.4― 5.8km/sを 示 す 上 部 地 殻 が 存 在 す る 。 そ の 厚 さ は 、 観 測 領 域 の 南 西 側 を 除 い て2kmで あ る 。 南 西 側 で は4 kmま で 厚 く な る 。 上 部 地 殻 の 下 に は 三 層 か ら 成 る 下 部 地 殻 が 存 在 す る 。 そ の 速 度 は 、 上 層 で 6. 3‑6, 7km/s、 中 眉 で 6.8‑7. 2km/s、 下 層 で7.3‑
7.4 km/sを 示 し 、 中 層 、 下 層 は 海 洋 側 か ら 大 陸 側 に 向 か っ て 顕 著 に 厚 く な る 。 最 も 海 洋 側 の 測 線 6で は 、 そ の 二 層 の 厚 さ 倣2. 5 kmで あ る の に 対 し 、 最 も 大 陸 よ り の 測 線3で は 10kmに 及 ん で い る 。 更 に 、 こ の 二 層 は 洲 線 に 沿 う 方 向 で も 南 西 側 に 向 か っ て 顕 著 に 厚 く な る 。 例 え ば 、 測 線1の 南 西 端 で は11 kmで あ る の に 対 し 、 北 東 端 で は 6kmで あ る 。 最 上 部 マ ン ト ル の 速 度 は 、 海 洋 側 の 二 測 線 で7. 9 km/s、 大 陸 側 の 三 澗 線 で8.0−8,1 km/sを 示 す 。 ま た 、 海 洋 側 か ら 大 陸 側 に 横 切 る 測 線2で は 、 大 陸 側 の 部 分 に 速 度3.8、 6.0 km/sの 層 が 存 在 し て い る 。 こ れ ら 二 層 は 、 よ り 大 陸 側 で 行 な わ れ た 屈 折 法 探 査 か
らも決定されており、大陸地殻上に存在していた堆積層と大陸の上部地殻と解釈され る。
次に、上下勧地震記録によって決定した構造を重カデータを用いて検証し、地下の 密度構造を推定した。その際、地震波速度と密度の関係を示す室内実験の結果を参照 した。また、解析では、先に決定したP波速度構造の境界面の形状は固定し、計算値 が観澗値を十分説明できるかに着目した。
決定した密度構造は、堆積層2.0 ‑ 2.6 t;/cm'、上部地殻2.5g/cm3、下部地殻三層 は、2.75、2.90、3.15 g/cm'、最上部マントル3.28 ‑ユ.30 g/cmユである。この構造 によって、観瀾された重力異常値は5 ‑ 10 mgalの範囲で非常によく説明できる。こ れは、地震記録によって決定した地下構造モデルが非常に糟度よく決定されているこ とを示す。
本研究では、従来の海域での屈折法探査ではほとんど着目されていなかった水平動 成分の盞己撮を解析することによって、堆積層下面でP波からs波に変換した波を見い だした。そして、モれを用いて地下のVp/Vs構造を決定した。本研究は受励的海陸境 界におぃて地殻全体のS波情報を得た初めての研究である。
解析は二次元波糠追跡法を用いて行なった。また、解析の瞭強、上下助地震記録に よって決定した境界面の形状強固定し、堆積層以外でのVp/Vs値誼各用内で一定であ ると仮定した・決定したvp/Vs構造は以下の通りである。
堆積麗内のVp/Vs位は、観潤領域内で大きく変化している。その値は、3.00 ‑ 5.50 である.上部地殻は、海洋憫の測韓6、5、4では1. 86を示すのに対し、大陸よりの欄 韓1、3では1.76を示す。下部地殻は上層で1.76ー1.78、中、下層で1.80である。
