• 検索結果がありません。

小学生の創造的態度についての研究 : 体験・学力・創造的思考との関連を通して

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "小学生の創造的態度についての研究 : 体験・学力・創造的思考との関連を通して"

Copied!
98
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)小学生の創造的態度についての研究 一体験・学力・創造的思考との関連を通して一 教科・領域教育 専攻 自然系(理科)コース. MOO201D 西 康隆. 要. 旨 を提言する。. 1.はじめに 基礎・基本の定着と共に創造性の育成の必要. 3.創造性について. 性が言われ続けて久しいが,創造性は「見え難 く測り難いもの」として客観的に実態を把握す. 恩田は「創造性とは,新しい価値あるものを. ることが困難とされてきた。また,そのことが. 創り出す能力,及びそれを基礎づける人格特性. 知識偏重に拍車をかけてきたという意見もある。. である」と定義しており,他の創造性の定義と. そういった中で,創造性を育てるためには小. も基本的には一致している。創造性を人格特性. さい時期に豊かな創造的態度を持つことが重要. (態度)と能力の両面からとらえたこの定義を,. であるとスローガン的に言われることが多いが,. 本研究での創造性の定義とする。. 実際に小学生の創造的態度がどのように変化し ているか,または「学力」に関係する創造性の. 4.研究の方法. パラメーターは何かといった具体的報告は希少. (1)調査票の作成. ①創造的態度尺度票. である。. 豊島・庭瀬(2000)は,中学生を対象とした創造. 恩田らの創造的態度尺度票をもとに,小学校. 的態度調査において創造的態度を構成する因子. の全学年で理解できるように一部表現を変更し. の変化と,体験及び「学力」との関係を明らか. た。創造的態度は自己統制力,自発性,衝動性,持. にした。そこで,小学校において同様の調査を. 続性,探求心,独自性,柔軟性,精神集中力の8つの. 行った場合,児童に関する創造的態度や体験等. 態度により,合計24項目の質問からなる。. の変化,及び「学力」に対するパラメーターを明. ②体験調査票. らかにできる可能性がある。また,これが一つ. 山田らの「体験」調査票をもとに小学生用に再. の基礎データとなり,児童,教師の実態とニー. 編し,自然にふれ合う体験や社会的体験,工夫. ズを把握するための新しい評価システムを構築. した体験などをもとに合計62項目の質問からな. できると考えられる。. る。回答は体験に対する意識や働きかけの違い から,単純体験と感動体験に区別した。. 2.研究の目的. ③S・A創造性検査. 本研究は小学生の創造的態度の変化や創造性. 理系領域での創造的資質を見出すために開発. に関わる諸特性の関係,及びその地域別特徴を. 標準化されたテスト。思考の速さ,広さ,独自. 明らかにすることを目的とする。また,これを. さ,深さなどを測定する。2,4,6年で実施した。. 通して創造性に関する客観的実態把握の有用性 1.

(2) ④ 「学力」検査. (4)創造性の諸要因の地域による違い. 国語,社会,算数,理科の単元末テスト。. 創造的態度や感動体験数,全体験数の地域に. (2)調査の実施. よる大きな違いはほとんど見られなかった。し. ①対象:鹿児島県の鹿児島市立A小学校(403. かし,「学力」に対しては6年都市部が思考面と. 名),伊仙町立B小学校(209名)の合計612. の関係が深く,島部では態度面や体験面との関. 名。いずれも1学年から6学年まで。. 係が深いなどの違いが見られた。. ②内容と実施時期 創造的態度調査,体験調査,SrA創造性検査は. 6.まとめ. 2001年3月上旬に行った。「学力」検査は,2. 努力・持続性や自主・独自性は,小・中学校. 学期と3学期に行われた全ての単元末テストの. に共通した創造的態度であると思われる。一方,. 平均点を採用した。. 高学年でみられた自主・独自性は中学生でみら. れた同名の因子と同類のものであり,創造的態 5.結果と考察. 度構造の変化の一般性が示されたと言える。ま. (1)創造的態度について. た創造的態度と「学力」との相関から,4年で. 全態度得点は中学年で減少し,その後の変化. の努力・持続性,6年での自主・独自性は,児. はなかった。また,全項目について因子分析(主. 童が学習内容を獲得する際に最も注目すべき態. 因子法,パリマックス回転)を行った。その結果,ほ. 度であることを示唆している。3,4年で態度. ぼ共通して努力・持続性,自主・独自性の傾向. や体験数が減少していることを考慮すると,中. が見られ心身の成長に合わせた態度構造の変化. 学年では努力による周囲への適応,高学年では. が示された。. より自立した自己による周囲への適応といった. (2)創造的態度と体験の関連. 自己意識の変化が起こり創造的態度や体験もそ. 感動体験数は,創造的態度とほぼ同じ変化が. れに沿った特徴を示していると考えられる。ま. 見られた。6年以外の学年では創造的態度得点. た地域の特徴も見られ,地域の特性に応じた支. と感動体験数及び全体験数との間に有意な正の. 援の必要性も示唆された。このように創造性に. 相関を示したが,単純体験数とは有意な相関は. 関して児童の内省に基づくデータと,「学力」と. 示さなかったため,豊富な体験と高い創造的態. いう客観的データとの融合による実態把握が児. 度は互いに関係し合っていることが分かった。. 童支援をする際の有用なデータとなることが示. (3)「学力」への態度,体験,思考力の関わり方. された。. 「学力」を目的変数,創造的態度,体験,思 考特性を説明変数として重回帰分析を行った。. 7.おわりに. 全体的に最も有意な関係を示したのは思考特性. 今後,実態把握からフィードバックまでをい. の「深さ」であったが,4年で努力・持続性,6. かに迅速,正確,容易にできるかで,教育の成. 年で自主・独自性などの態度面も有意な正の関. 果が大きく左右される時代が来る。このため,. 係を示した。さらに加えて6年では感動体験数. 創造性のみならず様々な視点からデータを収. も有意な正の関係を示すなど学年が進むにつれ. 集・分析できる評価システムを構築し,学校,. て「学力」と創造性の特性が明確に,且つ深く. 地域で活用できるようにしていきたい。. 関わるようになることが分かった。 2.

(3) 学位論文題目. 小学生の創造的態度についての研究 一体験・学力・創造的思考との関連を通して一. 兵庫教育大学大学院. 学校教育研究科. 教科・領域教育専攻. 自然系(理科)コース. MOO201D. 西. 主任指導教官. 庭瀬 敬1右. 指導教官. 庭瀬 敬右. 康 隆.

(4) 小学生の創造的態度についての研究 一体験・学力・創造的思考との関連を通して一 教科・領域教育 専攻 自然系(理科)コース. MOO201D 西 康隆. 要. 旨. 1.はじめに. を提言する。. 基礎・基本の定着と共に創造性の育成の必要 性が言われ続けて久しいが,創造性は「見え難. 3.創造性について. く測り難いもの」として客観的に実態を把握す. 恩田は「創造性とは,新しい価値あるものを. ることが困難とされてきた。また,そのことが. 創り出す能力,及びそれを基礎づける人格特性. 知識偏重に拍車をかけてきたという意見もある。. である」と定義しており,他の創造性の定義と. そういった中で,創造性を育てるためには小. も基本的には一致している。創造性を人格特性. さい時期に豊かな創造的態度を持つことが重要. (態度)と能力の両面からとらえたこの定義を,. であるとスローガン的に言われることが多いが,. 本研究での創造性の定義とする。. 実際に小学生の創造的態度がどのように変化し ているか,または「学力」に関係する創造性の. 4.研究の方法. パラメーターは何かといった具体的報告は希少. (1)調査票の作成. ①創造的態度尺度票. である。. 豊島・庭瀬(2000)は,中学生を対象とした創造. 恩田らの創造的態度尺度票をもとに,小学校. 的態度調査において創造的態度を構成する因子. の全学年で理解できるように一部表現を変更し. の変化と,体験及び「学力」との関係を明らか. た。創造的態度は自己統制力,自発性,衝動性,持. にした。そこで,小学校において同様の調査を. 続性,探求心,独自性,柔軟性,精神集中力の8つの. 行った場合,児童に関する創造的態度や体験等. 態度により,合計24項目の質問からなる。. の変化,及び「学力」に対するパラメーターを明. ②体験調査票. らかにできる可能性がある。また,これが一つ. 山田らの「体験」調査票をもとに小学生用に再. の基礎データとなり,児童,教師の実態とニー. 編し,自然にふれ合う体験や社会的体験,工夫. ズを把握するための新しい評価システムを構築. した体験などをもとに合計62項目の質問からな. できると考えられる。. る。回答は体験に対する意識や働きかけの違い から,単純体験と感動体験に区別した。. 2.研究の目的. ③SrA創造性検査. 本研究は小学生の創造的態度の変化や創造性. 理系領域での創造的資質を見出すために開発. に関わる諸特性の関係,及びその地域別特徴を. 標準化されたテスト。思考の速さ,広さ,独自. 明らかにすることを目的とする。また,これを. さ,深さなどを測定する。2,4,6年で実施した。. 通して創造性に関する客観的実態把握の有用性 1.

