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〈論説〉民法演習(3)

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Academic year: 2021

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(1)法科大学院論集. 民. 法. 演. 第9号. 習(3). 河. 宏. 内. は じめ に. 本 稿 で は,前 回 に 引 き続 き,民 法 に 関 す る演 習 問題 を4問 出題 し,そ れ に対 す る解 答 例 を示 す こ とに す る。 解 答 例 は あ くま で参 考 例 に過 ぎ な い こ とに留 意 して読 ん で い た だ け れ ば幸 い で す。 な お,本 稿 で百 選1,IIと ス トの民 法 判 例 百 選1,II(第6版)を トの家 族 法 判 例 百 選(第7版)を. は,別 冊 ジ ュ リ. 意 味 し,家 族 百 選 とは,別 冊 ジ ュ リス 意 味 し,重 判 と は,ジ ュ リス ト臨 時増 刊 の重. 要 判 例 解 説 を意 味 しま す。. 第1問. ①A会. 使用者責任. 社 か らY1会. 社 は,工 場 の建 設 を請 負 い,Y1か. 工 場 の塗 装 工 事 を請 け 負 った。BはY2に. らY2会. 雇 用 され,平 成15年4月1日,塗. 作 業 中 に地 上30メ ー トル の工 事 足 場 か ら転 落 し即 死 した。Y2の が安 全 管 理 を怠 って い た こ と,Y1の. 従 業 員Dが 現 場 でY2の. 督 して い た とい う事 実 が判 明 して い る。Bの 両 親XIX2と YlY2に. 社 がその. 現 場 責 任 者C 従 業 員 を指 揮 監. 兄 弟X3∼X7が. 対 して損 害 賠 償 を求 あ る訴 え を提 起 した が認 あ られ るか。Xら. 平 成19年5月1日. に訴 え を提 起 した場 合 と(2)平成16年5月1日. た場 合 とで 区別 して述 べ な さい。 1. 装. が(1). に訴 え を提 起 し.

(2) 民 法 演 習(3). Xら の請 求 が認 あ られ る と して,Yら な るか。Xら ②. は,慰 謝 料 も請 求 して い るが認 あ られ るか。. 食 品 販 売 会 社Yの. AはY名. の損 害 賠 償 債 務 は い つ か ら履 行 遅 滞 と. 従 業 員Aは 商 品 の 仕 入 れ と販 売 の 権 限 を有 して い た 。. 義 でX会 社 か ら食 品 を購 入 した が,仕 入 れ た食 品 は他 に転 売 して そ の. 差 益 を私 す る 目的 で あ った。X会 社 で取 引 に 関与 して い たXの 支 配 人BもAの 目的 を知 って い た。XはYに. 対 して食 品 の代 金 支 払 い を請 求 した が認 め られ る. か。 代 金 請 求 が認 あ られ な い場 合 に備 え て,XはYに. 対 して代 金 相 当額 の損 害 賠. 償 を求 あ て い るが認 あ られ るか。 ③Y会. 社 の従 業 員Aは 代 表 者Bが 発 行 す る こ とを決 あ た手 形 に満 期 を記 入. して相 手 方 に交 付 す る権 限 を有 して い た。Aは 友 人 のCか の机 の上 の 印箱 か ら会 社 及 び代 表 者 の 印鑑 を取 り出 し,Cか の手 形 用 紙 に勝 手 に押 印 して,Y名. ら頼 ま れ,代 表 者B ら交 付 され た市 販. 義 の約 束 手 形 をCに 交 付 した。Cは. 形 に裏 書 き して手 形 をXに 譲 渡 した。XはYに. この手. 対 して手 形 金 を請 求 す るが認 め. られ るか。 手 形 金 の請 求 が認 あ られ な い場 合 に備 え て,XはYに. 対 して手 形 金 相 当額 の. 損 害 賠 償 を求 あ て い るが認 あ られ るか。. 「解 答 例 」 ① は,最 判55・12・18の 事 案 に基 づ く もの で あ る。Xら. は,不 法 行 為 に基 づ. く損 害 賠 償 請 求 と安 全 配 慮 義 務 違 反 に基 づ く損 害 賠 償 請 求 の 訴 え を 提 起 した が,1審 で は,Xら. の 請 求 が,安 全 配 慮 義 務 違 反 と不 法 行 為 双 方 で 棄 却 され た 。. Xら は控 訴 審 で は,安 全 配 慮 義 務 違 反 の み を主 張 した。 そ の理 由 は は っき り し な い が,不 法 行 為 に基 づ く損 害 賠 償 請 求 権 が消 滅 時効 に か か って い た た め で は な い か と思 わ れ る。 そ こで,本 間 で は,ま ず,不 法 行 為 に基 づ く損 害 賠 償 請 求 権 が消 滅 時効 に か か って い る事 例(1)と,か か って い な い事 例(2)とを比 較 す る こ 2.

(3) 法科大学院論集. とで,Yら. の損 害 賠 償 債 務 が い つ か ら履 行 遅 滞 に な るか,Xら. 第9号. の慰 謝 料 請 求 が. 認 あ られ るか を検 討 して み る こ とに した。 (1)では,不 法 行 為 に基 づ く損 害 賠 償 請 求 権 が 消 滅 時効 にか か っ て い るの で, 安 全 配 慮 義 務 違 反 に基 づ く損 害 賠 償 請 求 の み が 問題 とな る。Y1,Y2がBに 対 して安 全 配 慮 義 務 を 負 うか で あ るが,Y2とBと あ るの で,Y2がBに. の 間 に は直 接 の雇 用 関係 が. 対 して安 全 配 慮 義 務 を 負 う こ とは 問題 な い。Y1とBと. の 間 に は直 接 の雇 用 関係 は な か った が,Y1の. 従 業 員Dが 現 場 でY2の. を指 揮 監 督 す る関係 に あ った の で,Y1もBに. 対 してY2と. 従業員. 同様 の安 全 配 慮 義. 務 を 負 う。 最 判55・12・18の 原 審 は次 の よ う に い う。 「使 用 者 の前 記 安 全 保 証 義 務 は独 り雇 傭 契 約 に の み存 す る もの で は な く,仮 令 そ れ が部 分 的 に せ よ事 実 上 雇 傭 契 約 に類 似 す る使 用 従 属 の 関係 が存 す る場 合,即. ち労 働 者 が,法 形 式 と. して は請 負人(下 請 負 人)と 雇 傭 契 約 を締 結 した にす ぎず,注 文 者(元 請 負 人) とは直 接 の雇 傭 契 約 を締 結 した もの で は な い と して も,注 文 者,請. 負人 間 の請. 負契 約 を媒 介 と して事 実 上,注 文 者 か ら,作 業 に つ き,場 所,設 備,器 具 類 の 提 供 を受 け,且 つ注 文 者 か ら直 接 指 揮 監 督 を受 け,請 負人 が組 織 的,外 形 的 に 注 文 者 の一 部 門 の如 き密 接 な 関係 を有 し,請 負人 の工 事 実 施 に つ い て は両 者 が 共 同 して そ の安 全 管 理 に 当 り,請 負人 の労 働 者 の安 全 確 保 の た あ に は,注 文 者 の協 力 並 び に指 揮 監 督 が不 可 欠 と考 え られ,実 質 上 請 負人 の被 用 者 た る労 働 者 と注 文 者 との 間 に,使 用 者,被 使 用 者 の 関係 と同視 しで き るよ うな経 済 的,社 会 的 関係 が認 あ られ る場 合 に は注 文 者 は請 負人 の被 用 者 た る労 働 者 に対 して も 請 負人 の雇 傭 契 約 上 の安 全 保 証 義 務 と同一 内容 の義 務 を 負担 す る もの と考 え る の が相 当 で あ る。」 Yら にBの 転 落 防止 の た め の 安 全 配 慮 義 務 違 反 が あ っ た とい う こ と に な れ ば,Bが. 即 死 した場 合 も,安 全 配 慮 義 務 違 反 に よ る損 害 賠 償 請 求 権 をBが 取 得. し,そ れ をBの 相 続 人 が相 続 に よ って取 得 す る,と い うの が,判 例 の立 場 で あ る。Bの. 逸 失 利 益 に つ い て は,大 判 大15・2・16(百 3. 選II(5版)【95】),B.

(4) 民 法 演 習(3). の 慰 謝 料 請 求 権 に つ い て は,最 大 判 昭42・11・1(百 間 で は,Bの. 相 続 人 は,Bの. ら,XlX2がBの. 両 親 で あ るXlX2で. 選H【96】)を. 参照。本. あ る(889条1項1号)か. 逸 失 利 益 と慰 謝 料 請 求 権 を そ れ ぞ れ二 分 の一 ず つ相 続 す る. こ とに な る。 安 全 配 慮 義 務 違 反 に よ る損 害 賠 償 の場 合 も,Bは 取 得 で き る。 つ ま り,BとYら 係 が 存 在 す る か ら,BはYら. 慰謝料請求権 を. との 間 に は雇 傭 契 約 な い し これ に準 ず る法 律 関 に対 して415条 の債 務 不 履 行 に よ る損 害 賠 償 と し. て精 神 的損 害 の賠 償 請 求(慰 謝 料 請 求)が 可 能 で あ る。Bが 取 得 した慰 謝 料 請 求 権 は,Bの. 死 亡 に よ っ てBの 相 続 人XlX2に. よ っ て 相 続 され る こ と に な. る。 Yら のXら. に対 す る損 害 賠 償 債 務 が い つ か ら履 行 遅 滞 にな る か に 関 して は,. 「債 務 不 履 行 に基 づ く損 害 賠 償 債 務 は期 限 の 定 あ の な い債 務 で あ り,民 法 四一 二 条 三 項 に よ りそ の債 務 者 は債 権 者 か らの履 行 の請 求 を受 け た 時 に は じめ て遅 滞 に 陥 る もの とい うべ き で あ る」 と され た。 本 間 の場 合,Xら 月1日. に裁 判 所 に訴 え を提 起 して い るの で,そ の後 裁 判 所 か ら訴 状 がYら に送. 達 され た 日が,少 な く と も,Yら うが,Xら で,Yら. は,平 成19年5. は履 行 の請 求 を受 け た とき,と い え るで あ ろ. が訴 え を提 起 す る前 に,Yら. に履 行 を請 求 して い る可 能 性 が あ るの. が 請 求 を受 け た と きか ら と述 べ て お け ば十 分 で あ る(厳 密 に言 え ば,. Y等 が請 求 を受 け た 日の翌 日か ら履 行 遅 滞 とな る(大 判 大10・5・27)。)。 Xら の慰 謝 料 請 求 に つ い て は,最 判55・12・18の 原 審 で は,兄 弟 で あ るX3 ∼X7の. 請 求 は,711条 に は 兄 弟 姉 妹 は 規 定 され て い な い の で,死 亡 者 との 間 に. 両 親 ・配 偶 者 ・子 に匹 敵 す る特 別 な 関 係 が 存 す る こ とが 要 す る と解 す べ きだ が, そ の よ う な事 情 は 認 め られ な い と して 棄 却 さ れ た が,両 親 の請 求 は711条 に よ り認 あ られ た。 これ に対 して,最 判55・12・18は 次 の よ う に い う。 「XlX2は. 子 で あ るB. を失 つ た こ とに よ る精 神 的苦 痛 に対 す る慰 籍 料 と して そ れ ぞ れ一 二 五 万 円 の支 払 を求 あ,原 審 はXら 各 自に つ き五 〇 万 円 の 限度 で これ を認 容 して い るが,B 4.

