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Academic year: 2021

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博 士 ( 医 学 ) 平 岡    圭

     学位論文題名

High Expression of Tumor‑assoclatedAntigenRCAS1     inPanCreatiCDuCtalAdenOCarCinomaiS

    anUnfaVOrablePrognOStiCMarker

     (膵管腺癌においてRCAS1 高発現は予後不良因子である)

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

     目的

  RCASl (receptor −binding cancer antigen expressed on SiSo cells) はヒ卜の様々な癌 細 胞 に 存 在 す る 膜 夕 ン バ ク で 、 レ セ プ 夕 一 を 発 現 し て い る 免 疫 担 当 細 胞 の ア ポ ト ー シ ス を 引 き 起 こ す と 考 え ら れ て い る 。 現 在 ま で に い く つ か の 癌 の 予 後 因 子 と し て 報 告 さ れ て い る が 、 膵 癌 に お け る 発 現 や そ の 意 義 に つ い て の 報 告 は なく 、 本 研 究 で は 、 膵 腺 癌 切 除 症 例 に お け る , RCAS1 発 現 を 免 疫 組 織 学 的 に 検 討 し , 臨 床 病 理 学 的 因 子 お よ び 予 後 と の 関 連 を 明 ら か に す る こ と を 目 的 と し た 。

     材料と方法 1 .材料

  1992 年 か ら 1999 年 ま で に 根 治 切 除 が な さ れ た 膵 腺 癌 80 症 例 ( 男 性 45 例 , 女 性 35 例 ; 平 均 年 齢 62 歳 ) を 対 象 と し た 。 今 回 の 検 討 で は 術 前 後 に 化 学 療 法 あ る い は 放 射 線 療 法 を 施 行 し た 症 例 は 除 外 し た 。 す べ て の 標 本 は 10 % ホ ル マ ル ン で 固 定 後 、 パ ラ フ ィ ン 包 埋 し た 。 腫 瘍 最 大 径 を 含 む 4 ル m 切 片 を 作 成 し 免 疫 組 織 染 色 を 行 っ た 。 腫 瘍 の 分 類 と 臨 床 病 期 分 類 は UICC の TNM 分 類 を 用 い た 。 臨 床 病 期 は II 期 17 例 , m 期 37 例 , IVA 期 26 例 で , 術 後 病 理 診 断 に て 腫 瘍 切 除断端陽性の症例は30 例であった.

2 .免疫組織染色

   免 疫 組 織 反 応 は ス ト レ プ ト ア ピ ジ ン ー ベ ル オ キ シ ダ ー ゼ コ ン プ レ ッ ク ス 法 で施

行 し た 。 パ ラ フ ィ ン 包 埋 切 片 ブ 口 ッ ク か ら 作 成 し た 組 織 切 片 を キ シ レ ン で 脱 パ

ラ フ イ ン し た 後 、 3 % 過 酸 化 水 素 溶 液 で 内 因 性 ベ ル オ キ シ ダ ー ゼ を ブ 口 ッ キ ン

グ し た 。 10 % 正 常 ヤ ギ 血 清 で 飽 和 さ せ た 後 、 一 次 抗 体 と し て 500 倍 に 希 釈 し た

抗 RCAS1 抗 体 (anti ― RCASl mouse IgM monoclonal antibody , Medical & Biological

LaboratoriesCo .,Ltd .,Nagoya ,Japan )を使用した。二ニ次抗体はHistofineSAB ―POkjt

   (NiChireiCOrporat10n ,TokyO ,Japan )を使用し、発色には3 ,3 ―diarnjnO ‐benZidine

tetrahydroch10ride (HistofineSAB −POHt ,NichireiCorporation , Tokyo ,Japan )を用い

(2)

た。 Hematoxylin で核染色した後、封入し検鏡した。癌細胞のうちびまん性に 染色された細胞が5 %未満のものを陰性群、5‑25 %を1+ 群、25‑50 %を2+ 群、 50 % 以上のものを 3+ 群とした。