(5) ④ 「学力」検査. (4)創造性の諸要因の地域による違い. 国語,社会,算数,理科の単元末テスト。. 創造的態度や感動体験数,全体験数の地域に よる大きな違いはほとんど見られなかった。し. (2)調査の実施. ①対象:鹿児島県の鹿児島市立A小学校(403. かし,「学力」一に対しては6年都市部が思考面と. 名),伊仙町立B小学校(209名)の合計612. の関係が深く,島部では態度面や体験面との関. 名。いずれも1学年から6学年まで。. 係が深いなどの違いが見られた。. ②内容と実施時期 創造的態度調査,体験調査,S・A創造性検査は. 6.まとめ. 2001年3月上旬に行った。「学力」検査は,2. 努力・持続性や自主・独自性は,小・中学校. 学期と3学期に行われた全ての単元末テストの. に共通した創造的態度であると思われる。一方,. 平均点を採用した。. 高学年でみられた自主・独自性は中学生でみら. れた同名の因子と同類のものであり,創造的態 5.結果と考察. 度構造の変化の一般性が示されたと言える。ま. (1)創造的態度について. た創造的態度と「学力」との相関から,4年で. 全態度得点は中学年で減少し,その後の変化. の努力・持続性,6年での自主・独自性は,児. はなかった。また,全項目について因子分析(主. 童が学習内容を獲得する際に最も注目すべき態. 因子法,パリマックス回転)を行った。その結果,ほ. 度であることを示唆している。3,4年で態度. ぼ共通して努力・持続性,自主・独自性の傾向. や体験数が減少していることを考慮すると,中. が見られ心身の成長に合わせた態度構造の変化. 学年では努力による周囲への適応,高学年では. が示された。. より自立した自己による周囲への適応といった. (2)創造的態度と体験の関連. 自己意識の変化が起こり創造的態度や体験もそ. 感動体験数は,創造的態度とほぼ同じ変化が. れに沿った特徴を示していると考えられる。ま. 見られた。6年以外の学年では創造的態度得点. た地域の特徴も見られ,地域の特性に応じた支. と感動体験数及び全体験数との問に有意な正の. 援の必要性も示唆された。このように創造性に. 相関を示したが,単純体験数とは有意な相関は. 関して児童の内省に基づくデータと,「学力」と. 示さなかったため,豊富な体験と高い創造的態. いう客観的データとの融合による実態把握が児. 度は互いに関係し合っていることが分かった。. 童支援をする際の有用なデータとなることが示. (3)「学力」への態度,体験,思考力の関わり方. された。. 「学力」を目的変数:,創造的態度,体験,思. 考特性を説明変数として重回帰分析を行った。. 7.おわりに. 全体的に最も有意な関係を示したのは思考特性. 今後,実態把握からフィードバックまでをい. の「深さ」であったが,4年で努力・持続性,6. かに迅速,正確,容易にできるかで,教育の成. 年で自主・独自性などの態度面も有意な正の関. 果が大きく左右される時代が来る。このため,. 係を示した。さらに加えて6年では感動体験数. 創造性のみならず様々な視点からデータを収. も有意な正の関係を示すなど学年が進むにつれ. 集・分析できる評価システムを構築し,学校,. て「学力」と創造性の特性が明確に,且つ深く. 地域で活用できるようにしていきたい。. 関わるようになることが分かった。 2.

(6) 目 次 第1章 序論 1.1 はじめに. 1. 1.2 問題の所在と本研究の目的. 2. 第2章 研究の背景 2.1創造性の定義とこれまでの研究 2.1.1創造性の定義. 4. 2.1.2 これまでの創造性研究. 4. 2.2.3 日本の「創造性研究」の問題点. 6. 2.2 創造性に関わる諸要素の関係. 2.2.1創造的思考力と知能,学力,人格(態度),体験,との関係. 7. 2.2.2創造的思考力の地域による違い. 8. 第3章 研究の方法 9. 3.1研究方法の概要 3.2 調査方法. 10 12 13 13. 3.2.1 創造的態度調査票. 3.2.2体験調査票 3.2.3 「学力」調査 3.2。4 創造性検査. 3.3 調査の実施. 16 17. 3.3.1調査対象 3.3.2 調査日照期. 第4章 .結果と考察 4.1創造的態度調査票の分析. 18 20 30. 4.1.1態度得点の変化 4.1.2 創造的態度構造の変容. 4.1.3創造的態度の変化に関する考察 4.2 創造的態度と体験との関連. 4.2.1体験数の変化 4.2.2 創造的態度と体験の相関. 4.2.3 創造的態度と体験との関連に関する考察. 31 35 36. 4.3 「学力」に対する創造的態度,体験,創造的思考力の関わり. 37 38. 4.3.1 重回帰分析について 4.3.2 重回帰分析の結果. 1.

(7) 39. 4.3.3 「学力」に対する諸要素の関わり方についての考察. 4.4創造性の諸要素についての地域の比較. 43 44 49 50 52 52. 4.4.1創造的態度得点の比較 4.4.2体坪数の比較 4.4.3創造的思考力の比較 4.4.4創造性に関する諸要素の関係について 4.4.5創造性の諸要素に関する地域の比較の考察 4.5 小学生用創造的態度調査票の信頼性と妥当性. 第5章. 総合的考察,提言と今後の課題. 54 55 55 56. 5.1 全体を通した考察. 5.2 創造性調査の教育への有用性について 5.3 児童を多面的に評価する新システムの開発について 5.4 今後の課題. 第6章 結論. 57. 引用文献. 59. 参考文献. 60. 謝. 61. 辞. 【資料】. 63 65 67. 資料1 (1)小学生用創造的態度調査票(1,2,3年用) (2)小学生用創造的態度調査票(4,5,6年用) (3)体験調査票(1,2,3年用) (4)体験調査票(4,5,6年用) (5)「創造的態度調査」及び「体験調査」の実施方法(教示文). 資料2(1)地域野上・中・下学年の因子分析結果. 71 75. 77. (2)重回帰分析を用いた「学力」と創造性の諸要素との関係(男女別) 83. 86. 資料3 各学年の因子分析プロット図. 2.

