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博士(工学)村上尚史 学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(工学)村上尚史 学位論文題名

偏光ナル干渉による系外惑星検出法の研究 学位論文内容の要旨

   我々の太陽系は、恒星である太陽とその周りを公転する9 つの惑星などから 構成されている。我々の太陽系のような惑星系は、果たして特別な存在かどう かが長い間議論されてきた。1995 年、ドップラー法と呼ばれる観測手法を用い て、ペガサス座 51 番星という恒星の周りに惑星(系外惑星)が初めて発見され た。恒星の周りを惑星が公転するとき、惑星の重カにより恒星が動かされ、僅 かではあるが周期的な運動をする。ドップラー法とは、高精度な分光観測によ りこの僅かな運動をドップラー効果による恒星スペクトル線の周期的な波長の 変化として捉える手法である。この観測から、惑星の軌道周期、軌道離心率、

軌道長半径、質量等の情報を得ることができる。このような観測手法を用いる こ とに よ り 、 現 在 まで 発見 され た系外 惑星 の数 は 130 個 を超 えてい る。

   系外惑星探査の次なる段階は、系外惑星の直接検出である。系外惑星からの 光を直接捉えることができれば、そのスペクトルから惑星大気の組成に関する 情報が得られ、惑星形成理論にも多大な貢献が期待できる。しかしながら、直 接検出のためには幾っかの技術的な課題を克服していかなければならない。中 でも最も重要な課題は、微弱な惑星が明るい恒星像の裾野(サイドローブ)に 埋もれてしまわないための高コントラストイメージングが実現されなければな らないことである。このような課題を克服するために、ナル干渉法と呼ばれる 技術が提案されている。ナル干渉法とは、恒星からの光波のみを打ち消し合う 干渉を生じさせて微弱な惑星光レベルにまで強度を抑制する手法である。

   このような研究背景の中、本研究では系外惑星の直接検出を目的とした独自 のナル干渉装置を提案し、その開発研究を行った。

   第 1 章 で は 、 本 研 究 の 背 景 と 本 論 文 の 構 成 に つ い て 述 べ る 。

   第 2 章では、中間赤外領域での系外惑星直接検出装置であるナル干渉計にお

いて、幾何学的位相変調器(Geometric Phase Modulator ,GPM) の導入を提案し

た。ナル干渉計とは、複数個の望遠鏡で受けた光波間に適切な位相変調を与え

て結合することにより、恒星光のみを打ち消し合う干渉を生じさせる手法であ

る。幾何学的位相とは、偏光状態を循環的に変化させたときに得られる位相で

ある。得られる位相シフト量は、ポアンカレ球上で偏光状態の変化が描く閉曲

(2)

面 が、 球の中 心に張る立体角の1/2に等しい。幾何学的位相の特長として、アク ロマティックな任意の位相シフトが簡単な光学系℃得られることが挙げられる。

このような特長は、ナル干渉計を構築する際の大きな利点となる。本研究では、

GPMを用 い た 単 色 光 で の ナル 干渉 実験 を行 い、8xl03の消 光比 (打 ち消 し合 う 干 渉 状 態 と 強 め 合 う 干 渉状 態の 恒星 モデ ル像の ピー ク強 度比 )が 得ら れた 。   第3章 では 、可視・近赤外領域での系外惑星直接検出装置である干渉型ステラ コ ロナ グラフ に偏 光干 渉の 原理 を利 用す る手法を提案した。干渉型ステラコロ ナ グラ フとは 、恒 星像 の中 心に 位相 マス クと呼ばれる位相変調素子を挿入し、

恒 星光 をナル 干渉 状態 にし て除 去す る装 置である。アクロマティックな位相変 調 素子 を実現 する ため 、偏 光干 渉の 原理 を利用した手法を提案した。これは、

互いに直交する直線偏光(O゜,90゜)の‑45゜成分を干渉させることにより、2光波の 電 場成 分の位 相が 反転 する 現象 を応 用し たものである。このような位相マスク を 実際 に作製 し、 コロ ナグ ラフ のプ ロト タイプ光学系を構築した。性能評価の た めの 検証実 験を 行っ た結 果、 単色 およ び白色光で高い消光性能を達成した。

