一痴4年
+5年 +6年
動物 草 木 土 石 火 水他 ゼロ 社工 体験の種類
図4−2−5体験の種類別にみた感動体験率の変化
4.2.2創造的態度と体験の相関
創造的態度を象徴する各因子と体験との関係を明らかにするために,各学年の態度得点 合計及び因子と体験の相関について調べた結果を表4・2・2に示す。全般的には1年から5年
までは態度と体験の有意な相関が見られるが,6年では有意な相関は見られない。また,
感動体験数や全体時数については有意な相関が見られるが,単純体験数とはほとんど相関 は見られない。なお,単純体験数との負の相関が一部において見られるが,これは感動体 験数の数が多いため,必然的に単純体験数が少なかったためであると考えられる。
因子名別に見ると,努力・持続性は6年を除くどの学年でも感動体験数,全体験数の両 方と有意な正の相関が見られた。自主・独自性も2年,5年で感動体験数,全体験数の両 方と有意な正の相関が見られた。一方,没頭性は1年,3年で全体験数と有意な正の相関 が見られたが,4年,6年では有意さは見られなかった。また態度得点合計と体験の関係 については,1年から5年までの学年で感動体験数,全体回数の両方と有意な正の相関が
見られた。
表4−2・2 創造的態度と体験の相関(単相関)
第1因子 第2因子 第3因子 態度得点合計
感動 単純 全 感動 単純 全 感動 単純 全
感動単純 全
1年
努力・持続性 D27* 一.24* .13
没頭性
D18 一.02 .23*
自主・独自性 D30** 一.15 .26*
態度計.
D38**一.27*.25*
2年
努力・持続性 D28** 一.09 .34**
自主・独自性 D27** 一.01.42**
態度計
D33**一.08.43**
3年
自主・独自性 D20 」1 .42**
適応性
D19 .03 .31**
努力・持続性 D33** ,00 .46**
態度計
D31** .05 .50**
4年
努力・持続性 D24** 一」4 .22*
没頭性 u01 .07, 09
態度計
D22* 一.09 .25**
5年
努力・持続性
D32** 一.23* .24*
自主・独自性 D41** 一.13 .54**
没頭性 D25** 「21* .16
態度計
D45**一.23*.47**
6年
努力・持続性 D14 一,11 .05
没頭性 D05 一.10 「04
自主・独自性
D06 一.1Q rO4
態度計
D11 一.15 一。04 注1)「感動」は感動体験数,「単純」は単純体験数,「全」は全体小数を示す;注2)**はp<,01,*はp<.05を示す
4.2.3創造的態度と体験との関連に関する考察
児童は年齢と共に関わる対象の範囲を広めていく。それに従って体験の数も増加してい くはずであるが,調査の結果からは体験の数は年齢に対して単純な増加傾向は見られず,
一部増減を繰り返している。全体験数について言えば,2年と3年の差の約5ポイントが 最大であり,全学年を通してもそれほど大きな変化は現れていない。一方の感動体験数は,
2年から3年にかけて約11ポイントも減少している。同じく感動体験率も3年を境に急 激な減少を見せ,児童の体験への関わり方が変化していることが分かる。
体験調査に関して感動体験数の変化でみられるように明らかな減少を示す場合がある ことから,児童の回答した体験数の学年差は,児童の体験に対する記憶の保持量,あるい はどれだけ肯定的に体験を受け入れているかといった意識の違いであると考えられる。
創造的態度も4.1で明らかになったように3年で急な減少を示していることから,児童の 体験や態度に対する意識は3年を境に大きな変化をしていると考えられる。創造的態度が
3年で急に滅少した理由として,創造的態度に関して4.1では,弓野らの「他者を意識する ことで自己と他者の比較,位置づけによる,一種の自己への不安感」を取り上げたが,体 験面においても同じような理由から,自分の行動に対する肯定感を抑圧する作用が働いて いる可能性が示唆される。つまり,他者との関わり方や自己の位置づけが,児童の体験に 対する意識や態度を左右していると考えられる。
一方,表4・2・2で示されたように6年を除く全ての学年で体験(全体験数,感動体験数)
と態度合計との間に正の相関があり,努力・持続性や自主・独自性といった因子の間にも 正の相関がある。このことは,豊富な体験は創造的態度全体,または創造的態度の特定の 因子と有意な正の関係があることを示している。また,「豊富な体験」については体験した こと自体の数や,「夢中になったり,熱心に行ったり」といった,体験への意識や態度の意 味が含まれている。これらは児童の体験に対する肯定感が根底にあり,その肯定感は内的
な成長によってより洗練されたものとなるため,創造的態度及や体験とも強い関係がある と推測される。