3 .統計解析

Z2 検定、 Fisher 直接検定、 log −rank 検定、 Cox 検定を適宜行った。 P 値0.05 未 満を有意差ありと判定した。

     結果

   膵腺癌 80 例中 3 例が陰性、 13 例が 1 十、 13 例が2+ 、51 例が3+ であった。RCAS1 陰性,1 十を低発現群,2+ ,3+ を強発現群とし, 2 群間において、臨床病理学的 因子 (年齢、性 別、T 因子、N 因子、腫瘍径、病期、腫瘍分化度,ly 因子, v 因子 ,腫瘍切除 断端)との 関係を分割 表分析した 。RCAS1 免疫染色性は N 因 子(p=0.0608) 、病期(p ニニ0.0934) と有意ではないが相関傾向を認めた.予後に 関する検討では、 log‑rank 検定で p 値が 0.0012 であり、 RCAS1 強陽性の症例で 有意 に予後不良 であった。さらに、多変量解析により RCAS1 は独立した予後 因子であることが判明した(p=0.023) 。

     考察

・腫瘍細胞は様々な方法を用いて宿主の免疫監視機構から逃れている. RCAS1 は癌細胞 に存在するタンパクで、活性化された T リンパ球やNK 細胞などの免 疫担当細胞に発現している receptor に対する ligand として働き,それらの免疫 担当細胞の増殖を抑制し apoptosis を誘導すると考えられている。RCAS1 を強 発現している癌細胞の周囲では、腫瘍に浸潤するりンバ球が高度にapoptosis を 起こしているとの報告もあり、 RCAS1 による腫瘍の免疫回避機構への関与が裏 付けられている。

   本研究において、 RCAS1 は膵腺癌に非常に高頻度に発現しており(96 %),

すでに報告されている他の癌と比較しても最も高率であった.また,RCAS1 と 腫瘍化との関連についても子宮癌で報告されているが,本研究でも,正常膵管 細胞では RCAS1 発現は 認められな かったこと から,膵腺癌においても RCAS1 発現が癌化に関与している可能性が示唆され,他の膵管内病変についても検討 を要すると思われた.膵癌患者の予後は極めて悪いことが知られているが,

RCAS1 の免 疫回避機構 から考える と,膵癌に おけるRCAS1 発現率の高さがそ

の原因のーつである可能性が示唆された. 5 年生存率をみると,RCAS1 高発現

群では 37.9% ,低発現 群では 9% であ り,さらに ,多変量解析において RCAS1

が有意な独立予後因子であったことを考え合わせると,RCAS1 は膵腺癌患者の

予後を決定付ける重要な役割を担っていると考えられた.また,RCAS1 が分泌

夕ンパクであることも報告されており,血清や膵液を用いた術前診断も有効で

あると考えられる.さらに,これまで様々な癌特異抗原が遺伝子治療の標的夕

ンバクとして用いられてきたが, RCAS1 の膵腺癌における高い発現率,特異性

を考えると,癌遺伝子治療における新しい標的となる可能性が示唆された。

(3)

学位論文審査の要旨

     学位論文題名

High Expression of Tumor‑associated Antigen RCAS1      ●   ●

    in Pancreatic Ductal AdenocarclnonlalS     anUnfaVOrablePrognOStiCMarker

(膵管腺癌においてRCAS1 高発現は予後不良因子である)