また、性能劣化を引き起こす要因についての考察も行った。

  第4章 では 、検 出性 能の 向上 を目 指した 差分 型ス テラ コロ ナグ ラフ 装置を提 案 した 。系外 惑星 から の光 は、 可視 域で は恒星からの光による反射散乱光であ る ため 、部分 偏光 して いる と考 えら れる 。そこで、コロナグラフ装置を偏光ビ ー ム ス プ リ ッ タ に よ っ てS‑P偏光 の2チャ ンネル とし てそ の差 分を とる 。無 偏 光 であ る残余 恒星 光ノ イズ はキ ャン セル され、惑星光の偏光成分のみを抽出す る こと ができ る。 プロ トタ イプ 光学 系に よる性能評価から、恒星モデルに比べ 10−5オ ーダ ーも の非 常に 微弱 な惑 星光モ デル を検 出で きる こと が示 された。

  第5章 で は 、 干 渉 型 ス テラ コロ ナグ ラフ にお いてPupil Remapping Mirrors を 利用 する手 法に つい て研 究し た。 干渉 型ステラコロナグラフは、望遠鏡の入 射瞳が円形開口である場合、理想的には恒星像を完全に除去することができる。

し かし 既存の 望遠 鏡で は、 入射 瞳に は副 鏡やスパイダーの影が映り込んでしま い 、性 能を著 しく劣化させる。これを解決するため、Pupil Remapping Mirrors を 用い て、こ のよ うな 入射 瞳を 円形 開口 ヘ変換することを提案した。最適なミ ラ ー形 状の計 算を 行い 、さ らに 、補 償光 学(大気揺らぎによる像劣化を実時間 で 補正 する装 置) の性 能に 対す るコ ロナ グラフ性能の見積もりを行った。その 結 果、 将来の 高次 補償 光学 が実 現さ れれ ば、高いコロナグラフ性能を達成でき ることが示された。

  第6章 で は 、 本 研 究 の 結 論 と し て 、 得 ら れ た 性 能 評価 のま とめ を行 った 。

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学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

偏光ナル干渉による系外惑星検出法の研究

  太 陽 系 は 、 恒 星 で あ る 太 陽 と そ の 周 り を 公 転 す る9つ の 惑 星 な ど か ら 構 成 さ れ て い る 。 太 陽 以 外 の 恒 星 の 周 り に 惑 星 ( 系 外 惑 星 ) が 初 め て1995年 に 発 見 さ れ た の は 、 ド ッ プ ラ ー 法 と 呼 ば れ る 観 測 手 法 を 用 い て で あ っ た 。 恒 星 の 周 り を 惑 星 が 公 転 す る と き 、 惑 星 の 重 カ に よ り 恒 星 が 動 か さ れ 、 僅 か で は あ る が 周 期 的 な 運 動 を す る 。 ド ッ プ ラ ー 法 と は 、 高 精 度 な 分 光 観 測 に よ り こ の 僅 か な 運 動 に 起 因 す る 恒 星 ス ペ ク ト ル 線 の 周 期 的 な 波 長 の 変 化 と し て 捉 え る 手 法 で あ る 。 こ の よ う な 観 測 手 法 を 用 い る こ と に よ り 、 現 在 ま で 発 見 さ れ た 系 外 惑 星 の 数 は 130個 を 超 え て い る 。 し か し 、 こ れ ら は 系 外 惑 星 を 直 接 と ら え た の で は な い 。   系 外 惑 星 か ら の 光 を 直 接 捉 え る こ と が で き れ ば 、 そ の ス ペ ク ト ル か ら 惑 星 大 気 の 組 成 に 関 す る 情 報 が得 ら れ など 、 惑 星形 成 の 真相 に 迫 れる 。 し かし な が ら 、 直 接 検 出 の た め に は 幾 っ か の 技 術 的 な 課 題 を 克 服 し て い か な け れ ば な ら な い 。 中 で も 最 も 重 要 な 課 題 は、 微 弱 な惑 星 が 明る い 恒 星像 の サ イ・ ド ロ ーブ に 埋 も れ て し ま わ な い た め の 高 コ ン ト ラ ス ト イ メ ー ジ ン グ が 実 現 さ れ な け れ ば な ら な い こ と で あ る 。 こ の よ う な 課 題 を 克 服 す る た め に 、 ナ ル 干 渉 法 と 呼 ば れ る 技 術 が 提 案 さ れ て い る 。 ナ ル 干 渉 法 と は 、 恒 星 か ら の 光 波 の み を 打 ち 消 し 合 う 干 渉 を 生 じ さ せ て 微 弱 な 惑 星 光 レ ベ ル に ま で 強 度 を 抑 制 す る 手 法 で あ る 。   本 研 究 で 、 系 外 惑 星 の 直 接 検 出 を 目 的 と し た 独 自 の ナ ル 干 渉 装 置 を 提 案 し 、 そ の 実 証 実 験 を 行 っ た 。