(5) 法科大学院論集. 第9号. とYら との 間 の雇 傭 契 約 な い し これ に準 ず る法 律 関係 の 当事 者 で な いXら が雇 傭 契 約 な い し これ に準 ず る法 律 関係 上 の債 務 不 履 行 に よ り固有 の慰 籍 料 請 求 権 を取 得 す る もの とは解 しが た い か ら,Xら. は慰 籍 料 請 求 権 を取 得 しな か つ た も. の とい うべ き で あ る」 と。 つ ま り,安 全 配 慮 義 務 違 反 に よ る損 害 賠 償 請 求 の場 合 に は,債 務 不 履 行 の損 害 賠 償 と して法 律 関係 の 当事 者 で な い近 親 者 が慰 謝 料 請 求 権 を取 得 す る こ とは な い とい うの が最 高 裁 の立 場 で あ る(た だ し,す で に 述 べ た よ うに,法 律 関係 の 当事 者 で あ るBは,慰 取 得 した慰 謝 料 請 求 権 はXlX2が 18の 事 案 で は,XlX2は,Bの 死 亡 に よ る慰 謝 料 は請 求 せ ず,Xら. 謝 料 請 求 権 を取 得 で き,Bが. 相 続 に よ って取 得 で き る。 最 判 昭55・12・ 死 亡 に よ る逸 失 利 益 を請 求 した だ け で,Bの 固有 の慰 謝 料 の み を請 求 して い た。)。これ. に対 して,不 法 行 為 に基 づ く損 害 賠 償 の場 合 に は,後 に み るよ うに,Bが した慰 謝 料 請 求 権(710条)をXlX2は XlX2は711条. 取得. 相 続 に よ って 取 得 で き るだ けで な く,. に基 づ き近 親 者 固 有 の 慰 謝 料 も請 求 で き る。 つ ま り,最 高 裁. は,債 務 不 履 行 に よ る損 害 賠 償 の場 合 は,原 審 が行 った よ うな,不 法 行 為 の場 合 の損 害 賠 償 の規 定 で あ る711条 の(類 推)適 用 を 否 定 して い るの で あ る。 以 上 に対 して,本 件 で,(2)の 場 合 の よ うに,不 法 行 為 に基 づ く損 害 賠 償 請 求 権 が消 滅 時効 に か か って い な い とき に は,Xら 反 の責 任 を追 及 す る こ と もで き るが,む. はYら に対 して安 全 配 慮 義 務 違. しろ不 法 行 為 責 任 の方 を追 及 す べ き で. あ る。 とい うの は,以 下 に述 べ るよ うに,安 全 配 慮 義 務 違 反 の損 害 賠 償 請 求 よ り も不 法 行 為 に基 づ く損 害 賠 償 請 求 の方 がXら に と って有 利 だ か らで あ る。 な お,不 法 行 為 責 任 を追 及 す る場 合 に は,被 害 者 が加 害 者 の過 失 を主 張 ・立 証 し な け れ ば な らな い が,安 全 配 慮 義 務 違 反 の場 合 も被 害 者 が加 害 者 の義 務 違 反 を 主 張 ・立 証 しな け れ ば な らず(最 判 昭56・2・16),そ. の 内容 は過 失 の 主 張 ・. 立 証 と実 質 的 に は 同 じで あ る と解 され て い る。 つ ま り,こ の点 で も安 全 配 慮 義 務 違 反 の責 任 の方 がXら に と って有 利 とい うわ け で は な い。 従 って,Xら 法 行 為 責 任 の追 及 を選 択 す べ き で あ る。 5. は不.

(6) 民 法 演 習(3). Y2会. 社 の現 場 責 任 者Cが 安 全 管 理 を怠 った た あ に,Bが. し死 亡 した の で あ るか ら,Y2がBに と に は問 題 が な い(715条 被 用 者,Bが. 工 事 足 場 か ら転 落. 対 して715条 の 使 用 者 責 任 を 負 い うる こ. の適 用 に関 して は,Y2が. 使 用 者,現 場 責 任 者Cが. 第 三 者 とい うこ とに な る。 つ ま り,被 用 者 も第 三 者 とな りう る。)。. 問題 は,Y1が. 使 用 者 責 任 を 負 い う るか で あ るが,Y1の. の従 業 員 を指 揮 監 督 して い た とき は,Y1はY2会. 社 の従 業 員C,Bの. と され,現 場 責 任 者Cが 安 全 管 理 を怠 った た あ に,Bが 亡 した 場 合,Y1会. 社 使用者. 工 事 足 場 か ら転 落 し死. 社 はCの 使 用 者 と してBに 対 して715条 の使 用 者 責 任 を負. い う る。 つ ま り,Y1会 くて も,Y1会. 従 業 員DがY2会. 社 とY2の. 現 場 責 任 者Cと. 社 がCを 指 揮 監 督 して い れ ば,Y1会. 責 任 者Cが 被 用 者,Bが. の 間 に直 接 の雇 用 関係 が な 社 が使 用 者,Y2の. 現場. 第 三 者 とい う こ とに な る(た とえ ば,最 判 昭45・2・. 12は,元 請 負人 が下 請 負人 の被 用 者 を指 揮 監 督 して い た場 合,下 請 負人 の被 用 者 の不 法 行 為 に つ い て元 請 負人 の使 用 者 責 任 を認 あ て い る。)。使 用 者 責 任 が認 あ られ れ ば,Yら. に対 してBが 逸 失 利 益 と慰 謝 料 の損 害 賠 償 請 求 権 を 取 得 し,. そ れ をBの 相 続 人XlX2が. 相 続 に よ って取 得 す る こ とに な る。. 不 法 行 為 の場 合 の損 害 賠 償 債 務 は,債 務 発 生 時 か ら履 行 遅 滞 とな る(最 判 昭 37・9・4)。. 本 間 で は,事 故 発 生 時 で あ る平 成15・4・1か. ら履 行 遅 滞 とな. る。 これ は,被 害 を完 全 に 回 復 させ る とい う政 策 的配 慮 か ら412条3項 と して認 あ られ た(最 判 平12・3・24は,長. の例 外. 時 間残 業 に よ る過 労 自殺 の 問題 を. 扱 って い るが,原 告 は,被 告 の安 全 配 慮 義 務 違 反 に基 づ く損 害 賠 償 請 求 と被 告 の715条 の使 用 者 責 任 に基 づ く損 害 賠 償 とを 併 せ て請 求 した 。 原 審 は,安 全 配 慮 義 務 違 反 に よ る損 害 賠 償 責 任 を認 あ た が,最 高 裁 は,715条 の不 法 行 為 責 任 を 認 あ た。 最 高 裁 は,死 亡 の 時 か ら遅 延 損 害 金 を認 あ るた あ に,従 来 の判 例 との 抵 触 を避 け るた あ に,不 法 行 為 構 成 を採 用 した と推 測 され て い る(平12重 判 民 【7】 の 解 説2参. 照)。)。Xら の慰 謝 料 請 求 権 につ い て は,XlX2は711条. よ り固有 の慰 謝 料 請 求 が認 あ られ る。X3∼X7の 6. に. 慰 謝 料 請 求 は,原 審 が述 べ.

(7) 法科大学院論集. 第9号. て い るよ うに,死 亡 者 との 間 に両 親 ・配 偶 者 ・子 に 匹敵 す る特 別 な 関係 が存 す る こ とが必 要 と思 わ れ るの で,困 難 で は な いか と思 われ る。 学 説 で は,711条 に 記 載 され て い な い近 親 者 で も709条,710条 が 有 力 で あ る が,711条. で慰 謝 料 請 求 が で き る,と す る見 解. の 父 母,配 偶 者,子 以 外 の者 に慰 謝 料 を認 あ る に は,. 通 常 は,こ れ らの者 と実 質 的 に 同視 で き る身 分 関係 が存 在 し,被 害 者 の死 亡 に よ り甚 大 な精 神 的 苦 痛 を 受 け た者 とい う要 件 が必 要 で は な い だ ろ うか(711条 に該 当 しな い被 害 者 の 夫 の妹 に 本 条 を類 推 適 用 した最 判 昭49・12・17参 照 。)。 被 害 者 に父 母,配 偶 者,子. が い な くて,兄 弟 姉 妹 だ け が一 緒 に生 活 して い た よ. うな 場 合 は,上 述 の要 件 が 満 た さ れ る と さ れ る場 合 が 少 な くな い か も知 れ な い。 しか し,被 害 者 に父 母,配 偶 者,子. が い る場 合 に は,仮 に兄 弟 姉 妹 が被 害. 者 と同居 して い て も兄 弟 姉 妹 に慰 謝 料 請 求 が認 あ られ るの は,例 外 で は あ るま い か。. 「補. 足」. Yら の安 全 配 慮 義 務 違 反 に 関 して は,Yら 負 って い るの で,Yら. がBに 対 して直 接 安 全 配 慮 義 務 を. がBに 対 して安 全 配 慮 義 務 を尽 く して い た か が 問題 とな. る。 これ に対 して,使 用 者 責 任 の場 合 は,被 用 者 の不 法 行 為 責 任 をYら が肩 代 わ りす る とい う法 律 構 成 が採 られ るの で,具 体 的 に,被 用 者,た で はY2の. 現 場 責 任 者Cの 過 失 が 問題 とな り,Xら. とえ ば,本 件. は,そ の過 失 を主 張 ・立 証. しな け れ ば な らな い。 しか し,既 に述 べ た よ うに,安 全 配 慮 義 務 違 反 の 場 合 も, Xら がYの 義 務 違 反 を主 張 ・立 証 しな け れ ば な らず(最 判 昭56・2・16),そ の 内 容 は過 失 の主 張 ・立 証 と実 質 的 に は 同 じで あ る と解 され て い る。 た だ し, YlY2の. 安 全 配 慮 義 務 違 反 を主 張立 証 す るた あ に は,YlY2が. 安全配慮義. 務 を尽 く して い た か を直 接 問題 に す れ ば よ く,使 用 者 責 任 の場 合 の よ うに,Y 2の 現 場 責 任 者Cが. 安 全 管 理 を怠 って い たか を 問題 にす る必 要 は な い 。 な お,. 安 全 配 慮 義 務 違 反 の場 合 に は,Yら. がBに 対 して安 全 配 慮 義 務 を尽 く して い た 7.