上部地殻のVp/Vsが急変する領域は、地磁気異常の縞が消える部分に対応する。測 隷1より大陸個では地磁気兵常の縞が確酪できないことから、上部地殻はかっての大 陸地殻上にbasaltが演出したlandwardハood basaltであると考えられる。これに対 し、謝隸1より海洋側で強地磁気異常の縞が確露できることから、上部地殻は海面下 でのbasaltの噴出と海洋底拡大によって形成されたpillow lavaから成ると考えられ る.従って、本研究によって明らかになったVp/Vsの変化は岩石が固化した環境の違 い に よ る 、 岩 石 の 物 理 的 性 貫 の 違 い を 反 映 し て い る と 考 え ら れ る . 轟後に、本研究で決定した地殻構造と、観測領域の南に隣接するVoring marginの 地殻構遣との比較を行なった。それによって、Lototen marginからVoring marginに かけて領域では、より大陸側、より南西側に向かって、速度7 km/s以上の下部地殻が 厚くなる事が初めて明らかになった。その厚さは海洋底拡大開始時に形成された部分 では、観瀾領域北部で6km、南部で10 km、更に南のVoring rrcarginでは15 kmとなる。
海洋性地殻形成に闘する岩石学的研究は、海嶺部分に上昇するマントル物質が高温 であるほど、形成される海洋性地殻が厚くなるという理論的結果を示している。この 結粟と本研究によって得られた観洳事実から、ノルウェ―沖の海洋性地殻は南部ほど より高温の物貰により形成され、モして、その熱源は現在でも北大西洋の中央部にあ るIceland hot spotであると考えられる。また、本研究によって決定した地殻構造と 地磁気異常のデータから、hot spotの影響弦海洋底拡大開始時にはLofoteniargin北 部にまで及んでいが、その後徐々に弱まり、地磁気異常番号21の年代(50 Ka)には Lototen■arginに は ほ と ん ど 影 響 を 及 ば さ な く な っ た と 考 え ら れ る 。
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学 位 論 文 審 査 の 要旨 主 査 教 授 島 村 英 紀 副 査 助 教 授 笠 原 稔 副 査 助 教 授 森 谷 武 男 副 査 助 教 授 西 田 泰 典 副 査 助 教 授 中 西 一 郎 学 位 諭 文 題 名
The crust and uppermost mantle structure in the Lofoten passive continental margin. aff Norway, by OBS refraction profiles ( 海 底 地 震 計 を 用 い た 屈 折 法 探 査 に よ る ノ ル ウ ェ 一 沖 ロフオーテ ン受動的海陸境界の地殻、及び最上部マントル構造)
受動的海陸境界とは大陸の分裂後、海洋底拡大によって新しく生成された海洋性 地殻が、大陸性地殻を剖り、それに付加し、成長することによって形成された海陸 境界である。従って、受馳的海陸境界の地殻全体の構造を明かにすることは大陸の 分裂から、海洋性地殻形成に至るプレート・テクトニクスの過程を解明する上で非 常に重要である。申請者の研究対象領域であるノルウェ一沖の海陸境界は典型的な 受勧的海陸境界と考えられており、過去20年の間に多くの地球物理学的研究が行な われている。しかしながち、地殻全体の詳細な構造を求めた研究はまだなく、受動 的海陸境界形成に閲する考察も地殻のうちでもごく浅い構造に基づく研究がほとん どであった。
申請者は、北大理・海底地震施設が1988年に行ったノルウェー沖Lofaten margin で行われた大規模な地球物理的観潤に参加して得たデータを解析して、今まで明ら かにされていなかった観測領域全体の詳細な地下構造を決定した。さらに決定し‐た 構造 から 北大 西洋 北蔀 での 海洋 性地 殻の 形成 還 程に つい て重 要な知見 を得た。
研究の第ー章は序論である。受励的海陸境界とは何か、ノルウェー沖の受勧的海 陸境 界の 地下 構造 は、 どこ まで 解明 され てい て 何が 問題 点か をまとめ ている。