(8) 第1章 序論 1.1 はじめに 平成10年12月半小学校学習指導要領は,「生きる力」の育成を目指して改訂された。 このために現在,自ら学び自ら考える力の育成と基礎的・基本的な内容の確実な定着,及 び個性を生かす教育の充実を図ることを基本理念とし,教育課程の編成が行われつつある。. ここで,教育課程編成の一般方針の中に「教育課程は,地域や学校の実態及び児童の心身 の発達段階や特性を考慮し,… 」1)とあるように,地域や児童の実態や特性を考慮し,. 教育内容を企画することが強調されている。また,「学校における教育活動が学校の教育目 標に沿って一層効果的に展開されるためには,(中略),学校の教育方針や特色ある教育活動. の取組,児童の状況などを家庭や地域社会に説明し,理解を求め協力を得ること,学校が. 家庭や地域社会からの要望に応えることが大切であり,… 」Dとあるように,実態分析 の地域・家庭への説明,及び多様なニーズへの対応の必要性が指摘されている。. 従来の教育では,知識・理解等については学力テストに,態度や技能,表現等について は教師の主観に任せられてきた面が大きい。しかし,児童・生徒の様々な事象における自 己意識や生活実態をデータとして把握し,教師がそこから次の行動を考えるということは 稀であった。また,調査によってデータを把握しても,測定から分析に至るまで比較的長 い時間を要し,適宜支援を行える即時性はなかった。こういつた理由から,今後教育現場 では多方面から児童・生徒の実態・ニーズを正確,迅速かつ簡易に測定・評価し,実践し,. フィードバックするためのシステムが必要であると考えられる。このシステムの基本理念 はデータに基づく支援である。また,そのようなシステムは教科指導,生徒指導,教材開 発等様々な分野に適用できるものと思われる。. 一方,昨今の学習指導要領改訂や臨時教育審議会答申,国民教育改革会議などからも伺 えるように,児童・生徒に必要な資質,能力として常に創造性が挙げられ,それを育成す. ることがスローガン的に叫ばれてきた。また,平成11年版小学校学習指導要領改訂の基 本方針において,日本の児童の学力水準の高さを認めつつも,「…. 一つの回答を求める. ことはできても多角的なものの見方や考え方が十分ではない」とするなど,創造性の要請 は現在でも続いている。しかし,過去30年以上も前から教育の中に創造性の育成が叫ばれ てきたにも関わらず,「どのようにすれば教科学習の中で創造的態度や創造的能力を高め られるか」という課題に対し,未だに汎用性のある成果は報告されていない。また,学校 教育の中で子どもの創造性に関する実態はいかなるものかということに関しての研究も不 足するなど,社会の要請に反して,創造性研究は遅々として進んでいないのが現状である。 村川(2001)は,これまでの学校教育では,学力テストで測定されるような「学んだ力」が 重んじられてきたと指摘した2)。そして教師も保護者も子ども自身にとっても,こうした「見. える学力・測れる学力」に注目し「学ぼうとする力」「学ぶ力」「学んだ力を総合的に活用. する力」など「見えない学力・測れない学力」は「見える学力」に比べ評価対象となりに. 1.

(9) くいのが現状であろう。さらにこの「見えない・測れない」が「見ない・測らない」につ ながり,そのうちに「気にかけない」ようになり,結果として知識偏重を助長しているこ とを示唆した。. これまで何度となく創造性の必要性が叫ばれてきたにも関わらず,学校現場では未だに 子どもの創造性に関する実態評価が注目されないのは,村川の指摘した「見えない学力・ 測れない学力」同様に,子どもの創造性も「見えないもの・測れないもの」とされ続けて きたためであると考える。しかし,「見えない・測れない」から見なくてよい,測らなくて. よいという訳ではない。子どもの能力を高めるためには評価は不可欠であるように,創造 性を育成するためには創造性に関する評価が不可欠である。確かに創造性に関する評価は 複雑で明確なものとして提示し難いものと推測されるが,これまでの研究をもとに方法を 工夫し,そこから得た実態を分析することで子どもの創造性に関わる知見が得られるもの と考えられる。. 1.2 問題の所在と本研究の目的 子どもの創造的を育成するためには,これまで「よく見えない,測れない」とされてき た創造性について,「見る,測る」ための方法を構築する必要がある。しかし,現在までの. ところ学校単位で継続して行えるような実態把握の内容や方法は報告されていない。そし て,こういつたシステムの欠如が,創造性を育成に対する最も大きな問題ではないかと考 える。. 一般的に創造性の育成に関して非常に重要な提言の一つに,「創造性を育てるためには 幼少期に創造的態度や豊かな体験を持つことが重要である」というものがある3)。これはス ローガン的に言われることが多いが,実際に創造的態度が年齢と共にどのような変化をし, 態度,体験,学力,思考力との間にどのような関係が見られるかという報告は希少である。 また,「創造性」に関して都市部と島部といった地域の比較を行った研究は古川(1971)4). 以来見られない。こういつた現状,及び上記のような「創造性に関して実態が見えること・ 測れることの必要性」を踏まえ,豊島・庭瀬(2000)5)の研究をベースに以下の5点につい て問題の所在を整理した。. まず第1に,態度の変化である。小学校の6年間には児童は心身共に成長著しく,それ に伴って創造的な態度の構成も変化していると考えられるが,6年間を通した創造的態度 の変化の研究は見られない。. 第2に,体験と創造性との関係である。豊島・庭瀬5)は,体験を「感動したり,熱心に 行ったりした体験」と「単に行っただけの単純体験」に分け,態度構造との関係について 分析し,体験の質の重要性を明らかにした。また,弓野(2000)6)らも体験と創造的思考力 との関係を明らかにしており,豊富な体験が創造的思考力と関係していると報告している。. しかし,小学校段階において自然の中で遊んだり,工夫して何かをしたりするといった自 然・工夫体験と創造的態度との関係を報告した例はなく,また,体験と学力との関係も明 らかにされてはいない。. 2.

(10) 第3に,創造的態度と学力との関係である。中学生に関して豊島・庭瀬5)では,特定の態. 度因子と学力との関係が明らかになっている。これまで,創造的思考力と創造的態度,創 造的思考力と学力との関係についての研究はあるが,小学校段階で創造的態度と学力が実. 際に関係しているかという点について言及している分析はなく,6年間を通しての分析の 報告もない。. 第4に,学力との諸要因との関係である。教師の中にも「高い創造的態度や柔軟な思考 力などの重要性は感じるが,それが実際の学習に関係するかは疑問である」という声があ るなど,実際に支援する側としてはこうした創造性と「学力」との関係を疑問視する傾向 も伺える。その一方で,態度,体験,思考力が学力とどういう重要度で関係しているかを 報告した例はない。. 第5に,地域による違いである。これまでも都市部,農村部,混在地など,地域による 創造的思考力の違いについての報告はあるが,創造的態度,体験,創造的思考力等につい ての地域比較についての報告は希少である。. つまり,はじめに児童の創造的態度について,どのような手段をとればどのような特徴 が明らかになるのかを解明する必要がある。その後,態度と体験との関係や,学力に対す る創造性の関わり方,または地域の違いを調べることで小学生の創造性に関する知見を得 られるものと考える。. そこで本研究では,小学生の創造的態度の変化や創造性に関わる諸特性の関係,及びそ の地域別特徴を明らかにすることを目的とする。また,これを通して創造性に関する実態 把握の有用性を提言する。. 3.

(11) 第2章 研究の背景 2.1創造性の定義とこれまでの研究 2.1.1 創造性の定義. 「創造性とは何か」とか「これは創造的である」と誰もが評価できるような創造性の物 差しは存在しない。なぜならば,「創造的である」という評価は,その時代,集団,価値観. などにより相対的に決められているもので,評価する側の条件が異なると創造的であると いう概念自体も変わるからである。これまでの創造性研究においても,創造性の定義や概 念規定については統一した見解は見られない。恩田(1971)7)によると創造性研究が内外で. 盛んであった1960∼70年代,当時の創造性の心理学的研究が遅れていた理由として,創造 性評価の信頼性・妥当性に対する懐疑と,創造性の概念の不透明さを指摘した。その一方 で彼は「研究を広げたらまとめる必要がある」とし,創造性について一定の定義を示した。. それは,「創造性とは,新しい価値あるもの,またはアイディアを創り出す能力,即ち創造 力,及びそれを基礎づける人格特性,即ち創造的人格である」というものである。. 確かに「創造性がある」というときには,創り出す能力だけではなく,その人なりも指 すことがある。また,この定義は創造1生を「新しさ」「価値あるもの」「人格」といった特. 徴的な要素を含む点において,他の創造性の定義とも基本的には一致している。そこで本 研究では,創造性について能力と人格の両面から捉えているこの定義を創造性の定義とし て位置づけることとする。. 一方,創造的思考力とは言うまでもなく創造性を発揮するために必要な思考力である。 ギルフォード(Guilfbrd,」.p.)7>は創造性を拡散的思考と収束的思考の組み合わせであると. したが,一連の創造性研究においては拡散的思考力のみを創造的思考力と捉える傾向があ る。拡散的思考とは,思考の方向が多種多様に変わっていく思考であり,収束的思考とは ある一定の方向や目標に向かっていく思考である。従来,人の知性を測定する為に用いら れていた知能検査では,収束的思考しか測定できないという考えから,創造的思考力はそ のアンチテーゼ的意味を込めて拡散的思考を中心に捉えるようになった経緯:がある。この. ため本研究においても創造的思考力を狭義に捉え,拡散的思考力と同様の定義であると位 置づける。. なお,学力は広義に捉えると多様な要素が含まれ,創造的思考力や体験など全てが学力 であると定義づけることも可能となり,分析上不都合である。そこで本研究では豊島・庭 瀬5)の定義に従い,学力を知識・理解を中心として測定される単元末テストの結果とした 狭義め学力と定義付け,以降「学力」と表記する。. 2.1.2 これまでの創造性研究. 創造性研究はこれまで国内外の学者をはじめ,産業界,教育界,その他あらゆる場所で,. あらゆる立場の人たちによってなされてきた。その根本には「どのようにしたら創造性を. 4.