(8) 民 法 演 習(3). か を直 接 問題 に す る こ とが で き るの で あ れ ば,本 間 の場 合,YlY2の 為 上 の 義 務 違 反 ・過 失 を 問題 に して,709条. に 基 づ きYlY2自. 不法行. 体 の不法行為. 責 任 を 追 及 す る こ と も可 能 で は な い か との疑 問 が 生 じる。 しか し,709条. に基. づ き法 人 の不 法 行 為 責 任 を 追 及 で き るか に関 して は理 論 上 の 争 い が あ るの で, 問 題 文 が 簡 単 で,YlY2の. 個 々 の 従 業 員 の 行 為 を 具 体 的 に記 述 す る こ と な. く,YlY2の. 過 失 を推 定 され る よ うな記 述 が あ る だ け の場 合 に は,709条 に基. づ くYlY2の. 不 法 行 為 責 任 を論 じ るべ き で あ ろ うが,本 間 の よ うに,YlY. 2の 個 々 の従 業 員 の行 為 が具 体 的 に記 述 され て い るよ うな場 合 に は,不 法 行 為 責 任 に 関 して は,YlY2の. 使 用 者 責 任 を論 じ るの が無 難 で あ る。. ② は,最 判 昭42・4・20(百. 選II(3版)【38】)に. よ る。 「代 理 人 が 自 己 ま. た は第 三 者 の利 益 を は か るた あ権 限 内 の行 為 を した とき は,相 手 方 が代 理 人 の 右 意 図 を知 りま た は知 る こ とを うべ か り し場 合 に 限 り,民 法 九 三 条 但 書 の規 定 を類 推 して,本 人 は そ の行 為 につ き責 に任 じな い と解 す る を相 当 とす る。」本 件 で は,Yの. 従 業 員Aの 代 理 行 為 は,自 己 の利 益 を は か るた あ の行 為 で あ り,相. 手 方 で あ るXの 支 配 人(代 理 人)Bが られ る(101条1項)の 人YはAの. そ れ を知 って お り,Bの. 悪 意 はXに 帰 せ. で,相 手 方 で あ るXが 知 って い た こ とに な る か ら,本. 代 理 行 為 に つ き責 任 を 負 わ な い。 した が って,XのYに. 対 す る代 金. 請 求 は認 あ られ な い。 XのYに. 対 す る代 金 相 当額 の 損 害 賠 償 の根 拠 はYの 使 用 者 責 任 だ と思 わ れ. る。 「民 法 七 一 五 条 に い わ ゆ る 「事 業 ノ執 行 二 付 キ」 と は,被 用 者 の 職 務 の執 行 行 為 そ の もの に は属 しな い が,そ の行 為 の外 形 か ら観 察 して,あ た か も被 用 者 の職 務 の範 囲 内 の行 為 に属 す る もの と見 られ る場 合 を も包 含 す る もの と解 す べ き で あ る こ とは,当 裁 判 所 の判 例 とす る と ころ で あ る。 した が つ て,被 用 者 が そ の権 限 を 濫 用 して 自 己 ま た は他 人 の 利 益 を は か つ た よ うな 場 合 に お い て も,そ の被 用 者 の行 為 は業 務 の執 行 に つ き な され た もの と認 あ られ,使 用 者 は これ に よ り第 三 者 の蒙 つ た損 害 に つ き賠 償 の責 を免 れ る こ とを え な い わ け で あ 8.

(9) 法科大学院論集. 第9号. るが,し か し,そ の行 為 の相 手 方 た る第 三 者 が 当該 行 為 が被 用 者 の権 限濫 用 に 出 る もの で あ る こ とを知 つ て い た場 合 に は,使 用 者 は右 の責 任 を 負 わ な い もの と解 しな け れ ば な らな い。 け だ し,い わ ゆ る 「事 業 ノ執 行 二付 き」 とい う意 味 を上 述 の よ うに解 す る趣 旨は,取 引行 為 に 関 す るか ぎ り,行 為 の外 形 に対 す る 第 三 者 の信 頼 を保 護 しよ う とす る と ころ に存 す るの で あ つ て,た. とえ被 用 者 の. 行 為 が,そ の外 形 か ら観 察 して,そ の者 の職 務 の範 囲 内 に属 す る もの と見 られ るか ら とい つ て,そ れ が被 用 者 の権 限濫 用 行 為 で あ る こ とを知 つ て い た第 三 者 に対 して ま で も使 用 者 の責 任 を認 あ る こ とは,右 の趣 旨を逸 脱 す る もの とい う ほ か な い か らで あ る。 した が つ て,こ の よ うな場 合 に は,当 該 被 用 者 の行 為 は 事 業 の 執 行 に つ き な され た行 為 に は 当 た らな い もの と解 す べ き で あ る。」 本 件 の場 合,相 手 方 で あ るXはAの. 権 限濫 用 を知 って い た こ とに な るの で,Aの. 為 は事 業 の執 行 に つ き な され た行 為 に は 当 た らず,XはYの. 行. 使 用 者 責 任 を追 及. す る こ と もで き な い。 な お,最 判 昭42・11・2(百. 選II【84】)で. は,相 手 方 に重 過 失 が あ る場 合. に も,被 用 者 の行 為 は事 業 の執 行 に つ き な され た行 為 に は 当 た らな い,と. され. て い る こ とに注 意 。 ③. 手 形 金 請 求 が 認 め られ る た め に は,本 件 手 形 が有 効 で な け れ ば な らな. い。 ま ず,Y会. 社 の従 業 員Aは 代 表 者Bが 発 行 す る こ とを決 あ た手 形 に満 期 を. 記 入 して 相 手 方 に 交 付 す る権 限 を 有 して い た の で あ るが,こ. れ が110条 の表 見. 代 理 の場 合 の,代 理 権 限 とい え る か が 問 題 と な る。 これ が 肯 定 さ れ た と して も,次 に,Xが110条. の 「第 三 者 」 と い え る か が 問 題 とな る。 判 例 は,「 第 三. 者 」 とは,直 接 の相 手 方,本 件 で い え ば,Cの 得 者 で あ るXは. これ に含 ま れ な い とい う(最 判 昭36・12・12,百. 【28】)。 本 件 で は,Cが. 悪 意 な の で,仮. 110条 の 表 見 代 理 は成 立 せ ず,XのYに XはYに. み を指 し,こ の相 手 方 か らの転 選1(5版). にAの 代 理 権 限 が 肯 定 され た と して も, 対 す る手 形 金 請 求 は認 あ られ な い。. 対 して 手 形 金 相 当額 の 損 害 賠 償 を求 め て い る が,そ の 根 拠 は715条 9.

(10) 民 法 演 習(3). の 使 用 者 責 任 で あ る。 本 件 と類 似 す る,最 判 昭40・11・30(百. 選II(5版). 【80】)に よれ ば,被 用 者 の 行 為 が 「事 業 の 執 行 につ き」 とい え る と き と して, 当該 行 為 が,(1)被 用 者 の分 掌 す る職 務 と相 当 の 関連 性 を有 し,か つ,(2)被 用 者 が使 用 者 の名 で権 限外 に これ を行 う こ とが客 観 的 に容 易 で あ る状 態 に お か れ て い る とみ られ る場 合 が挙 げ られ て い る。 本 件 のAがYの. 名 で手 形 を発 行 で き た. の は,(1)(2)の要 件 が満 た され て い た か らだ と考 え られ るの で,XはYに. 対 して. 手 形 金 相 当額 の損 害 賠 償 を求 あ る こ とが で き る。. 第2問. ①. 過失相殺. 運 転 者BとY病. XがYに. 院 の 医 師Cと の過 失 が相 侯 って,Aが. 対 して 損 害 賠 償 を請 求 した。Aに2,000万. が相 続 した。AとBの XはYに. 死 亡 し,Aの. 円 の 損 害 が生 じ,そ れ をX. 過 失 割 合 は3対7,AとCの. 過 失 割 合 が1対9の. い く ら損 害 賠 償 を請 求 で き るか。 この場 合,BとCのAの. て の寄 与 度 は,1対1と. 遺族. 認 定 され た。Xに 賠 償 したYは,Bに. と き,. 死亡 につい 対 して求 償 す る. こ とが可 能 か,可 能 とす れ ば い く ら請 求 で き るか。 ②. 自動 車 の運 転 者AとB双. で は,Aの. 過 失 割 合 が4,Bの. され た。Cに. 方 の過 失 で歩 行 者Cが 重 傷 を 負 った。 この事 故 過 失 割 合 が1,Cの. 過 失 割 合 が1で あ る と認 定. は1,200万 円 の 損 害 が生 じた場 合,CはABに. く ら請 求 で き るか。Aに. は使 用 者Dが. き るか。Dが 支 払 った場 合,DはBへ. い る場 合,CはDに. 対 して そ れ ぞ れ い 対 して い く ら請 求 で. 求 償 す る こ とが可 能 か,可 能 とす れ ば い. く ら請 求 で き るか。 ③ABは. 内縁 の夫 婦 で あ る。AがCの. 自動 車 に ひ か れ て死 亡 した の で,B. は,扶 養 請 求 権 の侵 害 を理 由 とす る財 産 的損 害 の賠 償 と慰 謝 料 をCに 請 求 して い る。 本 件 自動 車 事 故 で は,Aに. も過 失 が あ った と認 定 され て い る。Cは 損 害. 額 の減 額 を主 張 で き るか。 10.