  第 1章 で は 、 本 研 究 の 背 景 と 本 論 文 の 構 成 に つ い て 述 べ て い る 。   第2章 で は 、 中 間 赤 外 領 域 で の 系 外 惑 星 直 接 検 出 装 置 で あ る ナ ル 干 渉 計 に お い て 、 幾 何 学 的 位 相 変 調 器(geometric phase modulator; GPM)の 導 入 を 提 案 し た 。 ナ ル 干 渉 計 と は 、 複 数 個 の 望 遠 鏡 で 受 け た 光 波 間 に 適 切 な 位 相 変 調 を 与 え て 結 合 す る こ と に よ り 、 恒 星 光 の み を 打 ち 消 し 合 う 干 渉 を 生 じ さ せ る 手 法 で あ る 。 幾 何 学 的 位 相 と は 、 偏 光 状 態 を 循 環 的 に 変 化 さ せ た と き に 得 ら れ る 位 相 で あ る 。 幾 何 学 的 位 相 の 特 長 と し て 、 波 長 に 依 ら な い 任 意 の 位 相 シ フ ト が 簡 単 な 光 学 系 で 得 ら れ る こ と が 挙 げ ら れ る 。 こ の よ う な 特 長 は 、 ナ ル 干 渉 計 を 構 築 す る 際 の 大 き な 利 点 と な る 。 本 研 究 で 、GPMを 用 い た 単 色 光 で の ナ ル 干 渉 実 験 を 行 い 、8xl03の 消 光 比 を 得 て い る 。

  第3章 で は 、 可 視 ・ 近 赤 外 領 域 で の 系 外 惑 星 直 接 検 出 装置 で あ る干 渉 型 ス テラ

1003

.次 雄 直良 幹 場塲 下 馬大 山 授授 授 教教 教 査査 査 主副 副

(4)

コ ロ ナ グ ラ フ に 偏 光 干 渉 の 原 理 を 利 用 す る 手 法 を 提 案 し た 。 干 渉 型 ス テ ラ コ ロ ナ グ ラ フ と は 、 恒 星 像 の 中 心 に 位 相 マ ス ク と 呼 ば れ る 位 相 変 調 素 子 を 挿 入 し 、 恒 星 光 を ナ ル 干 渉 状 態 に し て 除 去 す る 装 置 で あ る 。 ア ク ロ マ テ ィ ッ ク な 位 相 変 調 素 子 を 実 現 す る た め . 、 偏 光 干 渉 の 原 理 を 利 用 し た 手 法を 提案 した 。 これ は、

