博士学位論文内容の要旨
氏 名 渡辺
ワタナベ宝
タカラ所 属 人間健康科学研究科 人間健康科学専攻 学 位 の 種 類 博士(放射線学)
学 位 記 番 号 健博 第
166号 学位授与の日付 平成
31年
3月
25日 課程・論文の別 学位規則第4条第1項該当
学 位 論 文 題 名 高感度で全方向を可視化可能なコンプトンカメラを用いた PET 受 診者の尿中放射能測定に関する研究
論 文 審 査 委 員 主査 教 授 福士 政広 委員 准教授 井上 一雅
委員 准教授 村石 浩(北里大学)
【論文の内容の要旨】
臨床診断における従来の固形がんの治療効果判定では
X線
Computed tomography (CT)を 用 い て 治 療 前 後 の 腫 瘍 サ イ ズ を 計 測 し て い る 。 一 方 で 、 現 在 は
18F-Fuorodeoxyglucosepositron emission tomography (18F-FDG-PET)
検査を用いて治療
前後の腫瘍の糖代謝を比較し、治療効果の判定を行う手法が広がっている。薬剤による治
療効果が向上してきたため、腫瘍内部から治療が可能になったことで治療効果判定の手法
が変化している。ここで、
18F-FDG-PETを用いた糖代謝の比較のために使用される指標と
して
Standardized uptake value (SUV)がある。SUV は様々な要因から半定量的な指標
として知られている。
SUVに影響を及ぼす要因として、体格、
uptake time、血糖値、Region of interest (ROI)の設定、呼吸性移動や尿による放射能の排泄が知られている。これらの
要因に関して、それぞれを補正する方法が検討されているが、尿による放射能の排泄に関
しての議論は進んでいない。Tore Bach-Gansmo らは、男性の
18F -FDG-PET受診者の尿
を瓶に採取し、直接測定したところ投与量の
2~20%が尿中に含まれていると報告してい
る。しかし、実際の臨床現場で尿中放射能を測定し、
SUVに組み込むことは行われていな
い。なぜならば、受診者が採尿する際の汚染の拡大や尿が入った瓶を受け取り、測定する
医療従事者の被ばくを考えると現実的ではないためである。もし、衛生的且つ非侵襲的に
尿中放射能を測定できれば、臨床診断の改善に貢献できると期待される。PET 受診者は検
査前に尿を排泄するため、トイレの便器内に放射能の含まれた尿が溜められている。この
便器内に溜まった尿を遠隔から測定することで衛生的且つ非侵襲的に放射能を求められる
と考えられる。このような背景の中、遠隔からガンマ線源をイメージングする手法として
コンプトンカメラ法が知られている。この技術を応用することで便器内の放射能を測定で
博士学位論文内容の要旨
きる。
そこで、本研究では、高感度で全方向を可視化可能なコンプトンカメラ技術を独自に開 発し、この開発した技術を用いて遠隔からの尿中放射能の測定が可能なシステムの開発を 遂行し、PET 受診者から排泄された尿に含まれる放射能の測定を行った。まず、本手法で は、結晶シンチレータと
PMTを組み合わせた検出部を複数使って
2カウンター同時計数 法を採用、A/D 変換は
Flash Analog-to-Digital Converter (FADC)を採用することで高い エネルギー分解能を実現し、画像再構成法においてフィルタ法による新技術を提案・応用 することで、従来のコンプトンカメラでは困難であった「再構成画像の鮮鋭化」が実現可 能であることを実証することに成功した。次に、この新手法を用いて、尿中放射能測定に 特化したシステムを開発した。短時間で測定が可能であるシステムを達成するため、より 高感度で測定できる検出器の開発を遂行した。具体的には、検出部を
8個使用し、正六面 体の頂点にそれぞれ結晶を配置した。PMT は
11432-100、結晶は3.5 cm角
CsI(Tl)をそ れぞれ用いて、高感度を達成するために結晶間距離を
5.0 cmとした。検出器のサイズは
37 cm×10 cm×10 cm