(11) 法科大学院論集. ④. 自動 車 の運 転 者AとB双. Cが 重 傷 を 負 った。CはAの 転 して い た。ABの. 使 用 者 で あ り,AはCの. 過 失 割 合 は1対1と. 生 じた場 合,CはBに ⑤A保. 方 の過 失 で,運 転 者Aの. 第9号. 自動 車 に 同乗 して い た. 仕 事 の た あ に 自動 車 を運. 認 定 され,Cに. は1,200万 円 の 損 害 が. 対 して損 害 賠 償 を い く ら請 求 で き るか。. 育 園 の3歳 の 園児Bが 保 母Cの. 引率 下 で歩 道 を散 歩 中,Cが. 目を離. した 隙 に車 道 に飛 び 出 し,自 動 車 で運 行 中 のDの 車 に ひ か れ て死 亡 した。Bの 父 母EFがDに. 損 害 賠 償 を 請 求 して い る が,Dは. 損 害 額 の減 額 を主 張 で き る. か。 3歳 の 子Bが 家 事 使 用 人Cと 散 歩 中,Cが. 目 を離 した 隙 に車 道 に飛 び 出 し,. 自動 車 で運 行 中 のDの 車 に ひ か れ て死 亡 した。Bの 父 母EFがDに 請 求 して い るが,Dは. 損害賠償 を. 損 害 額 の減 額 を主 張 で き るか。. 「解 答 例 」 ① は,最. 判 平13・3・13(百. 死 亡 へ の 寄 与 度 を1対1と とC(Y)が1,000万 て は,相. 選II【95】)に し て,A(X)に. 基 づ く。 原 審 は,BとCのAの. 生 じ た2,000万 円 の 損 害 に つ い て,B. 円 ず つ の 分 割 責 任 を 負 う とす る 。 そ し て,過. 対 的 に 処 理 し,AとBの. 700万 円 を,AとCの. 過 失 割 合 は3対7,従. 過 失 割 合 を1対9と. し,従. 900万 円 を 請 求 で き る と した 。 こ れ に 対 して,最 の い ず れ も が,Aの. っ て,A(X)はBに. っ て,X(A)はY(C)に 高 裁 は,交 通 事 故 と 医 療 事 故 と. 死 亡 と い う不 可 分 の 一 個 の 結 果 を 招 来 し,そ. て 相 当 因 果 関 係 が あ る の で,交. 割 合 は3対7,従 9と し,従 合,判. 失 相 殺 に つ い て は,相. っ て,A(X)はBに1,400万. 連 帯 して2,000. 対 的 に 処 理 し,AとBの 円 を,AとCの. っ て,X(A)はY(C)に1,800万. 決 は,求. の結 果 に つ い. 通 事 故 に お け る運 転 行 為 と 医 療 事 故 に お け る 医. 療 行 為 と は719条 の 共 同 不 法 行 為 に 当 た る か ら,BとC(Y)は 万 円 の 責 任 を 負 う と し,過. 失相殺 につい. 過失. 過 失 割 合 を1対. 円 を請 求 で き る と した。 この場. 償 に は ふ れ て い な い が,Y(C)とBは1,400万 11. 円 の 限度 で一 部.

(12) 民 法 演 習(3). 連 帯 す る こ とに な る の で,Y(C)はBに. 対 して 寄 与 度 が1対1な. の で,700. 万 円求 償 で き る と考 え られ る。 ② は,最 判 平15・7・11(平15重. 判 民 【14】)に基 づ く。 判 旨 は次 の よ うに. 言 う。 「複 数 の加 害 者 の 過 失 及 び 被 害 者 の過 失 が競 合 す る一 つ の 交 通 事 故 に お い て,そ の交 通 事 故 の原 因 とな った す べ て の過 失 の割 合(以 下 「絶 対 的過 失 割 合 」 とい う。)を 認 定 す る こ とが で き る と き に は,絶 対 的 過 失 割 合 に基 づ く被 害 者 の過 失 に よ る過 失 相 殺 を した損 害 賠 償 額 に つ い て,加 害 者 らは連 帯 して共 同不 法 行 為 に基 づ く賠 償 責 任 を 負 う もの と解 す べ き で あ る。 これ に反 し,各 加 害 者 と被 害 者 との 関係 ご とに そ の 間 の過 失 の割 合 に応 じて相 対 的 に過 失 相 殺 を す る こ とは,被 害 者 が共 同不 法 行 為 者 の い ず れ か ら も全 額 の損 害 賠 償 を受 け ら れ る とす る こ とに よ って 被 害 者 保 護 を 図 ろ う とす る民 法719条 の 趣 旨 に反 す る こ と に な る。」 と。 つ ま り,複 数 の 加 害 者 に よ る交 通 事 故 の場 合 は,① と は異 な る処 理 をす る。 「絶 対 的 過 失 割 合 に基 づ く被 害 者 の 過 失 に よ る過 失 相 殺 を し た損 害 賠 償 額 に つ い て,加 害 者 らは連 帯 して共 同不 法 行 為 に基 づ く賠 償 責 任 を 負 う」 と は,Cに1,200万 1対1の. 円の 損 害 が 生 じた場 合,A,B,Cの. 過 失 割 合 が4対. と き は,全 て の 絶 対 的過 失 割 合 を足 す と6(4+1+1)に. 被 害 者 のCの 絶 対 的過 失 割 合1で. な るが,. 過 失 相 殺 を す る の で,損 害 額1,200万 円 は5. 対1の 割 合 で過 失 相 殺 され,損 害 賠 償 額 は1,000万 円 とな り,加 害 者ABが 1,000万 円 を 連 帯 して 賠 償 す る こ と に な る。 これ は,加 害 者 側ABの を あ わ せ た もの(つ ま り4+1-5)と. 被 害 者 側Cの 過 失 割 合1と. 1,200万 円 を 過 失 相 殺 す る の と 同 じ こ と で あ り,ABはCに. 対 して過 失 割 合4対1に. 過失割合 で,損 害 額. 対 して 連 帯 して. 1,000万 円 の損 害 賠 償 責 任 を 負 う こ と に な る。 そ して,AがCに1,000万 払 え ば,AはBに. この. 円 を支. 応 じて,200万 円 の求 償 が で き る。 結. 局,本 間 で は,最 終 的 に は,交 通 事 故 に よ り生 じた1,200万 円 の損 害 の う ち,A が800万 円,Bが200万. 円 を そ れ ぞ れ 負 担 し,Cは1,200万. 万 円 を請 求 で き るの で,200万. 円 の 損 害 の う ち1,000. の 損 害 は 自分 で 負 担 す る こ とに な る。 こ れ は, 12.

(13) 法科大学院論集. 第9号. 1,200万 円 の 損 害 を そ れ ぞ れ の 過 失 割 合 に 応 じ て 負 担 さ せ る の と 同 じ 結 果 に な る。Aに. 使 用 者Dが. い る場 合,CはDに. い く ら請 求 で き る か 。AがDの. 執 行 に つ きCに. 損 害 を 加 え た 場 合 は,DはAと. ま り,DはAと. 連 帯 し て1,000万. を 支 払 っ た 場 合,Dは,Bに る べ きBの 18,百. 選II【86】. 円)に. の 解 説3参. 同 一 内 容 の 債 務 を 負 担 す る。 つ. 円 の 損 害 賠 償 義 務 を 負 担 す る 。Dが1,000万. 対 し,AとBと. 負 担 部 分(200万. 事業 の. 円. の過 失 割 合 に した が って定 め られ. つ い て 求 償 権 を 行 使 で き る(最. 判 昭41・11・. 照)。 使 用 者 責 任 は 被 用 者 の 不 法 行 為 に つ い て 被. 用 者 と並 ん で 同 じ責 任 を 負 担 す る代 位 責 任 あ る か ら,AとBと. の共 同不 法 行 為. の 場 合 に は,D-A側. 負担 部 分 に つ い. とB側. が 対 立 す る こ と に な り,DはBの. て 求 償 権 を 行 使 で き る。 な お,本. 間 の 場 合,①. な る の で あ ろ う か 。AC間 請 求 で き,BC間. と 同 様,過. で は,過 失 割 合 が4対1な. で は,過 失 割 合 が1対1な. る。AがCに960万. の で,CはAに960万. の で,CはBに600万. 円 の 賠 償 を す れ ば,AとBは600万. を 負 っ て お り,AB間. の 過 失 割 合 が4対1な. 償 で き る こ と に な る 。 こ の 結 果,最 円,Bが120万. 失 相 殺 に つ い て 相 対 的 処 理 を す れ ば,ど. 円,Cが240万. 担 が240万 と は,被. 円を. 円 を請 求 で き. 円 の 限度 で一 部 連 帯 債 務. の で,AはBに. 終 的 に は,1,200万. 対 して120万. 円 を求. 円 の 損 害 を,Aが840万. 円 負 担 す る こ と に な る。 既 に述 べ た よ う に,1,200. 万 円 の 損 害 を そ れ ぞ れ の 過 失 割 合 に 応 じ て 負 担 さ せ れ ば,Aが800万 200万 円,Cが200万. う. 円 を 負 担 す る こ と に な る は ず な の に,被. 円 と な り重 す ぎ る(こ. れ を,最. 円,Bが. 害 者 で あ るCの. 負. 高 裁 は,「 相 対 的 に 過 失 相 殺 を す る こ. 害 者 が 共 同 不 法 行 為 者 の い ず れ か ら も全 額 の 損 害 賠 償 を 受 け ら れ る と. す る こ と に よ っ て 被 害 者 保 護 を 図 ろ う と す る 民 法719条 な る」 と い っ て い る の で あ る 。)し,加 担 が 重 す ぎ,Bの. の趣 旨 に 反 す る こ とに. 害 者 で あ るAとBと. の 間 で は,Aの. 負 担 が 軽 す ぎ る こ と に な る。 し た が っ て,本. 失 相 殺 に つ い て 相 対 的 処 理 を す る の で は な く,最 失 割 合 で 過 失 相 殺 す る の が 妥 当 と い え る。 13. 負. 間 の 場 合 は,過. 高 裁 が し た よ う に,絶. 対 的過.