(12) 発揮できるか」という必要性があったと見てよい。日本の創造性研究は1958年半スプート ニクショック以来,アメリカの影響を受けて入ってきた経緯がある。アメリカではスプー トニクショック以来,科学技術の振興政策を採り,科学教育の向上,科学技術者の増員,. さらにその質的向上を求めるようになった。そのような事情から,1958年には防衛教育法 なるものが作られ,人的能力の開発が国策として取り上げられ,特に科学技術者の創造性 の開発が重視されるようになってきた。そこで創造性の基礎研究ならびに創造性の発見と 訓練に関する研究が盛んに行われるようになった。このような動きは我が国にも導入され,. 経済審議会は政府の人材開発の改善に対する諮問に対して,昭和38年に「経済発展におけ る人的能力開発の課題と対策」と題する答申を行っている。即ち,経営者,管理者,科学 者,技術者,技能者,高度の事務従事者といった人たちの人的能力の開発が要請され,特 にこのようなハイタレントの養成において,創造性の開発が重視されるようになってきた のである7>。. 一連の創造性研究の中でもピアジェやギルフォードによる知性・知能の構造説など,心 理学面での研究は創造性研究の中核をなすものであった。特にギルフォードによる「知性 の構造モデル」の研究(1967)7)は有名であり,人間の知的能力全体を分析し,120個の因子 の存在を検査の結果から証明しようとしたものであった。その結果,「集中的思考」と,「拡. 散的思考」の思考特性を見出した。そして当時は拡散的思考力が,より創造的思考に近い ものとされていた。しかし認知科学の進歩に伴い,現在では万能な拡散的思考は存在しな いとの見方が強い8)。つまり,何かの例を100述べることができても目の前の課題を解決 できるとは限らないと言うわけである。. 日本では恩田をはじめとして創造的思考力の高い人物について,人格面からの分析も行 われた。それによると,創造的思考力の高い人物は寛容で,ねばり強く,変化を好むと言 った特徴があると指摘した。つまり,創造性を発揮しやすい人格面の特徴があるという主 張である9)。. 一方,最近では認知的なアプローチとしてRAFinkeらの開発したジェネプロアモデル があるlo)。このモデルでは,第一段階の生成的認知過程において「発明先行構造」と呼ば. れるものがイメージされ,第二段階の「探索的認知過程」では生成された先行構造の確定. 性が探索される。その後,この2っの段階を繰り返しながら創造的産物を案出しよとする というものである。小碕(2001)11)はこの追試的検証から,創造活動の初期段階でイメージさ. れる,発明先行構造作成時に使われる材料や考案目標は,自由に選択するよりも制約をす る方がより創造的な考案がされるという結果を得た。つまり何でも自由に課題を与え解決 させるよりも,何らかの制約が課され,そこから自分なりの手段を講じる方が創造的なも のを案出できるとするものである。これは,批判厳禁,自由奔放を推奨する創造性開発技. 法であるブレーンストーミングの考えと相反する考えである。しかし,この2つの考え方 はそれぞれ創造的所産としての結果を出しているため,用途に応じた使い方があると考え られる。. このジェネプロアモデルの最大の功績は,創造性についての意義や役割の主張だけでは. 5.

(13) なく,創造的思考を実証的,科学的手法によって追求するという点であろう。従来の創造 性研究における創造過程の追求は記憶とか注意とかのテーマに比べて主観的なものが多く,. 内観的な論述に留まることも多かった。それに対してこのモデルは,創造過程に関して条 件を統制した実験的な追求方法をとって研究するため,客観的なデータを採りやすくなる と言う利点がある。異なる情報を組み合わせて新しいものを作るということ(創造性)を 突き詰めると認知的な思考の働きによるものであることは言うまでもなく,この思考過程 に直接アプローチするこのモデルは今後さらに研究される分野であると考えられる。. 一方,創造性に関して同じスケールで国際比較しようという試みも行われている。繁桝 (1993)12)は,日米の工学系大学生に日常生活で興味深い問題を持ち,それをどのように解決. したかといった質問を行った。その結果,全く創造的な活動を行っていない学生はアメリ カで6%だったのに対し,日本は33%いたという。弓野(2000)13)によると,日本において. このように創造性育成の必要性が言われ続けて等しいにも関わらず,創造性を重視しよう とする文化価値は依然として欧米諸国より低いという。また,創造性テストの比較におい て日本はカナダの児童よりも中学年以降大きく引き離されるというデータもある(小林, 1980)14)。因みにIEA(国際到達度評価学会)による学力の国際比較(1998)15)では日本. は依然として高い水準を維持しているが,関心や態度と言った面では諸外国と大きく溝を あけられている。以上のことから,日本の児童・生徒は学力面では国際的に高い水準であ るが,学習への態度,及び創造的思考力,創造的態度,日常の創造活動に関しては決して 高いものではないと考えられる。. 2.1.3 日本の「創造性研究」の問題点. 今日の創造性教育が行われるようになったのは1950年頃,アメリカのギルフォード (GuiHbrd, J.P.)を中心とした,創造性の実証的研究が始められてからである。日本では昭. 和30年頃からギルフォード研究の影響が出始め,昭和40年頃から活発に理論ならびに実 践研究が行われるようになった。このため,昭和40年代から50年代は,創造性について の理論的,実践的研究が最も多くなされた時期である。この頃は日本が技術的に世界の諸 国と肩を並べるまでに成長しつつあった時代であり,これまで無かった新しい価値あるも のを創り出すという社会的命題があった。よって,創造性の理論研究を始め創造性の育成 方法について,多くの小・中学校及び大学で研究がなされ,学習指導要領や臨時教育審議 会でも創造性の育成がとりあげられるようになった。最近では教育改革国民会議において 創造性の育成について議論がなされている。. ここで,日本で創造性の必要性が主張されて約100年,実証的創造性研究が行われて30 年以上経つにも関わらず,諸外国に比べ学力ほど創造性は高い水準を示しているとは言い 難い。それは,創造性の育成よりも受験知識を優先されたことに特徴づけられるように, これまでの創造性研究が十分に社会の要請に応えるものではなかったと推察することがで きる。その中でも特に大きな問題点として次の2点が考えられる。. まず,創造性の評価法と育成法のマニュアルの不在である。教科教育等は単元の目標が. 6.