なお,4年,6年で体験と没頭性との有意な関係が見られなかった。体験の中でも感動 体験が得られる場合は,体験に没頭していると考えがちであるが,今回の結果は,没頭す
ることが必ずしも感動体験には結びつかないという興味ある結果を示している。有意な関 係が見られなかった理由として,没頭性の他の態度との関係の低さが考えられる。4年生 では他の態度との有意な相関はなく,6年生では有意な相関はあるが他の因子との関係に 比べると弱いため,没頭性は態度の中でも他とは異なる性質を持つ因子であると言える。
一方,6年で態度と体験の有意な相関が見られなかった理由として4.3で述べるよう に「学力」が,6年で最も体験や態度と有意な関係が現れてくるため,「学力」を中心とし た知的体系ができてくることが推測される。また,小学生から中学生への端境期であり特 殊な意識をもった学年とも考えられ,6年生での結果の他の学年との違いに関して今後の 更なる調査が必要であろう。
4.3 「学力」に対する創造的態度,体験,創造的思考力の関わり 4,3.1重回帰分析について
これまで創造的思考力と「学力」,創造的態度,体験との関係については,いくらかの研 究が報告されている。しかし,その一方で教師,保護者にとって最も評価しやすいとされ る「学力」に対して創造的態度,体験などの創造性に関係する要素がどのような重要度で 関わっているのかが分析された報告はない。そこでこの点について明らかにする必要があ るが,一般的に用いられている相関係数(単相関)では,一つの変数に対してどの変数が 最も関わっているかというように,相関を比較するのには向かない。このために,「学力」
を目的変数創造的態度,体験,創造的思考力を説明変数として重回帰分析を行った。
重回帰分析は複数の変量から構成される資料において,特定の変量を残りの変量の一次 式で予測する分析法である。よって,通常は説明変数に原因となる変数を,目的変数に結 果となる変数をあてはめる。しかし,今回取り上げた変数はそれらの因果関係を把握する のが困難であるため,因果関係を前提とした重回帰分析の解釈は使えない。しかし,変数 同士がどういつだ重要度で関わっているかという解釈は可能であり,そういった解釈目的 に使用することに限定すると,重回帰分析を分析手段として使用することは適切であると
考える。
重回帰分析の変数選択は,最初に全変法を行ったが,符号の逆転が起こりやすかったた めに増減法を用いて行った。区間推定と信頼度は95%を使用した。また,説明変数として 創造的態度は各学年で得られた因子を,体験は感動体験数,単純体験数,全体験数を,創 造的思考力は,思考特性として「思考の速さ」「思考の広さ」「思考の独自さ」「思考の深さ」
を,創造的活動領域として2年では「着眼力」「発想力」「構成力」,4年,6年では「応用 力」「生産力」「空想力」をそれぞれ取り上げた。
なお,重回帰分析はS・A創造性検査を行った2年,4年,6年のみで行った。分析に使
用したソフトは,「エクセル多変量解析VeL 4」である。
4.3.2 重回帰分析の結果
重回帰分析の結果を表4−3−1に示す。4年,6年に関しては自由度修正済み重相関係数 が有意であったため,この2学年については分析の精度がよかったものと判断する。
2年の教科平均はいずれも有意さはなかったが,「思考の独自さ」,「思考の速さ」,感動 体験数について若干の関係が見られたが,いずれも負の関係であった。国語については「思 考の深さ」が正の,「思考の速さ」が負の,それぞれ有意な関係を示した。算数については 感動体験数が有意に負の関係を示した。以上のことから,2年では「学力」に対して負の 関係を示すものが多いことが分かる。
4年の教科平均は,「思考の深さj,努力・持続性の順に有意な正の関係を示したが,全 体験数は有意な負の関係を示した。国語は「思考の広さ」,努力・持続性の順に有意な正の 関係を示したが,教科平均と同じく全体験数は有意な負の関係を示した。社会は努力・持 続性が有意な正の関係を示した。また,「思考の生産力」,「思考の広さ」は正の関係を示し たものの有意さは見られなかった。算数は「思考の深さ」,努力・持続性の順に有意な正の 関係を示した。理科は努力・持続性,「思考の深さ」の順に有意な正の関係を示したが,全 体験数は有意な負の関係を示した。
6年の教科平均は,「思考の深さ」,自主・独自性,感動体験数の順に有意な正の関係を 示した。国語は「思考の深さ」,感動体験数の順に有意な正の関係を示した。社会は教科平 均と同様に,「思考の深さ」,自主・独自性,感動体験数の順に有意な正の関係を示した。
また,全体験数とは有意な負の関係を示した。算数は自主・独自性,「思考の深さ」と有意 な正の関係を示した。理科は「思考の深さ」,自主・独自性,感動体験数の順に有意な正の 関係を示した。この算数と理科については負の関係は見られなかった。