(14) 民 法 演 習(3). ③. 内縁 の夫 が交 通 事 故 で死 亡 した場 合 に,内 縁 の妻 は扶 養 請 求 権 の侵 害 及. び精 神 的苦 痛 を理 由 に運 転 者 に損 害 賠 償 を請 求 で き るが,こ の場 合,死 亡 した 夫 の過 失 は,被 害 者 側 の過 失 と して考 慮 され る と解 され て い る。 つ ま り,こ れ らの請 求 権 は,内 縁 の妻 の 固有 の請 求 権 で あ るが,死 亡 した夫 の過 失 が,被 害 者 側 の 過 失 と して 考 慮 さ れ る,と い う こ と で あ る。 ち な み に,ド イ ツ 民 法 は, 配 偶 者 が不 法 行 為 で死 亡 した とき,法 律 上 の配 偶 者 の場 合 も,扶 養 請 求 権 の侵 害 を 理 由 に の み 損 害 賠 償 を認 あ るが(相 続 構 成 で はな く,扶 養 構 成),死 た配 偶 者 に過 失 が あ った場 合,そ. 亡し. の過 失 は損 害 賠 償 に お い て考 慮 され る と規 定. す る(ド846条)。 な お,最 判 昭31・7・20は,711条. の 遺 族 固 有 の 慰 謝 料 請 求 に 関 して,死 者. の過 失 を考 慮 す る可 能 性 を認 め て い る。 「本 訴 は,被 上 告 人 等 の 二 女 陽 子 が上 告 人 の過 失 に よ りそ の運 転 す る 自動 車 に ひ か れ死 亡 した た あ,被 上 告 人 等 が精 神 上 の苦 痛 を蒙 つ た こ とを理 由 と し,民 法 七 一 一 条 の規 定 に基 き慰 籍 料 の支 払 を求 あ る もの で あ る こ とは,記 録 上 明 らか で あ る。 そ して原 判 決 は,陽 子 が車 の往 来 等 に注 意 せ ず漫 然 道 路 を横 断 しよ う と した こ とが本 件 事 故 の一 因 を な し た 旨判 示 して い る こ とは所 論 の とお りで あ るが,不 法 行 為 に よ る死 亡 者 の父 母 が民 法 七 一 一 条 の規 定 に基 き慰 籍 料 を請 求 す る場 合 に お い て,当 該 事 故 の発 生 に つ き死 亡 者 に も過 失 が あ つ た とき は,た. とえ被 害 者 た る父 母 自身 に過 失 が な. くて も,民 法 七 二 二 条 二 項 に い う 「被 害 者 二過 失 ア リタ ル トキ」 に 当 る もの と 解 す べ き余 地 が あ る と して も,死 亡 者 が幼 少 者 そ の他 行 為 の責 任 を弁 識 す るに 足 るべ き知 能 を具 え な い者 で あ る とき は,そ の不 注 意 を直 ち に被 害 者 の過 失 と な し民 法 七 二 二 条 二 項 を適 用 す べ き で は な い と解 す るの が相 当 で あ る。 しか る に原 判 決 の認 定 す る と ころ に よ れ ば,陽 子 は 当 時僅 か に八 年 一 〇 月 の少 女 にす ぎ な か つ た とい うの で あ るか ら,社 会 通 念 上 前 記 程 度 の知 能 を具 え る者 とは認 あ難 い の で,原 判 決 が上 告 人 の支 払 うべ き慰 籍 料 の額 を定 あ るに 当 り,陽 子 の 前 記 不 注 意 に つ き民 法 七 二 二 条 二 項 を適 用 しな か つ た こ とは も とよ り違 法 で な 14.

(15) 法科大学院論集. 第9号. く,ま た そ の理 由 を説 示 しな か つ た こ とは原 判 決 主 文 に影 響 が な い か ら,論 旨 は結 局 理 由 が な い。」 本 判 決 は,最 大 判 昭39・6・24(百. 選II【93】)以 前 の判. 決 で あ り,過 失 相 殺 の た あ に,行 為 の責 任 を弁 識 す るに足 るべ き知 能 を要 求 し て い るの で,死 者 の過 失 が考 慮 され な か った わ け だ が,最 大 判 昭39・6・24以 降 に本 判 決 が な され た とす れ ば,死 者 の過 失 を考 慮 して,両 親 の711条 に基 づ く 慰 謝 料 請 求 額 が減 額 され た事 例 とい え る。 ④. 判 例 に よ れ ば,た. とえ ば,Aの. と対 向車 のCの 過 失 が相 侯 って,Aの 対2,Aの. 被 用 者Bが 仕 事 でAの 車 を運 転 中,自 分 車 が損 傷 を受 け,BCの. 車 の修 理 費 が90万 円 の場 合,AがCに. 過 失 割 合 が,1. 対 して90万 円 の損 害 賠 償 を請. 求 す る と,被 用 者Bの 過 失 が使 用 者Aの 過 失 と評 価 され,Cは. 過失相殺 によ り. Aに 対 して60万 円 を賠 償 す れ ば よ い と され て い る(大 判 大9・6・15参. 照)。 つ. ま り,使 用 者 が被 害 者 の場 合,被 用 者 の過 失 は被 害 者 側 の過 失 と して評 価 す る とい うの が判 例 の立 場 で あ る。 この判 例 に従 え ば,被 用 者Aの 過 失 が使 用 者C の過 失 と評 価 さ れ,Bは. 過 失 相 殺 に よ りCに 対 して600万 円 を賠 償 す れ ば よ い. こ とに な る。 ⑤. 被 害 者 の過 失 を考 慮 す るに は,責 任 能 力(12歳. 要 な く,事 理 弁 識 能 力(5,6歳 る)で 足 りる,と 被 害 者 が3歳. 前 後 で備 わ る)ま で は必. で備 わ る とす るの が,判 例 の一 般 的傾 向 で あ. され て い る(最 大 判 昭39・6・24,百. 選II【93】)。 しか し,. の幼 児 の 場 合 は,こ の者 の 過 失 を 問 題 に す る こ とが で き な い の. で,被 害 者 側 の過 失 を 問題 に し,被 害 者 側 に過 失 が あ れ ば,過 失 相 殺 が認 め ら れ る。 判 例 は,被 害 者 側 の過 失 とは,被 害 者 本 人 と身 分 上,生 活 関係 上,一 体 を な す とみ られ るよ うな 関係 に あ る者 の過 失 を言 い,被 用 者 で あ る家 事 使 用 人 は被 害 者 側 に 当 た るが,幼 稚 園 の保 母 さん は これ に 当 た らな い,と い う(最 判 昭42・6・27,百. 選II(初. 版)【88】)。 した が って,前 段 の 保 母 の 場 合 は,減. 額 を主 張 で き な い が,後 段 の家 事 使 用 人 の場 合 は,減 額 を主 張 で き る。 被 用 者 で あ る家 事 使 用 人 は被 害 者 側 に 当 た るが,幼 稚 園 の保 母 さん は これ に 当 た らな 15.

(16) 民 法 演 習(3). い,と. され た理 由 は次 の よ うに考 え られ る。 た とえ ば,家 事 使 用 人 と車 の運 転. 者 との過 失 が相 侯 って幼 児 が死 亡 した場 合 は,家 事 使 用 人 と運 転 者 は幼 児 に対 して共 同不 法 行 為 を して い る と考 え られ る。 この場 合,幼 児 の親 は幼 児 の損 害 賠 償 請 求 権 を相 続 して運 転 者 に対 して損 害 賠 償 を す る こ とが で き る。 運 転 者 が 親 に全 額 を賠 償 す れ ば,家 事 使 用 人 と親 とは,民 法715条 の被 用 者 ・使 用 者 の 関係 に あ るの で,運 転 者 は,家 事 使 用 人 の過 失 割 合 に応 じて,家 事 使 用 人 の使 用 者 で あ る親 に 求 償 で き る(百 選II【86】 参 照)。 この 場 合,損 害 賠 償 関 係 と 求 償 関係 とを一 挙 に解 決 す るた あ に,家 事 使 用 人 の過 失 は被 害 者 側 の過 失 で あ る と して,親 の運 転 者 に対 す る損 害 賠 償 請 求 権 を減 額 す るの で あ る。 これ に対 して,保 母 と親 とは,民 法715条 の 被 用 者 ・使 用 者 の 関 係 に は な い の で,保 母 の過 失 は被 害 者 側 の過 失 で あ る と して,親 の運 転 者 に対 す る損 害 賠 償 請 求 権 を 減 額 す る こ とは で き な い。 妻 が夫 の 自動 車 に 同乗 中,夫. と相 手 方 双 方 の過 失 で妻 が怪 我 を した場 合,夫. の過 失 は被 害 者 側 の過 失 に 当 た る と され る(最 判 昭51・3・25,百. 選II(5版). 【91】参 照)。 この 場 合 も,被 害 者 で あ る妻 が 相 手 方 か ら全 額 の 賠 償 を得 れ ば, 相 手 方 は夫 に対 して求 償 す る こ とに な るが,妻. と夫 は財 布 が共 通 な の で,被 害. 者 側 の過 失 とい う概 念 で損 害 賠 償 関係 と求 償 関係 とを一 挙 に解 決 して い るの で あ る。 内縁 の妻 が夫 の 自動 車 に 同乗 中,夫. と相 手 方 双 方 の過 失 で妻 が怪 我 を し. た場 合,内 縁 の夫 の過 失 は被 害 者 側 の過 失 に 当 た る と した最 判 平19・4・24も 同様 の考 え方 に立 つ もの と思 わ れ る。 これ に対 して,恋 愛 関係 に あ って も同居 して い な い者 の過 失 は被 害 者 側 の過 失 と して考 慮 され な い(最 判 平9・9・9)。. 「補. 足」. ④ の場 合 も,⑤ の場 合 も,被 用 者 の過 失 を使 用 者 側 の過 失 と して考 慮 す る点 で は 同 じで あ るが,④ の場 合 は,使 用 者 自身 が被 害 者 だ が,⑤ の場 合 は,被 害 者 は,使 用 者 の子 ど もで あ り,使 用 者 は そ の相 続 人 で あ る とい う違 い が あ る こ 16.

(17) 法科大学院論集. と に注 意 して ほ し い。 ⑤ の場 合 は,子. 第9号. ど もが 傷 害 を受 け た が死 亡 して い な い. ケ ー ス も考 え られ る。 そ の 場 合 も,子 ど もが 運 転 者 か ら全 額 の 賠 償 を得 れ ば, 運 転 者 は家 事 使 用 人 の使 用 者 で あ る両 親 に求 償 で き るが,両 親 と子 ど もの財 布 は共 通 だ か ら,損 害 賠 償 関係 と求 償 関係 とを一 挙 に解 決 す るた あ に,被 用 者 の 過 失 を被 害 者 側 の過 失 と して評 価 し,子 ど もの損 害 賠 償 請 求 権 を減 額 す る必 要 が あ る。 つ ま り,⑤ の 場 合 は,715条 の 使 用 者 責 任 が 成 立 し,損 害 賠 償 関係 と求 償 関係 とを一 挙 に解 決 す るた あ に,被 用 者 の過 失 を被 害 者 側 の過 失 と して評 価 して い るの で あ るが,④ の 場 合 は,使 用 者 自身 が被 害 者 だ か ら,715条 の使 用 者 責 任 は 問題 とな らず,使 用 者 が相 手 方 か ら全 額 の賠 償 を受 け て も,使 用 者 が相 手 方 か ら求 償 を受 け る とい う関係 に は な い。 ④ の場 合 は,使 用 者 は被 用 者 を利 用 して 利 益 を 得 て い る の で あ る か ら,被 用 者 の 過 失 を 自 己 の 過 失 と して 引受 け,損 害 を 負 担 す る の が 公 平 だ と考 え られ て い る の で はな い と思 わ れ る。715 条 の 使 用 者 責 任 で は,使 用 者 は 被 用 者 を 利 用 して 利 益 を 得 て い る の で あ る か ら,使 用 者 は被 用 者 に代 わ って損 害 賠 償 義 務 を 負 うべ き で あ り,求 償 の 関係 で も被 用 者 と同 じ内容 の責 任 を 負 うべ き で あ る と考 え られ て い るの に対 して,④ の場 合 は,使 用 者 は被 用 者 を利 用 して利 益 を得 て い るの で あ るか ら,使 用 者 は 被 用 者 の過 失 を 自己 の過 失 と して 引受 け,自 己 の損 害 賠 償 請 求 権 の減 額 を容 認 す るの が公 平 だ と考 え られ て い るの で は な い か と思 わ れ る。. 第3問. 契約責任 と不法行為責任. ①AはBと,そ. の 所 有 地 上 に コ ン ク リ ー ト造 り の9階. 築 さ せ る請 負 契 約 を 締 結 し た 。 請 負 契 約 約 款 に は,暇. 建 て の共 同住 宅 を建. 疵 担 保 期 間 に つ い て,石. 造 ・ コ ン ク リ ー ト造 及 び こ れ ら に 類 似 す る建 物 に つ い て は,引 間 と す る,と て,建. の 条 項 が あ っ た 。AがBか. 物 の 廊 下,床,壁. の ひ び 割 れ,は. 17. 渡 の 日 か ら2年. ら 建 物 の 引 渡 を 受 け た4年. 後 にな っ. り の 傾 斜 ・鉄 筋 料 の 不 足,バ. ル コニ ー.