  RCASl(receptor‑binding cancer antigen expressed on SiSo cells)は40kDaの膜夕ンパクで、様々なヒトの癌 に お い て そ の 発 現 が 報 告 さ れ て い る 。 活 性 化 さ れ た 正 常 免 疫 系細 胞 に 発 現 して い る レ セ プ ター に 対 す る り ガ ン ド と し て 働 き 、 そ れ ら 免 疫 系 細 胞 の 増 殖 を 抑 制 し 、 細 胞 死 に 陥 ら せ る と 考 え ら れ て いる 。RCAS1 を 強 発 現 し て い る 癌 細 胞 の 周 囲 で は 、 腫 瘍 に 浸 潤 す る り ン パ 球が 高 度 に 細 胞死 を 起 こ し て いる と の 報 告 も あ り 、RCAS1発 現 が 腫 瘍 細 胞 の 免 疫 回 避 能 の 獲 得 に 関 与 し て い る と 考 え ら れ て い る 。RCAS1は 現 在 ま で に い く っ か の 癌 の 予 後 因 子 と し て 報 告 さ れ て い る が 、 膵 癌 にお け る 発 現 やそ の 意 義 に つ いて の 報 告 は な い 。 本 研 究 で は 、 膵 管 癌 切 除 組 織 に お け るRCAS1発 現 状 況 を 免 疫 染 色 を 用 い て 検 討 し 、 そ の 発 現 頻 度、 臨床病 理学的 因子 および 予後と の関連 を明ら かに するこ とを目 的とし た。

  1992年 か ら1999年 ま で に 切 除 が な さ れ た 膵 管 癌80症 例 ( 男 ´ 陸45例 、tC [t35例 ;平 均 年 齢62歳 ) を 対 象 と し た 。 今 回 の 検 討 で は 術 前 後 に 化 学 療 法 あ る い は 放 射 線療 法 を 施 行 した 症 例 、 お よ び術 前 検 査 に よ り 遠 隔 転 移 が 認 め ら れ た 症 例 は 除 外 し た 。 す べ て の 標 本 は10% ホ ル マ リン で 固 定 後 、パ ラ フ ィ ン 包埋 し た 。 腫 瘍 最 大 径 を 含 む4 Li,m切 片 を 作 成し 免 疫 組 織 染色 を 行 っ た 。病 期 分 類 はUIく ニCのpTNM分 類を 用 い た 。 病 期 はH期17例 、III期37例 、IVA期26例 で あ っ た 。ま た 、 慢 幽萃 炎7症 例 も対 象 と し た 。 免疫 組 織 反応 は  s treptavidin ‑peroxidase‑complex法で施 行した。組織切片をキシレンで脱バラフィンした後、3%過酸 化 水 素 溶 液 で 内 因 性 ペ ル オ キ シ ダ ー ゼ を ブ ロ ッ キ ン グ し た 。10% 正 常 ヤ ギ血 清 で 飽 和 させ た 後 、 一 次抗 体 と し て500倍 に 希 釈 し た 抗RCAS1抗 体(anti‑RCASlmouSeIgMmonoClonman曲ody、Medid&Bi019酉 耐 kdm凪todesCo.、I」ロ.、Nagoya、Japan)を使用した。二渉め講奉旧:旺sto丘neSAB―pDkit舗icmmiCo甲Or面on、 Ibkyo、Japan) を使 用 し 、 発 色に は 、3 ・di癇nかben加ine眦ahydI.ocM噺de卿s鰤neSAB− 恥kjt、Nich蝋 CO印omdon、110kyo、Japan) を 用 いた 。HematoxyIi11で 核染 色 し た 後 、封 入 し 検 鏡 した 。400倍視 野 で 観 察 し 、 最 も 染 色 さ れ た 細 胞 が 認 め ら れ る5視 野 に お い てRCAS1陽 性 細 胞 数 を 計 測 し 、 そ の 平 均 値 を 用 い て 判 定 を 行 っ た 。 癌 細 胞 の う ち 、 び ま ん 性 に 染 色 さ れ た 細 胞 が5% 未 満 の もの を 一 群 、5之5% を1十群 、 25―50% を2十 群 、50% 以 上 の も の を3十 群 と し た 。 統 計 解 析 に 際 し 、 贓 鵠1発 現 と 臨 床 病 理学 的 因 子 と の 相 関 はx2検 定 を 用 い て 行 っ た 。 生 存 曲 線 はKaplanーMeiE三r法 を 用 い て 作 成 し 、 生存 率 の 解 析 には 婚 rank検 定 を 行 っ た 。 単 変 量 解 析 、 多 変 量 解 析 に はCox比 例 ハ ザ ー ド モ デ ル を 用 い た 。p値0.05未 満 を 有

