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所 属 人間健康科学研究科 人間健康科学専攻 学 位 の 種 類 博士(看護学)

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Academic year: 2021

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(1)

博士学位論文内容の要旨

氏 名 和久

紀子

ノ リ コ

所 属 人間健康科学研究科 人間健康科学専攻 学 位 の 種 類 博士(看護学)

学 位 記 番 号 健博 第

142

号 学位授与の日付 平成

30

3

25

日 課程・論文の別 学位規則第4条第1項該当

学 位 論 文 題 名 婦人科がん手術後の排尿障害の体験の意味 論 文 審 査 委 員 主査 教 授 西村 ユミ

委員 教 授 河原 加代子 委員 教 授 山本 美智代

委員

教 授 鈴木 智之

(

法政大学

)

【論文の内容の要旨】

1.

研究の背景

婦人科がんに対して行われる広汎子宮全摘出手術や準広汎子宮全摘手術後は、合併症と して排尿障害が生じる可能性が高く、その障害の持続時間は、長期にわたることがある。

排尿障害を有する患者の体験を明らかにした研究は、手術後の自尿確立時期に焦点を当て たものがほとんどであり(佐藤ら

,2006 ;

和久

,2016

など)、患者の排尿障害の経過に沿い、

その体験を明らかにした研究は見当たらない。看護実践に必要な知見を得るため、患者一 人ひとりの排尿障害の経過に伴走し、その体験を明らかにしていく必要があると考えた。

2.

研究目的

婦人科がんの手術後に、患者が排尿障害を自覚してからその障害に区切りがつくまでの 体験を記述し、排尿障害の体験の意味を明らかにすることを目的とした。

3.

研究方法

研究参加者の条件は、婦人科がんで広汎子宮全摘出手術または準広汎子宮全摘出手術を 受ける患者とした。研究参加者

3

名に対して、病棟と外来にて参加観察ならびに非構造化面 接を行い、データを収集した。分析は、西村(

2015

)の現象学的看護研究を参考にした。

本研究では、婦人科がんの手術を契機に突然生じた、排尿という身体の変化の体験を記述 するため、現象学者であるメルロ=ポンティの思想ならびにその思想に影響を受け身体論 を著した市川の思想を手掛かりとした。

倫理的配慮として、首都大学東京荒川キャンパス研究安全倫理委員会の承認(

15052

)と

協力施設の研究倫理審査委員会の承認を得て行った。

(2)

博士学位論文内容の要旨

4.

結果および考察

婦人科がん手術後の排尿障害の体験について、まず研究参加者(以下、参加者)一人ひ とりの体験を記述した。それをもとに、以下の内容について検討を行った。

(1)

参加者にとっておしっこ(排尿)が「普通」になるということは、「普通」や「手術前 と同じ」という言葉以外にそれを表現しがたくなることであり、生活上「気にならない」

ものとなることであった。その参加者の語った「普通」とは、身体機能としての排尿が手 術前と同じになることと必ずとも一致してはいなかった。

(2)

参加者にとっておしっこが「気にならない」ものとなることを支えていたのは、尿が出 ていることを実感させる排尿に関する感覚であった。参加者は尿が勢いよく出ていること を体感的に捉えることで、尿の出方や量を意識的に捉えることを止めていた。このような 排尿の感覚が、尿を出せている安心感や排尿の回復の実感を根底から支えていた。

(3)

これらの排尿障害の行きつ戻りつしながら回復するありようが、尿を出せなかった身体 の記憶と結びつき、参加者に尿が出ない状態に「戻」る不安を長期間感じさせていた。排 尿訓練開始初日は出ていた尿が翌日になって全く出なくなった参加者は、排尿障害は「卒 業」と語った後も、長い間、自己導尿の管を持ち続けていた。排尿ができるようになった 後の自己導尿の管には、「お守り」という新しい意味が生じていた。

(4)

参加者は継続療法との関係で、排尿が今以上に大変になることを不安に感じていた。ま た、こうした排尿障害を十全には腑に落ちると思えなくとも、それなりに仕方がないもの と位置づけることを基底で支えていたのは、排尿障害のリスクを知りつつも治療を選択し た過去の自分の存在だった。

(5)

これらの手術後の排尿障害の多様性は、参加者が自分の排尿障害をそれなりに腑に落ち るものとなることを助ける一方、参加者に「私」と他の人たちという見方を生じさせてい た。尿を出せない身体になったことの衝撃や大変さ、その回復の過程と結びつくことで、

参加者のそのような見方は強まっていた。

(6)

排尿障害は、退院後の参加者に、生活上必要な配慮と必要な身体への配慮とのバランス をとる難しさを生じさせていた。参加者は排尿の所要時間の長さの自覚から、排尿に集中 しようとしながらも、同時に、トイレの外の人々のことを強く意識していた。そのような 意識の分散が更に尿を出すことを難しくさせていた。参加者は外出先のトイレが使い難い ため外出を控えたり、その場の状況に応じて排尿を途中で切り上げたりすることもあった。

5.

結論

参加者にとって婦人科がん手術後の排尿障害とは、不安や生命力の消耗を生じさせると ともに、身体という自分にとって基盤となるものへの信頼を障害するものであった。また、

意識しないですむ排尿に支えられた生活を障害するものであった。これらの患者にとって、

排尿障害から「普通」の状態に戻る体験は、十全な意味でその戻ったと感じられた状態が

身体化することではなく、むしろ再身体化され続ける/再身体化しきらないものと考えら

れた。

参照

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