(18) 民 法 演 習(3). の ぐ らつ き等 の暇 疵 が発 見 され た。AはBに. 対 して暇 疵 の修 補 費 用 を損 害 賠 償. と して請 求 して い るが認 あ られ るか。 ②. ① の 事 案 に お い て,Aは. し,引 渡 した とす る。Cが の ひ び割 れ,は. 建 物 の 引 渡 の3ケ. 引渡 を受 け て1年 後 に な って,建 物 の廊 下,床,壁. りの傾 斜 ・鉄 筋 料 の不 足,バ. 見 され た。CはAに. 月 後 にCに 土 地 建 物 を 売 却. ル コニ ー の ぐ らつ き等 の蝦 疵 が発. 対 して どの よ うな請 求 が可 能 か?ま た,CはBに. 対 して ど. の よ うな請 求 が可 能 か? ③. ① の事 案 に お い て,バ ル コニ ーが 落 下 し,歩 行 者Dが 怪 我 を した とす る。. そ の バ ル コニ ー の あ る部 屋 に はEが 居 住 して い た とす る。Dは 誰 に対 して損 害 賠 償 を請 求 で き るか? ④Xは,宝. 石,貴 金 属 の販 売 を業 とす る会 社 で あ る。Yは,ホ. テ ル経 営 を. 業 とす る会 社 で あ り,神 戸 市 内 に お い て 甲 ホ テ ル を経 営 して い る。Xの 代 表 取 締 役 で あ るAは,Xが. 神 戸 国 際展 示 場 で 開催 され る宝 飾 展 に商 品展 示 をす る予. 定 で あ った こ とか ら,平 成9年6月13日 ボ ー ル 箱1個 は,X所. 午 後5時30分. ころ,バ. ッグ2個 及 び段. を持 参 して 宿 泊 の た め 本 件 ホ テ ル に 赴 い た。 上 記 バ ッグ2個. 有 の ペ ンダ ン ト,イ ヤ リ ング,ネ. に. ッ ク レス等 の宝 飾 品 が入 って い た と. こ ろ,こ れ らの宝 飾 品 の 価 額 は2,846万8,181円 を 下 らな い。Aは,フ. ロ ン トに. お い て宿 泊手 続 を済 ま せ た後,本 件 ホ テ ル の ベ ル ボ ー イ で あ るBに 対 し,在 中 品 の 内容 を告 げ る こ とな く上 記 バ ッグ2個 を客 室 ま で運 搬 す る こ と及 び段 ボ ー ル 箱 を宅 配 便 で東 京 へ 発 送 す る こ と な ど を依 頼 した上,客 が,そ の後 間 もな く,Aか. 室 へ 向 か った。B. ら預 か った段 ボ ー ル箱 を宅 配 便 で発 送 す る手 続 を し. て い た と ころ,上 記 バ ッグ2個 が何 者 か に よ り盗 ま れ た。 本 件 盗 難 当 時 の本 件 ホ テ ル の 宿 泊 約 款 に は,「 宿 泊 客 が 当 ホ テル 内 に お 持 込 み に な った 物 品 又 は現 金 並 び に貴 重 品 で あ って,フ. ロ ン トに お預 け に な らな か った もの に つ い て,当. ホ テ ル の故 意 又 は過 失 に よ り滅 失,殿 損 等 の損 害 が 生 じた とき は,当 ホテ ル は, そ の損 害 を賠 償 しま す。 た だ し,宿 泊客 か らあ らか じあ種 類 及 び価 額 の 明告 の 18.

(19) 法科大学院論集. な か った もの に つ い て は,15万. 第9号. 円 を 限度 と して 当 ホ テ ル は そ の損 害 を賠 償 しま. す。」 と い う規 定 が あ った。Xは,Yに あ るな ど と主 張 して,民 法715条1項. 対 し,本 件 盗 難 につ い てBに. は過 失 が. に 基 づ き,前 記 宝 飾 品 の価 額 相 当額 及 び 出. 展 費 用 の損 害 金 の支 払 を求 あ て い るが,認 あ られ るか。. 「解 答 例 」 設 例 ① は,最 判 平19・7・6(百 最 判 平19・7・6で. 選II【79】)を 参 考 に作 成 した もの で あ る。. は,注 文 者 と請 負人 との 間 で は な く,請 負人 と請 負 の 目的. 物 の購 入 者 との 間 で の紛 争 が 問題 とな って い るの に対 して,設 例 ① で は,注 文 者 と請 負人 との 間 の紛 争 が 問題 に な って い る。 最 判 平19・7・6の. 問題 点 を 明. らか に す るた あ に は,ま ず,注 文 者 と請 負人 の 関係 で,暇 疵 担 保 責 任 とは別 に 不 法 行 為 責 任 を追 及 で き るの か,を 検 討 す る必 要 が あ る と思 わ れ るの で,設 例 ① を作 成 した の で あ る。 注 文 者 と請 負人 との 関係 で,暇 疵 担 保 責 任 とは別 に不 法 行 為 責 任 を追 及 で き るの か,に つ い て,最 判 平19事 件 の原 審 は,次 の よ うに い う。 「(1)請 負 の 目的 物 に暇 疵(施 工 に よ る もの の み な らず,設 計 監 理 に よ る もの を 含 む。)が あ る場 合,注 文 者 は請 負 人 に対 して 民 法634条 所 定 の暇 疵 担 保 責 任 を 追 及 す るに と どま らず,こ れ とは別 個 に,不 法 行 為 責 任 を も追 及 す る こ とが で き るか とい うの は一 個 の 問題 で あ る。 さ らに,そ の延 長 線 上 に は,そ. もそ も請. 負人 は 当該 目的物 の所 有 者 等 に対 して不 法 行 為 責 任 を 負 うの か とい う問題 が あ る。 この 点 につ き,原 審(一 審)は,「. 建 築 請 負 人 並 び に設 計 ・工 事 監 理 の 委 任. な い し請 負契 約 を締 結 した受 任 者 又 は設 計 ・工 事 監 理 請 負人 は,そ れ らの契 約 に基 づ い て,請 負人 と して の暇 疵 担 保 責 任 や受 任 者 と して の債 務 不 履 行 責 任 を 負 うが,同 時 に,こ れ らの者 の行 為 が一 般 不 法 行 為 の成 立 要 件(違 法 性 ・故 意 又 は過 失 ・損 害 の発 生 ・因果 関係)を 充 た す 限 り,不 法 行 為 に基 づ く損 害 賠 償 19.

(20) 民 法 演 習(3). 請 求 権 が発 生 し,」 両 責 任 は請 求 権 競 合 す る もの と して い る。 (2)確か に不 法 行 為 責 任 は,暇 疵 担 保 責 任 等 の契 約 責 任 とは制 度 趣 旨を異 にす るが,本 来 暇 疵 担 保 責 任 の範 疇 で律 せ られ るべ き分 野 に お い て,安 易 に不 法 行 為 責 任 を認 あ る こ とは,法 が暇 疵 担 保 責 任 制 度 を定 あ た趣 旨を没 却 す る こ とに な りか ね な い。 即 ち,民 法637条,638条. は,暇 疵 担 保 責 任 の存 続 期 間 を定 め て. お り(本 件 の よ うな建 物 建 築 の暇 疵 に つ い て は,そ の存 続 期 間 は原 則 と して 引 渡 後5年. な い し10年),さ らに 契 約 当事 者 間 の 特 約 に よ って,責 任 の存 続 期 間 を. 一 定 の 限度 で伸 長 させ た り(同 法639条) ,責 任 そ の もの を免 除 す る こ と(同 法 640条)も 認 め られ て い る。 しか し,こ の 問題 に不 法 行 為 責 任 の追 及 を持 ち込 む とき は,い か に不 法 行 為 の成 立 要 件 と して請 負人 の故 意 な い し過 失 を要 す るか ら とい って,法 が暇 疵 担 保 責 任 の存 続 期 間 に つ い て契 約 法 理 に見 合 った様 々 な 規 定 を 置 い た趣 旨を 没 却 し,請 負 人 の責 任 が 無 限定 に広 が る お そ れ を生 ず る。 ま た,請 負人 が不 法 行 為 責 任 を 負 うべ き もの とす る と,請 負人 が責 任 を負 担 す る相 手 方 の範 囲 も無 限定 に広 が って,請 負人 は著 し く不 安 定 な地 位 に置 か れ る こ とに な る(本 件 も,請 負 の 目的物 の買 受 人 が請 負人 に対 して不 法 行 為 責 任 を 追 及 した事 案 で あ る。)。一 審 原 告 らは,こ の点 につ き,「現 代 社 会 に お け る建 物 は商 品 と して建 築 ・作 出 され,注 文 者 の以 後 に も転 々譲 渡 され る こ とが あ るか ら,(中 略)一 般 国 民 に対 して も(義 務 を)負. って い る と い うべ きで あ る」 な. ど と主 張 す るが,そ の よ うな事 案 に お い て は,暇 疵 あ る 目的物 の買 受 人 は,請 負人 に対 して責 任 を追 及 で き な く と も,売 主 に対 して債 務 不 履 行 責 任 又 は民 法 570条 所 定 の蝦 疵 担 保 責 任 等 を 追 及 す る こ とが で き る の で あ るか ら,そ の保 護 に欠 け る こ とは な い の で あ る。 一 審 原 告 らの上 記 主 張 に左 祖 す る こ とは で き な い。 (3)以上 の考 察 に照 らす と,請 負 の 目的物 に暇 疵 が あ るか ら とい って,当 然 に 不 法 行 為 の成 立 が 問題 に な るわ け で は な く,そ の違 法 性 が強 度 で あ る場 合,例 え ば,請 負人 が注 文 者 等 の権 利 を積 極 的 に侵 害 す る意 図 で暇 疵 あ る 目的物 を製 20.