(14) 評価の基準となり,問題解決過程に則って学習を進めていくスタイルが一種のマニュアル としてあった。しかし,授業を通して創造性を伸ばすために,どの部分でどのように行え ば良いかと言った研究は現場を主としてなされたものの,それが学習の理解に役立ち,さ らに柔軟な思考力が育ち,教育方法としてのスタイルを確立したとは言い難い。また,継 続した研究の中であまりにも拡散的思考と学習を分けたために,今なお「知識注入主義」. が指摘される現状が続いている。確かに創造性を正確に評価することは困難であるが,現 在でも可能な限り評価できる部分(例えば態度やアイディアの有用性など)だけでもきち んと評価するための研究が,必要であると考える。また,子どもに対してどのような評価 をするかによって将来の創造的態度や日常の創造的活動が変わるということからも,評価 のあり方,特に基準と方法の確立は重要なテーマである。. もう一つの問題点は,実証されたデータの少なさである。創造性研究は特に抽象的な概 念の多い分野である。柔軟さ,流暢さ等の必要性をいくら声高に叫んでも,結局は具体的 にそれがどのような分野に適用し,どのような結果が出たのかをきちんとしたデータとし て出さなければ信頼性に欠ける所がある。そういった点では,これまでの創造性研究にお ける実証的数値データは文献の数からしても少ない。よって,継続した研究が少なかった のは,こうした数値データが非常に少なかったことによると考えられる。このため,創造 性研究において実証されたデータを積み重ね,信頼できる理論を構築していく必要がある と考える。. 過去,優れた業績を残した科学者や芸術家は,幼少期における様々な経験に大きな影響を 受けたとされる。これは,これまで述べてきた大人がどのように子どもを評価してきたか といったことと合致する。即ち,児童が行った活動や考えから大人が子どもにとって必要 なことは何かを判断し,的確にフィードバックし,それが成功すると一種の動機付けとな り子どもは伸びると考えられる。これらのことから,子どもの創造性を伸ばすためには様々 な方面から児童を把握する必要があり,序論の中でも述べたように,児童の実態を学力,. 態度をはじめ様々な方面から捉え,必要とされる内容を把握し,子どもへのアプローチを 行うという児童評価システムが今後必要であると考える。. 2.2創造性に関わる諸要素の関係 2.2.1創造的思考力と知能,学力,人格(態度),体験,との関係. ギルフォードやトーランスの研究をもとに,国内外で拡散的思考を中心として測定され る創造性検査が開発された。言うまでもなくこうした創造性検査についてはその信頼性と 妥当性の問題点が指摘されることが多く,測定範囲に限界があるが,知能検査で測定され 得ない思考特性を測定できるという点においては現在考え得る最低限の手段と言える。. こうした創造性検査の開発により,これまで創造性検査と学力,知能,人格,体験,態 度との関係について幾多の研究がなされてきた。対象は成人(科学者,技術者,有能な事. 務職etc)から学生まで幅広い。これら一連の研究により,高い創造性を発揮するための 知能や人格はいかなるものか,逆に知能の高い者は,本当に高い創造性を持つのかなど,. 7.

(15) 探索的に行われてきた傾向がある。特に創造性検査と知能,人格との関係については国内 外で研究された。それらの研究はギルフォードの説に基づいて,創造性(拡散的思考力) と知能(集中的思考力)との関係を分析した例が多い。日本では恩田(1969)により分析が なされ16),創造性検査と知能テストとの相関はほとんどないが(r=.22程度),創造性検査と 「学力」との間には弱∼中程度の相関があること(r=.24∼r=.50)を確認している。また,. 創造性検査と人格検査(態度)との相関について調べた結果,創造性得点の高い者ほど概 して行動的で活発であり,主体性・指導性があり,仕事がてきぱきできる(特に計算能力 が優れている)とした。また,どちらかというと理屈つぼく,自己主張が強いという面も あるとしている。一方,豊島・庭瀬5)は創造的態度と「学力」との関係を調べ,弱い正の相 関(r=.26)があることを確認している。このことは即ち,創造性を発揮するためには,創造. 性特有の態度や特徴的な人格特性が存在する可能性を示唆している。. また,弓野らは創造性検査とこれまで行ってきた数々の体験数との関係を調べ,体験数 が豊富なほど創造的思考力も高いという結果を得た6)。体験活動を多く行う人はいろいろな. 場面において新たな質問やアイディアを考える機会がふんだんにあるし,それらの豊富な 体験を重ね合わせることでさらに新たな質問やアイディアも考え付くと思われるとの見解 を示した。体験別には,小学生では未知の場所の探検や遊びの中で考えるという活動やゲ ーム・物・機器の創作や修理等の活動と創造性が強く関連し,大学生では音楽・美術・文 学の創作,新聞の発行,外国人との文通等の活動と創造性には有意な相関があったとした。. また,豊島・庭瀬5)は中学生を対象とした創造性検査と「原体験」との間に弱い正の関係 があることを明らかにした。これらのことから,体験数が多くなれば,その中に後の創造 性に影響を与えるような体験が含まれている可能性があることを示している。. 2.2.2 創造的思考力の地域による違い. 創造的思考力の地域による違いは,創造的思考力と他の要素との相関研究ほど多くはな されていない。その中で恩田はS−A創造性検査の標準化の際17),住宅地,商工業地,雑地. 域の3カ所で調査した結果,得点平均では住宅地が最も高かったが,他の地域との差がは っきりしているとは言い難いとの見方を示した。また,弓野によると静岡の都市部と僻地,. そしてその中間地区について調査した結果,中間地区が最も得点が高かったという。さら に,古川(1971)4)は鹿児島県の都市部と島部を比較した結果,都市部の方が明らかに高い数 値を示した。. 以上のように,創造的思考力の都市部,あるいはその他の地域との違いは現在でも明確 ではない。メディアや交通機関が発達し,都市とその他という明確な違いが少なくなって きている現在の環境において,地域での違いが見られたときの原因の追及は非常に困難で ある。このため,創造性検査一つで地域の違いを考察するのは無理があり,いくつかの調 査結果を組み合わせて多方面から分析する必要があると考えられる。. 8.

(16) 第3章研究の方法 3.1研究方法の概要 第2章で示した小学生に対する5つの問題の所在について不明な点をまとめると次の4 っになる。. (!) 小学生の態度因子の変化. (2) 体験と創造的態度との関係 (3) 創造的態度や創造的思考力,自然・工夫体験と教科得点との関係 (4) 創造性の諸要素の地域による違い 本研究ではこの4つの点に対し,図3・1・1で示すように探索的に諸統計方法を用いて明ら. かにしていく。まず,恩田の示した創造性についての構造概念を用いて創造的態度調査票 を作成し,それぞれの要素について測定する。ここで,子どもの創造性について実態を把 握するために最も必要なのは,創造的能力を基礎づける創造的態度であると考える。通常,. 態度の把握には教師の観察と,子どもの内省という2つの立場が考えられる。ここで,一 連の創造的態度研究により明らかになっている態度の中には「いろいろと工夫することが 好きだ」「仕事や学習を始めると,時間がたつのを忘れる」などといった,他者からの観察. よりも内省による方が適切である項目が多い。よって本研究での態度調査は,子どもの内 省による方法を採用する。. また,体験調査票を作成し,体験の豊かさを評価する測定を行う。一方,2,4,6年 ではS−A創造性検査により創造的思考力を測定する。なお,「学力」検査は単元末テストを 用いる。. 一連の測定後,創造的態度を因子分析によって態度因子を明らかにし,創造的態度と体 験との関係を明らかにする。次に,「学力」に対して他の創造性に関わる要素はどのような. ウェイトで関係しているかを分析するために,重回帰分析を行う。また,地域による違い も予想されるため,地域ごとの創造的態度,・体験,創造的思考力,「学力」への関わり方を 比較検討する。. 9.