‑ 33

寛 俊

雅 弘

村 田

今 秋

授 授

教 教

査 査

主 副

(4)

意差ありと判定した。

  結果と して、 膵管癌80例中77例 (%% )にお いてRCAS1発 現が認 められ た。ま た、正常膵管上皮、慢 性膵炎症 例の膵 管上皮 ではRCAS1発現はほとんど認められなかった(く50/0)。いずれの臨床病理学的因

‑fもRくニASI発現との間に有意な相関は認めなかったが、リンノヾ節転移(p=0.0608)、臨床病期(p=0.0934) と 相 関 傾 向 を 認 め た 。 生 存 分 析 で は 、RCAS1高 発 現 群 の生 存 率 は 低発 現 群 よ りも 有 意 に 低か っ た (p軸.0012)。5年生存率をみると、RCAS1低発現群では37。9%、高発現群では9%であった。病期III、IVA 期症例に限定しても同様の結果であった¢印,0124)。単変量解析ではルンパ節転移陽l生、腫瘍径G3.5cm)、 切除 断 端 癌 遺残 陽 性 、RCAS1高 発現が 有意な 予後不 良因子 であっ た。また 、これ らの因 子にお ける多 変量解析ではしゝずれも有意な独立予後不良因子であった。

  本研究 ではRくニAS1は膵管癌に非常に高頻度に発現していた。膵癌患者の予後は極めて悪いことが知ら れて い る が 、RCAS1の 発現 に よ る免疫 回避能 の獲得 がその 要因の ーつであ る可能 性が示 唆され た。生 存分 析 におい てRCAS1高発 現群は 低発現 群より も有意 に予後 不良で あり、 多変量解 析にお いてもRCAS1 が有意な 予後不 良因子 であっ たこと から、RCAS1は膵管 癌患者 の予後 を決定 付ける 重要な役割を担って いると考 えられ た。ま た、本 研究で は免疫 組織染 色の結 果よりRCAS1は癌細 胞での み発現が認められ、

正常上皮 細胞で は発現 してい なかっ た。R(ニAS1は分泌夕ンバクであることが既に報告されており、血清 や膵液を 用いた 術前診 断にお ける有 用なマ ーカー となり うると考 えられ た。さ らに、RCAS1の膵管癌に おける高 い発現率、特異性を考えると、癌に対する分子標的治療の新しいターゲットとなる可能性・が示 唆された。

  口頭発 表にお いて、秋 田弘俊 教授よ り膵腺 腫でのRCAS1の発現 の有無 、腫瘍 浸潤リンバ球との関連、

R(ニAS1発現 率の分 類にお けるcut‑off値の妥当 性、病 期別のRCAS1の発 現頻度 、治療における展望につ いて の 質問が あった 。っづ いて加 藤紘之教 授よりRCAS1の発 現を4群 に分類 した場 合の予後 との相 関、

従来 の 予後因 子との 比較、 手術適 応におけ る有用 性につ いての 質問が あった 。また 今村雅 寛教授よ り RCAS1の 発 現 を 抑 制 す る こ と で 得 ら れ る 予 後の 改 善 、RCAS1レ セ プタ ー 発 現 の個 体 差 、 血清RCAS1 と主 病 巣 と の相 関 、RCAS1の 固 形癌以 外での 発現に 関する 質問が あったが 、申請 者はお おむね 妥当な 回答をした。

  膵管腺 癌にお けるR(ニAS1の発現 状況と 臨床・ 病理組 織学的因 子およ び予後 との相関を明らかにし、

新しい独 立予後 因子と しての 有用性 を示唆 した本 研究の 意義は大きく、審査員一同協議の結果、大学院 課程 に おける 研鑽や 取得単 位など も併せ本 論文は 博士( 医学) の学位 授与に 値する ものと 判定した 。

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参照

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