(21) 法科大学院論集. 第9号. 作 した場 合 や,暇 疵 の 内容 が反 社 会 性 あ るい は反 倫 理 性 を帯 び る場 合,蝦 疵 の 程 度 ・内容 が重 大 で,目 的物 の存 在 自体 が社 会 的 に危 険 な状 態 で あ る場 合 等 に 限 って,不 法 行 為 責 任 が成 立 す る余 地 が 出 て く る もの とい うべ き で あ る。」 この よ うに,原 審 は,一 審 の よ うに,契 約 責 任 と不 法 行 為 責 任 との請 求 権 競 合 を単 純 に認 あ る こ とを否 定 し,「請 負 の 目的 物 に 蝦 疵 が あ るか ら とい って,当 然 に不 法 行 為 の成 立 が 問題 に な る わ け で は な く,そ の 違 法 性 が 強 度 で あ る場 合,例. え ば,請 負人 が注 文 者 等 の権 利 を積 極 的 に侵 害 す る意 図 で暇 疵 あ る 目的. 物 を 製 作 した場 合 や,蝦 疵 の 内容 が反 社 会 性 あ る い は反 倫 理 性 を帯 び る場 合, 暇 疵 の程 度 ・内容 が重 大 で,目 的物 の存 在 自体 が社 会 的 に危 険 な状 態 で あ る場 合 等 に 限 って,不 法 行 為 責 任 が 成 立 す る余 地 が 出 て くる もの と い うべ きで あ る」 とす る。 この原 審 の見 解 に よ れ ば,① の事 例 で は,暇 疵 担 保 責 任 の期 間 が経 過 して い るの で,Aは. 担 保 責 任 と して の損 害 賠 償 を追 及 す る こ とは で き ず,不 法 行 為 責. 任 が成 立 す る余 地 もな い こ とに な ろ う。 これ に対 して,最 高 裁 は,「 建 物 の 建 築 に携 わ る設 計 ・施 工 者 等 は,建 物 の 建 築 に 当 た り,契 約 関係 に な い居 住 者 等 に対 す る関係 で も,当 該 建 物 に建 物 と して の 基 本 的 な安 全 性 が 欠 け る こ とが な い よ うに配 慮 す べ き注 意 義 務 を 負 い, 設 計 ・施 工 者 等 が この義 務 を怠 った た あ に建 築 され た建 物 に上 記 安 全 性 を損 な う暇 疵 が あ り,そ れ に よ り居 住 者 等 の生 命,身 体 又 は財 産 が侵 害 され た場 合 に は,設 計 ・施 工 者 等 は,不 法 行 為 の成 立 を主 張 す る者 が上 記 暇 疵 の存 在 を知 り な が ら これ を前 提 と して 当 該 建 物 を 買 受 けて い た な ど特 段 の 事 情 が な い 限 り, これ に よ って生 じた損 害 に つ い て不 法 行 為 に よ る賠 償 責 任 を 負 う とい うべ き で あ って,こ. の こ と は居 住 者 等 が 当 該 建 物 の 建 築 主 か らそ の譲 渡 を受 け た 者 で. あ って も異 な る と ころ は な い」 との判 断 を し,事 件 を原 審 に差 し戻 した(最 判 平19・7・6,百. 選II【79】)。 この最 高 裁 判 決 は,請 負人 と請 負 の 目的物 の購. 入 者 との紛 争 に そ く して,契 約 関係 に な い 当事 者 間 に も言 及 して い るが,こ の 21.

(22) 民 法 演 習(3). 判 決 に よ れ ば,注 文 者 ・請 負人 とい う契 約 当事 者 間 に お い て も,建 物 の建 築 に 携 わ る設 計 ・施 工 者 等 は,建 物 の建 築 に 当 た り,当 該 建 物 に建 物 と して の基 本 的 な安 全 性 が欠 け る こ とが な い よ うに配 慮 す べ き注 意 義 務 を 負 い,設 計 ・施 工 者 等 が この義 務 を怠 った た あ に建 築 され た建 物 に上 記 安 全 性 を損 な う蝦 疵 が あ り,そ れ に よ り注 文 者 の生 命,身 体 又 は財 産 が侵 害 され た場 合 に は,設 計 ・施 工 者 等 は,こ れ に よ って生 じた損 害 に つ い て不 法 行 為 に よ る賠 償 責 任 を負 う こ とに な る。 この最 高 裁 の見 解 に よ れ ば,① の事 例 で は,AはBに. 対 して,暇 疵 担 保 責 任. が追 及 で き な くな って も,不 法 行 為 を理 由 と して損 害 賠 償 を請 求 す る こ とが可 能 とな る。 な お,最 判 平19・7・6は,そ は,最 判 平19・7・6に. の後 次 の よ うな経 過 を た ど って い る。 差 戻 審. い う 「建 物 と して の基 本 的 な安 全 性 を損 な う蝦 疵 」 と. は,建 物 の暇 疵 の 中 で も,居 住 者 等 の生 命,身 体 又 は財 産 に対 す る現 実 的 な危 険性 を生 じ させ る暇 疵 を い う もの と解 され,被 上 告 人 ら(請 負人 ら)の 不 法 行 為 責 任 が発 生 す るた あ に は,本 件 建 物 が売 却 され た 日ま で に上 記 暇 疵 が存 在 し て い た こ と を必 要 とす る(筆 者 注. 本 件 訴 訟 の原 告(請. 負 の 目的 物 の購 入 者). の 建 物 は,訴 訟 継 続 中 に競 売 に よ り第 三 者 に売 却 され た。)と した 上,上 記 の 日ま で に,本 件 建 物 の暇 疵 に よ り,居 住 者 等 の生 命,身 体 又 は財 産 に現 実 的 な 危 険 が生 じて い な い こ とか らす る と,上 記 の 日ま で に本 件 建 物 に建 物 と して の 基 本 的 な安 全 性 を損 な う暇 疵 が存 在 して い た とは認 あ られ な い と判 断 して,上 告 人(請. 負 の 目的物 の購 入 者)の 不 法 行 為 に基 づ く損 害 賠 償 請 求 を棄 却 す べ き. もの と した。 これ に対 して,最 高 裁 は,原 審 の上 記 判 断 は是 認 す る こ とが で き な い。 そ の 理 由 は,次 の とお りで あ る とす る(最 判 平23・7・21,平23重. 判 【民 法12】 参. 照)。 「(1)最 判 平19・7・6に. い う 「建 物 と して の基 本 的 な 安 全 性 を 損 な う蝦 疵 」 22.

(23) 法科大学院論集. 第9号. とは,居 住 者 等 の生 命,身 体 又 は財 産 を危 険 に さ らす よ うな暇 疵 を い い,建 物 の暇 疵 が,居 住 者 等 の生 命,身 体 又 は財 産 に対 す る現 実 的 な危 険 を もた ら して い る場 合 に 限 らず,当 該 暇 疵 の性 質 に鑑 み,こ れ を放 置 す る とい ず れ は居 住 者 等 の生 命,身 体 又 は財 産 に対 す る危 険 が現 実 化 す る こ とに な る場 合 に は,当 該 暇 疵 は,建 物 と して の基 本 的 な安 全 性 を損 な う暇 疵 に該 当 す る と解 す るの が相 当 で あ る。 (2)以上 の観 点 か らす る と,当 該 蝦 疵 を 放 置 した 場 合 に,鉄 筋 の腐 食,劣 化, コ ン ク リー トの耐 力 低 下 等 を 引 き起 こ し,ひ い て は建 物 の全 部 又 は一 部 の倒 壊 等 に至 る建 物 の構 造 耐 力 に 関 わ る暇 疵 は も とよ り,建 物 の構 造 耐 力 に 関 わ らな い暇 疵 で あ って も,こ れ を放 置 した場 合 に,例 え ば,外 壁 が剥 落 して通 行 人 の 上 に落 下 した り,開 口部,ベ. ラ ンダ,階 段 等 の暇 疵 に よ り建 物 の利 用 者 が転 落. した りす るな ど して人 身 被 害 に つ な が る危 険 が あ る とき や,漏 水,有 害 物 質 の 発 生 等 に よ り建 物 の利 用 者 の健 康 や財 産 が損 な わ れ る危 険 が あ る とき に は,建 物 と して の基 本 的 な安 全 性 を損 な う暇 疵 に該 当 す るが,建 物 の美 観 や居 住 者 の 居 住 環 境 の快 適 さを損 な うに と どま る暇 疵 は,こ れ に該 当 しな い もの とい うべ き で あ る。」 この最 高 裁 の見 解 に よ れ ば,① の事 例 で は,AはBに. 対 して暇 疵 の修 補 費 用. を損 害 賠 償 と して請 求 で き そ うで あ る。 と ころ で,こ の蝦 疵 の修 補 費 用 は,634 条2項. の暇 疵 の修 補 に代 わ る損 害 賠 償 と同 じ と解 して良 い で あ ろ うか。 そ の よ. う に解 す れ ば,AはBに. 対 して634条2項. の蝦 疵 担 保 責 任 を追 及 で きな くな っ. た場 合 に も,不 法 行 為 を理 由 に暇 疵 担 保 責 任 と同 じ内容 の損 害 賠 償 請 求 をす る こ とが で き る こ とに な る。 しか し,最 高 裁 が,不 法 行 為 を理 由 に暇 疵 修 補 費 用 の賠 償 を認 あ るの は,暇 疵 を修 補 しな い で放 置 す る と居 住 者 等 に生 命,身 体 又 は財 産 に対 す る危 険 が生 じ るか ら,こ れ を避 け るた あ に修 補 費 用 の賠 償 を認 め て い るの だ と考 え る こ と もで き る。 この場 合 は,同 賠 償 と して認 あ て も,そ れ は,634条2項. じ く暇 疵 修 補 の費 用 を損 害. の暇 疵 の修 補 に代 わ る損 害 賠 償 とは異 23.