互いに直交する直線偏光(0゜,90゜)の丶一45゜成分を干渉させることにより、2光波の 電 場 成 分 の 位 相 が 反 転 す る 現 象 を 利 用 し た も の で あ る 。 こ の よ う な 位 相 マ ス ク を 実 際 に 作 製 し 、 コ ロ ナ グ ラ フ の プ ロ ト タ イ プ 光 学 系 を 構 築 し た 。 性 能 評 価 の た め の 検 証 実 験 を 行 っ た 結 果 、 単 色 お よ び 白 色 光 で 高 い 消 光 性 能 を 達 成 し た 。 ま た 、 性 能 劣 化 を 引 き 起 こ す 要 因 に つ い て の 考 察 も 行 っ て い る 。   第4章 で は 、 検 出 性 能 の 向 上 を 目 指 し た 差 分 型 ス テ ラ コ ロ ナ グ ラ フ 装 置 を 提 案 し た 。 系 外 惑 星 か ら の 光 は 、 可 視 域 で は 恒 星 か ら の 光 に よ る 反 射 散 乱 光 で あ る た め 、 部 分 偏 光 し て い る と 考 え ら れ る 。 そ こ で 、 コ ロ ナ グ ラ フ 装 置 を 偏 光 ビ ー ム ス プ リ ッ タ に よ っ てsお よ びp偏 光 の2チ ャ ン ネ ル と し て 、 そ の 差 分 を と る 。 無 偏 光 で あ る 残 余 恒 星 光 ノ イ ズ は キ ャ ン セ ル さ れ 、 惑 星 光 の 偏 光 成 分 の み を 抽 出 す る こ と が で き る 。 プ ロ ト タ イ プ 光 学 系 に よ る 性 能 評 価 か ら 、 恒 星 モ デ ル に 比 ベ10・5オ ー ダ ー も の 非 常 に 微 弱 な 惑 星 光 モ デ ル を 検 出 で き る こ と が 示 さ れた。

  第5章 で は 、 干 渉 型 ス テ ラ コ ロ ナ グ ラ フ に お い てpupil remapping mirrorを 利 用 す る 手 法 に つ い て 研 究 を お こ な っ た 。 干 渉 型 ス テ ラ コ ロ ナ グ ラ フ は 、 望 遠 鏡 の 入 射 瞳 が 円 形 開 口 で あ る 場 合 、 理 想 的 に は 恒 星 像 を 完 全 に 除 去 す る こ と が で き る 。 し か し 既 存 の 望 遠 鏡 で は 、 入 射 瞳 に は 副 鏡 や ス パ イ ダ ー の 影 が 映 り 込 ん で し ま い 、 性 能 を 著 し く 劣 化 さ せ る 。 こ れ を 解 決 す る た め 、pupil remapping mlrrorを 用 い て 、 こ の よ う な 入 射 瞳 を 円 形 開 口 ヘ 変 換 す る こ と を 提 案 し た 。 最 適 な ミ ラ ー 形 状 の 計 算 を 行 い 、 さ ら に 、 補 償 光 学 の 性 能 に 対 す る コ ロ ナ グ ラ フ 性 能 の 見 積 も り を 行 っ た 。 そ の 結 果 、 将 来 の 高 次 補 償 光 学 が 実 現 さ れ れ ば 、 高 いコロナグラフ性能を達成できることが示された 。

  第6章 で は 、 本 研 究 の 結 論 と し て 、 得 ら れ た 性 能 評 価 の ま と め を 行 っ て い る 。

  こ れ を 要 す る に 、 著 者 は 太 陽 系 外 惑 星 の 直 接 検 出 の た め に 、 偏 光 ナ ル 干 渉 に 基 づ い た 天 体 干 渉 計 用 お よ び 大 型 望 遠 鏡 用 の 装 置 開 発 を 行 い 、 実 験 お よ び 数 値 シ ミ ュ レ ー シ ョ ン に よ り 提 案 し た 装 置 の 有 効 性 を 示 し た 。 本 研 究 に よ っ て 得 た 知 見 は 天 文 光 学 お よ び 応 用 物 理 学 の 発 展 に 寄 与 す る と こ ろ 大 な る も の が あ る 。 よ っ て 著 者 は 、 北 海 道 大 学 博 士 ( 工 学 ) の 学 位 を 授 与 さ れ る 資 格 あ る も の と 認 め る 。

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