第二章は、海底地震計とェアガンを用いた屈折法探査の概要、データ処理、解析 方法について述ぺている。この観測は43台の海底地震計を投入したもので、今まで に世界でも例を見ない大規模な観測であ、った。そのデータを詳細に解析することに よ っ て 、 地 下 構 造 の 決 定 が 非 常 に 高 い 分 解 能 で 可 能 と な っ た 。 第三章は、観測領域全体の詳細なp波速度構造について述ぺている。解析は、海 底地震計の上下助成分に記録されたェアガンからの信号の初勵、及び後続波の走時、
振幅を二次元波隷追跡法を用いて行っている。その結果、 Lofoten marginの地殻は、
海洋側から大陸側に向かって、厚さ7 kmから20 kmと次第に厚くなることを明らか にした。そして、それはP波速度7 km/s以上を示す下部地殻が顕著に厚くなる為に 地殻が厚くなることを明らかにした。また、この下部地殻の厚さは海陸境界に沿う 方向でも変化しており、観測領域の南部ほど厚くなることを示した。地磁気異常の 縞の走行と等しいこの方向で地下構造が顕著に変化することを見いだしたのは非常 に興味漂い。
さらに、この竃では地震学的に決定した地下構造を、地震とは独立な観測量であ る重カデータを用いて検証している。その結果、決定した地下構造モデルは重カ異 常データをも、5 ‑ la mgal以内という十分の糟度で説明することを示した。これ は、先に地震学的に決定した地下構造が非常に精度よく決定できていることを示し ている。
第四竃では、水平動成分の記録を解析し観測領域のVp/Vs値構造を決定している。
今までに、受動的海陸境界での地殻深部までのS波速度の債報はほとんど得られて おらず、本研究によって初めて明らかにされた。解析にjま二次元波線追跡法を用い、
堆積層と上部地殻の境界面でP‑s変換した波の走時を説明するように地下のVp/Vs 値構造を決定している。その結果、上部地殻のVp/Vs値はLofoten marginのより海 洋側では1. 86を示すのに対し、大陸側では1. 76であることを示した。また、地殻下 部では1.76 ‑ 1.80であることを示した。通常、S波の情報がなぃ場合はVp/Vs値1. 73を仮定するが、この研究の結果、Lofoten marginでは地殻全体にわたってそれよ り顕著に大きい値を示すことが明らかになった。さらに、上部地殻のVp/Vs値が変 化する場所は地磁気異常の縞が消えるところに対応す ることを明らかにした。これ は、海洋性の地殻と大陸性の地殻の境界部を決定する上で重要な観測事実である。
第五竃は決定した地下構造とLofoten marginの南に隣接するVoring marginの地 下構造を比較することによって北大西洋北部で海洋性地殻の形成過程にっいて考寮 を行っている。本研究はLofoten marginからVoring marginにかけての領域では、
より大陸側、より南西側に向かって、下部地殻が厚くなることを明かにした。この 結果と、海洋性地殻形成に関する岩石学的研 究の成果から、Norway沖の海洋性地殻 は、南部になるほど、より高温のマン卜ル物貰が固化することにより形成され、そ して、その熟源はIceland hot spotであると考察した。叉、その影響は海洋底拡大 の開始時にはLofoten a¥argln北部にまで及んでいたが、50MaにはLofoten marginに はほとんど影響を及ぼさなくなったとした。
これらはプレ一卜・テクトニクスにとっても重要な結果である。以上の様に申謂 者憾、海底地震計を用いた屈折法探査の記録 を中心に典型的な受動的海陸境界であ るノルウェー冲Lofote marginの言羊細な地下構造を決定し、さらに、重力異常、地 磁気異常のデータをも用いて観測領域の地球 科学的構造モデルを提出した。また、
その構造から、北大西洋北部海洋性地殻はIceland hot spotの影響を強く受けて形 成されたことと明らかにした。これらの結果 は、北大西洋形成過程に関する重要な 見地を与えた。この成果から、審査員ー同は申請者が博士(理学)の学位を受けるのに 十分な資格を有するものと認定する。
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