(24) 民 法 演 習(3). な る と言 う こ とに な ろ う。 最 高 裁 が,「 当該 蝦 疵 を放 置 した場 合 に,例 え ば,外 壁 が剥 落 して通 行 人 の上 に落 下 した り,開 口部,ベ. ラ ンダ,階 段 等 の蝦 疵 に よ. り建 物 の利 用 者 が転 落 した りす るな ど して人 身 被 害 に つ な が る危 険 が あ る とき や,漏 水,有 害 物 質 の発 生 等 に よ り建 物 の利 用 者 の健 康 や財 産 が損 な わ れ る危 険 が あ る と き に は,建 物 と して の基 本 的 な 安 全 性 を損 な う暇 疵 に該 当 す るが, 建 物 の美 観 や居 住 者 の居 住 環 境 の快 適 さを損 な うに と どま る暇 疵 は,こ れ に該 当 しな い もの とい うべ き で あ る。」 と言 って い るの は,634条2項. の暇 疵 の修 補. に代 わ る損 害 賠 償 と不 法 行 為 を理 由 とす る暇 疵 修 補 費 用 の損 害 賠 償 は,異 な る とい う こ と で は あ る ま いか 。 つ ま り,「 建 物 の美 観 や 居 住 者 の居 住 環 境 の快 適 さを 損 な う に と どま る暇 疵 」 の 修 補 費 用 の 賠 償 を不 法 行 為 を 理 由 に認 め れ ば, そ の 蝦 疵 の修 補 費 用 は,634条2項 るか ら,634条2項. の 蝦 疵 の修 補 に代 わ る損 害 賠 償 と 同 じで あ. の 蝦 疵 担 保 責 任 を 追 及 で き な くな った 場 合,不 法 行 為 を理 由. に暇 疵 の修 補 費 用 の損 害 賠 償 を す る こ とは で き な い。 しか し,暇 疵 に よ り人 身 被 害 や健 康 ・財 産 被 害 の危 険 が あ る場 合 に,そ れ を 回避 す るた あ の修 補 費 用 の 損 害 賠 償 は,634条2項 634条2項. の 暇 疵 の 修 補 に代 わ る損 害 賠 償 と は内 容 が 異 な るか ら,. の蝦 疵 担 保 責 任 を 追 及 で き な くな った 場 合 で も,不 法 行 為 を 理 由 に. 暇 疵 の 修 補 費 用 の 損 害 賠 償 をす る こ とが で き る,と い う こ とで は あ る ま い か 。 以 下 の設 例 ③ で も述 べ るよ うに,請 負 の担 保 責 任 の期 間 が経 過 した後 で あ って も,注 文 者 や第 三 者 が建 物 の暇 疵 の た あ に た とえ ば人 身 被 害 を受 け れ ば,注 文 者 ・第 三 者 は,請 負人 に対 して不 法 行 為 を理 由 に損 害 賠 償 請 求 が で き る こ とに は,学 説 ・判 例 上 あ ま り異 論 は な い。 最 判 平19・7・6の. 場 合,注 文 者 や第 三. 者 は ま だ建 物 の暇 疵 に よ って人 身 被 害 を受 け て い な い の で あ るが,注 文 者 や第 三 者 は,人 身 被 害 が生 じ るの を待 って損 害 賠 償 請 求 を す べ き で あ る とい うの は 不 当 だ か ら,注 文 者 や第 三 者 は,人 身 被 害 が生 じな い よ うに す る措 置 を と るよ う請 負人 に請 求 で き,ま た,そ の よ うな措 置 を 自 ら行 うた あ の費 用 を損 害 賠 償 と して請 負人 に請 求 す る こ と もで き る,と 解 す る こ とが可 能 か も知 れ な い。 24.

(25) 法科大学院論集. ②AとCは. 第9号. 売 買 契 約 の 当事 者 で あ り,売 買 の 目的物 に暇 疵 が あ るの で,蝦. 疵 担 保 責 任 が 問題 にな る。CはAに. 対 して 蝦 疵 の修 補 請 求 が で き るか 。 また,. 暇 疵 の修 補 請 求 に代 わ る損 害 賠 償 請 求 が で き るか。 暇 疵 担 保 に 関 す る契 約 責 任 説 に立 て ば,い ず れ も可 能 で あ る と思 われ る。 これ に対 して,法 定 責 任 説 で は, 570条 は蝦 疵 担 保 の 効 果 と して 解 除 と損 害 賠 償 の み を規 定 して い る の で,Cは Aに 対 して蝦 疵 の 修 補 請 求 を す る こ と は で き な い。 で は,570条. の損害賠償 と. して暇 疵 の修 補 請 求 に代 わ る損 害 賠 償 の請 求 を す る こ とは可 能 だ ろ うか。 法 定 責 任 説 に立 った場 合 で も,570条. の 損 害 賠 償 と して 修 補 費 用 を請 求 で き る とす. る こ とは,可 能 で はな いか と思 わ れ る。 判 例 も,実 際 に は,570条 の損 害 賠 償 と い う こ とで修 補 費 用 を認 あ て い るの で は な い か と思 わ れ る。 た とえ ば,最 判 平 22・6・1の. 事 例 で は,売 買 契 約 当 時 フ ッ素 の危 険性 が認 識 され て い れ ば,汚. 染 除去 費 用 の賠 償 が認 あ られ た可 能 性 が あ る。 汚 染 除去 費 用 は土 壌 の蝦 疵 を 除 去 す る費 用 で あ るか ら,実 質 的 に は暇 疵 修 補 費 用 と同 じで あ る。 法 定 責 任 説 の 場 合 で も,CはAに. 対 して暇 疵 の修 補 請 求 は で き な い が,暇 疵 の修 補 に代 わ る. 損 害 賠 償 の請 求 を す る こ とは可 能 と考 え られ る。 CとBと. の 関係 で あ るが,AのBに. 存 続 して い るの で,CがAのBに. 対 す る請 負 に基 づ く暇 疵 担 保 責 任 は ま だ. 対 す る請 負 の担 保 責 任 を追 及 で き な い か が 問. 題 とな る。 請 負契 約 の 目的物 を譲 り受 け た者 が請 負 の暇 疵 担 保 請 求 権 を行 使 で き るで あ ろ うか。 この点 は余 り議 論 され て い な い が,一 般 的 に は,目 的物 を譲 り受 け た だ け で は暇 疵 担 保 請 求 権 を行 使 で き ず,注 文 者 と して の契 約 上 の地 位 の譲 渡 が必 要 と解 され て い るよ うで あ る。 そ して,契 約 上 の地 位 の譲 渡 に は相 手 方 で あ る請 負人 の承 諾 が必 要 で あ る。 た だ,請 負代 金 が完 納 され て い る場 合 に は,請 負人 の利 益 を考 慮 す る必 要 が な い か ら,AC間. の合 意 とAのBに. 対す. る通 知 が あ れ ば足 り る,と 解 す る こ と もで き るか も知 れ な い。 ま た,AのBに 対 す る暇 疵 修 補 に代 わ る損 害 賠 償 請 求 権 は債 権 で あ るか ら,こ の損 害 賠 償 請 求 権 をAがCに. 譲 渡 す る に は,AC間. の 合 意 とAのBに 25. 対 す る通 知 が あ れ ば よ.

(26) 民 法 演 習(3). い。 さ ら に,契 約 上 の 地 位 の 譲 渡 や 損 害 賠 償 請 求 権 の 譲 渡 が認 め られ な い場 合,Aが. 無 資 力 の とき は,Cは. 債 権 者 代 位 権 で,AのBに. わ る損 害 賠 償 請 求 権 を行 使 で き る。CがBに. 対 す る暇 疵 修 補 に代. 対 して不 法 行 為 を理 由 に蝦 疵 修 補. 費 用 を損 害 賠 償 と して請 求 が で き るか に つ い て は,最 判 平19・7・6の. 原審 の. 見 解 で は否 定 され るで あ ろ うが,最 高 裁 の見 解 に よ れ ば肯 定 され る。 ③. ま ず,DはAとEに717条1項. る。 この場 合,Dと. の工 作 物 責 任 を 追 及 す る こ とが 考 え られ. して は,所 有 者 で あ るAの 方 が資 力 が あ るか らAの 責 任 を. 追 及 した い と考 え るか も知 れ な い が,Aの 過 失 が な い場 合 に は じあ て,Aが 定 され れ ば,DはEの ば,DはBの. 責 任 は2次 的責 任 で あ るか ら,Eに. 責 任 を 負 う こ とに注 意 。Eに 過 失 が あ る と認. 責 任 を追 及 す るほ か な い。 次 に,請 負人Bに 過 失 が あ れ. 不 法 行 為 責 任 を追 及 す る こ と もで き る。 暇 疵 の修 補 費 用 を,注 文. 者 が,不 法 行 為 を理 由 と して請 負人 に請 求 で き るの か,あ. るい は,請 負 の 目的. 物 を譲 り受 け た者 が,暇 疵 の修 補 費 用 を,不 法 行 為 を理 由 と して請 負人 に請 求 で き るの か,に 関 して は,す で に み た よ うに議 論 が あ る。 しか し,請 負 の 目的 物 で あ る家 屋 の暇 疵 の た あ に,注 文 者 が怪 我 を した よ うな場 合 は,担 保 責 任 の 期 間 が経 過 した後 で あ って も,注 文 者 が請 負人 に対 して不 法 行 為 を理 由 に損 害 賠 償 を請 求 で き る こ とに は異 論 は な い。 ま た,請 負 の 目的物 で あ る家 屋 を譲 り 受 け た者 が怪 我 を した場 合 も請 負人 に対 して不 法 行 為 を理 由 に損 害 賠 償 を請 求 で き る こ と に も異 論 は な い。 こ の延 長 線 上 に,最 高 裁 は,建 物 利 用 者 や 隣 人, 通 行 人 等 に対 して も,請 負人 は責 任 が あ る,と して い るの で あ る。 しか し,繰 り返 しに な るが,最 判 平19・7・6の. 論 点 は,暇 疵 の修 補 費 用 を,請 負 の 目的. 物 を譲 り受 け た者 が,不 法 行 為 を理 由 と して請 負人 に請 求 で き るの か,に あ る の で あ って,も. し,請 負 の 目的物 を譲 り受 け た者 が,建 物 の暇 疵 の結 果,死 亡. した り,怪 我 を した り,家 具 を傷 つ け られ た とい う こ とで あ れ ば,譲 受 人 が請 負人 に対 して不 法 行 為 に基 づ く損 害 賠 償 請 求 が で き る こ とに は異 論 は な い の で あ る(百 選II【79】 の解 説5参 照)。 26.

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