(17) (広義の)創造性 .。.…’” @ ,..…’” @ ...…’” D〆・’”. 体. 拡散的思考. 創造的態度. 験. 収束的思考. i狭義の創造性). (1). S・A創造性検査. 創造的態度調査票. 体験調査票. 単元末テスト. (2). (3). (狭義の)創造性に関する諸要素. 「学 力」. (4). 図3・1−1研究方法の概要図. 3.2調査方法 3.2.1創造的態度調査票 (1)作成について. 創造的態度を測定するためには,創造的態度を評価するための尺度が必要である。 現在までの所,創造的態度を測定するための定まった尺度は存在せず,それぞれの研 究者が独自に作成したもの(木村・1970,繁桝1993,渡辺1996)18)12)19)が用いられ. ている。ここで創造的態度とは,創造的所産に基づく人格特性である。国内外におい て,主として創造性が高いと評価された者,あるいは創造性検査の測定から高得点を 得た者について人格検査や人格評定を実施し,その中から主だった傾向を集約したも のが創造的態度とされる(田中1969,他)7)。恩田は8つの創造的態度(自己統制力,. 自発性,衝動性,持続性,探求心,独自性,柔軟性,精神集中力)を取り上げ,それ ぞれの態度を示す行動傾向を3つずつ示し,合計24項目の行動傾向をあげている9)。 豊島・庭瀬5)は恩田の24項目の行動傾向をもとに中学生用に創造的態度調査表を作成. 10.

(18) している。本研究ではこの中学生用の創造的態度調査票をもとに,小学生向けに表現 を一部修正し創造的態度調査票を作成した。. 今回使用する質問紙は小学校の全学年で使用するが,3年生以下の児童には自分の 態度を数字により判断するのは困難と考え,回答欄に「◎,○,△,×」の記号を設 けた。質問の形式は全て肯定的な表現とし,逆転項目は設置していない。また,中心 化傾向を避けるため4段階評定とした。. 表3・1・1 小学生用創造的態度調査票の調査項目 カテゴリー、 、. 攝ァ力. 度 を 示 す 行 動 傾 向(キーワード)番 ① 焦っても,すぐに落ちつきを取りもどす (安定) A 失敗しても,すぐにはあきらめない (不屈) B 目標のためには苦しみにも耐えられる (目的). 自発1生. ①難しいことでも,人に頼らず自分の力でやろうとする (自立) A 何かをやろうと思ったら,すぐにやる (即行). 自己. B 自分の考えで,進んで活動する. A間違いや失敗を気にしない. 持続性. (勢い). 独自性. 柔軟性. (寛容) 10. A粘り強くものごとに取り組む B分からないことがあると分かるまでやる. P2. (忍耐) (納得). B いろいろなものに興味を持てる (好奇心) ① よく,何かに夢中になる (夢中) A何かに夢中になると,時問を忘れることがある (没頭) B周りに気を散らされることが少ない (集中). 精神. W中性. 789. B思いがけない発見をしたとき興奮したり,声に出したりする (興奮) ① 一度始めたことは,最後までやり遂げる (貫徹). ① 不思議なことや,まだ誰も知らないことなどをよく調べる (探求) A いろいろと工夫することが好きだ (工夫) B簡単にできそうなことより,難しそうなことによくチャレンヅする (挑戦) ① 変わったことをして,周りの人をびっくりさせることがある (奇抜) A 人の考えつかないことをよく思いつく (独創) B 人が反対しても,自分の意見をはっきりと言える (主張) ① 何か新しいことを始めるときでも,すぐに慣れる (適応) A 間違いに気づいたら,すぐに直そうとする (柔軟). 探求性. 456. (積極). ① ものごとを一気に集中してやってしまう 衝動性. 号 123. P1. 13 P4 P5. 16 P7 P8 19. Q0 Q1. 22 Q3 Q4. (2)回答方法. 回答は,創造的態度調査票の24項目について『とてもよくあてはまる』『どちらか といいうとあてはまる』『どちらかというとあてはまらない』『ぜんぜんあてはまらな. い』の4段階評定で,回答欄の対応する印「◎,○,△,×」に○を付け,回答させ た。. (3)教. 示. 教示に際しては,今回の調査が通常のテストではないため成績には全く影響しない が,重要な調査のためよく考えて正直に回答するよう求めた。さらに児童への説明時,. 黒板に模造紙を提示して例を挙げながら印の付け間違いの無いように指示した。なお, 内容等について質問があればその都度質問を受け付けた。. 11.

(19) (4)得点化. 創造的態度のそれぞれの項目に4段階評定に対して『とてもよくあてはまる』を4 点満点とし,それぞれ1点刻みで得点化した。. 3.2.2体験調査票 (1)作成について 豊島・庭瀬5)は,山田らの自然の事物や現象について五感を通して触れ合う「原体験」 に関する著書20)21)をもとに,「体験」を130項目に集約して中学生用「体験」調査票を. 作成した。本研究ではこれをもとに,加除修正を施して小学生用「体験」調査票を作 成した。削除した項目は,「ピンホールカメラや望遠鏡を作る」「金属を熱して溶かし, 型に流して何かを作る」など,明らかに小学生では体験する機会が無いような内容や, 「石蹴りをする」「木陰で休む」など,日常性が非常に高いものなどである。また,「カ. タツムリで遊ぶ」「ミノムシで遊ぶ」などの類似した項目に関しては「虫を探して捕ま. えたことがある」にまとめた。児童の行う体験には,山田らの提唱する自然体験だけ ではなく実験や工夫をする体験,コミュニケーションをとる体験など,社会・工夫体 験も含まれるはずであり,これらの児童の多様な体験をなるべく多岐にわたり調べる ために「美術館や博物館,水族館に行ったことがある」「ゲームのルールを変えて遊ん だことがある」「探検したことがある」などを追加した。追加した項目に関しては,弓 野(2000)6)の作成した小学生用体験調査の一部を参考にした。. (2)回答方法. 「体験」の質的な違いを検討するため,とても感動したり熱心に行ったりした体験は 「◎」に,ただ行っただけの体験は「○」に,行っていない体験は「×」に印を付けさ せた。. (3)教. 示. 創造的態度調査と同じく,調査がテストではなく全く成績には影響しないことを伝 えた。なお,感動したり熱心に行ったりした体験と,ただ単に行っただけの体験の違 いを明らかにするために,具体例を示しつつ回答方法を誤らないよう細心の注意を払 つた。また,創造的態度調査と同じく黒板に模造紙を用いて説明を行った。. (4)得点化. 「◎」の数の合計を感動したり熱心に行ったりした体験の数(感動体験数)とし, 「○」の数をただ行っただけの体験の数(単純体験数)とし,「◎」と「○」の数:の合. 計を全体験の数(全体験数)として,その個数の合計を得点とした。さらに,全体験 数に占める感動体験数の百分率を求めた。以降,感動したり熱心に行ったりした体験 を感動体験,ただ行っただけの体験で,特に感動したり熱心に行ったりしていない体. 12.

(20) 験を単純体験,両方をあわせた全ての体験を全体験,全体験数に占める感動体験数の 割合を感動体験率の名称で記すこととする。. 3.2.3「学力」調査. (1)テストの内容. 2学期,3学期に行われた各単元の単元末テストの点数を集計し,教科ごとの平均 点を算出した。教科は全学年で国語,算数,3年以上で理科,社会の2教科,あるい は4教科である。単元末テストは全て市販のものである。ここで都市部と島部のテス トは全く同一のものではないが,同じ学習内容について測定したものである。単元末 テストは各単元において授業で学習した内容がどれだけ定着しているかを調べること を目的として作成されている。測定できる観点は知識・理解が主であるが,各教科に よって計算の技能や推察力など,必ずしも知識・理解面のみの評価内容ではない。一 般的に教科内容の達成度を総合的に測定し,評価する指標となっている。. (2) 得点化. 100点満点への変換を行った。逆に50点満点のテストに関しては100点満点への変 換を行った。. 3.2.4 創造性検査. (1) S−A創造性検査について 創造性検査として,今回は東京心理(株)の発行するS・A創造性検査を使用する16)17)。. この創造性検査は1969年,ギルフォードの指導とトーランスの研究をもとに恩田らが 主に理科的領域での創造的素質を見いだすことを目的として作成したテストである。. 一般的にテストと言えば一つの課題に対して1つの回答を要求するものであり,知 能検査などはその典型といえる。知能検査で測れる思考力を集中的思考とするならば,. このS・A創造性検査は拡散的思考を測定するために開発されたものである。このテス トにはP版とA版,B版, C版がある。 A, B, C版は言語性であり, A, B版の問. 題が古くなったことから最近の現状に即した課題に作り直したものがC版である。C. 版は小学校の4年生以上が対象となっていたため4年と6年で使用し,P版は2年で 使用した。P版は絵画課題である。活動領域として着眼力(抽象的な図形を完成させ るテスト),発想力(装置や機能を考えるテスト),構成力(手段や方法を考えるテス. ト)を測定できる。C版は言語式課題である。活動領域として応用力(新しい用途を 考案するテスト),生産力(新しい装置を考案するテスト),空想力(ありそうにない. 事態が起こったときのことを予想するテスト)を測定できる。いずれも,それぞれの. 活動領域ごとに2問ずつ,計6問の問題から構成されている。また,思考特性として 思考の速さ(一定時間により多くの類似・発展したものに思考を展開していくような 思考の流暢性),思考の広さ(柔軟で自由な思考を巡らし多様な着想ができること),. 13.

