これまで,学校教育において測定が困難とされてきた創造的態度についての知見を得る ため,恩田7),豊島・庭瀬5)をもとに学生用創造的態度調査票を作成し,鹿児島県の小学生 の創造的態度を調査した。その回答データに対して,因子分析の手法で創造的態度の因子 構造を分析した。その結果を踏まえ,創造的態度と体験の関係,学力に対する創造性の諸 要素の関わり方について分析した。また,態度,体験,思考力の都市部と島部の比較も行 った。その結果,以下の知見を得た。
(1)創造的態度は,主に努力・持続性,自主・独自性,没頭性から構成されており,特 に努力・持続性は学年に関わらず最も大きな因子として存在する。また,創造的態度 因子の構造は児童の発達段階に応じて分化していくが,中学年で急激な態度の減少が 見られることから,創造的態度は他者との関わりにより変化していくものであること が示された。
(2)6年を除く全ての学年で,創造的態度と体験(感動体験,全体験)には正の相関が あった。このことから,豊富な体験が豊かな態度を養うということが示唆された。
(3)高い態度や豊富な体験,柔軟な思考力などが「学力」とどのような関係にあるのか を分析した結果,それらの諸要素が中学年以降「学力」と明確に関わってくることが 明らかになった。このことは一般的に言われている創造性は,学習内容の習得にも有 効なものであることを示唆している。また,地域で「学力」に対する創造性の関わり 方が異なることもあることから,「学力」にどのような要素が関わっているかは,地域 の実態をきちんと把握する必要があると言える。
(4)創造的態度,体験,創造的思考力について鹿児島県の都市部と島部を比較した結果,
ほとんどの項目に関して地域の違いは認められなかった。つまり,創造的態度に対す る認識や体験の捉え方,及び全体験数,創造的思考特性について,環境や生活実態の 違いは認められない。このことは30年前に行われた創造的思考力の比較結果4)と異な ることから,年月を経て鹿児島県の都市部と島部の創造的思考力の違いが殆ど無くな ってきたことを示唆している。
(5)全学年において恩田の分類の独自性に関する態度得点は最も低く,集団の中で児童 は,自分の個性を見出せ難いという状況であることが伺える。またこのことは,大人 を含めた周囲の人的環境が,未だ子どもの独自性を正当に評価するものではないこと を示唆しているものと考えられる。
(6)創造的態度は,SrA創造性検査の得点と有意な正の相関があった。よって,創造的態 度調査票は創造的思考力と関連のある調査票であり,少なからず創造性を基礎づける 態度を測定できるものと位置づけられる。
以上の知見から,次の結論を得た。
児童の創造性について実態を把握する際,創造的態度調査票の使用は有用な手段である。
小学校の段階では努力や粘り強さといった態度が周囲に適応するための有効な態度である が,いつまでもそれに囚われてはならず,高学年あたりから次第に独自性を打ち出す必要 がある。このことは,学習との関係についても明らかである。また,「感動体験」は学習と 無関係ではなく,学年が進むにつれて正の相関が現れる。よって,創造性を高める上でも,
知識・理解を定着させる上でも,体験を肯定的に捉えることは必要である。また,創造性 の諸要素については地域の違いは殆ど無いが,創造性の学習への関わり方が異なることか
ら,何らかの異なる要因が地域毎にあったものと考えられる。
なお,創造性は周囲の評価によってその育成が大きく左右される。今回行った創造的態 度調査票は全学年で使用できることが確かめられたため,今後は様々な地域・校種間にお いてデータを蓄積することを通し,分析の精度を上げると共に,結果を教師・保護者・児 童にフィードバックし,児童の創造性や「学力」を高める教材の開発,指導法の工夫,指 導計画の立案,家庭教育等に役立たせるようにできたらと考える。
本稿の一部は,庭瀬敬右助教授のご指導の下,日本創造学会第23回全国大会(2001)にて 発表したものである。
引用文献
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謝 辞
本研究は,2000年4月から2年間にわたって,兵庫教育大学大学院自然系理科講座物理 教室の庭瀬研究室で行ったものである。
本研究を進めるにあたり,庭瀬敬右先生には研究の方針,研究方法の立案から,論文の まとめに至るまで,終始適切なご指導,ご助言をいただきましたことに対し,心より感謝 し,お礼申し上げます。
また,物理教室の佐藤光先生,本間均先生,石原諭先生には,数多くの率直で有益なご 助言,ご指導をいただきましたことに対し,深く感謝し,お礼申し上げます。
さらに,本学の松本伸示先生,黒岩督先生には統計的な処理の仕方から結果の解釈の仕 方まで,数多くのご指導をいただきました。荒木先生には創造性研究に関わる多くの文献 を紹介していただきました。また,東洋大学名誉教授の恩田彰先生,同大学教授の比嘉佑 典先生,静岡大学教授の弓野憲一先生には,創造性研究の専門的立場からご指導,ご支援 をいただきましたことに対し,深く感謝いたします。
物理教室の院生の方々には,研究の助言や暖かい励ましの言葉をはじめとして,公私共 にいろいろな面でお世話になりました。深く感謝いたします。
また,本研究における調査を快く引き受けて下さった鹿児島市立東谷山小学校,及び大 島郡伊仙町立伊仙小学校の教職員及び児童のみなさんに心より感謝いたします。
最後になりましたが,今回の研究の機会を与えていただきました鹿児島県教育委員会,
鹿児島市教育委員会,そして,鹿児島市立東谷山小学校前校長の鮫島晃先生,現校長の中 橋籐七先生をはじめとした教職員の皆様に,厚くお礼申し上げます。
本学で学んだことを,さらに発展させっっ今後の教育実践に生かし,研鎖に励み精進し ていくことで,皆様のご厚情に報いる所存であります。本研究が,多くの皆様のご支援の もとに完遂いたしましたことを,重ねて厚くお礼申し上げます。