(21) 独自さ(多くの人が考えつかないような非凡な考え,課題に対して無理や無駄のない 巧みな考え。ここでは,出現頻度により得点表を作り,出現頻度の低いものだけ(5%未 満)に点を与える),思考の深さ(課題の主題・目的・機能に対して,どれだけ条件設定,. 手段,構成を具体的に表現できるか)を測定できる。. (2)創造性検査の内容. S−A創造性検査3つの検査から構成されている。S・A創造性検査(P版)及びS・A創造 性検査(C版)のテスト1からテスト3までの質問内容は表3・1−2,表3・1・3の通りであ る。. 表3・1・2 S・A創造性検査(P版)の質問内容. 質. テスト項目. 問. 内. 容. テスト1(1). 「〉」の線を使って,なんでも好きな絵を書きなさい. テスト1(2). 「(一)の線を使って,なんでも好きな絵を書きなさい. テスト2(1) テスト2(2) テスト3(1) テスト3(2). (自動車の絵に対し)いろいろ付け加えて,誰も考えつかないようなすば 轤オいおもちゃにしてください (人形の絵に対し)いろいろ付け加えて,誰も考えつかないようなすばら オいおもちゃにしてください (魚の中に人がいる絵に対し)どうやって助けたらいいでしょうか。助 ッる方法を絵に書いてください。 (川の向こうに宝物のある絵に対し)どうやって渡ったらいいでしょう ゥ。渡り方をいろいろ考えてください。 表3−1・3 S・A創造性検査(C版)の質問内容. 質. テスト項目. 問. 内. 容. テスト1(1). わりばしは,食事以外にどんな使いみちがあるでしょう. テスト1(2). 電話帳は,番号を調べる以外にどんな使いみちがあるでしょう. テスト2(1). どのような机があったらいいでしょうか。夢をたくさん書いてください. テスト2(2). どのような靴があったらいいでしょうか。夢をたくさん書いてください. テスト3(1). もし,日本のまわりから海がすべてなくなったら,どのようなことが起 アると思いますか もし,世界中の人間の顔がみんな同じになったら,どのようなことが起 アると思いますか. 、. テスト3(2). なお,この検査の構成と所要時間は,表3・1−4の通りである。. 表3−1・4 S・A創造性検査の構成と所要時間. 問題数 問題の領域(P版・C版) 4 着眼力・応用力 テスト1 4 発想力・生産力 テスト2 4 構成力・空想力 テスト3 ※ C版はそれぞれのテストの前に,2分間の練習問題を行った。. 下位検査. 14. 所要時間. 10分 10分 10分.

(22) (3)教. 示. P版,C版ともに,創造性検査のテストが学校の成績には全く影響しないことを伝え た。用紙がもれなく配布されたことを確認し,必要事項を記入させ,それぞれのテス ト毎に回答方法を指示した。なお,共通して次のような点を常に教示した。 ア.思いついたことをなるべくたくさん書いてください。. イ.本来の使いみちは書いても点になりませんから注意してください。 ウ.実際にはできそうもないことでも書いてかまいません。 エ.人の考えつかないものほどいいのです。. なお,この検査はなるべく疲労の少ない午前中を中心に行われ,落ち着いた状態の 中で行った。また,大きな行事の直前直後は避けた。. (4)得点化. 各思考特性の得点化の方法は,表3・1−5の通りである。. 表3・1・5S・A創造性検査の思考特性の得点化方法. 思考特性 思考の速さ 思考の広さ. 得 点 化 の 方 法 題意に不適または解釈困難な回答を除いた回答数 基準表またはそれに準ずる判断により割り当てられたカテゴリーの種類. ハの和 思考の独自さ 思考の深さ. 基準表またはそれに準ずる判断により重みづけられたカテゴリーの和 基準表またはそれに準ずる判断により重みづけられた回答の和. ※ 基準表とはテスト作成時の標準化の際,データとして採用した被験者の結果をもとに まとめられたものである。. (5)創造性検査の位置づけ. S・A創造性検査は,創造的思考力を測定することに変わりはないが,人間の創造的思. 考力全てを測定できるものではない。現時点で人間の創造的思考力の測定に関する決 定的な妥当性を証明することはきわめて困難である。手引き書19)によると,次のよう な理由が挙げられている。. ア.測定できる領域が極めて限られている。. イ.創造性は能力面と人格面が複雑に絡み合っており,その関係が十分明らかでない ため,測定の対象が不明確になっている。. ウ.創造性を成就的能力としてみるか,可能性(潜在的能力)としてみるかによって 異なる。可能性としては推測の段階にとどまらざるを得ない。. エ.基礎資料が不足しているため,今後相当程度の日時が必要である。. このテストは問題解決に際して一定時間内にいろいろな観点から検討して多様な答 えをたくさん生み出していくことを測定のベースにしている。よって熟考した後に良 いアイディアが浮かぶようなタイプには不向きといえよう。また,理科的領域での創. 15.

(23) 造的素質を見いだすことを目的としているため,芸術とか社会的領域での創造性はこ の検査では測定できない恐れがある。手引き書によれば,検査結果と担当教師の評価. を一致させたところわずか25%であったことから,教師の行った評価と検査により 測定された結果とはかなりの差がある。さらに,思考には領域固有性もあり,万能な 拡散的思考は存在しない(徐・長谷川,1995)8)という説もあるため,テストで測定で きる分野は非常に限られるとも考えられる。. しかしながらテストの標準化の時点では,中学生の学力テストと創造性検査の結果 とは有意な相関があり,特に「広さ(柔軟性)」は知能的な因子に近いものであると考. えられている。また,某社で優秀社員と業務実績とを分析した際,事務系業績や技術 系業績において「独自さ」「深さ」との相関が見られた。このことから,創造性検査は. 従来の学力評価や知能検査では測定不可能な,極めて大切な思考特性を評価できると 思われる。. 一方,このテストの課題は教育現場において日常あまり経験しない内容や回答方法 である。しかしながら児童達は課題が理解できないことはなく,通常のテストで起き ている「問題の意味が分からない」とか「覚えていない」,「計算ができない」といっ. た類の「できない」こととは異なる。質問に出されている内容はだれでも知っている 言葉であるため,専門的な知識は必要ない。ところがその内容について(ありそうも ない事態も含め)数多く回答するためには,単なる記憶や技術とは違う思考形態が必 要となる。それが創造性検査で測定する思考特性であると考えられる。. 以上のことから本研究ではS−A創造性検査を,創造性について評価できる万能なテ ストとしてではなく,拡散的思考力を中心とした思考特性について測定できるテスト として位置づける。. 3,3調査の実施 3.3.1調査対象 (1)調査校. 鹿児島県鹿児島市及び大島郡伊仙町の2つの公立小学校児童,1年から6年までを対 象として行った。調査を行った両小学校は異なる環境にあり,いわゆる都市部と離島と いう環境の違いがある。以下,各校についての概要を示す。. ア.鹿児島市立A小学校 鹿児島市の南部に位置し,全校児童が千名近く在籍しているマンモス校である。学校 は高台の住宅地の中にあり,保護者の職業も多種にわたる。校庭はサッカーのコートが. 2面とれるほど広く,構内には桜・椚をはじめ多くの植物が存在している。児童の生活 圏に山や海はあるが川はない。山も駆けめぐるような山ではなく,ほとんど立ち入って 遊ぶといった類ではない。ただ,こうした樹木を横目に見ながら登下校している児童も 多い。なお,点在する公園には藤棚や樹木が多く見られる。校区が広く市街地でもある ため,児童の生活圏には外食店やスーパー,メーカーなどが点在している。. 16.

(24) 放課後はクラブ活動や塾に通う児童も多いが,そうでない児童も多い。少年団活動は ソフト,サッカー,バレー,剣道,水泳,ブラスバンドなど多様なものがある。地域の 学校への関心も高いが,マンモス校であるためか意識の差は大きいように思える。. イ.伊仙町立B小学校 鹿児島市から南へ約468km離れた徳之島にある。徳之島は周囲84㎞の島で,奄美群島 のほぼ中央に位置している。徳之島町・天城町・伊仙町の三町からなり,人口は約3万 人である。亜熱帯気候を生かしたサトウキビ栽培を中心として,馬鈴薯やさといも,果 樹等の園芸も盛んで,闘牛で有名な島でもある。. B小学校は伊仙町の中で最も大きい小学校である。島の南端に位置し,全校児童が 200名余りである。島の南西部に広がる台地にあり,公的機関や商店街,製糖工場などが あり,町の政治・経済・文化の中心地にある。保護者は町役場・学校の公務員が最も多 く,会社員とあわせるとほぼ半数以上になる。ほとんどが兼業農家で,専業農家は少な い。校区民の教育への関心は高く,環境整備を始め協力的である。学習塾や稽古事の塾 に通う児童は全校の48%に達する。また,少年団活動も盛んで,野球・ソフト・サッカ ー・. 蕪ケ・女子バレー等に,全校児童の約50%が所属している。児童の生活圏には豊か. な畑,山,海があるが,ハブが生息しているため,多くの児童は山では遊ばない。. (2)調査人数. 両校に関する調査人数と学級数を表3−1・6に示す。A小学校が403名, B小学校が. 209名の合計612名を全データ数とした。それぞれの学校における男女の比率に差は ない。. 表3・1−6 調査対象生徒数とクラス数. B小学校. A小学校. 1年 2年 3年 4年 5年 6年. 男子 女子 小計 学級数 男子 女子 小計 学級数 合計 1 12 14 26 89 34 29 63 2. 2 17 42 29 71 2 13 36 25 61 2 36 42 78 20 2 41 27 68 22 2 31 31 62 16 合計 220 183 403 12 100. 20 37 19 32 18 38 17 39 21 37 109 209. 1. 108. 1 1. 93 ll6. 2. 107. 1. 99. 7. 612. 3.3,2 調査時期. 創造的態度調査,体験調査,S・A創造性検査は,都市部,島部ともに2001年3月上 旬に実施した。「学力」調査については,9月上旬から3月上旬までに実施した単元末 テストである。. 17.

(25) 第4章結果と考察 4.1 創造的態度調査票の分析 4.1.1 態度得点の変化. (1)態度得点合計の変化. 24項目における創造的態度得点を合計したものを学年の人数で除算した態度得点合計 の学年別変化を図4・1・1,表4・1−1に示す。2年ではかなりの高得点(M=73.47,SD=11.38). であったのに対レ,3年で急な減少が見られた(M=69.77,SD=10.91)。4年半はさら減少. している(M=65.28,SD=10.54)。なお,2年と3年の問,及び3年と4年の問にはそれぞ れ有意差が確認されている(t=2.35,p<0.05;t=3.oo, p<0.01)。. ところが,4年,5年,6年の問には落ち込みも見られず,それぞれ有意差も確認さ れない。つまり,低学年では態度得点は高いが中学年で減少し,高学年ではほとんど変 化はないと言える。. 80. 表4−1・1 創造的態度合計得点の変化. 75. ノ」、1. 如. 70. こ口数. 89. ’」、2. 108. 93. ’」、3. 116. ’」、4. 107. ’」、5. ノ」、6. 99. 合計得点74.6373.4769.7765.2866.1466.56 65. SD. 11.3811.3810.9110.549.6149.563. 注)SDは標準偏差を示す. 60. 1年. 2年. 学. 3年. 4年. 5年. 6年. 年. 図4−1−1創造的態度合計得点の変化. (2)創造的態度の中学校への推移. 小学校では創造的態度について中学年での急な減少が見られたため,中学校において もなお減少が続くか調べた。中学生のデータは,豊島・庭瀬5)のものを使用した。中学 生用創造的態度尺度は5段階尺度となっていたため,合計点に.8をかけ,小学生用の得 点へと換算した。小学6年から中学3年までの創造的態度合計の変化を図4・1・2に示す。. 小学6年から中学2年まで態度得点の減少は続くが,中学3年で態度得点の増加が見ら れる。そこでZ検定により母平均の差を検定した結果,小学6年から中学1年にかけて 有意差(t=2.54,p<.05)が見られるが,中学1年から中学2年の問には有意差は見られ なかった。しかし,中学2年から中学3年にかけて有意差(t=4.19,p<.01)が見られ,. 中学2年から中学3年にかけての態度が上昇する傾向がある。ここで,中学1年と中学 3年とを比較すると有意差(t=2.01,p<.05)があり,結果的には中学校では創造的態度 が上昇していると考えられる。. このように小学校から中学校にかけて創造的態度は一定の水準を辿るのではなく,緩 やかな谷の形に変化している傾向があると言える。. 18.

(26) 表4−1−2 中学生の創造的態度合計得点の変化. 80. 中1年 中2年 中3年. 塩75. 件数 204 132 103. 藩・・. 合計得点 63.05 61.27 65.61. 麺65. SD. 14.07. 7.48. 8.16. 轟60 小6年. 中1年 学 年. 中2年. 注)SDは標準偏差を示す. 中3年. 図4−1−2創造的態度得点の中学校への推移. (3)創造的態度特性の変化. 恩田の示した8項目の創造的態度特性に関する創造性態度得点の学年での変化を 図4・1−3に示す。先に示したように,創造的態度特性別に見ても学年が進むにつれて. 態度得点が減少していく傾向が現れている。また,全学年をとおして「独自性」の 得点の平均値が低いことが分かる。そこで,独自性と他の態度特性との平均値の差 について検定したところ,ほぼ全ての特性と比較して有意に低かった。このことか ら,創造的態度の中でも独自性は他の特性に比べて低い傾向があることが明らかと なった。. 11. 埋10 評. 探9 農8 竃7 樋6. ㌶. 置. LL. →一1年 一難2年. ’デ聖..幽. 〆撚数、. 「翻. 、.・一3年 L㍗㍉」丘. 褐. 畷一4年. ’餓%. @蛎㌦7. @. 「壌一___. +5年 +6年. 5 自己. 自発. 衝動. 持続. 探求. 独自. 柔軟. 精神. 創造的態度特性. 図4−1−3創造的態度の特性別変化. 19.

(27) 4.1.2創造的態度構造の変容 (1)因子分析による創造的態度因子の抽出. 本研究では多様な種類の態度に現れる成分を分析し,その傾向をつかむために因子分 析を行った。因子分析の手法には主因子法を用い,バリマックス回転を行った。因子の. 抽出は固有値,因子負荷量に配慮しながら,因子数が3個の設定時に最適になったこと から全ての設定を3に固定して行った。因子の採用に関しては固有値が1以上であるこ とを条件とし,項目の採用に関しては因子負荷量が.40以上を基本とした。また,因子毎 にα係数を算出し,分析の妥当性を確かめた。 分析には,多変量分析ソフト「StatPartner」を使用した。. 20.

参照

関連したドキュメント

工学部の川西琢也助教授が「米 国におけるファカルティディベ ロップメントと遠隔地 学習の実 態」について,また医学系研究科

⑹外国の⼤学その他の外国の学校(その教育研究活動等の総合的な状況について、当該外国の政府又は関

・学校教育法においては、上記の規定を踏まえ、義務教育の目標(第 21 条) 、小学 校の目的(第 29 条)及び目標(第 30 条)

経済学研究科は、経済学の高等教育機関として研究者を